「先端設備等導入計画」は、設備投資を行う際に認定を受けておくと、様々なメリットを受けられる制度のことです。
ご存知ない方も多いのですが、本計画に基づいて設備を導入すると、税制措置や金融支援などを受けることができるため、特に中小企業の方におすすめです。
この記事では先端設備等導入計画の概要とメリット、申請の流れについて紹介します。
まずはじめに、先端設備等導入計画の概要と対象者についてご紹介します。
先端設備等導入計画とは、中小企業の設備投資を税制面や金融面の観点から支援し、生産性の向上を図ることを目的とした制度です。
中小企業等経営強化法と呼ばれる法律に基づき、国を挙げての施策のひとつです。
出典:先端設備等導入計画策定の手引き(令和5年度税制改正後)
認定を受けた中小企業者は、税制措置や金融支援を受けることができます。
本計画は、各市町村が国から「導入促進基本計画」の同意を受けている場合に利用できるため、一部の地域では対象外の可能性もあります。詳しくは、「先端設備導入に係る固定資産税の軽減措置を講じている市区町村」で対象となる自治体をご確認ください。
「先端設備等導入計画」の認定件数は、1,661自治体で、認定を受けた計画は17,904件です。さらに、認定計画に盛り込まれた設備等の数量は合計で660,743台、約7,834億円が見込まれています。(令和5年3月末時点)
今後も多くの自治体が参加し、認定される件数も増えていくことが想定されるため、まだ申請されていない方は、ぜひ利用を検討してみましょう。
本計画の対象となる事業者の要件は2点あります。
中小企業者であること
労働生産性などの要件を満たすこと
ひとつずつ紹介します。
中小企業者は、以下の「資本金の額または出資の総額」または「常時使用する従業員の数」のどちらかの要件に該当している必要があります。
業種分類 | 資本金の額または出資の総額 | 常時使用する従業員の数 |
---|---|---|
製造業その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5千万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5千万円以下 | 100人以下 |
ゴム製品製造業 | 3億円以下 | 900人以下 |
ソフトウェア業または情報処理サービス業 | 3億円以下 | 300人以下 |
旅館業 | 5千万円以下 | 100人以下 |
上記のとおり、資本金の額や従業員の数に関する要件が定められています。
また、対象となる法人形態は以下の通りです。
個人事業主
会社(会社法上の会社(有限会社を含む。)及び士業法人)
企業組合、協業組合、事業協同組合、事業協同小組合、協同組合連合会、水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会、商工組合(「工業組合」「商業組合」を含む。)、商工組合連合会(「工業組合連合会」「商業組合連合会」を含む。)、商店街振興組合、商店街振興組合連合会
生活衛生同業組合、生活衛生同業小組合、生活衛生同業組合連合会、酒造組合、酒造組合連合会、酒造組合中央会、酒販組合、酒販組合連合会、酒販組合中央会、内航海運組合、内航海運組合連合会、技術研究組合(構成員の一定割合が中小企業者であること)
労働生産性などの要件には以下の4点があります。
一定期間:3年間、4年間または5年間で、市区町村が作成する「導入促進基本計画」で決めた期間となります。
労働生産性:労働生産性とは以下の計算式で算出する値を指します
一定程度向上:直近の事業年度末との比較で、労働生産性を年平均3%以上の向上を指します。
先端設備:機械設備や建物付随設備、ソフトウェアなど、生産性向上に必要な設備などを指します。(市町村によって対象設備が異なります。)
先端設備等導入計画のメリットは「税制措置」と「金融支援」が受けられる点です。
どちらの優遇を受けたいのかを選ぶ必要があるため、ひとつずつ紹介していきます。
以下の通り、新規取得設備に関する固定資産税の軽減が受けられます。
基本:3年間2分の1
また、従業員に対する賃上げ方針の表明を含んでいる場合は、以下のとおり変更されます。
令和6年3月末までに取得した設備:5年間3分の1
令和7年3月末までに取得した設備:4年間3分の1
賃上げに関しては、直前の事業年度と比較して1.5%以上増加させることが要件です。
先端設備の対象となるものは、下図の通り最低価額が定められているうえ、年平均投資利益率が5%以上見込まれるものである必要があります。
出典:先端設備等導入計画策定の手引き(令和5年度税制改正後)
上記の設備は対象になりうる可能性がある一例です。各市町村によって対象が異なるため、事前に問い合わせして確認しておきましょう。
事業者は、資金調達に際して債務保証に関する支援を受けることができます。
民間の金融機関から融資を受ける際、信用保証の通常枠に加えて別枠が用意されます。
出典:先端設備等導入計画策定の手引き(令和5年度税制改正後)
上表のように「保証枠が2倍になる」というのは、成長企業にとっては大きな魅力です。急速に事業が成長する企業では、借入が保証枠の上限になってしまって運転資金が不足し、せっかくのビジネスチャンスを逃してしまうケースが少なくありません。このような時に、先端設備等導入計画の認定があれば、保証枠が倍になることで新たな借入が可能になり、事業を急速に成長させることができます。
ただし、別枠の保証については、金融機関および信用保証協会の審査があり、必ず受けられるものではありませんので注意しましょう。
また、金融支援の活用を検討している方は、各都道府県の信用保証協会や(一社)全国信用保証協会連合会、または補助金申請代行業者などに相談することをおすすめします。
大まかな流れは下図の通りです。
出典:先端設備等導入計画策定の手引き(令和5年度税制改正後)
上記の図のステップを順に解説していきます。
申請するのは、新規取得する設備を設置する市区町村であり、申請する事業者が、別の地域の市町村に申請することはできません。
各自治体によって導入促進基本計画を策定しているか異なるため、申請する前に、各自治体へ問い合わせして確認してみましょう。
以下の4つの書類を作成し、認定経営革新等支援機関に確認を依頼します。
認定申請書(様式22)
投資計画確認依頼書
(別紙)基準への適合状況
基準への適合状況根拠資料
これらの様式は、中小企業庁のホームページで公開されています。
初めて申請される方にとっては、難易度の高い書類作成となるため、補助金申請代行業者などの専門家に相談することをおすすめします。
なお、該当設備の固定資産税額を1/3にするためには、このタイミングで賃上げ方針を従業員へ表明する必要があります。
表明は、従業員の代表者一人だけでも問題ありませんが、全員に表明すると、従業員のモチベーション向上にもつながり、生産性も高まることでしょう。
また、後ほど申請に必要な「賃上げ方針の表明を受けたことを証明する書類」を作成しておきましょう。
認定支援機関が要件を満たしていることを確認できれば、確認書を発行してくれます。
中小企業庁より認定経営革新等支援機関一覧が公開されているため、こちらを参考にします。
その後、市区町村長に以下の書類を提出し、審査を受け、認定書が交付されます。
認定申請書
認定支援機関確認書
賃上げ方針の表明を証する書類
また、自治体独自で求める書類もあるかもしれないため、事前に確認して用意しておきましょう。
認定を受けた後、設備を取得します。
税法上の要件を満たした設備については、税務申告時に税制上の優遇措置の適⽤を受けることができ、納税書類に以下の書類を添付して申告する必要があります。
⼯業会証明書の写し
認定を受けた計画の写し
認定書の写し
つまり、認定されたからといって安心はできません。顧問税理士に「税制優遇を受けられる書類がある」ということを伝え、税務申告時に先端設備等導入計画の書類も一緒に提出しましょう。顧問税理士がこの制度を知っているとは限らないので、皆さま側から積極的に税理に伝える必要があります。
また本制度は、類似の制度である「経営力向上計画」とは異なり、設備取得後に計画申請を認める特例はありません。必ず認定を受けてから取得するようにしてください。
なお、設備の取得金額・資金調達額の若干の変更、法人の代表者の交代など、認定計画に変更が生じた場合は「変更申請」を行う必要があるため、各市区町村ウェブサイトを確認して書類を提出しましょう。
先端設備等導入計画を利用すれば、導入設備の固定資産税の軽減や資金調達に際して債務保証に関する支援を受けることができます。
対象者は中小企業をはじめ、個人事業主や組合などさまざまな法人形態が該当するため、対象範囲が広い制度です。ただし、市町村によっては、未だ非対応としているケースもあるため注意が必要です。
また、本計画の申請には、さまざまな書類を作成するため、多少手続きが煩雑です。事業が多忙で申請する時間がないという方や初めての申請で不安という方は、専門家の支援を受けるようにしましょう。補助金コネクトでもご支援可能です。
先端設備等導入計画について詳細情報をご希望の方は是非お問い合わせください。