事業譲渡を検討する上で重要となってくるのが税金です。
事業譲渡では大きなお金が動くため、譲渡側と譲受側でどのような税金が課せられるのかを十分理解しておくことが重要です。また、事業譲渡の税金対策には様々な方法があります。
この記事では、事業譲渡における税金の種類および税金対策について、詳しく説明します。
事業譲渡とは、会社の一部または全部を譲渡することを指します。譲渡される事業には、資産だけでなく、負債や契約も含まれることがあります。また事業譲渡における契約には、事業に関わる顧客や仕入れ先などとの対外的な契約だけでなく、従業員との雇用契約も含まれます。
事業譲渡には、会社ごと譲渡する場合と比較すると現会社の経営継続が可能であったり、特定の事業を切り離すことで経営資源を集中できるといったメリットがあります。
また、簡易型の事業譲渡に該当する場合は、株主総会に代えて取締役会の決議で行うことができます。
事業譲渡では、必要な事業のみを取得し、少ない投資で新規事業を立ち上げることができるため、小規模なM&Aに適しています。
また、事業譲渡は元の対象会社のリスクを引き継がず、潜在的なリスクから会社を守ることができるといったメリットもあります。
さらに、営業権(のれん)を5年間で償却し、税務上損金として計上できるため、節税にもつながります。
事業譲渡は、株式譲渡に比べて税負担が重く、手続きが煩雑で手間がかかるというデメリットがあります。
また、譲渡した事業と同じ事業を行うことに一定の制限が発声することにも注意が必要です。
事業譲渡においては、契約書の再交付、許認可の申請、従業員との雇用契約など多くの手続きがあり、手間と時間がかかります。
また譲渡価格には消費税が課税され、営業権は課税資産となるため、資金調達にも注意が必要です。
さらに倒産や不正な事業譲渡が行われる可能性もあり、専門家のアドバイスが必要となります。
事業の譲渡側に課せられる主な税金は、「消費税」と「法人税」です。
消費税は事業譲渡により課せられる税金であり、日本国内の企業にとっては非常に重要な税金の一つです。
事業譲渡に関する場合、消費税は、譲渡される資産に対して課されます。このため、譲渡代金から消費税対象外の資産を差し引いた額に、税率を掛けた金額が消費税の納税額になります。なお、消費税の税率は、2023年8月現在、10%となっています。
注意が必要なのは、事業譲渡により赤字になってしまった場合でも、消費税が課せられる可能性があるということです。そのため、事業譲渡を行う際には納税義務の有無や税金の計算方法について事前に確認するようにしましょう。
また、事業譲渡と株式譲渡では、消費税の課税対象が異なるため、注意が必要です。株式譲渡においては、消費税が課されない場合が多いため、事業売却の方法を選択する際には、消費税の計算方法についても考慮する必要があります。
事業譲渡に伴い、譲渡金額が「譲渡する資産と負債の差額」を上回った場合、つまり利益が出た場合、その利益には法人税などが課されます。
法人税には法人住民税、事業税が含まれます。これらの税金を合計した理論上の税率を「実効税率」と呼びます。最近では、税率の引き下げが進んでいますが、現在の税率は約30%です。税金額は、事業譲渡益に課せられた税率と、その金額に基づいて計算されます。
例えば、事業譲渡の対価が5億円で、譲渡する資産と負債の差額が2億円の場合、3億円の利益が生じます。そして、この億円に対して、約30%の税率が課せられ、納税額は約9,000万円となります。つまり、事業譲渡によって生じた利益の額に応じて、多額の税金が発生することになるのです。
参考:財務省(https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/corporation/c01.htm)
事業譲受人に課される主な税金は、「消費税」「登録免許税」「不動産取得税」です。
消費税は事業譲渡側に課せられる税金ですが、実際の負担者は事業譲受側になります。言い換えると、事業譲渡側が譲渡金額に対して課せられる消費税の金額分を上乗せして譲渡対価を設定することで、実質的に譲渡を受ける側が消費税を負担することになるのです。
この方法は、通常の商取引と同じ考え方に基づいています。すなわち、商品を購入する側が消費税を負担し、譲渡側が消費税を受け取って納付する方法です。
とはいえ、この仕組みは複雑なため、消費税に詳しくない人にとっては理解するのが難しいこともあります。もし消費税について疑問がある場合は、税理士や法律専門家に相談することをおすすめします。
事業譲渡について、譲受(取得)した財産の中に不動産がある場合、登録免許税が課されることがあります。
また、事業譲渡によって譲受した事業には「許認可が必要な事業」が含まれている場合があります。このような場合、事業譲渡後に再度許認可を取得しなければならない場合もありますので、注意が必要です。
さらに、土地の売買取引に伴う登録免許税の課税額は、「土地の価格×20/1000」となります(2023年8月現在)。つまり、土地の価格が高額である場合、課税額もそれに応じて高額になる可能性があるということです。しかしながら、土地の価格を下げることはできないため、登録免許税を支払うことは避けられません。
したがって、事業譲渡に際しては、登録免許税の課税額についても留意し、事前にしっかりと把握しておくことが重要です。
参考:国税庁(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm)
事業譲渡により不動産を取得した場合、不動産取得税がかかります。不動産取得税とは、土地や家屋を取得した場合に納める税金のことです。
不動産所有権の取得に関わらず、省略登記や建築物の登記漏れなどにも注意が必要です。ただし、会社分割や相続には、非課税の場合があります。不動産取得税の課税額は、取得価格の3%(2023年8月現在)となります。
参考:東京都主税局(https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/shisan/fudosan.html)
事業譲渡の税金対策について2つ紹介します。
事業譲渡による譲渡利益には法人税がかかります。しかし、退職金を利用することで、譲渡による利益を減らし、法人税額を抑えられます。退職金を支払うことで、経費となり利益を圧縮できるからです。また、退職所得は所得税の計算時に優遇されるため、法人税を抑えつつ社長個人に資金を移すことが可能となります。
ただし退職金を活用する場合、退職金の金額が高く設定できない点と、個人の所得税の税率が累進税率である点に注意する必要があります。これらの点を把握しつつ、慎重に活用するようにしてください。
第三者割当増資を利用したM&Aは、事業譲渡ではなく、税務対策として採用される手法です。第三者から新たな出資を受け、新株を発行することで、相手企業との持株比率を変更し、経営権を相手企業に移転する方法です。この場合、譲渡側の株主は現金を受け取りませんが、税金はかからず、対象会社に損益は発生しません。
事業譲渡に係る法人税は、事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内に納付しなければなりません。ただし、決算日の確定が困難な場合は、期限延長の申請が可能です。
個人事業主の場合は、譲渡所得に対して所得税が課税されます。個人事業主の場合は、2月から3月にかけて確定申告と納税を行う必要があります。
この記事では、事業譲渡における税金の種類と対策について解説しました。事業譲渡では、譲渡企業だけでなく、譲渡を受ける側にも課税される場合があります。譲渡側は消費税だけでなく、不動産が絡んでいる場合や登記手続きが必要な場合には、受取人にも追徴課税されますので注意が必要です。
一般的に、譲渡会社にとって有効な税務対策としては、退職金の活用や第三者割当増資の採用などが挙げられます。しかし、自社に最も適した税務対策を見つけるためには、専門家のアドバイスを受けるようにしましょう。

