近年、中小企業では深刻化する人材不足への対策として「省人化・自動化」の重要性がますます高まっています。業務の効率化やコスト削減を実現するだけでなく、従業員の負担軽減によるモチベーション向上や品質管理の精度向上など、副次的なメリットも多数あります。
とはいえ、ロボットやAIシステムの導入には大きなコストが必要なため、実際に一歩を踏み出すのが難しいと感じている企業は少なくありません。そこで活用したいのが、国や自治体が提供する各種補助金制度です。
本記事では、省人化・自動化に活かせる最新の補助金一覧を網羅的にまとめ、それぞれの特徴や申請時の注意点をわかりやすく解説します。
人材不足が深刻化する中、省人化・自動化は多くの企業にとって現実的な解決策になっています。ロボットやAI、ITシステムを導入することで業務効率を高められますが、初期投資の負担が大きい点が課題です。こうした設備投資を後押しするのが、省人化・自動化を支援する補助金です。
これらの補助金は、労働生産性の向上や付加価値の増大を目的としており、設備導入やシステム構築費用の一部が補助されます。多くは公募制のため、導入計画に合わせて早めの情報収集と準備が欠かせません。国の制度だけでなく、自治体独自の補助金もあり、地域や業種によって要件が異なる点にも注意が必要です。
また、審査では導入による効果や計画の実現性が重視されます。人手不足の解消だけでなく、生産性向上や収益改善、賃上げへのつながりを具体的に示すことが重要です。
代表的な補助金制度として、IT導入補助金は令和8年も継続して実施され、制度内容の見直しや再編が進められてきました。今後はデジタル化・AIに重点を置いた枠組みが中心になると見られています。ものづくり補助金や小規模事業者持続化補助金は、業種を問わず幅広い取り組みを支援してきた実績があり、引き続き高い人気を集めています。
そして近年特に注目されるのが省力化投資補助金です。名前に省力化とついている通り、省人化・自動化に資する取り組みで投資を伴う投資が幅広く対象となります。
これから省人化や自動化への投資を検討する企業にとって、支援制度をうまく活用できるかどうかは大きな分かれ道になります。制度の特徴を理解し、自社に合ったものを選ぶことで、導入コストを抑えつつチャレンジを加速させることができます。次章からは、代表的な制度を個別に詳しく見ていきましょう。
省人化・自動化の推進を明確に支援する目的で創設された新制度が「中小企業省力化投資補助金」です。人手不足を解消するようなロボットやIoTシステム、AI活用ツールなどを導入する費用の一部を手厚く補助してくれるのが特徴です。
この制度は、大きく分けて「カタログ型」と「一般型」の2種類があります。カタログ型は、中小企業が使いやすいように国が承認したロボット・機械・ツールのカタログから選んで導入するだけで申請できる仕組みです。
一般型は、企業独自のカスタマイズや連携システム構築なども対象となるため、より幅広い投資案件を支援してくれます。
それぞれ補助率や上限額が異なり、カタログ型は中小企業が使いやすい反面、上限額(数百万円〜1,500万円程度)が比較的コンパクトですが、一方で一般型は数千万円から1億円規模までと、非常に大きな上限を申請できる可能性があります。
<カタログ型と一般型の比較表>
表から読み取れるように、カタログ型は手軽に申請ができる代わりに上限額は限定的で、一般型は要件審査が厳しくなる分、補助の上限も大きいという構図です。
例えば小売店舗が配膳ロボットや自動精算機を単品導入するならカタログ型が適し、大規模工場がライン全体をAI化するなら一般型が向いているでしょう。企業が少人数であっても数億円の投資を行うケースがあるため、一般型が視野に入ることも十分に考えられます。
この仕組みにより、幅広い規模の中小事業者が自社ニーズに応じた省力化投資を行えるのが大きな魅力です。なお、どちらの場合も審査で「賃上げ要件」等が存在する場合が多いため、従業員の給与引き上げ計画をどう組み込むかがポイントになります。
実際に賃上げ実施で加点され、補助率や上限額が上乗せされるケースもあるため、計画段階で要確認です。
省力化投資補助金の申請時に、特に注意したい要件・条件をいくつかご紹介します。
<省力化投資補助金の主な要件>
表を見ると、単に省人化ロボットを導入するだけではなく、計画的な業務改善・生産性向上の道筋を明確化し、給与や雇用への波及効果を示すことが求められています。
これは国の政策として、単なる設備導入にとどまらず中小企業の経営改善全体を後押ししたい意図があるためです。
また、導入する機器・システムは事前に見積や仕様書を取り添え、事業計画と整合性をもたせておく必要があります。ただ漠然と「ロボット導入で省人化する」というだけでは審査に通過しにくいでしょう。
何名の作業をどれだけ削減できるのか、コストダウン効果や生産量アップ効果はどう試算するのか、といった点を数字で示すことが鍵となります。公募要領を熟読し、もしくは専門家や補助金コンサルタントに相談することで、申請書類の完成度を高めることが重要です。
中小企業省力化投資補助金に関しては以下の記事で詳しく紹介しています。
参考:中小企業省力化投資補助金(一般型)とは?カタログ注文型との違いや活用例・申請手順も解説
デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)も省人化・自動化を考える企業にとって有力な支援策の一つです。これは中小企業・小規模事業者が自社の業務をデジタル化・AI活用によって効率化・生産性向上を図るために、ITツールやサービス導入費用を国が支援してくれる制度です。
旧名称は「IT導入補助金」で、2026年度(令和八年度)から新名称に変更されました。
旧:IT導入補助金は、毎年度公募が行われており、社会環境の変化に応じて制度内容が柔軟に見直されてきた点が特徴です。過去には、インボイス制度対応やデジタル化推進を目的とした特別枠が設けられ、多くの中小企業が活用してきました。
最近では「デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)」が好評で、会計・受発注・決済・EC機能などを包括するクラウドサービス導入の補助上限が上がっています。
一方、これまでは「IT導入補助金」に含まれていたものが、令和7年度以降は「AI導入補助金」や「デジタル化・AI導入補助金」などへ名称などを変更する動きがあります。
多くの中小企業で利用されてきた枠組みですが、制度詳細が更新される可能性があるため、常に最新情報の確認が必要です。ここでは現行のIT導入補助金を中心に解説しながら、注目される変更点も見ていきましょう。
デジタル化・AI導入補助金では、導入できるソフトウェア・ITサービスが事前に登録されたリストから選択する形を基本としています。
たとえば、POSレジシステム、在庫管理ソフト、会計ソフト、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)ツール、クラウド型受発注サービスなどが代表的です。中にはAI-OCR(手書き文字をデジタル化するAI技術)なども含まれており、結果的に書類の入力や帳票の処理を自動化し、大幅な省人化が期待できます。
なお、デジタル化・AI導入補助金金には「通常枠」のほか、インボイス枠やセキュリティ対策推進枠、複数社連携IT導入枠など複数の類型があります。
会計ソフトをインボイス制度に対応させたい場合や、情報セキュリティを強化したクラウドサービスを導入する場合など、適切な枠を選択すると補助率が優遇されることがあります。
デジタル化・AI導入補助金を活用するには、下記のようなポイントを押さえておくとスムーズです。
<デジタル化・AI導入補助金 申請フローの例>
表からも分かるように、デジタル化・AI導入補助金は「IT導入支援事業者(登録ベンダー)」と二人三脚で進める仕組みです。システム導入後の運用サポートや報告書作成も協力して行うため、頼れるパートナーを選ぶのが大切です。
また、補助金をもらうにあたっては、導入するソフトウェアやクラウドサービスが事務局に登録済であることが必須なので、新しいサービスの場合は登録がまだ行われていない可能性にも注意しましょう。
最後に、補助金の申請前に導入契約や支払を行ってしまうと「事前着手」とみなされ補助対象外になる恐れがあるので要注意です。必ず交付決定通知が届いた後に、正式な契約や支払を実施するようにスケジュールを組むことが成功のカギと言えます。
デジタル化・AI導入補助金に関しては以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
参考:デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)とは?補助額や申請方法、スケジュール、注意点などを解説
従来から継続的に公募が行われ、中小企業の研究開発や設備投資を支援してきたのが「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」(略して「ものづくり補助金」)です。
省人化や自動化にも大いに活用できるため、すでに多くの製造業・非製造業で導入実績があります。特に、自社独自の生産プロセス改善や革新的サービスを開発するにあたり、ロボットやAI、IoT機器などをまとめて導入する際のコストを大幅に軽減可能です。
ものづくり補助金は「革新的な設備投資・試作品開発等」を広く対象としますが、その中でも省人化・自動化につながる投資としては以下のような事例が挙げられます。
<ものづくり補助金の省人化投資事例>
このように、製造業だけに限らず、小売業・サービス業でも応用可能な補助金です。また、賃上げ要件や事業計画の整合性を満たすことで加点・採択に繋がる可能性が上がります。大規模投資にも対応でき、補助上限が数千万円から1億円超と非常に高額になるケースもあり、中小企業にとっては貴重な資金源といえます。
ものづくり補助金では、申請内容が下記のような観点で審査され、点数付けが行われます。
革新的サービス開発:独自性や創造性があり、市場ニーズにマッチしているか
生産プロセスの改善:コストダウンや時間短縮だけでなく、品質向上や安全性、環境対応なども重視
市場獲得可能性:経営計画の実現性や売上・収益見込みの妥当性
事業計画全体の整合性:賃上げ計画や投資後の効果測定が具体的に示されているか
高度なAI技術やロボティクス技術を活用し、既存の工程を抜本的に改革する内容は審査員による評価が高まりやすいと言われています。加点要素としては、地域経済への波及効果やCO2削減といった環境配慮、そして何よりも従業員の給与引き上げや新規雇用創出を見込む取り組みはポイントが高いです。
申請準備の段階では、導入する設備・システムの汎用性や技術的特徴、さらには実際のオペレーション上のメリットを数値化して示すことが重要です。例えば、導入前と導入後で製造リードタイムや不良率がどの程度改善するのか、経費はどれだけ抑えられるのか、事業収益はどれほど拡大するのかを定量的に記載すると、審査側にも良い印象を与えられるでしょう。
ものづくり補助金に関しては以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
参考:ものづくり補助金とは?対象者や申請要件、補助額、申請方法をわかりやすく解説
小規模事業者持続化補助金は、中小企業庁が所管する制度で、小規模事業者の販路開拓や業務効率化を支援することを目的としています。
商業やサービス業では従業員数5人以下、製造業その他では20人以下の事業者が対象となり、比較的少額の投資でも活用しやすい点が特徴です。
補助率は原則3分の2で、特定の要件を満たす場合には4分の3に引き上げられることもあります。補助上限額は公募回によって異なりますが、数十万円から数百万円規模の投資が中心となります。
小規模事業者持続化補助金では、省人化や自動化に直結する取り組みだけでなく、売上向上や業務効率化につながる施策が幅広く対象となります。
例えば、ECサイトを立ち上げることで来店対応の人手を減らし、オンラインでの受注を増やす取り組みがあります。飲食業やサービス業では、オンライン予約システムを導入することで電話対応を減らし、少人数でも業務を回せるようにする事例が多く見られます。
そのほか、簡易な省力化機器や業務支援ツールの導入、ホームページやチラシ制作による販路拡大なども対象となります。大規模なロボット導入には向きませんが、小さく自動化を始めたい事業者には非常に相性の良い制度です。
小規模事業者持続化補助金は使いやすい制度ですが、事業計画の内容が採択結果を大きく左右します。単なる設備購入ではなく、どのように売上や生産性向上につながるのかを具体的に示す必要があります。また、こちらも交付決定前の契約や支払いは補助対象外となるため注意が必要です。
小規模事業者持続化補助金に関しては以下の記事で詳しく紹介しているので、気になる方はご確認ください。
参考:小規模事業者持続化補助金とは?対象者や補助額、申請方法、スケジュールを解説
業務改善助成金は、厚生労働省が所管する制度で、生産性向上につながる設備投資などを行い、その成果として事業場内最低賃金を一定額以上引き上げる企業を支援する助成金です。単なる省人化や自動化だけでなく、賃上げとセットでの業務改善が必須条件となっている点が最大の特徴です。
対象となる事業者は、中小企業や小規模事業者が中心で、地域別最低賃金に近い水準で従業員を雇用している事業場ほど活用しやすい傾向があります。助成率は枠によって異なりますが、導入費用の4分の3から5分の4程度が助成されるケースもあり、他制度と比べても非常に高水準です。
「業務改善助成金」は、賃金引き上げの成果を得るための業務改善という明確な目的があります。例えば以下のような事例が該当し得ます。
<業務改善助成金の対象となりうる例>
この助成金は最低賃金を一定額以上引き上げるという要件があるため、導入後に従業員の基本給を増やす計画が必要です。助成率も高めに設定されることが多い反面、要件を満たさない場合は助成金を返還しなければならないリスクもあるので注意が必要です。
まず、自社の事業場内最低賃金や従業員数が要件を満たしているかを確認します。次に、生産性向上の内容と賃上げ計画を具体的に示した事業計画書を作成し、導入予定の設備やITツールについて見積書を取得します。
申請書類を提出し、審査を経て交付決定を受けた後に設備導入を実施します。導入完了後は、実績報告として領収書や導入状況の写真、賃上げ実績を提出し、内容が確認されると助成金が支給されます。
業務改善助成金は助成率が高い反面、賃上げ要件が非常に重要です。計画通りに最低賃金の引き上げを行わなかった場合、助成金の返還を求められる可能性があります。また、交付決定前の契約や支払いは原則対象外となるため、スケジュール管理には細心の注意が必要です。
業務改善助成金に関しては以下の記事で詳しく紹介しています。
ここまで主要な補助金・助成金を紹介してきましたが、そのほかにも要チェックの制度があります。地域によっては都道府県や市区町村が独自に省人化・自動化を支援する助成金を設置しているケースもあり、積極的に調べてみるといいでしょう。ここでは代表的な2つ、「新事業進出補助金」と「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業(東京都)」を取り上げます。
「中小企業新事業進出補助金」は、中小企業がこれまでとは異なる分野に新しく進出する際の設備投資や販路開拓などを支援する制度です。多くの場合、以下のような特徴があります。
対象:新商品・新サービスの開発、または既存事業とは異なる市場・業種への参入など
補助範囲:機械設備、ITシステム、試作品開発、人材育成、広告宣伝費など
補助上限額・補助率:数千万円規模〜、賃上げ要件などの達成で追加上乗せ場合も
たとえば、飲食業から製造業へ転換し、自社ブランドの冷凍食品を生産するための自動化ライン導入を検討しているケースなどが該当しうるでしょう。
ロボットやAIを活用して作業を効率化し、新市場に参入できれば大きな成長につながります。ただし、要件として「新規性」や「差別化戦略」がしっかり示されないと審査で不利になることがありますので、ビジネスプランを十分に練ることが大切です。
新事業進出補助金に関しては以下の記事でも紹介しております。
参考:中小企業新事業進出補助金とは?対象者や補助額、対象経費、申請スケジュールを解説
東京都独自の支援策として「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」があります。これは都内中小企業が新技術や新市場に挑戦する際に必要な設備投資をサポートする助成金で、革新的なロボット・AI・IoTアプリケーション導入も対象になり得ます。補助率や上限額は公募の年度により異なる場合がありますが、大まかには数分の1を負担してもらえるイメージです。
都独自の制度だけに、東京都に事業所を持ち、かつ申請時点で明確な事業計画がある企業が対象です。都道府県レベルでこうした制度は他にも存在するので、地方自治体のウェブサイトや商工会議所などを通じて情報収集してみましょう。全国的な有名補助金に比較して、競争率が低めな場合もあり、意外と狙い目です。
省人化・自動化に活用できる代表的な補助金・助成金を一挙ご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。中小企業省力化投資補助金やIT導入補助金、ものづくり補助金に加え、業務改善助成金や小規模事業者持続化補助金など、多様な制度が存在し、それぞれで補助率や対象経費、要件が異なります。
また、新事業進出補助金や東京都の設備投資支援など、最新動向として要チェックなものも少なくありません。
ポイントとしては、自社の投資規模や導入内容にマッチする制度を見極めることが大切です。大規模投資なら「中小企業省力化投資補助金(一般型)」や「ものづくり補助金」、比較的小さい投資なら「業務改善助成金」や「小規模事業者持続化補助金」と使い分けるとよいでしょう。
また、申請にあたっては、事業計画の策定や賃上げ要件への対応など、事前準備に時間や労力がかかりますので、十分にスケジュールを確保しましょう。
もし「どの補助金が最適かわからない」「書類作成を手伝ってほしい」という場合は、専門家や支援機関へ相談してみるのも手です。
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