新分野展開や事業転換を目指す中小企業や個人事業主にとって、補助金は資金面のリスクを軽減し、大きな一歩を踏み出すための心強い味方です。
国や自治体による補助制度は年々充実してきており、うまく活用することで、設備投資や新事業の立ち上げ、研究開発などをぐっと進めやすくなります。
本記事では、新分野展開や事業転換に活用しやすい主要な補助金をピックアップし、その特徴や申請時のポイントを幅広く解説します。
補助金を有効に活かすための注意点や、採択の可能性を高める方法もあわせて紹介しますので、ぜひご参考ください。この機会に補助金の知識を身に着け、これからの成長や売上拡大につなげてみましょう。
新型コロナ禍やエネルギー価格上昇、加速するデジタル化など、中小企業を取り巻く経営環境は大きく変化しています。従来のビジネスモデルだけでは収益を維持しづらくなり、企業の存続や成長を続けるには新市場の開拓や新技術の習得が不可欠です。
そこで注目されるのが「新分野展開・事業転換」であり、これまでの主力商品・サービスから抜け出して新たな市場へ挑戦することは、長期的な売上拡大や事業の多角化を実現する大きなチャンスと言えます。
しかし、新たな分野に進出するには、市場のリサーチや試作品の開発、設備投資、人材の確保など、多方面でまとまった資金が必要となります。
そこで頼りになるのが、国や自治体が提供するさまざまな補助金制度です。こうした制度は、金融機関からの借入金とは異なり原則返済不要であるため、一時的な資金負担を和らげ、思い切ったチャレンジを後押ししてくれます。
補助金を活用する際は、「自社が取り組む新分野・事業転換の方向性が、補助金の趣旨や要件に合致しているか」を最初に見極める必要があります。
事業規模や業種によって給付条件も異なるため、情報収集をした上で、複数の補助金を比較検討することが重要です。審査の段階で必要となる申請書や事業計画書の作成は時間と労力を要しますが、しっかりと準備し、補助金を得られれば、企業として大きな前進が期待できます。
下表は、新分野展開や事業転換を目指す企業が補助金を選ぶ際のポイントをまとめたものです。
<新分野・事業転換向け補助金の選定チェック表>
上記のチェック項目を踏まえ、自社がもし「海外輸出を目指す」「大規模な設備投資で生産性を高める」「デジタルシフトやIT導入により新ビジネスを開拓する」といった具体的なプランを持っているのなら、その計画に最適な補助金を選ぶのが得策です。
また、公募期間中に複数の補助金を併願するときは、それぞれの要件が重複しないよう十分に気をつけましょう。併願については弊社までご相談いただければ具体的なアドバイスが可能です。
なお、補助金選択の段階で専門家に相談するのがおすすめです。申請書類の書き方や計画の策定など、専門家によるアドバイスを受けることで、審査通過の可能性が高まります。
それでは、次の章より新分野展開・事業転換に使える具体的な補助金を解説していきます。
新事業進出補助金は、昨今まで公募されてきた事業再構築補助金を後継する形で新設された補助制度として注目を集めています。
従来の事業再構築補助金は、新型コロナ禍の影響を受け事業転換や業態転換を図る中小企業を支援するものでした。新事業進出補助金も同じく、企業が新製品や新サービスを開発し、新しい顧客層・市場へ進出する際の設備投資や広告宣伝、販路開拓などにかかる経費を支援する制度です。
新事業進出補助金の補助上限額は、企業規模(従業員数)によって段階的に定められており、2,500万円から最大で7,000万円までとなっています。また、大幅な賃上げを達成すると上乗せされ、最大9,000万円までの支援を受けることが可能です。補助率は1/2です。
新事業進出補助金では新たにAI等を用いて製造工程の刷新を図りたい、異業種への参入を狙いたい、あるいは観光関連サービスで新プランを立ち上げたいといったケースで多く活用されています。
自治体の支援制度よりも大きな予算が確保されている点から、全国から多くの中小企業が申請を検討している補助金となっています。
新事業進出補助金では、付加価値を高める取り組みや、会社全体の賃上げにコミットする計画を求められます。特に賃上げは経営へのインパクトも大きいことから、事前に十分シミュレーションするようにしてください。
新事業進出補助金に関しては以下の記事も参考にしてください。
参考:中小企業新事業進出補助金とは?対象者や補助額、対象経費、申請スケジュールを解説
事業承継・M&A補助金は、後継者難やオーナー不在などの課題を抱える中小企業を支援するために設けられた制度です。事業承継には事業用資産の譲渡や株式の移転、M&Aアドバイザーへの成功報酬など、まとまった費用がかかることが一般的です。これらを補助金で一部支援することで、円滑な事業継続をサポートする狙いがあります。
対象となるのは、中小企業が事業を外部の第三者に譲渡したり、あるいは後継者が事業を継ぎながら経営刷新を図るケースです。M&Aにかかる仲介手数料や専門家へのコンサル料、あるいは新体制へ移行するための設備投資費などが補助対象となり得ます。特に地方で後継者不足に悩む企業や、事業をより成長させるために他社との統合を検討している事業者が、この補助金を活用している事例が増えています。
具体例として、製造業の二代目経営者がIT対応やEC販路拡大に積極投資し、海外市場へ輸出展開を開始するといった事例は典型的です。このように事業承継と新分野展開や業態転換の補助金を併用するケースも考えられます。ただし、それぞれの補助金で重複して申請できる経費や期間には制限があるため、事前によく確認することが重要です。
事業承継・M&A補助金について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
参考:事業承継・M&A補助金とは?制度概要や対象者、補助額、申請方法などを解説
小規模事業者持続化補助金は、商工会議所・商工会地域に所属する「小規模事業者」を対象に、販路拡大や業務効率化の取り組みを支援する有名な補助制度です。小規模事業者の定義は業種により異なるものの、製造業なら従業員20名以下、商業・サービス業なら5名以下が目安となります。
補助率は原則2/3で、上限金額は一般枠で50万円、ここから上乗せ枠があり最大250万円の補助金です。
新分野展開や事業転換ではなくても、売上アップに直結する取り組み、例えばチラシやWebサイトの制作費に用いるケースが代表的です。ただし、設備導入費やシステム開発費、事業転換のための内装・外装工事費なども要件を満たせば対象となる場合があります。
小規模事業者持続化補助金に関しては以下の記事で詳しく紹介しています。
参考:小規模事業者持続化補助金とは?対象者や補助額、申請方法、スケジュールを解説
近年はAI(人工知能)の技術発展が著しく、AIを用いて業務効率化や高度なデータ分析を行う企業が急増しています。AI導入による自動化や需要予測は、中小企業でも十分に活用可能であり、例えば、在庫管理の最適化やチャットボットによる顧客対応自動化など、幅広い分野でコスト削減と売上アップが期待できます。
デジタル化・AI導入補助金は、こうしたAIやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などの導入を支援し、中小企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を進める上での初期投資の負担を軽減するために創設されました。この補助金を利用すれば、ITツールの導入費用に加え、保守や活用支援等の導入関連費用なども補助対象になる可能性があります。
デジタル化・AI導入補助金に関しては、以下の記事でより詳しく紹介しています。
参考:デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)とは?補助額や申請方法、スケジュール、注意点などを解説
成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)は、成長が見込まれる中小企業が行う研究開発・高付加価値製品の創出を支援する補助金で、国の予算のもの大規模に実施されています。既存技術の改良だけでなく、新たな特許取得を視野に入れた先端的な研究開発プロジェクトが中心となります。
下表は、Go-Tech事業で支援された研究開発例です。
<Go-Tech事業の例>
このように最先端の技術領域に資金が振り向けられることで、国内の研究開発力を底上げし、世界で戦えるイノベーションを生むことが目的とされています。
この補助事業のポイントは、短期的な売上拡大というよりも、中長期的な技術革新を支援する姿勢にあります。実験装置や試作品の製造費用、人件費への一定補助を受けながら、世界市場でも通用するレベルの技術を磨き上げようとする中小企業にとっては、大きなチャンスとなるでしょう。バイオテクノロジーやロボット工学、先端素材など専門領域が多岐にわたるため、幅広い業種での申請が可能です。
成長型中小企業等研究開発支援事業については以下の記事を参考にしてください。
参考:成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)とは?概要や申請方法を紹介
気候変動対策やカーボンニュートラル(脱炭素)が世界的な課題となる中、日本でも「GX(グリーントランスフォーメーション)」推進が国家的政策目標として掲げられています。産業界においても、製造工程の省エネ化や廃棄物削減、再生可能エネルギーへの転換などの取り組みが急務です。こうした動きに対応するため、サプライチェーン全体を通じて環境負荷の低減に取り組む企業を支援する「GXサプライチェーン構築支援事業」が整備されました。
この支援事業では、工場のエネルギー効率を大幅に改善する設備投資、あるいは企業同士の連携によるCO₂削減プロジェクトなどが対象です。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の関連事業と連携した取り組みもあり、大規模な予算が用意される見込みです。要件を満たせば、再生可能エネルギーの導入費や排熱回収システムの創設、部材リサイクル設備などへの投資を補助してもらうことが可能となります。
GXサプライチェーン構築支援事業の要件は、カーボンフットプリント(製品ライフサイクル全体のCO₂排出量)削減に直結する設備投資である点が重要視されます。加えて、協業によるスケールメリットや、国際競争力の強化につながるかといった観点も評価材料となる可能性が高いです。単独企業の取り組みよりも、複数企業のサプライチェーン全体で連携したプロジェクトは加点要素となるケースが見られます。
「GX」という言葉は今後さらに注目度が高まると考えられます。環境負荷を減らしながら新たなビジネスチャンスを生み出すことが、新分野展開・事業転換の大きなテーマとも言えるでしょう。事業計画の段階で想定されるCO₂削減量や導入設備の仕様をしっかり試算し、説得力のある数字を示すことで採択率を高められます。
大規模成長投資補助金は20億円以上(※100億宣言企業は投資額15億円以上)の大型設備投資や拠点整備を要する事業を対象に、高額な補助が受けられる制度です。
製造ラインの増設や大掛かりな生産設備の刷新、さらには物流拠点の整備などにかかる巨額の投資をカバーし、新分野展開・事業転換に活用できます。ただし、本制度の主眼は、持続的賃上げに向けた省力化等による労働生産性向上・事業規模拡大のための大規模投資支援となります。
事例として、海外から主要パーツを輸入していた企業が国内生産拠点を新設し、一気にサプライチェーンを組み替えるようなプロジェクト、海外市場向けハイテク製品の大型工場建設などが具体的に検討されています。
従業員数が多く、事業規模も大きい中堅企業以上が想定ターゲットとなることが多いですが、高度な技術力をもつ中小企業のチャレンジ案件にも門戸が開かれています。
大規模成長投資補助金に関しては以下の記事を参考にしてください。
参考:大規模成長投資補助金とは?対象者と対象経費、採択率、申請スケジュールを解説
中小企業成長加速化補助金とは、売上拡大や高付加価値化を目指す中小企業が、大規模な設備投資や事業拡張に取り組む際に活用できる国の補助金制度です。
将来のIPOや海外進出、国内市場での急成長を目指す中小企業を支援してくれます。企業規模の拡大や生産性向上を目的とした設備投資、人材育成への取り組みなど、成長フェーズにある企業の投資が幅広く支援対象となります。
具体的には、生産ラインの増強や新プロダクト開発に伴う設備導入、マーケティング強化のためのツール導入などが想定されます。
高い成長意欲と一定の経営基盤を持つ企業が主な対象であり、採択されれば1億円規模の大型投資でも資金負担を大きく抑えることが可能です。審査では、事業計画の実現性や成長性に加え、ガバナンス体制や人材確保の見通しなど、企業全体の経営力が総合的に評価されます。
中小企業成長加速化補助金に関しては以下の記事を参考にしてください。
東京都では、独自の補助事業を展開しているケースが多く、その一つとして「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」が挙げられます。
これは都内に事業所がある中小企業を対象に、成長志向の高い設備投資や新規事業展開を支援するもので、近年、事業再構築やデジタル化に力を入れる企業からの注目度が増しています。
要件としては「都内に本店又は支店を有する」「都税の未納がないこと」「中堅・大企業の子会社等でないこと」などが基本ですので、都内で事業を行う中小企業は一度確認してみる価値があります。
参考:躍進的な事業推進のための設備投資支援事業とは?対象者や要件、採択のポイントを解説
東京都は創業支援にも力を入れており、創業助成事業として法人・個人事業の設立直後におけるオフィス賃料や広告費、人件費などをサポートしています。創業期は資金繰りが厳しく、銀行融資もハードルが高いケースがあるため、こうした都の支援制度を活用するメリットは大きいです。
助成対象者の一般的な条件としては、「都内で新たに創業した人、または創業5年未満の中小企業者」「規定の研修を受講・修了している」「都税未納がない」「既に他制度で同経費の補助を受けていない」などが基本とされています。助成額や補助率は募集回ごとに変わる場合があるため、募集要項を細かくチェックしましょう。
創業助成事業に関しては以下の記事を参考にしてください。
参考:創業助成金とは?対象者、要件から手続き、メリット、デメリットまで解説
補助金は原則後払いとなります。したがって、投資が大規模であればあるほど、足元の資金の工面が重要となります。
自己資金で賄う事業者もありますが、多くは金融機関の「つなぎ融資」を受けるのが一般的です。
事業内容が固まってきたら、金融機関に事前に相談しておくのがポイントです。
補助金申請では、書類審査が最初の関門になります。事務局は大量の申請書を短期間で精査しなければならないため、いかに分かりやすく、説得力のある計画書を作るかが重要です。
<書類審査で重視される要素>
提出前に認定支援機関やコンサルタントにチェックしてもらうと、不備や説明不足を補えるでしょう。また、財務諸表や見積書の整合性を確認しておくことも重要です。
補助金行政では、不正受給の問題が常に懸念されています。虚偽の契約書や領収書で補助金を騙し取るなどの行為は、返還命令やペナルティ、場合によっては刑事罰の対象にもなりえます。以下のポイントを守り、適正な手続きで実施しましょう。
見積書や領収書の偽造は絶対にしない
交付決定前に着手すると対象外になるケースが多い
実績報告で経費の使途を証明できる書類を保管
監査や現地調査に応じられるよう常に備える
申請手続きは煩雑に感じるかもしれませんが、正しい手順を踏んで採択されれば、返済不要の補助金という大きなメリットが得られます。ルールをしっかり守り、適切に活用するよう心がけましょう。
新分野展開や事業転換は、企業が生き残るための積極策として注目されています。しかし、その実現にはまとまった資金と計画性、さらに不測のリスクに備えた体制が不可欠です。
補助金制度は、こうした挑戦を後押しする強力なツールであり、うまく活用すれば、投資リスクを軽減して新たなビジネスチャンスを開花させることができます。
ただし、採択を受けるには、明確な事業目的や社会的意義、具体的な計画・数値目標を示す必要があります。専門家や補助金コンサルタントなどの協力を得て、不備のない申請を心がけることが大切です。
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