2025年度より「中小企業成長加速化補助金」が新設され、まもなく令和7年4月下旬から公募説明会が開始されます。
中小企業成長加速化補助金は、賃上げへの貢献や、輸出による海外需要の獲得、地域経済への効果が見込まれる売上高100億円超を目指す中小企業への投資を支援する制度です。
補助限度額を5億円とした本制度は、他の補助金と比べても交付される金額が大きいため、多くの設備投資に活用できる特徴があります。
本記事では中小企業成長加速化補助金について詳しく紹介するので、補助金の活用を検討している方はぜひ参考にしてください
はじめに中小企業成長加速化補助金について概要を紹介します。
中小企業成長加速化補助の対象者は、以下の要件をすべて満たす必要があります。
・売上高100億円宣言する事業者
・対象経費のうち投資額が1億円以上(税抜き)
・一定の賃上げを行うこと
・日本国内で補助事業を実施すること
中小企業成長加速化補助金の対象者は「売上高100億円を目指す中小企業」です。補助金の公募の申請時に100億円宣言の申請も同時に行います。
詳しくは「100億宣言 申請要領」をご確認ください。
賃上げに関しては、補助事業の終了後3年間の「給与支給総額」 又は 「従業員及び役員の1人当たり給与支給総額」の年平均上昇率が、事業実施場所の都道府県における直近5年間の最低賃金の年平均上昇率以上であることを指します。
具体的には、申請時に基準率以上の目標を掲げ、従業員等に表明して達成する必要があるのです。
万が一賃上げの目標が達成できなかった場合は、未達成率に応じて補助金を返還しなければいけないため注意が必要です。(天災等の理由がある場合は除く)
日本国内で補助事業は基本的にどの業種でも対象です。製造業や物流業といった業種をはじめ、サービスや小売業なども含まれますが、資本金や従業員数の定義が定められています。
業種 | 資本金 | 従業員数 |
---|---|---|
製造業、建設業、運輸業 、旅行業 | 3億円 | 300人 |
卸売業 | 1億円 | 100人 |
サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) | 5,000万円 | 100人 |
小売業 | 5,000万円 | 50人 |
ゴム製品製造業(自動車・航空機用タイヤおよびチューブ製造業、工業用ベルト製造業を除く) | 3億円 | 900人 |
ソフトウェア業、情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 |
旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
上記以外の業種 | 3億円 | 300人 |
さらに組合や連合会も対象となりますが、企業規模が中堅以上の「みなし大企業」は補助金の対象外となるので注意しましょう。
対象者について詳しく知りたい方は[1次公募]令和6年度補正予算 中小企業成長加速化補助金」の公募要項をご確認ください。
中小企業成長加速化補助の補助額と補助率は以下のとおりです。
・補助額:5億円まで
・補助率:1/2
補助対象経費となるのは以下の項目です。
項目 | 詳細 |
---|---|
建物費 | 補助事業のために必要不可欠な事務所や施設、倉庫などの建設・増築・改修・中古建物の取得費用(100万円以上) |
機械装置費 | 補助事業のために使用する機器装置の購入や借用経費など(100万円以上)および改良・修繕などの経費 |
ソフトウェア費 | 専横のソフトウェアや情報システムなどの購入・借用などの経費 |
外注費 | 補助事業遂行のために必要な外注費 |
専門家経費 | 補助事業遂行のために依頼する専門家経費 |
対象経費はより細分化されているので、専門家に確認を取るなどを行うことをおすすめします。
対象経費について詳しく知りたい方は[1次公募]令和6年度補正予算 中小企業成長加速化補助金」の公募要項をご確認ください。
中小企業成長加速化補助金の審査基準は「経営力」「波及効果」「実現可能性」の3つと公表されています。
審査項目 | 内容 |
---|---|
経営力 | 中長期のビジョンや計画を有する人か、企業の成長性、他社との差別化など |
波及効 | 従業員の賃上げ、域内仕入など |
実現可能性 | 計画が実現できる経営体制、財務状況、金融機関の対応など |
これらの審査基準を満たした事業者であれば、より採択される可能性が高まりますが、本補助金では「書面審査」と「プレゼンテーション審査」の2段階で行われます。
審査に関しては後ほど詳しく紹介しますが、プレゼンテーション審査では外部有識者との質疑応答があり、なおかつPC・タブレットの持ち込みや、個別の補足資料の持ち込み・投影は認められていないほど厳密です。補足説明ができる経営者以外の役員の同席は認められているものの、しっかり根拠を説明できるような状態でなければ審査が不利に働く可能性もあります。
中小企業成長加速化補助金は今後以下のスケジュールで進める予定です。
スケジュール | イベント |
---|---|
4月下旬 | 公募説明会 |
5月8日 | 1次公募 受付開始 |
6月9日 | 1次公募 締切 |
7月上旬 | 1次審査 結果公表 |
7月下旬~8月下旬 | プレゼンテーション 審査 |
9月上旬 | 採択結果 公表 |
1次公募は受付開始してから1か月ほどで締め切りとなるため、本補助金の活用を検討している方は、すぐに準備に移ることをおすすめします。
1次公募の終了後に2次公募が行われる予定ですが、採択数や予算の配分は変更になる可能性もあります。
中小企業成長加速化補助金の申請は以下の手順で進めます。
ひとつずつ紹介します。
はじめに申請書類を作成するために必要書類を準備します。
申請時には、以下の書類を補助金申請システム「jGrants」にて提出することになります。
<全申請者対象>
投資計画書
投資計画書別紙
ローカルベンチマーク
決算書等(3期分)
<該当者のみ>
金融機関による確認書
リース取引にかかわる誓約書
リース料軽減計算書
上記の書類はフォーマットやファイル名が指定されているので、不備がないように公募要項で確認しておきましょう。
また、審査期間中には必要に応じ追加説明資料を提出する場合もあります。
書類が準備できた後は、補助金申請システム「jGrants」にて、当該資料を提出して申請します。
jGrantsを利用するには、GビズIDの取得が必要となるため、未取得の方は、「jGrants ネットで簡単!補助金申請 | jGrants」で取得しておきましょう。(取得には2週間ほどかかります)
jGrantsでは、申請に対する事務局からの通知等も、原則として当該システムで行われるので、注意が必要です。
書類の提出が完了した後は、書面審査である1次審査が行われます。無事審査をクリアすれば2次審査に移行し、プレゼンテーション審査が行われる流れです。
2次審査が終わった後は、採択の可否が9月上旬に公表されます。審査を通過して交付が決定したら、申請した補助事業をスタートさせます
採択された事業者は、補助事業を進めます。提出した計画書に基づいて事業をスタートしますが、万が一計画から大きく逸れた事業を進めると補助金交付が取り消しになる可能性もあるので注意が必要です。
事業が完了したら、その日から30日を経過した日、または補助事業期間の終了日のいずれか早い日まで実績報告を行い、支払の証明書類等を提出します。
内容をもとに、事務局にて確定検査が行われます。
無事確定検査に合格すると、補助金請求が可能となります。請求が受理されると入金される流れです。
また補助事業に関係する書類は事業終了後5年間保存しなければいけません。補助金を執行する会計検査院から提出が求められる場合もあるためです。(提出は義務です)
また、補助事業者は、基準年度の終了後を初回として、以降5年間は過去1年間における事業化状況並びに賃金引上げ等の状況を、会計年度終了後60日以内に報告しなければなりません。
このように補助金を受け取った後にもさまざまな手続きがある点には注意しましょう。
ここでは、中小企業成長加速化補助金の注意点を3つ紹介します。
本補助金の審査基準でもある通り、「実現可能性」では事業者の財務状況も審査のポイントになります。
補助事業を適切に遂行できる財務状況が十分に確保されているかを確認するため、ローカルベンチマークによるスコアリングの書類提出が求められます。
通常「ロべカン」とも呼ばれ、企業の経営状況を把握することを目的としており、下図のように財務指標の評価点が表示されます。
引用:ローカルベンチマーク(ロカベン)シート (METI/経済産業省)
当然ながら財務状況が悪いと、補助金が他の用途に使われるリスクがあると捉えられるでしょう。そのため、1次公募までに財務状況の改善が難しい事業者は、2次公募までに改善しておく必要があるのです。
中小企業成長加速化補助金では2次審査でプレゼンテーション審査が行われます。この審査方法は、これまでの補助金にはあまり見られなかった審査方法です。
補助金額も大きいため、地域ブロック単位で審査会を開催し、外部有識者(利害関係者を除く)による計画の効果・実現可能性等について定性面も含めたプレゼンテーション審査を行うことになります。
プレゼンテーション審査では、申請者である経営者や共同申請者以外同席は認められていません。ただし「金融機関による確認書」を提出した申請者については、当該金融機関の担当者等の同席が可能なので、補足説明が必要な場合は強力な味方となってくれることでしょう。
本補助金は原則後払いです。実績報告を行った後に検査され、補助金の請求ができるようになります。
そのため、導入する設備費用などは自社で先に負担することになるため、資金面では注意が必要です。さらに、採択前に導入した設備に関しては経費対象外となる点も気を付けましょう。
中小企業成長加速化補助金は2025年度に新設された制度であるため、採択率は不明です。審査基準は公表されているものの、要件を満たしたからと言って必ず採択されるわけではありません。
ここでは、どの補助金に該当する、採択率を高めるポイントを3点紹介します。
当然ながら書類不備は採択の可否を大きく左右する要素です。中小企業成長加速化補助金の公募要項には「提出書類に不備(必要書類の欠落や記入漏れ等)があった場合は、その内容に関わらず、審査の対象となりませんので十分ご注意ください。」と記載されています。
つまり書類不備のままでは審査にも移行できないということです。
本補助金は公募締切の5営業日までであれば事務局が書類を確認し、公募期間内での再提出を行うことになっています。
とはいえ、5日しかないと本業との兼ね合いで書類を修正する時間もない事業者も多いことでしょう。
そのため、余裕をもって書類を提出することをおすすめします。
本補助金は売上高100億円に向けた具体的な取り組みができる事業者が対象です。
100億円の売り上げを出す企業は、「帝国データバンク」によると国内企業全体の0.12%にあたりであり、およそ1,000社に1社程度と非常に狭き門であることがわかります。
100億円の売上高を達成するための中長期的なビジョンや計画が求められ、2次審査で必ず説明をすることになります。
この点が大きな審査の可否を左右する要素であり、具体的な事業戦略が理論的に説明できなければ補助金を受け取ることは難しいため、しっかり内容をまとめておくことが大切です。
補助金の申請にはさまざまな書類が必要となるため、必ず専門家にチェックしてもらうことをおすすめします。
本補助金の1次審査は書類によって行われます。書類の不備はもちろん、計画書が1次審査がカギを握っているといっても過言ではありません。
以下に「魅力ある計画書であるか」「将来性が高く期待が持てる事業なのか」を計画書にまとめなければいけないので、初心者の方には難易度が高いです。
専門家に依頼すれば、過去の補助金から採択されやすい計画書を一緒に作成してもらえます。また補助金に関するアドバイスももらえるため、ぜひ相談するところからスタートしましょう。
2025年から新設された中小企業成長加速化補助金は、最大で5億円の補助金が交付されます。
対象となる事業者は売上高が100億円を目指す企業であり、賃上げなどによって雇用にも力を入れる必要があります。
1次審査では書類によって行われ、ここで落ちてしまうと2次公募まで待つことになります。
そのため、しっかりしたスタートをきって2次審査に進めるためにも、専門家に依頼しながら書類の準備を進めましょう。
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