人手不足や業務の効率化に課題を感じている中小企業にとって、省力化設備の導入は大きな支えとなるでしょう。しかし、新しい技術や機器を導入するには多額の費用がかかるため、負担が大きいと感じる方も多いのではないでしょうか。
こうした課題を解消できるのが、経済産業省が提供する「中小企業省力化投資補助金(一般型)」です。コストを抑えながら省力化製品を導入でき、生産性向上や人手不足の解消等につなげることができます。
本記事では、中小企業省力化投資補助金(一般型)の概要やメリット、具体的な活用例、申請にあたって把握すべき手順や書類、スケジュールなどを解説します。補助金の導入を視野に入れている方は、ぜひご参考ください。
▼この記事でわかる内容
中小企業省力化投資補助金(一般型)の概要
中小企業省力化投資補助金(一般型)を受けるメリット
中小企業省力化投資補助金(一般型)の活用例
中小企業省力化投資補助金(一般型)を申請する流れ
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中小企業省力化投資補助金の一般型とは、中小企業等の売上拡大や生産性向上を後押しするため、IoT・ロボット等の人手不足解消に効果があるデジタル技術等を活用した設備を導入するための事業費等の導入を支援する制度です。
経費の一部を補助することにより、省力化投資を促進することで、中小企業等の付加価値額や生産性向上を図り、賃上げにつなげることを目的としています。
中小企業省力化投資補助金は「カタログ注文型」と「一般型」の2つの類型に分かれており、令和7年に新たに一般型の枠が追加されました。
参考記事:中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)とは?制度概要や対象者、補助額、申請方法などを解説
一般型は、業務・生産プロセスの改善(自動化・高度化等)や、デジタルトランスフォーメーション(DX)など、中小企業の事業内容や現場に合わせた設備導入・システム構築の多様な省力化投資を促進するものです。
基本要件は以下のとおりです。
基本要件 |
---|
①労働生産性の年平均成長率+4.0%以上増加 |
②1人あたり給与支給総額の年平均成長率が事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上、又は給与支給総額の年平均成長率+2.0%以上増加 |
③事業場内最低賃金が事業実施都道府県における最低賃金+30円以上の水準 |
④次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表等(従業員21名以上の場合のみ) ※ 最低賃金引上げ特例適用事業者の場合、基本要件は①、②、④のみとする。 |
基本要件②が未達の場合は未達成率に応じて、基本要件③が未達の場合は、「補助金額/計画年数」で補助金を返還する必要があります。そのため、継続的かつ計画的な取り組みが不可欠です。
省力化投資補助金(一般型)の補助率・補助上限額は以下のとおりです。
従業員数 | 補助率 | 補助上限額(※1) | 賃上げの特例(※2) |
---|---|---|---|
5名以下 | 中小:1/2 小規模・再生:2/3 | 750万円 | 1,000万円に引き上げ |
6~20名以下 | 中小:1/2 小規模・再生:2/3 | 1,500万円 | 2,000万円に引き上げ |
21名~50名以下 | 中小:1/2 小規模・再生:2/3 | 3,000万円 | 4,000万円に引き上げ |
51~100名以下 | 中小:1/2 小規模・再生:2/3 | 5,000万円 | 6,500万円に引き上げ |
101人以上 | 中小:1/2 小規模・再生:2/3 | 8,000万円 | 1億円に引き上げ |
※1 補助額1,500万円を超える部の補助率は1/3になります
※2 補助事業実施期間に、「給与支給総額の年平均成長率+6%以上増加」「事業場内最低賃金が事業実施都道府県における最低賃金+50円以上の水準」の両方を満たした場合、補助上限額の引き上げが認められます。
中小企業省力化投資補助金の一般型では、以下が対象経費に含まれます。
・機械装置・システム構築費(必須) ・技術導入費 ・専門家経費 ・運搬費 ・クラウドサービス利用費 ・外注費 ・知的財産権等関連経費 |
そのほか、詳しい要件等については「中小企業省力化投資補助事業(一般型)公募要領」をご確認ください。
中小企業省力化投資補助金を活用することで、生産性向上や人手不足の解消、賃上げの実現などさまざまな効果が見込めます。省力化補助金を受けるメリットは下記が挙げられます。
▼中小企業省力化投資補助金を受けるメリット
オーダーメイドの設備やシステムを導入できる
自社の課題やニーズに合わせて製品を選べる
補助率が1/2である
ここからは、中小企業省力化投資補助金を受けるメリットを紹介します。
中小企業省力化投資補助金の一般型では、カタログ型には登録されていない省力化設備や、オーダーメイドの設備・システムを導入できます。
補助金を活用することで、コストを抑えながら最新の技術を導入し、業務効率化や生産性向上を図れる点がメリットです。
業種や現場に合わせて、独自の設備やシステムを導入できるため、大規模な設備投資を検討している場合は一般型が適しています。
補助金の対象となる製品は、事業者ごとの課題やニーズに応じて選ぶことができます。例えば、以下のような活用方法が挙げられます。
業種 | 製品 |
---|---|
飲食サービス業 | 配膳ロボット 自動精算機 清掃ロボット など |
製造業 | 検品・仕分システム 無人搬送機 オートラベラー など |
宿泊業 | 自動チェックイン機 スチームコンベクションオーブン など |
一般型では、自社の現場に合ったオーダーメイドの設備やシステムを導入できるため、実際の業務改善につながりやすいのが特徴です。
中小企業省力化投資補助金の補助率は1/2です。(※小規模事業者や再生事業者は2/3)
補助上限金額以内であれば、導入費用の半額が補助されます。
例えば、500万円のシステムを導入する場合、250万円の補助を受けられるため、事業者の自己負担額は半減します。
省力化効果や価格妥当性などが審査によって検証されている製品から選べるので、投資効果に見合った省力化を実現できるでしょう。
中小企業省力化投資補助金(一般型)を受けるには、単価50万円(税抜)以上の機械装置等を取得して納品・検収を行う設備投資が必須です。
機械装置・システム構築費以外の経費は、総額500万円(税抜)までが補助上限額と定められています。
システムの構築費は、補助金交付候補者として採択後、見積書に加えて仕様書などの価格妥当性を検証できる書類を求められるケースもあります。
また、一部の経費は補助対象にならないので、事前に公募要領から十分に確認しておきましょう。
中小企業省力化投資補助金(一般型)をスムーズに申請するには、申請から交付までの流れについて把握しておくことが大切です。省力化投資補助金を申請する流れは、以下のとおりです。
▼中小企業省力化投資補助金(一般型)を申請するステップ
補助金の概要を把握する
gBizIDを取得する
申請情報を整理する
事業計画を策定する
補助事業の実施場所を用意する
添付書類を準備する
補助金を申請する
補助金を申請する前に、まずは制度の概要をしっかり理解することが重要です。
「公募要領」にて、補助金制度の概要や対象経費、スケジュール、補助対象事業者に該当するかなどを十分に確認しましょう。
中小企業省力化投資補助金の申請は電子申請となるため、gBizIDプライムアカウントの取得が必要です。
gBizIDとは、経済産業省が提供する法人・個人事業主向けの共通認証システムで、補助金申請や行政手続きに利用されます。すでにアカウントを持っている場合は、新たに取得する必要はありません。
発行までに2週間以上かかる場合があるため、早めに申請しておくと安心です。
省力化投資補助金の申請時に必要な情報を整理しましょう。主な項目は以下のとおりです。
事業者情報
担当者情報
事業計画の概要
省力化指数
投資回収期間
作成支援者情報
事業場内の最低賃金
事業計画
労働生産性の計画値
給与支給総額の計画値
1人あたりの給与支給総額の計画値
経費明細
補助金申請額
資金調達方法
加点項目
申請システムの入力項目は、公式ページの「【参考資料】申請システム入力項目の補助シート」から確認できます。事前に入力のうえ、申請受付時にシステムに入力しましょう。
中小企業省力化投資補助金では、事業計画書の提出が必要です。
事業計画書をもとに審査が行われ、より優れた事業計画書を提出した企業が補助金交付候補者として採択されます。
具体的には、以下のポイントを詳細に記載します。
補助事業の具体的取組内容と会社全体の事業計画の目標数値との整合性
将来の展望
会社全体の事業計画
事業計画書は応募申請において重要な項目のひとつです。公式ページには「事業計画書作成の参考ガイド」が公開されているので、必ずチェックして作成に取り組みましょう。
補助金を申請する事業者は、補助事業の実施場所を有している必要があります。
具体的には、補助対象経費となる機械装置等を設置する場所、または格納、保管等の管理を行う場所です。
応募時点で建設中の場合や、土地のみを確保して建設予定である場合は対象外となります。
補助事業の実施場所が自社の所有地でない場合は、交付申請までに、不動産登記事項証明書によって、所有権が移転している必要があります。あるいは、賃貸借契約書によって使用権を明確にしましょう。
中小企業省力化投資補助金(一般型)では、主に以下の提出書類が必要です。
種別 | 提出書類 |
---|---|
共通 | 【指定様式】従業員名簿(中小企業判定用) 損益計算書(直近2期分) 貸借対照表(直近2期分) |
法人 | 履歴事項全部証明書(発行から3ヶ月以内のもの) 法人税の納税証明書(直近3期分) 法人事業概況説明書 【指定様式】役員名簿 【指定様式】株主・出資者名簿 【参考様式】事業計画書 【指定様式】事業計画書 |
個人 | 確定申告書 納税証明書1年分 所得税青色申告決算書または所得税白色申告収支内訳書 |
ただし、以下にあてはまる場合は他に必要書類が求められます。
事業実施場所が複数の場合
大幅賃上げに係る補助上限額引き上げの特例を適用する場合
最低賃金引き上げに係る補助率引き上げの特例を適用する場合
国の他の補助金を過去に利用したまたは利用している場合
金融機関から借り入れを受ける場合
加点を受ける場合
詳しい必要書類については公募要領から十分にご確認ください。
応募・交付申請を提出すると、事務局と外部審査委員会による審査が行われ、採択が決定します。
採択・交付決定を受けた後は、製品導入・実績報告・効果報告・財産管理を行う必要があります。
成果報告では、下記の書類提出が求められるので、しっかり管理しておきましょう。
支払いに係る証拠書類
導入実績に係る証拠書類
事業計画の達成状況
スムーズに手続きを進めるためにも、事前に申請・交付、事業実施期間などのスケジュールを確認することが大切です。
2025年4月時点で発表されている、中小企業省力化投資補助金(一般型)の申請スケジュールは以下の通りです。
公募回 | 公募開始日 | 公募締切日 |
---|---|---|
第1回 | 2025年1月30日(木) | 2025年3月31日(月) |
第2回 | 2025年4月15日(火) | 2025年5月30日(金) |
申請の受付開始から締め切りまでの期間は短く、システム構築やオーダーメイドの設備を検討するのは時間がかかります。早めの段階で準備を始めておくことで、質の高い申請書類の準備につながるでしょう。
ここからは、中小企業省力化投資補助金(一般型)に関するよくある質問について回答します。
▼中小企業省力化投資補助金(一般型)についてのQ&A
一般型とカタログ注文型は併用できる?
別の補助金と併用できる?
補助事業実施期間内に完了しなかった場合は?
補助対象外となる「みなし大企業」とは?
一般型とカタログ注文型は、同じ補助対象に対して併用することは不可とされています。
しかし、別事業であることが認められれば併用も可能とされています。また、一般型に申請する際にカタログ注文型の対象設備を導入する場合、審査の際に考慮されます。
別の補助金との併用は可能です。しかし、同一施設や設備に対して、補助金の二重受給はできません。
たとえば、IT導入補助金やものづくり補助金、事業再構築補助金などは、いずれも併用は不可とされています。
ただし、補助金や自治体ごとにルールが異なるため、申請前に補助金の担当窓口に確認することがおすすめです。
参考記事:中小企業が使える補助金・助成金一覧
天災や予期せぬ事故など、事業者に責任がない理由で工期が延びる場合は、適切な手続きを行うことで期間延長が認められるケースがあります。
ただし、採択発表日から20ヶ月後の日までに実績報告を終える必要があります。具体的な期限延長の方法については現在案内されていません。
工期が延びる可能性が出た時点で、事務局に早めに問い合わせしましょう。
以下のいずれかに該当する場合は、みなし大企業となり補助対象外となります。ここでいう「大企業」とは、常時使用する従業員数が2,000人を超える事業者のことです。
みなし大企業の定義 |
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①発行済株式の総数又は出資金額の2分の1以上が同一の大企業(外国法人含む。)の所有に属している法人 |
②発行済株式の総数又は出資金額の3分の2以上が複数の大企業(外国法人含む。)の所有に属している法人 |
③大企業(外国法人含む。)の役員又は職員を兼ねている者が役員総数の2分の1以上を占めている法人 |
④発行済株式の総数又は出資金額の総額が(①)~(③)に該当する法人の所有に属している法人 |
⑤(①)~(③)に該当する法人の役員又は職員を兼ねている者が役員総数の全てを占めている法人 |
その他のよくある質問は、こちらのページにまとめられているのでチェックしてみてください。
今回の記事では、中小企業省力化投資補助金の概要についてご紹介し、メリットや活用例、申請の流れなどについてもお伝えしました。
中小企業省力化投資補助金を活用することで、省力化製品の導入費用を抑えながら、業務効率化や生産性向上を実現できます。
申請には、gBizIDの取得や事務局の審査を通過する必要があるため、早めの準備が重要です。補助金の活用を検討している方は、対象となる製品をチェックし、導入のスケジュールを立てることから始めましょう。