助成金・補助金について調べていると「キャリアアップ助成金」という制度にする目にする方多いのではないでしょうか?
この助成金は基本的に派遣労働者などの有機契約から正社員にするなど、雇用延長・拡大時に利用できるものとなっています。
本記事ではキャリアアップ助成金についての基礎知識と特に使いやすい正社員コースについて詳しく紹介していきます。
様々なコースが用意されているので、一度適用できるものがないか見てみてはいかがでしょうか。
キャリアアップ助成金は、有機契約労働者や短時間労働者や派遣労働者等の非正規労働者のキャリアアップを支援する制度です。支援は以下の2種類に分けられています。
正社員化を支援する
賃金や待遇等を見直して処遇を改善する
以下の7つが本助成金の対象コースです。
それぞれ有期雇用労働者などが対象となっていますので、適用できそうなものはないか確認しておきましょう。
支援目的 | コース名 | 詳細 |
---|---|---|
正社員化を支援 | 正社員化コース | 正規雇用労働者に転換、または直接雇用 |
障害者正社員化コース | 〃(障害のある有期雇用労働者限定) | |
処遇改善を支援 | 賃金規定等改定コース | 基本給の賃金規定等を改定し+2%増額 |
賃金規定等共通化コース | 正規雇用労働者との共通の賃金規定等を新たに規定・適用 | |
賞与・退職金制度導入コース | 賞与・退職金制度を導入し支給、または積立て実施 | |
選択的適用拡大導入時処遇改善コース | 被用者保険の適用と働き方の見直しに反映させる取組の実施 | |
短時間労働者労働時間延長コース | 週所定労働時間を3時間以上延長し、社会保険を適用 |
2つ目までが正社員化を支援し、3~7つ目は処遇改善を支援するコースです。
正社員化支援と処遇改善支援で2通りの申請手順が存在しています。
処遇改善は、取り組みを実施して6ヶ月の賃金の支払いを行った後に支給申請を行えば完了します。
今回は各ステップが多い正社員化支援に関するコースの申請手順を紹介していきます。
キャリアアップ計画書を作成して労働局に確認してもらいましょう。
5年以内であれば期間を自由に設定でき、いつごろにどのコースを選んで対象労働者をどうキャリアアップさせていくのかを記載します。
正社員への転換規定がない場合は労働規則を変更しましょう。
変更後は労働基準監督署へ就業規則を届け出る必要があります。
この時点で、キャリアアップ助成金受給を見据えて労働局やハローワークと改定方法などを相談するのもおすすめです。
改定した就業規則に基づいて、面談などを実施して正社員への転換を行います。
雇用契約書を工夫していきます。
正社員へ転換してから6カ月間、雇用を継続して賃金を支払いましょう。
支払う賃金総額は「転換前6ヶ月の賃金総額+3%以上」を満たす必要がありますので注意をしておきましょう。
転換後6ヶ月後には支払った日の翌日から2ヶ月以内に申請を行いましょう。
例えば1月から正社員に転換した者に対して6月まで賃金を支払い、8月までに支給申請を行うスケジュール感になります。
キャリアアップ助成金は7種類のコースがあり、どれを選んでいいのか迷ってしまう方は少なくありません。
そこでキャリアアップ助成金の中でも、特に正社員化コースに絞って詳しく説明していきます。
有期社員、パート、派遣労働者などを正社員雇用する際に活用できるので、比較的多くの中小企業で取り組みやすいというメリットがあります。
正社員化コースの対象従業員は以下の9項目すべてを満たしていなければなりません。
1.有期雇用労働者または無期雇用労働者(ア~エのいずれかに該当)
ア:賃金の額、計算方法が正規雇用労働者と異なる就業規則で通算16ヶ月以上雇用
イ:6ヶ月以上継続して同じ事務所などで業務に従事
ウ:事業主実施の有期実習型訓練を受講し、修了した※人材開発支援助成金(特別育成訓練コース)に限定
エ:新型コロナウイルス感染症の影響で、就労経験のない職業に就くことを希望し、紹介予定派遣により2ヶ月以上6か月未満の期間従事している
2.正社員求人に応募して正規雇用労働者としての雇用前提でない
3.転換日・直接雇用日の前日から過去3年以内に、事業者または関連会社(親会社などを含む)で正規雇用の実績がない
4.転換・直接雇用を行った事業主または取締役の3親等以内の親族以外
5.障害者の日常生活および社会生活を総合的に支援するための法律施行規則に規定する就労継続支援A型の事業所の利用者以外
6.支給申請日に、転換・直接雇用後の状態が継続していて、離職していない
7.支給申請日に、再度有期雇用労働者または無期雇用労働者への転換が予定されていない
8.転換・直接雇用日から定年までの期間が1年以上(定年制が適用される場合)
9.支給対象事業主または密接な関係(親会社、関連会社など)の事業主の事業所で定年を迎えた者でない
まとめると、以下のような条件となります。
継続して働く予定(定年まで1年以上)
非正規労働者に戻らない意思がある
正社員求人に応募してきていない
定年退職後の再雇用ではない
申請正社員化コースを申請できる事業対象者は以下の通りとなっています。
正規雇用労働者へ転換する就業規則や労働協約を規定していること
既に正規雇用労働者がいること
転換日前日から6か月前~1年を経過までの間に、事業主都合の離職をさせていないこと
正規雇用労働者に転換日以降、雇用保険被保険者として適用させていること
キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組み、継続していること
転換後6か月間の賃金を、転換前6か月間の賃金より3%以上増額させている
つまり、きちんと賃金を支払っていて、キャリアアップに取り組んでいるかどうかが確認されるということです。
ちなみに以下が対象外となる事業者です。
申請年度から遡っていずれかの保険年度の労働保険料を納入していない
支給申請日の前日から過去1年以内に労働関係法令の違反をした
性風俗関連業、接待を伴う飲食業などを受託する営業を行う事業者
暴力団と関わりがある
暴力主義的破壊活動を行った、行う恐れがある団体等に属している
支給申請日、または支給決定日の時点で倒産している
支給決定時に、雇用保険適用事業所の事業主でない
助成金額は有期労働者と無期労働者でそれぞれ以下の金額が支給されます。
1.有期 → 正規
1人当たり 57万円(72万円)
※大企業の場合は42万7,500円(54万円)
2.無期 → 正規
1人当たり28万5,000円(36万円)
※大企業の場合は21万3,750円(27万円)
なお()内は生産性の向上が認められた場合に適用されます。
比較的中小企業が優遇され、1年1事業所ごとに最大20人まで対象にできるため幅広い活用が可能となっています。
1事務所最大1,440万円も支給されるので、積極的に活用してみてはいかがでしょうか。
申請を行う前に申請のポイントを確認しておきましょう。
キャリアアップ助成金の審査は「労基違反がないか」など厳しくチェックされます。
必要な場合は実地調査も行われ、提出した雇用契約書や就業規則、賃金台帳と照らし合わせて違反していないかが細かく見られるのです。
特に未払いの残業代があれば一発アウトですので、キャリアアップ助成金のパンフレットなどを読み込んでおかなければなりません。
不安な場合は、労働局やハローワーク、社労士などの専門家への相談を検討してみましょう。
受給申請したのに非承認となってしまう可能性があるので、申請時は慎重に進めなければなりません。
以下のよくある失敗例を念頭に置いて準備を進めていきましょう。
記載不備
書類不備(キャリアアップ計画書を正規雇用転換日以降に受理されている)
雇用保険加入漏れ
残業代を法律で定められた計算方法で支給していない
有期雇用者で申請した時、契約が「自動更新」(無期契約とみなされるため)
このように多くの失敗例が発生するのは、「計画提出 → 実施 → 申請」という流れが原因です。
キャリアアップ計画書の提出前に正社員へ転換してしまったなど、過去に遡って修正ができないため申請手順を間違えると支給対象から外れてしまいます。
キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者を雇用している企業であれば、今後活用する機会が増えてくる可能性が高いです。
ミスをしてしまうと過去に遡れず、審査も厳しいので必ず専門家の相談を挟むことをおすすめします。
ご自身の企業に申請できる従業員がいないかチェックし、申請前に社労士などへ相談してみてはいかがでしょうか。