ドローン産業は急速な成長を遂げており、2023年度の国内市場規模は約3,854億円に達し、2028年には9,054億円まで拡大すると予測されています。農業、測量、物流、インフラ点検など、その活用範囲は多岐にわたります。
しかし、ドローンの導入や資格取得には多額の費用が必要となり、特に中小企業や個人事業主にとって大きな負担となることがあります。そこで注目したいのが、国や自治体が提供する補助金・助成金制度です。
本記事では、ドローン導入に活用できる補助金・助成金の種類や申請方法、さらには操縦に必要な資格について詳しく解説します。
ドローンは、近年のテクノロジーの発展により、趣味用から産業用まで幅広い用途で活用される無人航空機システムです。特に企業の業務効率化や新規サービスの創出において、その重要性は年々高まっています。
ドローンとは、人が搭乗できない飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船のいずれかの形態を持つ機体で、遠隔操作または自動操縦により飛行が可能な無人航空機を指します。「ドローン」という名称は、飛行時のプロペラ音が蜂の羽音(英語で"drone")に似ていることに由来するとされています。
航空法では、機体本体の重量とバッテリーの重量の合計が100g以上のものを「無人航空機」として定義し、特定の規制対象としています。一般的なドローンは4基以上のプロペラを持つマルチコプター型が主流で、高い安定性と操作性を実現しています。
2022年12月から施行された無人航空機操縦者技能証明制度により、特定の飛行方法でドローンを操縦する場合、国家資格の取得が必要となりました。資格は「一等無人航空機操縦士」と「二等無人航空機操縦士」の2種類があり、飛行できる範囲が異なります。
一等無人航空機操縦士は、有人地帯での目視外飛行(レベル4飛行)を含むすべての飛行が可能で、物流や都市部でのインフラ点検などの業務に必要とされます。一方、二等無人航空機操縦士は、無人地帯での目視外飛行(レベル3まで)が可能で、農業や山間部での測量などの業務に適しています。
資格取得には、安全性に関する知識を問う学科試験、飛行技術を確認する実地試験、そして25kg以上の機体を操縦する場合は身体検査が必要です。
企業がドローンを導入する最大のメリットは、人材不足の解消と業務効率化です。特に農薬散布や高所点検など、人的リスクの高い業務において、ドローンは大きな力を発揮します。従来は複数人で行っていた作業を1人で効率的に実施できるため、深刻化する人手不足の解決策として注目されています。
業務効率化の面では、従来の手作業と比べて作業時間を大幅に短縮できます。例えば、農業分野では1人あたりの作業効率が50~75%削減できたケースや(参考)、インフラ点検では作業時間が従来の3分の1に短縮された事例も報告されています。さらに、データの収集・分析の自動化により、経営判断の迅速化にも貢献します。
ドローンの導入や資格取得には多額の費用がかかりますが、国が提供する様々な補助金・助成金制度を活用することで、その負担を軽減できます。ここでは、活用可能な主な補助金・助成金制度について解説します。
小規模事業者持続化補助金は、中小企業や個人事業主の販路拡大や生産性向上を支援する制度です。補助上限額は50万円と定められておりますが、特例による上乗せによって最大250万円まで交付されます。
参考:小規模事業者持続化補助金とは?対象者や補助額、申請方法、スケジュールを解説
対象となる経費には、ドローン本体の購入費用のほか、業務用ソフトウェア、広告費、展示会出展費用なども含まれます。申請にはGビズIDプライムの取得が必要で、商工会議所による事業計画書の確認も必要となります。
ものづくり補助金は、中小企業の生産性向上や技術革新を支援する制度です。製品・サービス高付加価値化枠では、DXやGXを活用した新製品開発などが対象となり、補助率2/3、上限2,500万円まで補助を受けることができます。
申請には、単価50万円以上の設備投資を含む必要があり、機械装置やシステム構築費、運搬費、技術導入費などが補助対象となります。
参考記事:ものづくり補助金とは?対象者や申請要件、補助額、申請方法をわかりやすく解説
IT導入補助金は、業務効率化や生産性向上を目的としたITツール導入を支援する制度です。通常枠では補助率1/2、上限450万円まで補助を受けることができます。
ドローンが業務効率化ツールとして認定されている場合、導入費用の補助を受けることが可能です。申請には、IT導入支援事業者の選定やgBizIDプライムの取得が必要です。
参考記事:IT導入補助金とは?補助額や申請方法、スケジュール、注意点などを解説
スマート農業総合推進対策事業は、農業分野におけるドローン活用を促進する制度です。令和6年度の予算額は約12億円で、技術開発・実証から環境整備まで幅広い支援を行います。
特に農薬散布用ドローンの導入や、データを活用した栽培管理システムの構築などが対象となります。実証プロジェクトへの参加も支援対象となっています。
参考記事:農林水産技術会議
人材開発支援助成金は、従業員のスキルアップを支援する制度です。ドローンの操縦資格取得に関する訓練も対象となり、経費の最大75%が助成されます。
訓練期間中の賃金についても一部助成があり、中小企業の場合、1人1時間あたり760円の助成を受けることができます。申請には訓練実施計画の事前提出が必要です。
参考記事:人材開発支援助成金とは?人材開発支援助成金のコース内容や申請から受給の流れなどを解説
全国の自治体では、地域産業の振興や課題解決を目的として、独自のドローン関連補助金・助成金制度を設けています。各地域の特性や需要に応じた支援内容となっているため、事業所の所在地に応じて最適な制度を活用することができます。
燕市では、農業分野における先進技術の導入を支援する「チャレンジ・ファーマー支援事業」を実施しています。ドローンなどの先進技術導入に対して、補助率4分の1(50歳未満は2分の1)以内、上限100万円までの補助を受けることができます。
対象となるのは、市内在住の70歳以下の認定農業者や、人・農地プラン掲載者、農地所有適格法人などです。特に、規模拡大や複合営農、先進技術導入の3つの支援枠が用意されています。
参考記事:燕市チャレンジ・ファーマー支援事業
南相馬市では、地域産業の振興を目的とした基盤技術産業高度化支援事業補助金を提供しています。市内の事業者がドローンなどの先端技術を活用した試作品や新技術の開発に取り組む際、補助率は対象経費の4分の3以内、上限600万円までの支援を受けることができます。
特に、福島イノベーション・コースト構想における重点分野(ロボット・ドローン、エネルギー・環境など)に該当する事業は、優先的に支援される傾向にあります。
参考記事:基盤技術産業高度化支援事業補助金
千葉市では、ドローン関連産業の振興を目指し、市内企業の無人航空機操縦者技能証明取得を支援しています。一等・二等無人航空機操縦士の資格取得に関わる費用について、補助率2分の1、1件あたり上限20万円の補助を提供しています。
申請は、令和6年度は10月25日から11月12日までを予定しており、書面審査による選考が行われます。補助金の交付を受けた事業者は、市の「ドローンフィールド」での飛行練習が可能となる特典も付与されます。
補助金・助成金の獲得には、申請から採択、そして事業実施後の報告まで、計画的な対応が求められます。ここでは、その具体的な流れと各段階での注意点について解説します。
補助金・助成金はそれぞれ支援目的が異なります。ドローンの導入目的や用途、事業規模に合わせて最適な制度を選択することが重要です。国の補助金から地方自治体の制度まで、幅広い選択肢の中から検討を進めます。
申請前には、補助対象となる経費の範囲や補助率、申請期限などの要件を確認することが大切です。また、自社の事業内容や財務状況が申請要件を満たしているかどうかも事前に確認が必要です。
採択を目指すためには、具体的で実現可能な事業計画書の作成が重要です。計画書には、ドローン導入による具体的な効果、数値目標、実施スケジュールなどを明確に記載します。
多くの補助金では電子申請が主流となっており、「GビズIDプライム」アカウントが必要です。アカウントの取得には2週間程度かかるため、余裕を持った準備が必要です。
申請時には、提出書類の不備や記載漏れがないよう、チェックリストを作成して確認することをお勧めします。また、申請期限に対して十分な余裕を持って提出することで、万が一の修正にも対応できます。
補助金の交付決定通知を受けた後、計画に沿って事業を開始します。この段階で重要なのは、経費の支払い証拠となる書類の保管です。
見積書、発注書、契約書、請求書、領収書などは必ず保管し、支払い状況を記録しておきます。また、事業の進捗状況も記録に残し、計画との差異が生じた場合は速やかに事務局に相談します。
事業完了後、定められた期限内に実績報告書を提出します。報告書には以下の内容を含める必要があります。
事業の実施内容と成果
支出内容の詳細
支払いを証明する書類
導入した設備や実施した取り組みの写真
実績報告の内容確認を経て、最終的な補助金額が確定します。その後、補助金の支払い手続きが行われます。
参考記事:小規模事業者持続化補助金の申請方法は?対象者から必要書類、書き方までを解説
補助金・助成金は事業展開の強力な支援ツールですが、活用にあたっては注意すべき点があります。資金面での準備や計画の妥当性について、事前に十分な検討が必要となります。
補助金は通常、事業完了後の支払いとなります。そのため、事業実施に必要な資金は、いったん自社で用意する必要があります。ドローンの購入費用や講習費用など、必要な経費を事前に確保しておくことが重要です。
銀行からの融資や自己資金など、つなぎ資金の調達方法を事前に検討しておくことで、事業の円滑な実施が可能となります。また、支払いまでに数ヶ月かかる場合もあるため、その間の資金繰りも考慮に入れる必要があります。
補助金の申請にあたっては、自社の規模や経営状況に見合った現実的な事業計画を立てることが重要です。過大な設備投資や無理な事業拡大は、補助金採択後の事業継続に支障をきたす可能性があります。
計画策定時には以下の点に注意が必要です。
自社の財務状況を踏まえた投資規模の設定
既存の事業との整合性
導入後の運用体制の確保
維持管理費用の見込み
現実的な計画は、補助事業終了後の持続的な事業展開にもつながります。
補助金の採択率を高めるためには、申請書類の完成度を上げることが重要です。申請時の基本的なルールを押さえながら、審査員の目線に立った魅力的な事業計画を作成することが求められます。以下、採択に向けた重要なポイントを解説します。
申請書類の不備は不採択の大きな要因となります。提出前には以下の点を必ず確認します。
必要書類がすべて揃っているか
記入漏れや押印漏れはないか
数字の整合性は取れているか
特に財務諸表や見積書などの数値は、複数回のチェックが必要です。また、申請書のコピーを保管し、修正依頼があった際に速やかに対応できるようにしておくことも大切です。
事業計画書は補助金採択の核となる書類です。具体的な数値目標を示しながら、以下の点を明確に記載します。
なぜドローンを導入する必要があるのか
どのような効果が期待できるのか
いつまでに何を実現するのか
また、自社の強みや独自性を適切に表現することで、事業の実現可能性をアピールします。市場分析や競合状況についても言及し、計画の確実性を示すことが重要です。
多くの補助金制度では、特定の取り組みに対して加点評価を行っています。主な加点要素には以下があります。
賃上げ計画の策定
デジタル化への取り組み
地域経済への貢献
環境負荷の低減
これらの要素を事業計画に適切に組み込むことで、採択の可能性が高まります。
補助金申請の経験がある専門家のアドバイスを受けることで、申請書の質を大きく向上させることができます。商工会議所や中小企業診断士などの専門家は、以下の支援を提供します。
事業計画のブラッシュアップ
必要書類の確認
数値計画の妥当性チェック
加点要素の組み込み方アドバイス
特に初めて補助金を申請する場合は、専門家の支援を積極的に活用することをお勧めします。
ドローン産業は今後も急速な成長が見込まれており、2028年には市場規模が9,054億円に達すると予測されています。その一方で、導入や資格取得にかかる費用は企業にとって大きな負担となっています。
しかし、本記事で紹介した補助金・助成金制度を活用することで、その負担を大幅に軽減することができます。特に、小規模事業者持続化補助金やものづくり補助金は、多くの企業が活用可能な制度となっています。また、地方自治体独自の支援制度も、地域の特性に応じた手厚いサポートを提供しています。
また、専門家のサポートを受けることで、採択率を高めることができます。商工会議所や中小企業診断士などに相談し、より質の高い申請を目指すことをお勧めします。
補助金コネクトでサポートした企業様の成功事例をご紹介します。
事例①サービス業
BLUE ONION(ブルーオニオン) | 事業再構築補助金の成功事例
補助金で他業種へ新規店舗を出店し、集客力アップとリピート率の向上を達成。
事例②製造業
生産ラインの自動化に必要な設備導入費用を補助金でカバーし、生産効率が大幅に向上。
事例③人材紹介業
新サービス開発の資金調達に成功し、市場拡大に伴う売上増を実現。