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日本政策金融公庫の創業融資制度とは?新規開業資金、新創業融資制度など4つの制度を解説

経営財務
融資
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更新:2024/09/28

創業から間もなく、実績がない個人事業主や小規模事業者(以下:事業者)が、自分でお店を開くなどの理由でまとまったお金が必要な場合、銀行や信用組合で融資を受けるのは難しいものです。また補助金や助成金制度は、申請が必要であるうえ経費を立替払いしなくてはならず、事業開始前にお金を受け取ることはできません。

このような場合、多くの事業者にとって利用しやすいのが、日本政策金融公庫の創業融資制度です。この記事では、創業融資制度の概要や手続きの流れ、審査のポイントなど、制度について詳しく解説します。これから起業を考えている、もしくは起業して数年以内の事業者の方は、ぜひご一読ください。

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日本政策金融公庫で創業時に利用できる融資制度

日本政策金融公庫では、どのような融資制度が設けられているのでしょうか。公庫の概要も含めて、制度について詳しく解説します。

日本政策金融公庫とは

日本政策金融公庫とは、「公庫」「日本公庫」とも呼ばれる国の金融機関のひとつであり、以下の3部門から成り立っています。

  • 中小企業事業(中小企業に向けた長期的な事業融資、新事業支援など)

  • 国民生活事業(個人事業主や小規模企業に向けた小口融資、創業支援など)

  • 農林水産事業(農林水産業の担い手を育てるための融資)

出資の全てを国から受けているため、公庫は潤沢な資金を有しています。民間金融機関の補完を行う役割を担っており、融資審査において柔軟な対応が受けられることに加え、長期の融資を行っています。民間金融機関では融資が受けにくい事業者への融資も、一定要件を満たせば手続き可能です。

創業時に利用できる融資制度

事業者が創業時に受けられる融資は、以下の4つです。

制度名

対象者

限度額

返済期間

利率

新規開業資金

■ 新しく事業を始める方

■ 事業開始後概ね7年以内の方

7,200万円(うち運転資金4,800万円)

設備資金…20年以内

(うち据置期間2年以内)

運転資金…7年以内

(うち据置期間2年以内)

0.30~2.95%(創業後目標達成型金利の適用あり)

生活衛生新企業育成資金

■ 生活衛生関係の事業を創業する方

■ 創業後おおむね7年以内の方

■ 振興事業貸付

設備資金 1億5,000万円~7億2,000万円、運転資金 5,700万円

■ 一般貸付

設備資金 7,200万円~4億8,000万円

■ 振興事業貸付

設備資金 20年以内運転資金 7年以内

<うち据置期間2年以内>

■ 一般貸付

設備資金 20年以内

<うち据置期間2年以内>

0.30~2.95%

(創業後目標達成型金利の適用あり)

新創業融資制度

■ 新しく事業を始める方

■ 事業開始後、税務申告を2期終えていない方

3,000万円(うち運転資金1,500万円)

他に利用する融資制度に定める返済期間以内

0.88~3.25%

資本性ローン

以下の両方を満たす法人もしくは個人企業

■ 新規開業資金、新事業活動促進資金などの融資制度対象である

■ 地域経済活性化にかかる事業であり、所得税等を完納している

(国民生活事業の場合)

7,200万円(別枠)

5年1か月以上20年以内

0.90~6.45%

各融資制度のさらに詳しい内容は、次の項から解説します。

新規開業資金

新規開業資金は、これから事業を開始する人やお店を開く人が利用できる制度です。

新規開業資金の概要

項目

内容

利用可能な方

事業をこれから始める、もしくは事業開始後おおむね7年以内

資金の使い道

事業の開始、継続に必要な設備資金および運転資金

融資限度額

7,200万円(うち4,800万円は運転資金)

返済期間

設備資金…20年以内(うち据置期間は2年以内)

運転資金…7年以内(うち据置期間は2年以内)

利率

■ 下記以外の要件…基準利率(1.03%~2.95%)

■ 地域おこし協力隊としての活動地域で事業を始める

・Uターンをして地方で事業を始める

・認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める

・外国人起業活動促進事業における特定外国人起業家の方で新たに事業を始める

・女性の方、35歳未満または55歳以上の方

・事業計画書の策定を自分で行なったうえで、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関による指導および助言を受けている

・独立行政法人中小企業基盤整備機構が出資する投資事業有限責任組合から出資を受けた

…特別利率A(0.63%~2.55%)(一部の要件は特別利率B0.38%~2.30%)

■ 新しい技術やノウハウを導入する

特別利率A(0.63%~2.55%)・B(0.38%~2.30%)・C(0.30~2.05%)

■ 地方創生推進交付金を活用した起業支援金の交付決定を受けて新たに事業を始める

特別利率B(0.38%~2.30%)

■ 起業支援金と移住支援金の両方が交付され、新たに事業を始める

特別利率C(0.30~2.05%)

担保、保証人

要相談

併用可能な融資制度

■ 担保、保証人なしを希望する場合

・新創業融資制度

・担保を不要とする融資制度

・経営者保証免除特例制度

■ これから事業を始める、税務申告を2期終えていない

・創業支援貸付利率特例制度

■ 設備投資を行なう

・設備資金貸付利率特例制度(全国版、東日本版)

新規開業資金の特徴

新規開業資金は、事業開始に必要な設備を購入するための費用や、事業継続に必要となる資金などを調達できる制度です。制度を利用するには、適正な事業計画を策定し、審査に通過することが条件となります。

これから事業を始める人や、始めてから概ね7年以内の人が申請できます。事業開始後の年数により、必要書類が異なるため、きちんと確認しておきましょう。

生活衛生新企業育成資金

次に、新規開業資金に該当する人のうち、特定の業種のみが申請できる制度について見てみましょう。

生活衛生新企業育成資金の概要

生活衛生関係の業種に該当する事業者には、専用の融資制度が設けられています。ここでいう生活衛生関係とは、飲食店、宿泊業などの第三次産業が該当します。

項目

内容

利用可能な方

生活衛生関係の事業を始める、もしくは始めてから概ね7年以内の方

資金の使い道

設備資金、運転資金

融資限度額

(業種によって限度額が異なる)

■ 設備資金

7,200万円~7億2,000万円

■ 運転資金

5,700万円

返済期間

設備資金 20年以内

運転資金 7年以内

<うち据置期間2年以内>

利率

・特別利率A(0.63%~2.55%)

・特別利率B(0.38%~2.30%)

・特別利率C(0.30~2.05%)

・創業後目標達成型金利(上記利率より各0.2%引き下げ)

担保、保証人

要相談

併用可能な融資制度

■ 担保、保証人なしを希望する場合

・新創業融資制度

・担保を不要とする融資制度

・経営者保証免除特例制度

■ これから事業を始める、税務申告を2期終えていない

・創業支援貸付利率特例制度

■ 設備投資を行なう

・設備資金貸付利率特例制度(全国版、東日本版)

■ 生活衛生同業組合などから、会計書類の準備や事業計画の確認を受けた方

・振興事業促進支援融資制度

生活衛生新企業育成資金の特徴

生活衛生新企業育成資金が、生活衛生関係の事業のみに限定されているのは、第三次産業の発展が、地域経済の活性化に必要不可欠であるためです。振興計画認定組合の組合員以外が貸付を希望する場合は、創業計画書などを提出し事業計画の確認が必要です。

貸付限度額は全体的に高額ですが、中でも施設の維持費がかかる旅館や銭湯は、億単位で借入できます。

新創業融資制度

新創業融資制度は、無担保かつ保証人も不要で融資を受けられる制度です。ただし、この制度単独では利用できず、他の融資制度と併用して利用する必要があります。

新創業融資制度の概要

項目

内容

利用可能な方

以下の全要件に該当すること

・新たに事業を始める、もしくは事業を始めてから税務申告を2期終えていない

・創業資金総額の10分の1以上の自己資金を用意できる

資金の使い道

新たに事業を始める、もしくは事業を始めてから必要な設備資金および運転資金

融資限度額

3,000万円(うち運転資金1,500万円)

返済期間

併用する融資制度に定める期間内

利率

0.88~3.25%

担保、保証人

原則不要

(法人の代表者が連帯保証人になる場合は、利率が0.1%下がる)

新創業融資制度の特徴

新創業融資制度は、無担保、無保証で受けられるうえ、融資実行までのスピードが早い制度です。一方で、通常の融資よりも年間金利が高いことや、融資額の上限が少ないデメリットがあります。

新創業融資制度は、単独では利用できず、他の融資制度と組み合わせなくてはいけません。一定要件を満たせば自己資金要件が免除されますが、これにより100%融資が保証されるものではありません。

新創業融資制度については以下の記事で詳しく解説しています。

新創業融資制度とは?メリット、デメリット、審査のポイントを解説

挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)

挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)とは、中小企業の資金繰りを支援し、財務体質を強化する目的で設立された制度です。

資本性ローンの概要

資本性ローンは2つの事業が用意されています。

国民生活事業

項目

内容

利用可能な方

以下の1、2を満たす法人または個人企業

1.融資制度

以下のいずれかの融資制度対象者

・新規開業資金

・新事業活動促進資金

・海外展開、事業再編資金

・事業承継、集約、活性化支援資金

・企業再建資金

2.その他条件

以下の要件もすべて満たしている

・地域経済活性化にかかる事業を行う

・所得税等を完納している(税務申告を1期以上行っている場合)

資金の使い道

融資制度が定める設備資金および運転資金

融資限度額

7,200万円(別枠)

返済期間

5年1か月以上20年以内

利率

融資後1年ごとに、直近の業績によって0.90%~6.45%が適用される

担保、保証人

無担保、無保証人

その他

金融機関の資産査定では自己資本とみなされる

融資条件

・事業計画書の提出が必要

・完済まで、四半期ごとに経営状況の報告などを行なう

中小企業事業

項目

内容

利用可能な方

・新規事業、経営改善、企業再建などに取り組み、地域経済の活性化のために、一定の雇用効果が認められる

・地域社会にとって不可欠である

・技術力の高いなどの事業などに取り組む方

融資限度額

1社あたり10億円

利率

貸付後1年ごとに、直近決算の業績に応じて0.50~5.70%が適用される

返済期間

5年1か月または6年から20年までの各年

(期限一括償還)

担保、保証人等

無担保、無保証人

その他

金融機関の資産査定では自己資本とみなされる

貸付条件など

四半期毎の経営状況報告と事業計画書の提出が必要

融資の申し込み

直接貸付

資本性ローンの特徴

資本性ローンの特徴は、負債ではなく資本としてみなされる資金の調達が可能である点です。これにより、追加融資において信用力に悪影響を与えることがなくなります。

国民生活事業は、主にスタートアップの段階にいる企業やベンチャー企業などが対象の中心です。中小企業事業は、新規事業や企業再建を目的とする中小企業に向けた、長期事業資金の融資が目的です。

資本性ローンでは、自己資本の強化により信用を向上させられる一方で、繰り上げ返済ができないことや、自己資本とみなされるのは金融検査上のみであることなどを、しっかりと覚えておく必要があります。

なお、資本性ローンの詳細については以下の記事で解説しています。

資本性劣後ローンとは?対象者とメリット、デメリット、注意点を解説

創業融資の手続き

これまで紹介してきた創業融資を受けるには、必要な手続きをとらなくてはなりません。どのような流れで手続きをしたら良いのか、順を追って紹介します。

なお、創業融資を受ける際の流れの詳細や必要書類は以下の記事をご覧ください。

日本政策金融公庫から融資を受ける流れとは?創業融資の申し込み手続きと必要書類を解説

電話相談

最初に、融資制度や申し込み手続きなどについて相談をします。電話、オンライン、支店窓口などどの方法でも相談できますが、支店窓口に足を運ぶと、面接の予行演習にも役立ちます。

電話は、事業資金相談ダイヤルが設けられているので、ガイダンスに従って入力しましょう。支店窓口は、日本政策金融公庫のサイトで管轄支店が確認できます。オンラインもしくは支店窓口での相談には、事前予約が必要です。

インターネットから申し込み

相談後、利用する融資制度が決まったら、書類を揃えて申し込みます。必要書類は、利用する制度や各要件などによって異なるため、漏れがないようきちんと準備しましょう。

金融公庫ではインターネット申し込みを推奨していますが、郵送でも可能です。

面談

書類を提出すると、後日担当者から面談に関する連絡が入ります。面談では、提出した書類の内容について聞かれるため、資産や負債が分かる書類や計画に関する資料も準備しておきましょう。

面談で重視されるのは、事業計画や資金計画の内容です。どのような質問にも答えられるよう、準備が大切です。面談後には、事業を行う現場の実地調査が行なわれるほか、場合によっては追加資料の提出を求められます。

融資決定

審査の結果融資が決まれば、契約の必要書類が郵送されてきます。申請した金額は全額融資されるとは限らず、審査内容によっては減額されることもあります。手続きが完了すると、通知から数日で金融機関にお金が振り込まれます。

創業融資の金利については以下の記事もご覧ください。

創業融資の金利(利率)とは?主な融資制度との比較や金利を下げるためのポイントを解説

返済開始

返済は原則として月賦払いで、元金均等返済、元利均等返済、ステップ(段階)返済などがあります。創業融資の返済期間については以下の記事もご参照ください。

創業融資の返済期間は?他の融資制度との違いや返済期間の決め方、融資審査のポイントを解説

なお、ごく稀に創業融資は返済不要なんですか?といったご質問をいただくことがありますが、基本的に融資は返済が必要です。詳しくは以下の記事で解説しています。

創業融資は返済不要か?創業融資のメリットと返済不要な資金調達方法を解説

審査のポイント

日本政策金融公庫の創業融資制度は、審査ポイントを事前にしっかり把握しておくと、審査に通る可能性を高めることができます。審査に落ちた場合も、ポイントを知っておくことで原因の分析に役立てられます。

審査の主なポイントを4つ紹介しますので、内容を理解しておきましょう。

十分な自己資金を投下している

審査では、最初に自己資金が確認されます。今回紹介した制度の中で、新創業融資制度では自己資金として創業資金総額の10分の1以上が必要との要件が定められています。ただし、10分の1は、あくまでも最低必要な数値であるため、自己資金がこの額よりも多いに越したことはないのです。

自己資金は、資金総額の3割程度を貯めておくと、審査に通る可能性が上がります。計画的に貯めるよう心がけ、審査に通りやすくなるようにしましょう。

なお、自己資金がなくても融資を受ける方法については以下の記事をご覧ください。

自己資金なしで創業融資を受ける方法とは?制度や注意点を解説

事業計画がしっかり立てられている

融資の決定に大きく関わるのが、事業計画書の記載内容です。事業実績が少ない状態での申し込みでは、特に重視されます。

資金の使用用途は、設備資金と運転資金に分けられていますが、2つの用途に対し妥当な見通しが立っているかを証明するため、計画書に数値と根拠を入れ込むことがポイントです。特に設備資金は、見積もりなどで内容を明確にしておくと、用途が判断されやすくなります。

返済能力があることを説明できる

日本政策金融公庫からの融資は借入にあたるため、返済義務を負うことになります。期日までの返済が可能か、返済計画に無理はないか、返済ができるだけの利益を生み出せるかなどがポイントです。

各種ローンやクレジットカード、税金、公共料金などの支払い延滞があると、融資を受けるのは難しくなります。

面談で明瞭な説明ができる

融資を受けるのに必要な面談は、提出された計画書をもとに実施されます。面談により、融資に対する熱意や希望者の人柄、信頼感などをチェックします。

面談では、創業の理由や事業経験、売上見込みの根拠や自己資金の捻出先などを聞かれます。自分の言葉で明瞭に説明できるよう、面談対策をしっかり行なっておきましょう。

なお、創業融資の審査のポイントについては以下の記事で詳しく解説しています。

日本政策金融公庫の審査に落ちないためのポイントとは?融資審査に向けた対策方法を解説

まとめ

日本政策金融公庫の創業融資制度は、条件によって利用可能な制度が異なります。自分に合った制度を適切に利用し、事業に役立てるには、制度の内容についてしっかり理解したうえで手続きをとることが重要です。

事業の運営には、資金の問題を避けて通るのは不可能です。制度を利用することでスムーズに事業を展開し、拡大も目指せるようになるでしょう。本記事で紹介した内容を参考にしていただき、ぜひ融資制度に申し込んでみてください。

なお、制度は変わる可能性もありますので、最新の情報は日本政策金融公庫に確認してみてください。補助金コネクトでは融資のご相談もお受けしておりますので、相談してみたいという方は以下よりお問い合わせをお願いします。

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