創業融資を受けるにあたり、必ず決めなければならないのが返済期間です。返済期間が短いほど月々の返済額が高額となり、長くなるほど利息を多く支払うことになります。
返済期間は慎重に決める必要がありますが、どれくらいの期間に設定できるのでしょうか。また、他の融資制度はどれくらいの返済期間が一般的なのでしょうか。
この記事では創業融資の返済期間と他の融資制度との比較、返済期間の決め方について紹介します。
創業融資の返済期間は、「設備資金が20年以内」「運転資金が10年以内」に設定されている制度が多いです。
融資制度によって異なる期間が設定されていますので、ここでは創業融資に関する以下3つの融資制度の返済期間を紹介します。
女性、若者/シニア起業家支援資金
再挑戦支援資金
中小企業経営力強化資金
各融資制度の概要も紹介しますので、一つづつ確認してみてください。
女性、若者/シニア起業家支援資金とは女性の方、35歳未満または55歳以上の方の創業を「新規開業資金」にて支援してくれる融資制度です。
国民生活事業と中小企業事業の2種類に分かれ、それぞれ融資限度額や返済期間が異なります。
項目 | 融資限度額 | 返済期間 |
---|---|---|
国民生活事業 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円) | ・設備資金:20年以内<うち据置期間5年以内> ・運転資金:10年以内<うち据置期間5年以内> |
中小企業事業 | 直接貸付 7億2千万円 代理貸付 1億2千万円 | ・設備資金:20年以内<うち据置期間2年以内> ・運転資金:7年以内<うち据置期間2年以内> |
元金の支払いを先延ばしにするための据置期間は、国民生活事業より、中小企業事業の方が短く設定されています。
なお、女性、若者/シニア起業家支援資金に関しては、以下の記事でも詳しく解説していますので合わせてご覧ください。
女性、若者/シニア起業家支援資金とは?概要や対象者、融資限度額などを解説
再挑戦支援資金とは、過去に廃業歴があり再起業する方を支援する融資制度です。
廃業経験者や自己破産した方は、金融機関の融資審査に通りにくいですが、再挑戦支援資金は、そのような方々を支援することを目的としています。
再挑戦支援資金も国民生活事業と中小企業事業の2種類に分かれています。
項目 | 融資限度額 | 返済期間 |
---|---|---|
国民生活事業 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円) | ・設備資金:20年以内<うち据置期間5年以内> ・運転資金:15年以内<うち据置期間5年以内> |
中小企業事業 | 直接貸付 7億2千万円 代理貸付 1億2千万円 | ・設備資金:20年以内<うち据置期間2年以内> ・運転資金:15年以内<うち据置期間2年以内> |
再挑戦支援資金について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
中小企業経営力強化資金とは、中小企業の経営力強化を目的として創設された制度ですが、創業時にも活用することができます。
本制度も国民生活事業と中小企業事業の2種類に分かれます。
項目 | 融資限度額 | 返済期間 |
---|---|---|
国民生活事業 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円) | ・設備資金:20年以内<うち据置期間5年以内> ・運転資金:10年以内<うち据置期間5年以内> |
中小企業事業 | 直接貸付 7億2千万円 | ・設備資金:20年以内<うち据置期間2年以内> ・運転資金:7年以内<うち据置期間2年以内> |
中小企業経営力強化資金は自己資金0円で申し込むことができる一方で、無担保無保証で利用することはできないため、注意が必要です。その他にも細かな要件が定められているため、詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
中小企業経営力強化資金とは?メリットや注意点、利用の流れなどを解説
なお、日本政策金融公庫の創業融資の詳細については、以下の記事もご覧ください。
日本政策金融公庫の創業融資制度とは?新規開業資金、新創業融資制度など4つの制度を解説
先程紹介した3つの融資制度以外にも、創業時に活用できる融資制度は数多くあります。
ここでは代表的な融資制度を紹介します。
挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)とは、スタートアップや新事業展開・海外展開・事業再生などに取り組む方やベンチャーキャピタル・民間金融機関などからの資金調達の円滑化を支援する融資制度です。
資本性ローンは借入れではあるものの、自己資金に充当できるという特徴があります。
本制度も国民生活事業と中小企業事業の2種類に分かれます。
項目 | 融資限度額 | 返済期間 |
---|---|---|
国民生活事業 | 7,200万円(別枠) | 5年1ヵ月以上20年以内 |
中小企業事業 | 1社あたり10億円 | 5年1ヵ月または6年から20年までの各年(期限一括償還) |
挑戦支援資本強化特別貸付は、資本とみなせるよう、返済期間は5年1ヶ月以上の長期です。
返済方法は期限一括返済のみ(利息は毎月払)となるため、長期間返済が不要となる特徴があります。
なお、資本性ローンについては以下の記事でも詳しく解説していますのでご覧ください。
資本性劣後ローンとは?対象者とメリット、デメリット、注意点を解説
制度融資とは、都道府県や市町村などの地方自治体、信用保証協会、金融機関の三者が連携して提供する融資制度のことです。
信用保証協会の保証付き融資に加え、地方自治体が利息を補填してくれるため、低コストで資金調達ができます。
返済期間は各自治体や、融資の種類によって異なります。
東京都を例に挙げると、以下の表の通り融資の種類によって返済期間に違いがあります。
項目 | 融資限度額 | 返済期間 |
---|---|---|
DX・イノベ・産業育成支援融資(DX) | 2億8,000万円 | 15年以内<うち据置期間2年以内> |
小規模事業融資(小口フリーランス) | 2,000万円 | ・設備資金:7年以内<うち据置期間1年以内> ・運転資金:10年以内<うち据置期間1年以内> |
創業融資 | 3,500万円 | ・設備資金:7年以内<うち据置期間1年以内> ・運転資金:10年以内<うち据置期間1年以内> |
参考:信用保証協会:東京都制度
上記の他にも制度融資にはさまざまな種類があり、融資限度額や返済期間に違いがあるため、自治体などに確認してみましょう。
創業融資の返済期間を決めるためには、キャッシュフローをシミュレーションし、返済額に収まるように設定します。
返済期間が長くなるほど、月々の返済額も収まるため、創業時は20年などの長期間に設定しておくことをおすすめします。
日本政策金融公庫の公式ページでは、事業資金用の返済シミュレーションが掲載されています。
借入金額、返済方法、返済期間、金利を入力すると総返済額や利息の金額、1年ごとの返済金額が分かります。
キャッシュフローから返済額を差し引き、余剰金が出るような期間に設定しておけば、借入返済で資金難になる可能性を抑えられます。
創業融資の審査ポイントは「自己資金」「事業計画書」「経験・能力」の3点です。
自己資金が全くない状態より、ある程度自己資金があった方が審査が通りやすいです。
自己資金があれば、借入額を抑えられ、月々の返済額も少なくなるためです。
創業融資の審査は、過去の業績を判断材料にできないないため、事業計画書が重要です。
事業の成長性や実現性、資金繰りなどが具体的で再現性が高いほど、審査が有利に働きます。
創業する事業内容が、過去に同業種で勤務経験があると審査が有利に働きます。
未経験の業種で創業するとなると、事業が安定するまで時間がかかる可能性も高まるためです。
上記の他にも審査ポイントはあります。
創業融資の審査ポイントに関しては、以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてください。
日本政策金融公庫の審査に落ちないためのポイントとは?融資審査に向けた対策方法を解説
創業融資の返済期間は、「設備資金が20年以内」「運転資金が10年以内」に設定されている制度が多いです。
早く返済したいと考える人も多いですが、創業時は事業が軌道に乗るまで時間がかかるため、できるだけ長期間に設定しておくことをおすすめします。
返済期間を決める際は、事前に、キャッシュフローをシミュレーションして、借入返済額に収まるような期間にしましょう。
とはいえ、まずは創業融資の審査をクリアしなければいけません。
補助金コネクトでは融資の支援も行っております。資金調達ができなければ創業自体が難しくなりますので、これから事業を立ち上げるという方はぜひ一度ご相談ください。