設備投資は、企業が成長し、競争力を強化するために欠かせない取り組みです。しかし、新しい機械やシステムの導入には大きな費用がかかるため、中小企業や個人事業主にとっては負担が大きくなることが少なくありません。
そんな中、国や地方自治体が提供する補助金や助成金、さらに税制優遇制度を活用することで、設備投資のコストを抑えつつ、効果的な投資を行うことが可能です。
本記事では、設備投資に使える主要な補助金・助成金の種類から、税制優遇制度について詳しく紹介し、企業が成長を目指す際に活用できる支援策を分かりやすく解説します。設備投資を検討している方はぜひ参考にしてください。
最初にご紹介するものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者を対象に、生産性向上を目指した設備投資や革新的なサービス開発を支援する制度です。この補助金は、生産現場における設備導入や技術導入のための資金として利用され、最大で8,000万円までの補助が受けられます。補助率は通常、1/2~2/3であり、特にサイバーセキュリティやDX(デジタルトランスフォーメーション)に関連する設備投資にも適用される点が特徴です。
定期的に公募が行われており、申請のタイミングを逃しても比較的短い期間で再度応募の機会が得られるため、設備投資を検討している中小企業にとっては非常に利用しやすい補助金です。生産効率の向上や新技術の導入を目指す企業におすすめの支援制度と言えます。
ものづくり補助金は以下の記事で詳しく紹介しております。
ものづくり補助金とは?対象者や申請要件、補助額、申請方法をわかりやすく解説
大規模成長投資補助金は、大規模な設備投資や事業拡大を検討している企業を支援する制度です。設備投資の規模が大きい場合でも利用できるよう、高額な補助金が提供されます。補助金の上限は通常50億円までと非常に大きく、企業の大規模な成長計画を実現するための資金として活用できる点が特徴です。
この補助金を受けるには、企業の成長性や新技術の導入による市場拡大など、具体的な事業計画を立案し、審査を通過する必要があります。高度な技術力や大規模な設備投資を必要とする企業にとっては、大きな成長のチャンスとなる支援制度です。
2024年は2回の公募がありましたが、経産省は中堅企業への支援を厚くする方針のため、再度の公募が期待されています。
大規模成長投資補助金は以下の記事で詳しく紹介しております。
大規模成長投資補助金とは?対象者と対象経費、採択率、申請スケジュールを解説
小規模事業者持続化補助金は、販路開拓や業務効率化を目指す小規模事業者を対象に、設備投資やその他の経費を補助する制度です。補助上限は50万円~200万円と比較的少額ですが、補助率が2/3(赤字事業者の場合は3/4)であり、広範囲の業務改善に活用できる点が魅力です。
販路開拓に加え、ウェブサイトの作成や、業務効率化に必要な設備やソフトウェアの導入にも適用されるため、さまざまな分野で利用可能です。特に、地域経済の活性化や雇用維持に貢献する取り組みを行う事業者にとって、活用の幅が広がります。
小規模事業者持続化補助金は以下の記事で詳しく紹介しております。
小規模事業者持続化補助金とは?対象者や補助額、申請方法、スケジュールを解説
事業再構築補助金は、企業が新市場への進出や事業再編を行う際に、その費用の一部を支援する制度です。補助金の上限は最大5億円で、特に大規模な設備投資や事業の転換を図る企業にとって有利な補助金です。補助率は1/2~3/4であり、コロナ禍で経営が厳しくなった企業を支援する目的も含まれています。
企業が事業再編や新分野への進出を計画している場合、この補助金を活用することで大幅な資金援助が期待できます。ただし、事業計画を認定機関に提出し、審査を通過する必要があるため、事前に綿密な準備が求められます。
事業再構築補助金は以下の記事で詳しく紹介しております。
事業再構築補助金とは?申請枠から補助額、対象者、対象経費まで詳しく解説
事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継やM&Aをきっかけに、設備投資や事業拡大を計画する中小企業を支援するための補助金です。補助金の上限は100万円~800万円で、特定の条件を満たす場合は上乗せが可能です。補助率は2/3が中心で、事業承継を成功させるために必要な費用を補助します。
事業承継後の設備投資や販路開拓、新たな経営体制を構築するための経費が対象となっており、後継者が新たな革新をもたらすための支援を目的としています。企業の世代交代に伴う経営強化を図るために、ぜひ活用したい補助金です。
事業承継・引継ぎ補助金は以下の記事で詳しく紹介しております。
事業承継・引継ぎ補助金とは?制度概要や対象者、補助額、申請方法などを解説
IT導入補助金は、中小企業や個人事業主がITツールやソフトウェアを導入する際に、その費用の一部を補助する制度です。補助金の上限は5万円~450万円で、補助率は1/2~4/5と高く、IT化の促進を目的としています。特に会計ソフトや電子取引システムの導入、ITセキュリティ強化のための投資に利用できます。
IT導入補助金は、デジタル化基盤を整えることで生産性向上を図ることを目指しており、経営課題にITツールで対応したい企業にとって非常に有効な手段です。また、セキュリティやインボイス対応など、経営の安定化に不可欠なシステムの導入に適している点も特徴です。
IT導入補助金は以下の記事で詳しく紹介しております。
IT導入補助金とは?補助額や申請方法、スケジュール、注意点などを解説
業務改善助成金は、中小企業や小規模事業者が、業務改善や生産性向上を目的として行う設備投資に対して支給される助成金です。事業場内の最低賃金を一定額以上引き上げた場合、そのために必要な設備投資の費用が一部助成されます。補助上限は600万円で、補助率は最大9/10と非常に高いのが特徴です。
POSシステムの導入や、機械設備の更新など、生産性向上に直結する設備投資が助成対象となります。業務効率化を図りつつ、従業員の賃金引き上げを行いたい企業にとって、有効な支援制度です。
業務改善助成金については以下の記事で詳しく解説しています。
働き方改革推進助成金は、労働時間の短縮や年次有給休暇の促進を目的として、労働環境を整備するための設備投資に対して支給される助成金です。労働時間管理システムや自動機械の導入、労務管理用ソフトウェアの導入などが対象となります。助成上限は最大730万円で、補助率も比較的高く設定されています。
この助成金は、働き方改革を推進するための取り組みを支援するもので、労働環境の改善に力を入れたい企業にとって重要な支援制度です。従業員のワークライフバランスを向上させ、生産性を高めるために、効果的に活用できる助成金です。
参考:厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」
設備投資を検討する際、国の補助金や助成金制度だけでなく、地方自治体が独自に実施している補助金や助成金制度を活用することも有効です。地方自治体の支援は、地域ごとの特性やニーズに応じて設計されているため、企業の規模や業種に応じてより適した支援を受けることができます。さらに、国の制度よりも条件が緩和されている場合もあり、地域に根差した中小企業や個人事業主にとって大きな助けとなることが多いです。
【東京都】躍進的な事業推進のための設備投資支援事業
参考:躍進的な事業推進のための設備投資支援事業とは?対象者や要件、採択のポイントを解説
【大阪府】令和6年度 地球温暖化対策設備導入補助事業
参考:令和6年度 地球温暖化対策設備導入補助事業について‐岸和田市ホームページ
【愛知県】中小企業デジタル活用支援補助金
【北海道】2024年度中小企業競争力強化促進事業
参考:「2024年度中小企業競争力強化促進事業1次・2次募集開始」のご案内‐北海道中小企業支援センターホームページ
これらは、地方自治体が独自に実施している支援制度の一部に過ぎません。地域によって補助金や助成金の内容は異なり、自社のニーズに合った支援を見つけることが重要です。また、国の補助金と併用できる場合もあるため、効率的に資金調達を進められる可能性があります。
さらに詳しい情報やその他の補助金制度を探す際は、補助金コネクト支援検索ページで検索し、利用できる制度を確認してみましょう。
中小企業経営強化税制は、中小企業の設備投資を促進し、生産性向上や収益力強化を支援するための税制優遇措置です。具体的には、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づいて、対象となる設備を取得・製作した場合、以下のいずれかの優遇措置を受けることができます。
即時償却:取得した設備の取得価額を、取得した年に全額経費として計上できるため、その年の税負担を大幅に軽減できます。
税額控除:取得価額の一定割合(資本金の額などにより7%または10%)を法人税額から控除できます。
中小企業経営強化税制は以下の記事で詳しく紹介しております。
先端設備等導入計画による固定資産税の特例とは、中小企業等経営強化法に基づいて認定された「先端設備等導入計画」に基づき、一定の設備を新規取得した場合に、その設備にかかる固定資産税の負担を軽減する制度です。
特例の概要
軽減内容:新規取得設備に係る固定資産税の課税標準を、以下の通り軽減します。
原則:3年間、1/2に軽減
賃上げ要件を満たす場合:最長5年間、1/3に軽減(賃上げ方針を従業員に表明し、かつ、給与等支給額が年平均1.5%以上増加していること)
対象者:資本金1億円以下の法人、従業員数1,000人以下の個人事業主など
対象設備:生産性向上に資する設備、省エネ・環境負荷低減に資する設備など
適用期間:2025年3月31日まで(新型コロナウイルス感染症の影響に伴い延長)
先端設備等導入計画は以下の記事で詳しく紹介しております。
中小企業投資促進税制は、中小企業の生産性向上を目的として、一定の設備投資を行った場合に、税額控除または特別償却の適用を認める税制優遇措置です。
制度の概要
対象者:中小企業者等(資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人、個人事業主など)
対象設備:生産性向上に資する一定の機械装置等(1台につき160万円以上)
優遇措置:以下のいずれかを選択適用
税額控除:取得価額の7%を法人税額から控除(資本金3,000万円超1億円以下の法人には適用なし)
特別償却:取得価額の30%を特別償却(取得価額の30%相当額を通常の償却費に加算して償却)
適用期限:2024年度末(2025年3月31日)まで
参考:中小企業投資促進税制
設備投資に補助金を活用する最大のメリットは、設備の導入に係る初期費用を抑え、経営の安定化を図る点にあります。財務の改善以外にも、設備投資を積極的に行うメリットは複数ありますので、ここでは3点紹介します。
補助金を活用した設備投資の最も大きなメリットのひとつは、生産性の向上です。新しい機械や設備、ITツールを導入することで、これまで以上に効率的に業務を行うことが可能となります。特に、老朽化した設備や古いシステムでは、手作業や過剰な人員を必要とすることが多く、生産性が低下してしまうことが少なくありません。
生産性の向上は、直接的に利益の増加につながります。設備投資によって生産スピードが上がり、製品やサービスの供給能力が高まれば、売上拡大に直結することは言うまでもありません。また、人員削減や効率化を通じてコスト削減が実現すれば、企業の財務状況も改善され、長期的な成長を見込むことができるでしょう。
補助金を利用した設備投資は、事業拡大にも大きく寄与します。市場のニーズや需要が増加している中、現状の設備や体制では生産が追いつかない場合、増産に向けた設備投資が必要となります。しかし、特に中小企業や個人事業主にとって、多額の設備投資を自己資金だけでまかなうことは難しい場合があります。
そうした際に補助金を活用することで、資金不足のハードルを越え、事業拡大を実現することができます。
設備投資は、企業の生産性を向上させるだけでなく、故障や障害のリスクを低減するという重要なメリットもあります。特に、老朽化した設備を使い続けている企業では、故障が頻発し、修理費用やダウンタイム(停止時間)が生じることが大きな問題となります。こうしたリスクを回避し、事業を安定して運営するためには、定期的な設備の更新や改善が不可欠です。
補助金を活用すれば、自己資金では手が届きにくい高額な設備更新も実現可能です。例えば、業務改善助成金を活用して機械設備やシステムの更新を行うことで、設備の故障による生産停止やトラブルを未然に防ぐことができます。古い設備は修理や点検にかかるコストが高くなりがちですが、新しい設備に更新することで、ランニングコストを削減し、長期的に安定した事業運営が可能になります。
補助金や助成金を活用して設備投資を行うことは、企業にとって大きなメリットがありますが、その一方でいくつかの注意点も存在します。ここでは、補助金・助成金で設備投資を行う際に注意すべき主な点について詳しく説明します。
補助金や助成金を申請する際に、最初に直面する課題の一つが申請手続きの手間です。補助金は多くの場合、申請者の事業内容や設備投資の目的、計画、資金の使用目的などを詳細に説明する必要があり、申請書類の準備に時間と労力がかかります。
たとえば、「ものづくり補助金」や「事業再構築補助金」のような高額な補助金では、具体的な事業計画書や財務資料の提出が求められるため、細かな書類の準備が不可欠です。そのため、早めに準備を開始するなどスケジュールに余裕を持って取り組むことが重要です。
補助金や助成金は申請すれば必ず受けられるわけではなく、審査の結果次第で不採択になる可能性がある点にも注意が必要です。特に人気のある補助金や高額な補助金は競争率が高くなり、どんなに申請書を丁寧に準備しても申請が通らないこともあり得ます。
そのため、申請書の内容や事業計画の質が重要になります。計画の具体性や実現可能性をしっかりと示すことが求められるため、申請の際は経営計画を十分に検討し、審査基準をしっかりと理解した上で準備を進めることが大切です。また、万が一不採択になった場合に備えて、他の資金調達方法も視野に入れておくと良いでしょう。
補助金を活用する際には、導入スケジュールに制限がかかる点も見逃せません。多くの補助金や助成金には、設備の導入期間や完了時期に関する厳格な条件が設定されています。たとえば、特定の補助金では、「補助金の採択後、〇ヶ月以内に設備を導入すること」という期限が設定されている場合があり、この期間内に計画通りに設備導入を進められないと、補助金を受け取れなくなることがあります。
設備投資を計画する際は、導入時期と補助金の交付スケジュールをしっかりと把握し、余裕を持った対応が必要です。
設備投資を通じて、企業の生産性向上や事業拡大を目指す際には、補助金や助成金、そして税制優遇制度をうまく活用することが大切です。
国や地方自治体が提供する支援制度を利用すれば、設備導入の初期費用を抑え、リスクを最小限にしながら成長を加速させることが可能です。
補助金コネクトでは、使える補助金の診断、申請手続き等についてご相談を承っております。詳細ご希望の方は、以下のページよりお問い合わせください。