IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者等がITツールを導入する大きなきっかけとなる補助金です。申請が無事に採択されると安心するかと思いますが、実は採択されただけではIT導入補助金を受け取ることはできません。
この記事では、IT導入補助金で提出が義務付けられている実績報告について、概要や流れなどを解説します。採択を受けた企業の担当者の方は、ぜひご一読ください。
IT導入補助金の実績報告とは、ITツールを導入した後で、事業の実施内容を事務所へ報告する手続きであり、通常枠(A・B類型)・セキュリティ対策推進枠・デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)全ての枠で報告が義務づけられています。
IT導入補助金における「事業」とは、全てのITツールの契約・納品・請求・支払いを意味しています。ITツールを使ってビジネスの成果を上げることは、補助金制度における事業には該当しないため、注意しましょう。
実績報告を提出する段階で、導入する全てのITツールで事業が完了し、利用や運用を始めていることが必要です。なお、採択を受ける前にITツールの契約や支払いをした場合、補助金の受け取りができなくなるため、各種手続きは必ず採択後に進めましょう。
実績報告では、以下の内容を報告します。
ITツールの契約内容
納品内容
請求内容
支払い内容
補助金を受け取る口座の情報
報告のやり方や資料の添付方法については後述します。
IT導入補助金の実績報告は、補助事業者とIT導入支援事業者の双方が対象となっています。先に補助事業者が申請マイページから実績報告を開始し、書類などを添付します。その後、IT導入支援事業者が内容を確認し、必要事項の入力や修正依頼などを行います。
補助事業者が実績報告を提出したら報告は完了し、事務局側で確定検査を行います。確定審査に通った後で補助金が交付されますが、口座への入金は補助金確定から約1か月後が目安です。
ID導入補助金の交付決定を受けてから実際に補助金を受け取るまで、どのような流れで手続きを進めるのか見ていきましょう。
交付決定を受けた申請者に向けて、事務局が交付決定通知を行うと、申請者は補助事業者として補助事業を始められます。事業を始める際に、契約・発注を最初に行うことが重要です。納品・請求・支払いなどを先に行ってしまうと、補助金の交付が受けられないためです。また、実績報告に必要な証憑は、必ず全て保管をしておきましょう。
ITツールの納品・支払いまで完了すると、事業が完了したとみなされます。事業完了後、事業内容を速やかに事務局へ報告し、実績報告は完了です。
実績報告後、事務局が確定検査を行い、必要に応じて立ち入り検査やヒアリングなどが行われます。確定検査が終了し、補助事業の適切な実施が認められると、事務局から補助事業者に対して確定内容の承認依頼が入ります。補助事業者が、申請マイページから内容を確認しSMS承認をすると、確定後1か月ほどで補助金が交付されます。
補助金を受け取った後も、事業者に対して、数値目標に関する情報やITツールの継続的な活用などの報告が義務付けられています。規定に反した場合は補助金返還の対象となる場合もあるため、報告は必ず行いましょう。
ここからは、IT導入補助金の実績報告をどのように進めていけば良いのか、ステップごとに解説します。
最初に、補助事業者が申請マイページへログインし、資料作成や添付などの手続きを始めます。実績報告の流れが表示されるため、今一度確認しましょう。
実績報告には、ITツールの導入や支払いが完了している旨の書類添付が必要です。必要書類は、申請区分・累計、導入したITツールなどにより異なるため、漏れがないよう補助事業者がしっかりと準備しましょう。提出が必要とされる書類は、以下の通りです。
請求書(請求明細書)
支払証憑
ソフトウェアの利用確認(通常枠・デジタル化基盤導入類型)
ハードウェアの納品書および写真(ハードウェアを導入した場合のみ)
補助金受け取り口座の情報
ECサイトの画面キャプチャ(ECサイトを導入した場合のみ)
契約書もしくは利用申込書(セキュリティ対策推進枠)
それぞれについて、簡単に説明します。
請求書は、IT導入支援事業者から補助事業者へ発行されたものが必要であり、記載が必要な項目が全て含まれているか確認しましょう。値引きがある場合は、各製品単価からの値引き記載が必要です。
支払証憑は、補助事業者からID導入支援事業者へ銀行振込で支払った事実を示す書類です。振込依頼書・ATM明細書・インターネットバンキングの振込完了画面などが一例です。なお、振込精査表は認められていません。
ソフトウェアの利用確認は、ソフトウェアの導入と利用開始が分かる画面キャプチャ(管理画面など)を提出します。キャプチャー内に補助事業者名が表示されない場合は、契約時の書類提出が必要です。
ハードウェアの写真は、設置した状態の写真と、ラベルの貼付が確認できる写真が、導入したハードウェア全てに対して求められます。ラベルは、ハードウェアと付属品の両方に貼付が必要です。
補助金受け取り口座は、補助事業者名義の口座であることが必須です。法人の場合は、補助事業者が所有する法人名義の口座が必要であり、個人事業主の場合は補助事業者が所有する本人名義の口座が必須条件です。通帳がない口座(インターネットバンキングなど)の場合は、定められた項目が全て確認できるページを提出します。
ECサイトの画面キャプチャは、IT導入支援事業者が制作し、補助事業者へ納品された全てのサイトのURLとともに提出します。サイトへのアクセスにIDやパスワードが必要な場合、審査確認用のテストIDおよびパスワードの用意が必要です。
契約書もしくは利用申込書については、セキュリティお助け隊サービスの契約・申し込み書類を添付します。
実績報告の手引きには、全ての提出書類を可能な限りスキャンをし、PDFで提出する必要があります。スムーズな審査のため、PDFで提出するようにしましょう。
補助金受け取り口座情報が入ったファイルを添付し、補助事業者が口座情報を入力します。添付ファイルを開かないと情報が入力できないため、画面の指示に従い順番通りに進めましょう。
補助事業者が、ここまでの入力と添付を終えたら、画面がIT導入支援事業者に引き継がれますので、IT導入支援事業者が再度ログインし手続きを進めます。補助事業者が入力した情報や添付ファイルの内容を確認し、必要があれば補助事業者へ修正依頼をしてください。
確認が終了したら、補助事業者が導入したITツールの契約・納品・支払いの各情報を入力したのち、内容を確認します。入力が完了すると、補助事業者へ情報が移ります。
ここからは、再度補助事業者による手続きが必要です。入力した全ての情報を確認したら、SMS認証を行います。認証コードが届いたら画面に入力し、「事務局へ提出」ボタンを押下すると、提出は完了です。
補助事業者が実績報告の手続きを完了したのち、事務局側で確定検査が実施されます。確定検査の完了は、メールで補助事業者へ通知が届きますので、結果承認を行ってください。期日までに承認しないと交付決定が取り消されるため、メールが届いたらすぐに確認しましょう。
令和5年8月18日現在で募集されている、IT導入補助金の貯金のスケジュールを簡単にご紹介します(通常枠の5次締切分・セキュリティ対策推進枠の5次締切分・デジタル化基盤導入枠《デジタル化基盤導入類型》の7次締切分)。
イベント | 期日 |
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締切日 | 令和5年8月28日(月)17:00 |
交付決定日 | 令和5年10月12日(木)(予定) |
事業実施期間 | 交付決定~令和6年3月29日(金)17:00 |
事業実績報告期限 | 令和6年3月29日(金)17:00 |
デジタル化基盤導入枠のうち、商流一括インボイス対応類型と複数社連携IT導入類型は、上記のスケジュールと異なります。公式サイトでスケジュールを確認し、事業を進めていきましょう。
IT導入補助金の実績報告は、補助事業者だけでなくIT導入支援事業者の入力作業も必要です。
補助事業者と支援事業者が協力して入力を進め、実績報告がスムーズに完了するよう連携しながら作業を進めていきましょう。IT導入支援事業者から修正依頼があった場合は、補助事業者の迅速な対応が求められます。
採択率の高い汎用的な補助金の一つですので、漏れなく手続きするようにしましょう。