今後の事業拡大のため、補助金や助成金の活用を視野に入れている事業者の方も多いのではないでしょうか。
その中でも最大1億円の補助が出る「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」は、競争力強化、DX推進など様々な観点から企業を支援してくれる東京都の大型補助金制度の一つです。
本記事では、躍進的な事業推進のための設備投資支援事業についての概要と対象者、申請要件、申請の流れをわかりやすく紹介していきます。
採択されるためのポイントも解説しますので、当制度を活用したい方はぜひ最後までご覧ください。
まずは、本事業の概要について確認していきましょう。
本事業は公益財団法人・東京都中小企業振興公社により令和3年に設定されました。
事業者の自ら稼ぐ力を強化した上で、事業展開やイノベーションを生み出し、スローガンである「未来の東京」戦略を推進する意図があります。
東京都で事業を発展させたい
デジタル技術を活用してサービスを構築したい
機械装置など大型の投資を行いたい
事業承継を行いつつ新分野へ参入したい
上記のような方にはおすすめの補助金制度です。
以下のいずれかに該当する事業が補助の対象となります。
事業 | 概要 |
---|---|
競争力強化 | 更なる発展に向けて競争力強化を目指した事業展開に必要となる機械設備を新たに導入する事業 |
DX推進 | IoT、AI、ロボット等のデジタル技術の活用により、新しい製品・サービスの構築や既存ビジネスの変革を目指した事業展開に必要となる機械設備を新たに導入する事業 |
イノベーション | 都市課題の解決に貢献し国内外において市場の拡大が期待される産業分野において、新事業活動に取り組むことで、イノベーション創出を図るために必要となる機械設備を新たに導入する事業 |
後継者チャレンジ | 事業承継を契機として、後継者による事業多角化や新たな経営課題の取り組みに必要となる設備等を新たに導入する事業 |
事業内容から該当しそうな取り組みがないか確認してみてください。
躍進的な事業推進のための設備投資支援事業の対象者は以下を満たす中小企業者等です。
東京都内に登記簿上の本店または支店がある
2年以上事業を継続している
その他、納税を怠っていないなど細かな要件がありますので、詳しくは公式ページをご覧ください。
対象事業と経費について確認していきましょう。
対象事業は前述した4つの区分のいずれかに該当している必要があります。
具体例をまとめた表は以下の通りです。
区分 | 事業例 |
---|---|
競争力強化 | ・量産体制の構築 ・生産工程の改善 ・コストダウン |
DX促進 | ・機械制御の自動化 ・ロボット導入による24時間稼働の実現 |
イノベーション | ・新商品の生産 ・新しい販売方式の導入 |
後継者チャレンジ | ・事業転換に向けた新商品開発 ・新分野への参入 |
ただし研究開発を目的として量産・販売の目途が立っていない事業や、事業計画を伴わない単なる設備投資は対象外です。
4区分のいずれかに合致し、将来性のある事業計画を策定している事業が対象となります。
対象経費は機械装置、器具備品、ソフトウェアの新たな導入、搬入・据付等に要する経費となります。1基当たりの下限額が50万円(税抜)以上のものが対象となります。
また、以下の条件もありますのでチェックしておきましょう。
対象事業者が直接使用し、必要最小限の経費
交付決定日の翌月1日から1年6ヶ月の間に契約、納品、支払いまで完了できる経費
用途、単価、規模などが客観的に確認できる経費
所有権が対象事業者に帰属する経費(担保に供するのは不可)
事業に直接関係があり、その必要性を客観的に証明できるものが計上できると理解しておきましょう。
一方で、対象外の経費としては、以下のようなものが挙げられます。
汎用性のあるパソコンやサーバー
デモンストレ設置場所の設備ーション目的の機器設備の導入費用
工事
申請前には公式ページから募集要項を確認するようにしましょう。
躍進的な事業推進のための設備投資支援事業では、申請する事業区分等によって助成率と上限金額が定められています。
事業区分 | 助成額 | 助成率 |
---|---|---|
競争力強化 | 100万~1億円 | 1/2~3/4以内 |
DX推進 | 〃 | 2/3以内 |
イノベーション | 〃 | 3/4以内 |
後継者チャレンジ | 〃 | 3/4以内 |
助成額は下限が100万円、上限が1億円となり、小規模の投資から大型の設備投資まで幅広く活用できます。
第7回 躍進的な事業推進のための設備投資支援事業の申請スケジュールは以下のとおりです。
イベント | 時期 |
---|---|
申請予約 | 令和6年5/1~5/21 |
申請受付 | 5/8~5/25 |
一次審査(書類) | 5月中旬~8月下旬 |
二次審査(面接) | 同上 |
助成対象者決定 | 9月中旬 |
助成事業開始 | 10/1~ |
申請期間が限られていますので、余裕を持って準備を行うようにしてください。これまで年2回の募集がありましたので、間に合わない場合は次回公募を検討してみるもの良いでしょう。
大まかな申請の流れは以下の通りです。
ネットクラブ会員登録を行う
助成金の申請予約を行う
申請書類を提出する
一次審査・二次審査
助成決定
予約をしていないと、申請手続きには進めないので注意しておきましょう。
申請はまずネットクラブ会員サービスの会員登録を行い、助成金の申請予約を行った後で申請書類の提出を行います。
書類の一次審査と面接の二次審査が行われた後に対象者が決定します。対象者には現地調査が行われることもあります。
決定通知後、事業を始めるようになっていますので、決定するまで契約や発注をしないようにしてください。
本事業では一次審査と二次審査に合格した事業者が助成対象となります。採択されるためには、いくつかのポイントを押させておく必要があります。主なものを以下に紹介します。
まずは本事業での審査項目を確認し、それらを満たす計画書を提出しなくてはいけません。
審査項目には以下の4つが挙げられます。
資格審査:資格要件を満たしているか
経理審査:財務の安全性、収益性、成長性を審査
事業計画審査:事業計画は以下を満たすか(目的との適合性、優秀性、実現性、成長・発展性、計画の妥当性)
価格審査:機械設備が市場価格に対して著しく高額でないか
一次審査では資格審査・経理審査・事業計画審査、二次審査では対面での事業計画審査・価格審査が行われます。
つまり最初の関門である一次審査を通過できるのは、以下を書面上で示せている事業者といえます。
要項を満たしている
財務内容が適切
実現可能で達成までの道筋や有用性が明確
これらを念頭に置きながら、申請書類を作成していきましょう。
本事業では書類だけでなく二次審査として面接審査があります。
事業計画の詰めが甘いと二次審査で落とされるケースもあります。策定した事業計画をブラッシュアップし、説明できるように準備しておきましょう。
二次審査では再度事業計画と機械設備が妥当価格であるかどうかが審査されます。数字などを用いて具体的かつ客観性を示せるようにしておきましょう。
加点措置として以下のようなものが挙げられます。事前に完了できるものはしておきましょう。
公社が実施した「IoT、AI導入前適正化診断」又は「ロボット導入前適正化診断」を完了
東京都に「地球温暖化対策報告書」または「特定テナント等地球温暖化対策計画書」を提出
採択率は公開されていませんが、
面接があること
公表されている東京都の他の助成金(創業助成金)の採択率が15%程度であること
を踏まえると、難易度は高めと予想できます。
同系列のものづくり補助金の採択率が40%~60%程度であることから、本事業の採択率は高くて20%~40%程度と思われます。
躍進的な事業推進のための設備投資支援事業は、事業経費の一部を最大1億円補助してもらえる東京都の大型補助金です。
都内で事業展開していて、イノベーションやDX推進などの4分野に該当していれば申請可能です。まとまった補助金を受け取りつつ事業発展を目指したい方にはぴったりの補助金といえるでしょう。
一方で、申請時には申請予約や面接対策が必要であったり、採択率はやや低めであったりするなど、申請のハードルが高いという側面もあります。そのため、申請準備は事業者のみで行わず専門家の力を頼りつつ進めることをおすすめします。
申請期間が短いため、申請をお考えの方は早めに準備を進めておくことをおすすめします。