起業や開業を行う際、資金調達の手段として活用できるのが補助金・助成金制度です。これらの制度を利用するには、制度ごとの内容や申請要件などを理解しておく必要があります。
この記事では、起業や開業で利用できる補助金・助成金制度を厳選して解説します。これから起業や開業を検討している方、創業期の方はぜひ参考にしてみてください。
では早速、起業や開業で利用できる補助金・助成金を9選紹介します。
ものづくり補助金の正式名称は、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」となっています。中小企業・小規模事業者等が、働き方改革・被用者保険の適用拡大・賃上げ・インボイス導入などに対応できるよう、革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善に向けた設備投資等を支援する補助金制度です。
創業・第二創業(5年以内)の事業者の場合、審査において政策加点が期待できます。細かな要件がありますので、公募要領をしっかり確認するようにしましょう。
なお、ものづくり補助金については以下の記事で詳しく解説しています。
ものづくり補助金とは?省力化(オーダーメイド)枠などの申請枠や補助額、対象者、申請方法を公募要領をもとに解説
中小企業・小規模事業者等が、さまざまな経営課題を解決するためのITツール導入を支援する補助金制度です。導入するシステムにより、以下の申請枠から選択します。
通常枠(A・B類型)
デジタル化基盤導入類型
複数社連携IT導入類型
セキュリティ対策推進枠
商流一括インボイス対応類型
受発注・決済・セキュリティなどで、起業や開業のタイミングでITツールを取り入れる場合、IT導入補助金の活用をおすすめします。
小規模事業者等の地道な販路開拓や業務効率化に向けた取り組みにかかる経費の一部を補助する制度です。申請枠の中に創業枠があり、創業枠は過去3年の間に開業し、かつ「特定創業支援等事業」による支援を過去3年の間に受けていることが申請要件となっています。補助対象経費は、以下の経費が該当します。
機械装置等費
広告費
ウェブサイト関連費
展示会等出展費(オンラインによる展示会・商談会等を含む)
旅費
新商品開発費
資料購入費
雑役務費
借料
設備処分費
委託・外注費
免税事業者から適格請求書発行事業者に転換する小規模事業者に対しては、インボイス特例として補助上限額が一律50万円上乗せされます。
小規模事業者持続化補助金の採択率は?業種別の採択事例、採択されるポイントまで解説
ポストコロナ・ウィズコロナ時代に、中小企業等が経済社会の変化に対応するための事業再構築を支援する補助金制度です。再構築の方法には、新分野展開・事業転換・業種転換・業態転換・事業再編などが該当します。
補助金の申請には既存の事業展開が前提ですが、新たに別分野で起業・開業する場合も、補助対象となります。申請枠は以下の通りです。
最低賃金枠
物価高騰対策・回復再生応援枠
産業構造転換枠
成長枠
グリーン成長枠(エントリー・スタンダード)
サプライチェーン強靭化枠
事業再構築補助金とものづくり補助金の違いは?申請要件の違いから使い分けのポイントを解説
事業再構築補助金はいつから申請できる?第12回公募の具体的スケジュールと申請方法
非正規雇用(有期雇用労働者・短時間労働者・派遣労働者)の労働者が、企業内でキャリアアップできるよう、正社員化や処遇改善の取り組みを実施した事業者に対する助成金制度です。以下のコースが設定されています。
正社員化支援
正社員化コース
障害者正社員化コース
処遇改善支援
賃金規定等改定コース
賃金規定等共通化コース
賞与・退職金制度導入コース
短時間労働者労働時間延長コース
社会保険適用時処遇改善コース
起業・開業後、経営が安定した段階で、設立時の有期雇用労働者を正社員に転用する場合、助成金が受けられます。
魅力ある職場づくりのために、労働環境の向上等を目指す事業主などに対して助成し、人材の確保・定着を目的としている助成金制度です。以下の7つのコースが設定されています。
雇用管理制度助成コース
介護福祉機器助成コース
中小企業団体助成コース
人事評価改善等助成コース
建設キャリアアップシステム等普及促進コース
若年層及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)
作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)
外国人労働者就労環境整備助成コース
テレワークコース
起業・開業で活用しやすいのは雇用管理制度助成コースであり、雇用管理の改善によって離職率低下を目指して取り組む事業者への助成金制度です。社員に支給する手当の整備や、人材育成のためのメンター制度を取り入れるなどの取り組みに活用できます。
人材確保等支援助成金とは?各コースの受給要件や受給額、申請の流れを解説
経済上の理由で、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主に対し、従業員の雇用維持を図るため、休業手当などの一部を助成する制度です。労使間の協定に基づいていることが条件であり、労働者の休業だけでなく出向に対しても支給対象となります。
創業や販路開拓などに取り組む中小企業者や創業者に対して、ファンド運営管理法人の運用益から資金の助成を受けられます。都道府県によって運営管理者やファンドの名称・支援対象分野などはさまざまですが、研究・商品開発、需要の開拓にかかる費用が主な助成対象です。地域ごとの詳細は、中小機構が発行している「地域中小企業応援ファンド一覧」で確認してみてください。
研究開発型スタートアップの創出・育成を図り、新規産業・雇用の創出や経済活性化につなげるための支援事業です。ビジネスプランコンテストの実施や、ビジネスプランの事業化促進検討などを行います。
起業や開業時に補助金・助成金を利用すると、以下のメリットがあります。
返済が不要である
起業前の会社も申請可能である
会社のビジョンを明確にできる
ひとつずつ詳しく解説します。
補助金・助成金の最大のメリットは、返済が不要である点です。補助金・助成金は、雇用保険料や税金などが原資となっています。申請要件を満たす事業者に対して、国や自治体・民間団体などから交付される金銭であり、融資とは異なり借入金ではありません。
起業・開業時には、何かとお金がかかるものですが、返済がいらない資金をまとめて受け取れることで、資金面での安心材料になるでしょう。
補助金・助成金の中には、起業前の会社も申請できる制度があります。例えば、東京都では「創業助成事業」という制度があり、助成対象者は「都内での創業を具体的に計画している個人又は創業後5年未満の中小企業者等のうち、一定の要件を満たす方」となっています。
他にも、起業前の会社が申請できる補助金・助成金制度を設けている自治体もあるため、ぜひ積極的に問い合わせてみましょう。
補助金や助成金の申請には、事業計画書を作成します。事業計画を立てることで、起業後にどのような方向性を目指していきたいのか、会社のビジョンや目標とする売上高などを明確にできます。
補助金・助成金を利用する際には、主に3つの注意点があります。
要件を満たす必要がある
審査を通過する必要がある
受給できるまで時間がかかる
それぞれの詳細について見ていきましょう。
補助金・助成金の受給には、制度ごとに定められた要件を満たさなくてはいけません。また、事業計画書をはじめとして、数多くの書類の提出も必要です。要件を全て満たさないと受給できないため、要項などを確認しながら早い段階で準備を進めていきましょう。
要件を満たしていても、申請した全ての事業者が受給できるのではなく、審査を通過する必要があります。特に補助金は採択率が低いため、補助金以外の資金調達方法も検討しておくと安心です。
補助金・助成金は、採択を受けてからすぐに支払われるのではなく、事業完了後に支給申請の書類を提出し、審査などを経て初めて支払いを受けられます。制度によっては、受給できるまで数年かかるものもあり、それまでにかかる資金は前もって確保しなくてはいけません。自己資金や融資など、資金繰りの計画を立てておきましょう。
補助金・助成金は、起業や開業の際に役立つ資金ですが、ほとんどの制度は費用の一部をカバーするものであり、全額をカバーできるものは少ないです。
補助金・助成金は、あくまでも資金繰りをサポートする制度と捉え、上手に活用していきましょう。