建設業で工事1件の請負代金が500万円以上となる工事を請け負う場合、原則として建設業許可が必要です。また建築一式工事については、請負代金が1,500万円以上となる工事が原則として対象となります。
しかし「建設業許可とは具体的にどんなものか?」「取得するためにはどうすれば良いのか?」と疑問を持つ方も多いでしょう。
本記事では、建設業許可の基礎からメリット、要件、具体的な申請の流れまで、建設業をこれから始める経営者や実務担当者の方に向けてわかりやすく解説します。
建設業許可は、建設業を営む事業者に対して建設業法に基づき設けられている許可制度です。建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進することなどを目的としています。
建設工事は、完成までに一定の期間を要し、多数の事業者や技術者が関係する場合があります。そのため、建設業法では、経営管理体制、技術者、誠実性、財産的基礎などに関する要件を設け、建設工事の適正な施工と発注者の保護を図っています。
近年はコンプライアンスの重要性や公共調達の透明化などの観点からも、許可の有無が企業・個人の信頼性や経済活動に直結しています。
必要な許可を受けずに建設業を営んだ場合、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります。
建設業法では、一定規模以下の工事は「軽微な建設工事」とされ、建設業許可を受けなくても請け負うことが可能です。ただし「軽微」といえるかどうかは工事の内容・金額・規模で判断されます。
工事の種類 | 許可を受けなくても請け負える軽微な建設工事 |
|---|---|
建築一式工事 | 工事1件の請負代金が1,500万円未満、または延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事 |
建築一式工事以外 | 工事1件の請負代金が500万円未満 |
これらの軽微な建設工事に該当しない工事を請け負う場合は、発注者が国・自治体・法人・個人のいずれであるかを問わず、原則として対応する業種の建設業許可が必要です。
建設業は、請け負う工事の種類ごとに29の業種に分かれています。大きく分けると「一式工事(2業種)」と「専門工事(27業種)」があります。
土木一式工事:道路・橋梁・トンネルなど、総合的な企画・指導・調整を伴う大規模土木工事
建築一式工事:総合的な企画、指導、調整の下で建築物を建設する工事
大工工事業
左官工事業
とび・土工工事業(くい打ち、コンクリート工事含む)
石工事業
屋根工事業
電気工事業
管工事業(給排水・空調など)
タイル・れんが・ブロック工事業
鋼構造物工事業
鉄筋工事業
舗装工事業
しゅんせつ工事業
板金工事業
ガラス工事業
塗装工事業
防水工事業
内装仕上工事業
機械器具設置工事業
熱絶縁工事業
電気通信工事業
造園工事業
さく井工事業(井戸掘削など)
建具工事業
水道施設工事業
消防施設工事業
清掃施設工事業
解体工事業
建設業許可は「一般建設業」と「特定建設業」の2区分、さらに「大臣許可」と「知事許可」の2区分に分かれます。ここではそれぞれの違いについて紹介します。
建設業許可には「一般」と「特定」の2種類があります。違いは、下請けにどれだけの金額を発注するかで決まります。
種類 | 該当するケース |
|---|---|
一般建設業 | 発注者から直接請け負った工事について、下請契約の総額が5,000万円未満(建築一式工事は8,000万円未満)である場合や、工事を下請けに出さない場合などに該当。 |
特定建設業 | 発注者から直接請け負った工事について、下請契約額が基準額以上の場合(建築一式工事8,000万円以上、その他5,000万円以上)。大規模工事や元請が多く該当。 |
特定建設業の許可が必要になるのは、発注者から直接工事を請け負う元請業者が、一定額以上の下請契約を締結する場合です。下請業者として工事を請け負う場合は、自社がさらに下請けへ発注する金額が基準額以上になっても、それだけで特定建設業の許可が必要になるわけではありません。
建設業許可には「大臣許可」と「知事許可」の2種類があります。ポイントは、工事をする場所ではなく、営業所をどこに置いているかで決まります。
種類 | 該当のケース |
|---|---|
大臣許可 | 本店や支店などの営業所を 2つ以上の都道府県に設置している場合に必要 (例:東京に本店、大阪に支店) |
知事許可 | 営業所が 1つの都道府県内のみにある場合に必要 (例:東京都内に本店と支店だけ) |
工事の施工地域に制限はなく、営業所設置場所が判断基準になります。たとえば東京都知事の許可でも、実際の工事は全国で施工可能です。
建設業許可を得るためには、事業者が適切に工事を行える体制を持っていることを証明しなければなりません。具体的には、建設業法第7条または第15条に定められた許可要件を満たし、同法第8条の欠格要件に該当しないことが必要です。
国土交通省では、4つの許可要件と欠格要件に整理しています。それぞれの内容を理解しておくことが、スムーズな申請につながります。
建設業に係る経営業務の管理を適正に行える体制を備えていることが必要です。代表的な要件は、法人の場合は常勤役員等のうち1人、個人の場合は本人または支配人のうち1人が、建設業に関して5年以上の経営業務管理経験を有していることです。
このほか、執行役員等としての経験や、経営業務を補佐した経験、常勤役員等と直接補佐者を組み合わせた体制によって認められる類型もあります。必要な経験年数や証明資料は類型ごとに異なるため、申請先行政庁の最新の手引きを確認する必要があります。
また、健康保険、厚生年金保険、雇用保険について、適用事業所に該当する場合は適切に加入していることも許可要件に含まれます。
建設業を営む営業所ごとに、許可を受けようとする業種に対応した資格または実務経験を有する「営業所技術者等」を置く必要があります。同一の技術者が、必要な資格要件を満たす複数業種を担当できる場合もあります。
一般建設業では、所定の国家資格を有する者のほか、指定学科卒業後に一定期間の実務経験を有する者や、原則10年以上の実務経験を有する者などが対象となります。
特定建設業の要件は一般建設業より厳格ですが、必要な資格・経験は業種によって異なります。特定建設業のすべての業種で、一律に1級施工管理技士などの資格が必須になるわけではありません。
許可申請者やその役員等、政令で定める使用人が、請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないことが必要です。これは加点・減点による審査ではなく、許可要件の一つです。
不正または不誠実な行為には、請負契約の締結や履行に際しての詐欺、脅迫、横領、契約違反などが含まれる場合があります。
健全な財務基盤も欠かせません。一般建設業であれば、自己資本が500万円以上あることや、500万円以上の資金調達力を証明できれば要件を満たします。
これに対して特定建設業では条件が一段と厳しく、資本金が2,000万円以上で自己資本が4,000万円以上、さらに流動比率が75%以上など、複数の基準をクリアする必要があります。これは、大規模な工事を下請けに発注する際に、資金面でのトラブルを防ぐためです。
種類 | 要件 |
|---|---|
一般建設業 | 以下のいずれか ・自己資本500万円以上 ・500万円以上の資金調達能力 ・許可申請の直前5年間、継続して許可を受けて建設業を営業した実績 |
特定建設業 | 以下をすべて満たす ・欠損の額が資本金の20%を超えていないこと ・流動比率75%以上 ・資本金2,000万円以上かつ自己資本4,000万円以上 |
最後に、法令違反や反社会的な行為に関与していないことも重要です。たとえば、破産手続開始の決定を受けて復権を得ていない場合、一定の許可取消処分から5年を経過していない場合、拘禁刑や一定の法令違反による罰金刑の執行終了等から5年を経過していない場合、暴力団員等に該当する場合などは、欠格要件に該当する可能性があります。また、申請書に虚偽の記載をした場合も不許可となります。
<欠格要件の例>
破産手続開始の決定を受けて復権を得ていない者
一定の許可取消処分から5年を経過していない者
拘禁刑や一定の法令違反による罰金刑の執行終了等から5年を経過していない者
暴力団員または暴力団員でなくなってから5年を経過していない者
暴力団員等が事業活動を支配している場合
申請書や添付書類に重要な虚偽記載がある場合など
建設業許可の申請は「申請→審査→許可」の流れです。細かな書類や証拠資料が多いため、事前チェックが重要です。
要件の確認:まずは、自社が建設業許可の要件を満たしているかどうかを確認します。常勤役員等を含む経営管理体制、営業所技術者等の配置、社会保険の加入状況、財産的基礎、誠実性、欠格要件など、法律で定められた条件を一つでも欠けていれば許可は下りません。申請準備の第一歩として、自社の体制を点検することが不可欠です。
許可申請書等・添付書類の作成:次に、許可申請書や添付書類を作成します。法人と個人では必要書類が異なるほか、営業所や許可業種に応じて、営業所技術者等証明書、資格証明書、実務経験証明書、常勤役員等に関する証明書、財務諸表などが必要になります。書類不備があると受付すらされないため、慎重に整えることが重要です。
申請書類の提出・審査:申請書類が整ったら、管轄の行政庁に提出します。申請方法には窓口、郵送、建設業許可・経営事項審査電子申請システム(JCIP)などがありますが、対応方法は行政庁によって異なります。申請後は書類や許可要件の審査が行われ、必要に応じて補正や追加資料の提出を求められます。
知事許可:本店管轄の都道府県庁等
大臣許可:主たる営業所の所在地を管轄する地方整備局等
手数料納付:申請には手数料が必要です。
大臣許可の新規申請:登録免許税15万円
知事許可の新規申請:許可手数料9万円
審査期間:申請が受理されると、審査に入ります。審査期間は、知事許可か大臣許可か、申請先行政庁、申請方法、補正の有無などによって異なります。具体的な標準処理期間は、申請先行政庁の最新の案内を確認してください。書類の不足や内容の確認が発生した場合は、通常より長くかかることがあります。繁忙期や書類の不備があるとさらに時間を要するため、余裕をもって申請しておくことが望ましいでしょう。
建設業許可の申請では、多くの書類や費用、そして更新手続きに関するスケジュールを把握しておくことが大切です。ここでは、その概要をわかりやすくまとめます。
申請時には、事業の経営状況や体制を証明するためのさまざまな書類を準備する必要があります。代表的なものは次の通りです。
建設業許可申請書:許可申請の基本書類
工事経歴書:過去の施工実績を記載した書類
財務諸表:直近の決算内容を示す資料
営業所技術者等に関する書類:営業所技術者等証明書、資格証明書、卒業証明書、実務経験証明書など
登記事項証明書:法人の場合は登記簿謄本
納税証明書:申請区分に応じて、法人事業税、個人事業税、法人税、所得税などの納付すべき税額・納付済額等を確認する書類
役員等の一覧表、株主(出資者)調書:役員や一定割合以上の株主・出資者などに関する情報
これらの書類は、法人か個人か、また申請する業種によって一部内容が異なります。特に技術者や経営管理者の証明資料は不足や誤りがあると受付されないため、慎重に準備することが求められます。
申請には、法定の手数料やその他の費用がかかります。
手数料:知事許可は9万円、大臣許可は15万円(登録免許税)
納付方法:登録免許税や許可手数料の納付方法は、収入印紙、証紙、電子納付など、申請先や申請方法によって異なります。
専門家への依頼費用:行政書士などに手続きを依頼する場合は、別途報酬が発生
行政書士等に依頼する場合は、申請区分、業種数、営業所数、経験証明の難易度などによって報酬が異なります。依頼前に業務範囲と見積額を確認しましょう。
参考:行政書士の料金相場はいくら?費用の内訳や行政書士を選ぶポイントを解説
建設業許可の有効期間は5年間で、継続する場合は更新申請が必要です。引き続き建設業を営む場合は、申請先行政庁が定める受付期間内に更新申請を行います。多くの行政庁では有効期間満了日の30日前までの申請を案内しています。更新申請を行わないまま有効期間が満了すると許可が失効し、改めて新規申請が必要になります。
申請から許可通知までの期間は、知事許可か大臣許可か、申請先行政庁、申請内容、補正の有無などによって異なります。具体的な標準処理期間は、申請先行政庁の最新の案内を確認してください。工事の受注スケジュールに合わせて、余裕を持って申請計画を立てることが重要です。
【申請から許可取得までのステップとスケジュール例】
ステップ | 内容 | 期間目安 |
|---|---|---|
①要件準備 | 必要人材・資本の体制づくり | 1ヶ月~ |
②書類作成 | 申請書・証明書類の準備 | 1~2週間 |
③事前/本提出 | 窓口相談・本申請 | 1日~1週間 |
④審査 | 内容確認・補正・審査 | 申請先行政庁の標準処理期間による |
⑤許可通知 | 許可取得 | ー |
建設業許可は、軽微な建設工事の範囲を超える工事を請け負うために必要な許可です。取得することで受注可能な工事の範囲が広がり、取引先などが事業体制を確認する際の参考情報となる場合があります。
許可を持つことで 大規模な工事や高額案件を受注できるようになります。具体的には、原則として500万円以上の工事や、建築一式工事では1,500万円以上の工事を請け負えるようになります。
また、公共工事の入札参加に向けた前提の一つを満たせます。ただし、建設業許可を取得するだけで公共工事へ入札できるわけではありません。原則として経営事項審査を受けたうえで、発注機関の競争参加資格審査や名簿登録などを行う必要があります。
また、取引先や金融機関からの信用力向上も期待できます。建設業許可の取得に当たって一定の経営管理体制、技術者、財産的基礎などが確認されるため、取引先や金融機関が事業者を評価する際の参考情報となる場合があります。ただし、許可を保有していることだけで融資や補助金の審査が有利になるとは限りません。
加えて、法令遵守(コンプライアンス)への対応という意味でも重要です。軽微な建設工事であれば法律上は許可が不要ですが、取引条件や社内基準として、元請業者が下請業者に建設業許可の取得を求める場合があります。
そのほか、事業拡大や人材採用の面でも効果的です。許可情報を適切に示すことが、求職者に事業内容や法令遵守体制を説明する材料となる場合があります。ただし、許可取得によって人材を確保しやすくなると一律に断定することはできません。元請や大手建設会社と直接契約できるチャンスも増え、企業の成長スピードを加速させるきっかけになります
建設業許可の取得は、受注可能な工事の範囲を広げるほか、金融機関や取引先が事業実態を確認する際の参考情報となる場合があります。また、許可取得後の設備投資やデジタル化について、要件を満たす補助金を利用できる可能性があります。
たとえば、日本政策金融公庫や信用保証協会の融資では、建設業許可の有無が、金融機関による事業実態や受注可能性の確認材料になる場合があります。ただし、融資の可否は決算内容、返済能力、事業計画、担保・保証などを含めて総合的に判断されるため、許可取得だけで資金調達が円滑になるとは限りません。
補助金によっては、対象事業を実施するために必要な許認可の取得状況を確認される場合があります。ただし、建設業許可を取得していること自体が、補助金の審査で加点・優遇されるとは限りません。申請する制度の公募要領や審査基準を個別に確認する必要があります。
建設業許可を取得して受注可能な工事の範囲を広げたうえで、設備投資やデジタル化などに利用できる補助金を活用することは、事業拡大の選択肢となります。ただし、利用できる補助金や審査要件は、事業内容、所在地、企業規模、投資内容などによって異なります。
このように、許可取得は法令遵守だけでなく、受注可能な工事の拡大や事業展開の基盤づくりにつながる場合があります。
参考:建設業におすすめの補助金・助成金7選!活用理由や補助金採択事例も紹介
建設業許可は、軽微な建設工事の範囲を超える工事を請け負う事業者に必要な許可です。取得することで受注可能な工事の範囲が広がり、公共工事への参入に必要な経営事項審査を受けることも可能になります。一方、許可を保有しているだけで融資や補助金の審査が有利になるとは限りません。許可要件や申請手続を確認し、計画的に準備することが重要です。
「許可取得後の経営事項審査」「補助金・融資を活かした攻めの成長戦略」までを見据え、早めの準備と定期的な見直しをおすすめします。
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