借入を行う際に気になることは金利です。創業融資は民間の金融機関の融資と比べて優遇されていると言いますが、実際の金利はどのくらい異なるのでしょうか。
この記事では創業融資の金利と主な融資制度との比較について紹介します。また、創業融資を受けるためのポイントや金利を下げる方法について解説しますので、創業融資を検討されている方は最後までお読みください。
創業融資の金利は、具体的な融資制度によって異なります。ここでは、2024年9月時点における、4種類の創業融資制度の金利を紹介します。
創業融資の種類 | 金利 |
---|---|
中小企業経営力強化資金 | ・国民生活事業:1.95%~3.05%(担保有の場合0.95%~2.65%) ・中小企業事業:0.60%~1.50% |
新規開業資金 | ・無担保:1.45%~2.55% ・担保有:0.60%~2.65% |
挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン) | ・国民生活事業:0.50%~4.65% ・中小企業事業:0.50%~4.65% |
制度融資(信用保証協会の保証付き融資) | 自治体によるが、1.00%~3.00%程度 |
比較してわかる通り、各創業融資によって金利が異なるだけでなく、上限~下限の幅も広いことがわかります。以下では、それぞれの制度について概要をご紹介します。
中小企業経営力強化資金は、新たに事業を始める方や、事業を開始して7年以内の方が利用できる日本政策金融公庫の融資の一つです。
中小企業経営力強化資金には、国民生活事業と中小企業事業に分かれており、それぞれ融資限度額や金利に違いがあります。
項目 | 国民生活事業 | 中小企業事業 |
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融資限度額 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円) | 直接貸付 7億2千万円 |
利率(年) | ただし、要件を満たした事業者は2億7千万円まで特別利率① |
中小企業経営力強化資金については、以下の記事で詳しく紹介していますのでご覧ください。
中小企業経営力強化資金とは?メリットや注意点、利用の流れなどを解説
新規開業資金は、これから事業を開始する人や開業してから概ね7年以内の人などを対象とした日本政策金融公庫の融資の一つです。
事業開始に必要な設備を購入するための費用や、事業継続に必要となる資金として融資を受けられます。
項目 | 新規開業資金 |
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融資限度額 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円) |
利率(年) |
新規開業資金に関しては、以下の記事で詳しく紹介しています。
日本政策金融公庫の創業融資制度とは?新規開業資金、新創業融資制度など4つの制度を解説
挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)は、実績の少ないスタートアップ企業や事業再生などに取り組む事業者等を対象とした日本政策金融公庫の融資の一つです。
借入れにより自己資本比率を増やすこともできるため、他の金融期間からの追加融資において問題視されづらいというメリットがあります。
挑戦支援資本強化特別貸付は、国民生活事業と中小企業事業の2種類に分かれますが、どちらも借入期間に応じた金利が定められています。
当期純利益額 | 5年1ヵ月 | 5年1ヵ月超7年以内 | 7年超10年以内 | 10年超15年以内 | 15年超20年以内 |
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0円以上 | 3.60% | 3.90% | 4.15% | 4.40% | 4.65% |
0円未満 | 0.50% | 0.50% | 0.50% | 0.50% | 0.50% |
なお、資本性ローンについては以下の記事で詳しく解説しています。
資本性劣後ローンとは?対象者とメリット、デメリット、注意点を解説
制度融資(信用保証協会の保証付き融資)とは都道府県や市町村などの地方自治体、信用保証協会、金融機関の三者が連携して提供する融資制度のことです。
信用保証協会の保証付き融資に加え、地方自治体の利息を補填してくれるため、低コストで資金調達ができます。
制度融資の金利は地方自治体ごとに異なるため、気になる方は問い合わせしてみましょう。
なお、信用保証協会については以下の記事でも詳しく解説しています。
信用保証協会とは?利用するメリットと注意点、信用保証制度を解説
その他、民間の金融機関による融資金利は以下の表のとおりです。
融資の種類 | 内容 | 金利 |
---|---|---|
地銀・信金信組のプロパー融資 | 保証協会の保証がない融資 | 1.00〜3.00%前後 |
メガバンクのビジネスローン | 事業資金専用のローン | 2.49%~15.00%前後 |
カードローン | 契約時に決定した契約限度額の範囲内であれば必要な金額の借り入れができる商品 | 1.50%~14.60%前後 |
以下、それぞれの概要を解説します。
プロパー融資とは、信用保証協会の保証をつけずに、金融機関が直接融資する方法のことです。
保証がない分、金融機関としては貸し倒れリスクを負うことにもなるため、創業時には多少難易度は高い融資です。その分信用保証協会の保証料が不要となるため、コストをかけずに資金調達ができます。
保証協会付融資に比べ、プロパー融資の方が返済期間は短くなるケースが多い傾向にあります。
メガバンクのビジネスローンには、一般に固定金利と変動金利の2種類の商品が用意されています。
固定金利は、3年や5年などの期間の金利が固定されている商品であるのに対し、変動金利は1年や2年ごとに金利の見直しが入る商品です。一般的に変動金利の方が低い傾向にありますが、将来的に金利が上昇した場合、固定金利の方が低くなるケースもありますので、一長一短といえます。
メガバンクによって金利は異なるだけでなく、借入期間や借入額に応じて変動します。相場としては、2.49%〜15.00%前後の金利ですが、金利幅が広いため、各社に相談してみることをおすすめします。
カードローンとは、金融機関が提供する融資サービスの一つです。契約時に設定した借入上限額まで何度でも借入することができます。
カードローンは、他の融資制度より金利が高く設定されており、借入上限額も低いという特徴があります。創業時に利用する際は、他の融資の不足分を補う目的で利用するのがおすすめです。
創業融資は他の融資に比べ金利が低い傾向にありますが、誰でも審査をクリアできるというわけではありません。
審査をクリアするためのポイントを3つご紹介します。
創業融資を申し込む際は、自己資金を準備しておくと審査が通りやすくなります。「自己資金が多い=借入額が少なくなる」ことになるため、審査が有利になる傾向にあるためです。
もちろん創業時は売上もないことから自己資金を用意できない方もいらっしゃることでしょう。しかし、自己資金を賄うために借入など行うと、返済比率が上昇し、審査が不利になるため注意が必要です。
自己資金の準備については、以下の記事もご覧ください。
事業計画書は、創業融資の審査を申し込む際の重要な入口です。事業内容がよくわからず、収益性も再現性も低い計画書では、もちろん承認されることはないでしょう。
創業融資では、申込企業の将来性を考慮して審査が行われます。そのためにも、日本政策金融公庫の担当者を納得させる事業計画書の作成が求められます。
しかし、初めて創業融資を申し込む方にとっては、どのような点に注意して事業計画書を作成すればよいのかわからないことでしょう。そのため、次の項で紹介する「専門家の支援を受ける」方法からスタートするのもおすすめです。
創業融資を申し込む前に、専門家の支援を受けるようにしましょう。中小企業診断士や行政書士、税理士などの専門家に相談することで、事業計画書や資金繰り表の作成、必要書類の準備などをサポートしてもらえることがあります。
補助金コネクトでもご支援しておりますので、詳細ご希望の方はお問い合わせください。
民間の金融機関と比較して、創業融資の金利は低い傾向にありますが、なお金利を下げるためのポイントを3点紹介します。
返済期間を短くすると、金利も下がる傾向にあります。
また、融資希望額が多ければ、万が一返済が難しくなった場合に金融機関側が負うリスクも大きくなるので、金利も高く設定されるため、自己資金を増やすと金利も抑えられます。
本来、創業融資には担保や保証人は不要です。しかし、担保や保証人をつけることによって、利率を低くすることが可能です。
例えば、国民生活事業の主要利率一覧表を確認してみると、無担保と担保有では以下の表の通り利率が異なります。
区分 | 無担保(税務申告を2期終えている方) | 有担保 |
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基準利率 | 2.35%~3.45% | 1.35%~3.05% |
特別利率A | 1.95%~3.05% | 0.95%~2.65% |
特別利率B | 1.70%~2.80% | 0.70%~2.40% |
特別利率C | 1.45%~2.55% | 0.60%~2.15% |
特別利率E | 0.95%~2.05% | 0.60%~1.65% |
特別利率J | 1.30%~2.40% | 0.45%~2.00% |
特別利率N | 2.05%~2.55% | 1.05%~2.15% |
特別利率P | 2.15%~2.95% | 1.15%~2.55% |
特別利率Q | 1.95%~2.45% | 0.95%~2.05% |
特別利率R | 2.15%~2.65% | 1.15%~2.25% |
特別利率U | 1.85%~2.35% | 0.85%~1.95% |
金利を少しでも抑えたいという方は、担保や保証人が付けられないか確認してみましょう。
創業支援貸付利率特例制度を付けた場合、各融資制度に定める利率-0.65%、雇用の拡大を図る場合は、各融資制度に定める利率-0.9%が適用されます。
創業支援貸付利率特例制度とは、新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方を対象とした特例制です。
資金使途や返済期間、担保の有無によって適用利率は異なりますが、金利を抑えたい方にはおすすめです。
創業融資の金利は、主な融資制度と比較して低いです。さらに、担保や保証人を付けたり、自己資金を多く準備できれば、金利はさらに下がる傾向にあります。
とはいえ、金利ばかりを気にしていても、創業融資の審査をクリアしなければ意味がありません。
そのためにも、専門家に相談するところからスタートすることをおすすめします。