労働人口が減少する昨今において、DX化は各企業の競争力を高めるために欠かせないものとなっています。
しかし、DXの効果や導入にかかるコストがわからないという理由から、DXの波から目を背けている企業もいらっしゃることでしょう。
そこでこの記事では、DXで使える5つの補助金と、DXのメリット・デメリットを紹介します。
補助金活用時の注意点やDX化に成功した事例も紹介しますので、これからDX推進を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
まず最初に、DXの概要とコストについて紹介します。
DXはデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略称で、デジタル技術により企業の業務プロセスやビジネスモデルを変革し、企業の競争力を強化することを目的としています。
具体的には、以下のような技術を用いてデータをリアルタイムで収集・分析し、経営戦略に反映させる仕組みです。
クラウドコンピューティング
AI(人工知能)
IoT(モノのインターネット)
これらに限らず、従来のIT化も含めてDXと呼ばれることもあります。DXは業務効率を高めるだけでなく、新たなビジネスモデルの構築や新商品・サービスの創出にもつながります。
DXについては、以下の記事でも詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。
DXとは?経済産業省が定める「DX推進ガイドライン」をもとにわかりやすく解説
DXにかかるコストは、導入する技術やそれを扱う従業員の数によって変動するものの、通常数百万円から数千万円以上のコストがかかります。
コストの内訳には以下のようなものがあります。
システム導入費
システム運用費
人件費
DXにかかるコストの大半は、システム導入費が占めていますが、ハードウェア運用保守費用、ソフトウェア運用保守費用、人件費なども高額なコストになります。
人件費はエンジニアのコストだけでなく、UI/UXの設計やプロジェクトマネジメントを担うDX人材の費用も含まれます。
プロジェクトの規模によっては高額になることから、簡単に導入できるものではありません。しかし、政府としても中小企業のDXを推進しており、さまざまな補助金制度を設けています。次の項では、DXにおいて利用できる補助金を紹介します。
ここではDXで使えるおすすめの補助金を5つ紹介します。
IT導入補助金は、自社の課題を解決するためのITツール導入に係る経費の一部を補助する制度です。
自社の経営力の向上や、サイバー攻撃の被害抑制、デジタル化などを目的としたソフトウェアの購入費やクラウド利用料などの費用に対して補助金が交付されます。
IT導入補助金には5つの補助枠が設けられており、それぞれ補助対象となる経費や補助額、補助率が異なりますが、最大450万円まで支援されます。
自社に導入するITツールによって補助額は大きく異なりますが、DX化を検討している企業におすすめの補助金です。
IT導入補助金については以下の記事で詳しく解説しております。
IT導入補助金とは?補助額や申請方法、スケジュール、注意点などを解説
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者の販路開拓や業務効率化を支援するための補助金です。
機械装置費やウェブサイト関連費、展示会出展費など、さまざまな費用が対象となり、補助額は通常枠で50万円、その他の特別枠では200万円まで用意されています。
小規模事業者持続化補助金について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
小規模事業者持続化補助金とは?対象者や補助額、申請方法、スケジュールを解説
ものづくり補助金とは、中小企業や小規模事業者が試作品開発や生産性向上などを目的とした設備投資等を支援する制度です。
機器設置やシステム構築、専門家への相談料や外注費など、幅広い経費が対象となりますが、給与支払総額を年平均1.5%以上増やすなど細かな要件が定められています。
補助上限額として最大8,000万円まで交付される申請枠も設けられており、大規模な機械やシステム投資にも適用可能です。
ものづくり補助金について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
ものづくり補助金とは?対象者や申請要件、補助額、申請方法をわかりやすく解説
事業再構築補助金は、新商品や新サービスの開発、新しい分野への進出や業種の変更など、企業の付加価値を高める取り組みを支援する補助金です。
認定経営革新等支援機関の確認を受けた事業計画書を作成し、補助事業終了後3〜5年で付加価値額を年率平均3.0%〜5.0%(事業類型により異なる)以上増加させる事業者が対象です。
補助額は、事業類型によって異なりますが、最大1.5億円まで交付されます。
対象となる経費は、機械装置やシステム構築、クラウドサービス利用費など多岐にわたります。
事業再構築補助金については以下の記事を参考にしてください。
事業再構築補助金とは?申請枠から補助額、対象者、対象経費まで詳しく解説
国の補助金以外にも、地方自治体が独自の補助金を設けているケースもあります。
例えば東京都は「DX推進支援事業」を実施しており、専門家がDX戦略の策定等の支援や、デジタル技術の導入から活用まで長期的にサポートしています。
その他にも各自治体、DXに関する補助金が用意されている場合があります。補助金コネクトでも検索できますので、「全国のDXに関する補助金、助成金一覧」をご覧ください。
ここでは、DXに補助金を活用するメリットを3点紹介します。
補助金を活用する最大のメリットは、資金を確保できる点です。
DXの導入に関わる費用は、各企業によって異なるものの、数百万円〜数千万円規模にもなります。さらに大手になると従業員の数や関連企業も多くなるため、億単位のコストにもなりかねません。
補助金を活用できれば、導入にかかわる費用を抑えられるメリットがあるため、活用しない手はないでしょう。
補助金を受けた実績がある企業は、金融機関からの融資が受けやすくなります。補助金を受けるためには厳しい要件をクリアする必要があり、事業計画に対する一定の信頼性があることを意味します。
そもそもDX化は、競争力を強化して企業が成長することを目的としていることから、補助金の交付を受けた企業は、金融機関の融資審査においても事業性や収益性、将来性の観点においてプラス要素となることでしょう。
DXへの投資は、日常的に利用するツールなど短期目線での投資から中長期的な未来への投資まで、幅広いです。経営者や事業責任者の方は、やらないといけないとわかっていても、DXにより日常業務を変更することで現場からの反発があったり、コストもかかるということで、どうしても先延ばしになってしまいがちです。
補助金に採択されると、財務的な負担は大幅に軽減されますので、必要な投資は積極的に行っていこうというマインドになることもあります。企業の将来を考えるならば、現状維持のリスクが顕在化する前にDX投資を進めておくべきです。
一方で、DXに補助金を活用するデメリットもありますので、事前に確認しておきましょう。
補助金を活用するとはいえ、国や自治体の審査を受けなければならず、申請しても必ず採択されるわけではありません。
採択されなければ、それまでの準備や書類の作成などが無駄になってしまいます。
採択率を上げるためには、審査ポイントを把握している中小企業診断士などの専門家に相談してから審査を受けることをおすすめします。
なお、採択率は補助金によって異なります。主要な補助金の採択率は以下の記事でまとめていますのでご参照ください。
採択率の高い補助金ランキングTop7!主な補助金と採択率を紹介
補助金は一般的に申請期限が定められています。そのため、補助金を活用するためには社内のDX化のスケジュールを補助金の申請スケジュールに合わせる必要があります。
補助金は申請から交付決定まで数ヶ月程度かかります。交付が決定するまで発注できませんので、DX化プロジェクトの期限が決まっている場合は注意が必要です。
補助金を申請するためには、さまざまな必要書類を準備しなければならないという点で手間がかかります。補助金の申請に手を取られ、本業の方を疎かにしてしまっては本末転倒です。
これを回避するためには、専門家に支援を依頼するか、大型の補助金にチャレンジして作業効率を高めるのがおすすめです。もらえるものは全てもらうというスタンスではなく、小さな補助金は敢えて無視するなど、作業の効率にも注意しましょう。
DXに補助金を活用するためにはどのような手続きが必要なのでしょうか。
ここでは補助金を利用する流れを紹介します。
はじめに導入したいDXツールの選定を行います。社内で解決したい課題や予算があるでしょうから、それに見合ったツールを選定することが必要です。
システム開発を行う場合には見積りを取得します。投資金額を明らかにすることにより、申請可能な補助金を絞り込むことができます。
DXの内容が決まったら、それに見合う補助金を調査します。
補助金には公募期間が設けられていますので、タイミング悪く申請できないということもありますので、社内スケジュールとの調整が必要になることもあります。
自社で調査することが困難であれば、専門家に直接相談してみるのも一つです。補助金コネクトでもご相談を承っておりますので、お気軽しお知らせください。
相談するまででもないという方には、検索ツールをご提供しておりますので、以下ページにアクセスしてみてください。
応募する補助金制度が決まったら必要書類の準備を行います。
必要書類は補助金制度によって異なります。登記簿や決算書などは登記ネットや税理士等から取り寄せ、申請書類は公式ページからテンプレートをダウンロードしておきましょう。
書類の準備が完了した後は、補助金制度を運営している公共機関の窓口に提出します。jGrantsを利用したオンライン申請が基本になっている補助金制度もありますので、公募要領で確認します。
申請手続きが完了した後は、採択結果の通知を待ちます。
採択通知が届いたら、交付申請を行います。採択決定が交付決定を兼ねているケースもあります。
通常は採択されても具体的な見積書を提出し交付申請しなければ補助事業を進めることができないため、手続きを確認しておきましょう。
交付決定通知を受領したら、事業計画書に沿って補助事業を開始します。
ここで初めて発注を行います。交付決定までに発注してしまったものは補助金の対象外となることがありますので注意しましょう。
また補助金によっては事業が完了していなくても中間報告書の提出が必要となる場合があるため注意が必要です。
事業が終了した後は、実績報告として最終報告書を提出します。
事業でかかった費用の領収書や実施内容などをまとめ、公共機関の窓口に提出します。
その後確定検査が行われ、事業が計画通りに遂行されたとみなされれば支給額の決定通知が交付され、補助金を受け取ることができます。
補助金は補助事業をすべて終了したのちに交付されます。そのため、補助金を受け取るまでに時間がかかるなど、気を付けるべきポイントが多々あります。
ここではそれらのポイントを踏まえて、4つの注意点を紹介します。
補助金は必要なシステムの導入を行い、事業の実績を報告した後に交付されます。つまり、原則後払いとなります。
補助金を先に受け取ってからDXに関わる工事やシステム導入に支払うことができると勘違いされている方も多いのでご注意ください。
補助金が後払いということは、システム導入費用など、DXに関わる費用は会社のお金で先に支払うことになります。
DX化に関わる費用は数百万円〜数千万円といった費用になるため、ある程度まとまった資金が必要です。
金融機関が融資してくれるケースが一般的ではありますが、その分利息が発生します。融資を受けるにせよ、自己資金を使うことは覚悟しておいたほうが良いでしょう。
DXに関わる補助金は、申請書類の作成から実績報告書の作成など、事務処理が多く発生します。
さらに、書類に不備があると、修正して再提出が求められるため、場合によっては申請期日までに間に合わない場合もあるため注意が必要です。
事務処理の内容や量は、申請内容や経費の科目によって異なります。手続きが進むと、この場合はどうしたら良いの?などと疑問に思うことも多々あると思いますので、最初から専門家の支援を受けることをおすすめします。
当然ながら、不正受給は処罰の対象です。支給の取り消しはもちろん、刑事告発や逮捕の対象になる可能性もあるため、注意が必要です。
また、不正受給だと思っていなかったとしても、気が付かず不正受給していたという事例もあります。
迷うことがあった場合は、専門家に相談しながら申請を進めるようにしましょう。
ここではDXの補助金を利用してDX化に成功する事例を3つ紹介します。
コーラルウェイ有限会社は、静岡県沼津市で深海魚をモチーフにしたカフェを運営している会社です。
しかし、従業員が3名と人手不足により、回転率が低下していたため、売上も安定しない状況でした。
そこで、IT導入補助金を活用してセルフオーダーシステムを導入し、注文を大きなタッチパネルで対応できるようにしました。
その結果、人手不足が解決し、回転率の向上にもつながり、売上も40%上昇したという成果につながります。
さらに、従業員の定着率にもつながり、新商品が開発できる時間も確保できたという成功事例です。
参考:コーラルウェイ有限会社ITツール活用事例|IT導入補助金2024
白井グループ株式会社は、東京23区の産業廃棄物の収集運搬を行う会社です。
昨今ではリサイクル意識が高まる中で、ドライバー不足や事務作業の手間、後継者問題などの課題を多く抱えています。
白井グループ株式会社様は、これまで担当者の方が、お客さまと電話や対面での打ち合わせなどを行っていたため、業務効率が良いとは言えない状況でした。
そこで、DX化として、事業ごみの回収受付システムを導入。廃棄物処理の申し込みから決済までをワンストップで手続きができるようになり、ヒューマンエラーの抑止や作業効率の向上に繋がる効果を得ます。
さらに、AIによるゴミ収集車のルート作成や、収集現場の自動化などを実現。
Co2排出削減や稼働車両台数の削減などにもつながりました、
今後は、システムの活用だけでなく、「DX推進プロジェクト」を発足し、業界全体のビジネス改革を目指しているとのことです。
参考:デジタル活用・DX事例集vol.31 白井グループ株式会社
株式会社エクス・アドメディア様は、展示会やイベント、ショールームなどの空間デザインを企画・設計・施工する会社です。
しかし、高精度な制作物を職人の手作業で加工するには、時間と労力がかかり、職人の技術と勘に頼らざるを得ないという状況から生産性が低下している状況でした、
さらに、受注書や決算書のシステム化が遅れ、業務非効率であったとのことです。
そこで、3D技術を活用した商品の開発と、案件管理システム、パソコン上で行う定型業務を自動化するソフトウェアであるPRAを導入します。
これらのDX化により、新たな案件受注と売上や経費の可視化がされ、なおかつ従業員の事務処理の手間も削減でき、大きな生産性の向上につながります。
それまで月に50時間かかっていた作業が5時間に削減し、約90%の削減率を達成します。
今後の展望としては、レーザーカッターや3Dプリンターを導入し、新たに造形部の立ち上げも視野に入れている会社です。
この記事では、DXでおすすめの補助金としてものづくり補助金など5つの制度を紹介しました。
まずは導入するシステムやツールを選定し、それに合った補助金を見つけて申請するようにしましょう。
補助金コネクトでは、事業者さまの補助金申請の支援のみならず、システム構築についてのご相談もお受けしております。
一度相談してみたいという方は、ぜひ以下のご相談フォームにご記入ください。