多くの事業者が、小規模事業者持続化補助金を活用して、販路の拡大や業務効率化を図りたいと思っているでしょう。補助金の交付を受けるには、書類を申請しなくてはいけませんが、どのように申請準備を進めれば良いのでしょうか。
本記事では、小規模事業者持続化補助金の申請方法を詳しく紹介します。併せて、採択率を上げるために重要な、事業計画書の書き方についても解説しますので、最後までご一読いただき採択をめざして取り組んでいきましょう。
小規模事業者持続化補助金(以下:持続化補助金)とは、個人事業主および従業員が5人から20人以下の中小企業(小規模事業者等)が、経営を維持・継続していくことを目的としています。販路拡大や業務効率化にかかる経費の一部が、補助金として支援されます。
補助金の交付を受けるには、小規模事業者等が作成した経営計画に沿った取り組みが必要です。計画の作成には、地域の商工会議所で要件を満たしているかの確認を受けるとともに、作成した事業支援計画書のチェックを受けなくてはいけません。
補助対象となる事業について、詳細は後述しますが、チラシ作成・店舗の改装・広告掲載などが該当します。
持続化補助金の申請には、事業者側で申請枠をひとつ選択します。複数の枠への申請はできません。申請枠ごとの概要および補助率・補助上限額は、以下のとおりです。
類型 | 概要 | 補助率 | 補助上限額 |
---|---|---|---|
通常枠 | 小規模事業者等が作成した経営計画に基づいた販路拡大などの取り組みを支援する | 3分の2 | 50万円 |
賃金引上げ枠 | 補助事業終了時点で、事業所内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上プラスになること(赤字事業者には加点あり) | 3分の2 (赤字事業者は4分の3) | 200万円 |
卒業枠 | 補助事業終了時点で従業員数が増えており、小規模事業者の従業員数を超すこと | 3分の2 | 〃 |
後継者支援枠 | 申請時に「アトツギ甲子園」のファイナリストになったこと | 〃 | 〃 |
創業枠 | 過去3年以内に、特定創業支援等事業の支援を受けて開業したこと | 〃 | 〃 |
インボイス枠 | 適格請求書発行事業者の登録をしていること | 〃 | 100万円 |
持続化補助金は、小規模事業者のうち条件に該当する事業者が申請し、審査に通過すると交付を受けられます。補助金交付の対象となる業者は、個人事業者および以下に該当する法人・特定非営利活動法人です。
業種 | 条件 |
---|---|
商業・サービス業(娯楽業と宿泊業を除く) | 従業員数が5人以下 |
娯楽業・宿泊業・製造業その他 | 従業員数が20人以下 |
※従業員には、個人事業者本人・会社役員・一定条件の下で働いているパートタイマーなどは含みません
上記の条件に加え、以下の要件をすべて満たしていることも必要です。
資本金もしくは出資金が5億円以上である法人に、直接もしくは間接的に株式保有を100%受けていない(法人のみ)
直近過去3年における課税所得(年もしくは事業年度ごと)の年平均額が15億円を超えていない
補助金の受付締め切り前10か月以内に、一般型もしくは低感染リスク方ビジネス枠の持続化給付金で採択されていない(申請に制限がかかるため)
持続化補助金の対象経費は、以下のとおり幅広く規定されており、それ以外の経費は補助対象とはなりません。各経費の簡単な目的と併せて見てみましょう。
項目 | 目的 |
---|---|
機械装置等費 | 補助事業の遂行に必要な機械装置等を購入する |
広報費 | ポスターやチラシなどの作成・広報媒体の活用 |
ウェブサイト関連費 | 販路拡大のためのウェブサイト等の構築・更新・運用など |
展示会等出展費 | 展示会などへの新商品出展・商談会への参加経費など |
旅費 | 事業計画に基づく販路拡大に必要な旅費 |
開発費 | 新商品の試作品・パッケージの試作開発にかかる経費 |
資料購入費 | 補助事業の遂行に必要な図書等の購入費 |
雑役務費 | 事業計画に基づく販路拡大に必要な、臨時雇い用者に対するアルバイト代などの経費 |
借料 | 補助事業の遂行に必要な機器・設備のリース料・レンタル料 |
設備処分費 | 販路拡大の取り組みに必要なスペースを確保するために、使っていない設備機器を処分するのにかかる費用 |
委託・外注費 | 上記10項目に該当せず、補助事業遂行に必要な業務の一部を第三者に委託・外注するための経費(自らでの実行が困難な場合に限る) |
さらに、上記に該当していても、経費対象外となるものも多数あります。詳しくは、公募要項で確認してください。
持続化補助金と似た制度に、持続化給付金がありますが、この2つの制度は内容が全く異なります。
持続化補助金は、これまで解説してきたように、小規模事業者等の販路拡大を支援するための制度です。商工会議所の確認が必要であり、用途の確認も厳格に行なわれます。
一方、持続化給付金は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて新設された制度です。前年同月と比べて、売り上げが50%以上減少した個人事業者および中小企業などに対して支払われる金銭です。事業全般で活用でき、用途は確認されません。
持続化補助金は、どのような流れで申請するのでしょうか。ここからは、補助金の申請から事業完了までの流れを、簡潔に説明します。
最初に、必要な書類を揃え、申請準備をします。書類に不備があると不採択となるため、公募要項や様式集などを確認しながら進めましょう。提出書類は、全申請者に共通のものと、申請枠ごとで指定されたものがあります。
準備ができたら、電子申請もしくは郵送で提出します。地区ごとに決められた申請先を間違えないよう、注意しましょう。電子申請の場合は、Jグランツ(補助金申請システム)への登録が必要です。
提出された内容を基に、審査ポイントをふまえて審査を行ない、評価が高い案件から採択が決まります。採択案件はホームページで公表され、結果が通知されます。
申請時に提出した申請書の不備がなければ、交付決定通知書が送られます。
通知書を受け取った事業者は、申請時に提出した事業計画に沿って事業を実施します。実施期限までに事業を完了させたのち、実施内容と経費内容を取りまとめ、実績報告書として提出します。
実績報告書および支出を証明する書類(見積書・発注書・請求書など)について、事務局が審査・内容を確認したのち、補助金額が確定されます。補助金確定通知書が届いたら、精算払い請求を行ないましょう。その後、振込にて入金されます。
事業完了から1年後に、文書等による状況報告の提出が必要です。賃金引上げ枠・卒業枠で申請した事業者は、賃上げ状況・雇用状況の報告も求められます。
持続化補助金の提出書類のうち、事業者が特に頭を悩ませるのが事業計画書です。特に、初めて申請する事業者は、計画書作成のハードルが高いと感じることも多いようです。
計画書の作成で、どのような点に気を付けると良いのか、ポイントを見てみましょう。
計画書の内容を基に審査する人物は、中小企業診断士が中心となっていますが、申請する事業者が属する業界に精通しているとは限りません。誰が見ても客観的に意味が通じるよう、要点を押さえたうえで簡潔に記入しましょう。
文章で説明する箇所と、箇条書きや表を用いて説明する箇所を分け、メリハリをつけると見やすくなります。事業名以外は文章量の制限がないため、まずは箇条書きにし、後から統合すると書きやすくなるでしょう。
数字で示せる根拠は、曖昧にせず必ずエビデンスを調べて記載しましょう。収支目標・コスト・市場規模などの数字は、説得力を大きく上げることができます。
持続化補助金の交付を受けて展開したい事業と既存事業の間には、関連性がないと採択を受けられません。また、事業者の現状と事業計画があまりにもかけ離れていても、実現性に乏しいとして審査に通らないのです。
現状と将来性の間につながりがあり、かつ見通しを立てられる事業計画が求められます。
希望する申請枠によって、以下の書類が追加で必要です。漏れのないよう準備しましょう。さらに詳しい内容は、「応募時提出資料・様式集」を確認してください。
希望申請枠 | 書類 |
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賃金引上げ枠 | ・賃金引上げ枠申請に係る誓約書 ・直近1か月間の賃金台帳(労働基準法に基づく) ・直近1期に税務署へ提出した法人税申告書(法人の赤字事業者のみ。税務署の受付印が押されている、別表1・4) |
卒業枠 | ・卒業枠申請に係る誓約書 ・直近1か月間の労働者名簿(労働基準法に基づく、常時使用する従業員分のみ) |
創業枠 | ・特定創業支援等事業による支援を受けた証明書 ・現在事項全部証明書もしくは履歴事項全部証明書(提出日から3か月以内の日付が書かれた原本) ・開業届(税務署の受付印があるもの) |
インボイス枠 | ・インボイス枠申請に係る宣誓・同意書 |
持続化補助金は、小規模事業者にとって、事業を拡大する大きなきっかけにできる資金です。申請に慣れていないと、手続きに手間取ってしまうかも知れませんが、採択率を上げるには事業計画の作成に最も力を入れることが重要です。
今回解説した内容を参考にしていただき、補助金の交付が受けられるよう頑張っていきましょう。