神奈川県では、県内中小企業の事業承継を支援する制度として、「神奈川県事業承継補助金」が実施されています。
本補助金は、物価高騰や人手不足等の影響により、優れた経営資源を持ちながら事業継続に課題を抱える中小企業の事業承継を促進し、経営資源や雇用の喪失を防ぐことを目的とした補助制度です。
親族への事業承継に向けた株価算定費用、第三者承継に伴う従業員の継続雇用に係る人件費、M&A・事業譲渡等に係る専門家費用、デューデリジェンス費用、企業価値算定費用、M&Aマッチングプラットフォーム利用料などに活用できる可能性があります。
補助率は原則として補助対象経費の2分の1以内、小規模事業者の場合は3分の2以内です。補助上限額は、親族承継枠の株価算定支援が20万円、第三者承継枠の買い手支援A・買い手支援B・売り手支援が各100万円です。
本記事では、神奈川県事業承継補助金の概要、対象者、支援枠、補助額、対象経費、申請スケジュール、申請時の注意点をわかりやすく解説します。
神奈川県事業承継補助金は、県内中小企業者の事業承継を促進し、経営資源や雇用の喪失を防ぐことを目的とした補助金です。
親族承継と第三者承継の2つの枠があり、承継の内容に応じて支援区分が分かれています。
項目 | 内容 |
|---|---|
制度名 | 令和8年度 神奈川県事業承継補助金 |
対象地域 | 神奈川県 |
対象者 | 中小企業支援法第2条第1項第1号から第3号までに規定する中小企業者 |
支援枠 | 親族承継枠、第三者承継枠 |
支援区分 | 株価算定支援、買い手支援A、買い手支援B、売り手支援 |
補助率 | 補助対象経費の2分の1以内(小規模事業者は3分の2以内) |
補助上限額 | 親族承継枠20万円、第三者承継枠各100万円 |
募集期間 | 令和8年4月1日から令和9年1月29日まで |
補助事業実施期間 | 交付決定日から令和9年3月15日まで |
実績報告期限 | 補助事業完了日から30日を経過した日、または令和9年3月23日のいずれか早い日まで |
事前相談 | 交付申請前に必須 |
受付方法 | 先着順。予算がなくなり次第終了 |
令和8年度の募集期間は、令和8年4月1日から令和9年1月29日までです。ただし、予算がなくなり次第、募集期間内であっても受付終了となります。
本補助金の対象となるのは、中小企業支援法第2条第1項第1号から第3号までに規定する中小企業者です。
業種分類 | 資本金または出資総額 | 常時使用する従業員数 |
|---|---|---|
製造業・建設業・運輸業その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
小売業・飲食店 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
ゴム製品製造業 | 3億円以下 | 900人以下 |
ソフトウェア業・情報処理サービス業 | 3億円以下 | 300人以下 |
旅館業 | 5,000万円以下 | 200人以下 |
なお、一定の大企業支配を受ける中小企業者や、直近過去3年分の課税所得の年平均額が15億円を超える中小企業者などは、みなし大企業として補助対象外となります。
小規模事業者に該当する場合は、補助率が2分の1以内から3分の2以内に引き上がります。
業種分類 | 常時使用する従業員数 |
|---|---|
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く) | 5人以下 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
製造業その他 | 20人以下 |
常時使用する従業員数には、会社役員、個人事業主本人、同居の親族従業員、休業中・休職中の社員、一定のパートタイム労働者等は含めません。
共通して重要な補助要件は以下のとおりです。
要件 | 内容 |
|---|---|
県内中小企業の経営資源承継 | 神奈川県内の中小企業が有する経営資源を対象とし、引き続き県内で活用すること |
県税対象事業者 | 親族承継枠は神奈川県の法人県民税の対象となる事業者、第三者承継枠は神奈川県の個人事業税または法人県民税の対象となる事業者であること |
交付決定前の着手不可 | 発注、契約、登録、申込等は原則として交付決定後に行うこと |
事業承継の実体 | 設備、従業員、顧客等の有機的一体としての経営資源の譲渡・譲受であること |
県内での雇用・活用 | 経営資源や雇用を県内で引き続き活用すること |
関係法令の遵守 | 公序良俗に反する事業や、風俗営業等、公的資金の使途として不適切な事業でないこと |
暴力団排除 | 神奈川県暴力団排除条例に該当しないこと |
重複補助不可 | 同一内容で国・県・市町村等の他制度を活用していないこと |
事業譲渡の場合、設備のみの譲渡や、営業権・知的財産権等のみの譲渡など、有機的一体としての経営資源の譲渡・譲受が確認できない場合は、原則として対象外です。
本補助金には、「親族承継枠」と「第三者承継枠」があります。
支援区分ごとの補助内容は以下のとおりです。
支援枠 | 支援区分 | 補助事業の内容 | 補助対象経費 | 補助率 | 補助上限額 |
|---|---|---|---|---|---|
親族承継枠 | 株価算定支援 | 親族への事業承継を目的として、専門家等と連携する株価の算定に係る取組 | 謝金、委託費 | 1/2以内、小規模事業者は2/3以内 | 20万円 |
第三者承継枠 | 買い手支援A | 第三者への事業承継に伴い、譲渡者において常時使用していた従業員を引き続き県内で雇用する取組 | 人件費(基本給に限る) | 1/2以内、小規模事業者は2/3以内 | 100万円 |
第三者承継枠 | 買い手支援B | 第三者への事業承継に係る、専門家等と連携する取組 | 謝金、旅費、外注費、委託費、システム利用料、保険料 | 1/2以内、小規模事業者は2/3以内 | 100万円 |
第三者承継枠 | 売り手支援 | 第三者への事業承継に係る、専門家等と連携する取組 | 謝金、旅費、外注費、委託費、システム利用料、保険料 | 1/2以内、小規模事業者は2/3以内 | 100万円 |
親族承継枠では、親族への事業承継に向けた株価算定費用が対象となります。親族とは、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族を指します。
株式や持分の移転による承継の場合、譲受者が譲渡者の総株主等議決権数または出資の過半数以上を有しないものは対象外です。また、業務提携など、経営権や事業の移転を伴わないものも対象外となります。
第三者承継枠では、買い手側の人件費支援、買い手側の専門家費用支援、売り手側の専門家費用支援が用意されています。
買い手支援Aでは、譲渡者において常時使用していた従業員を、譲受者が引き続き神奈川県内で雇用する取組が対象です。対象経費は基本給に限られ、1人あたり月額上限40万円、小規模事業者の場合は月額上限30万円で、3か月分までが対象です。
買い手支援B・売り手支援では、企業価値算定、デューデリジェンス、FA・仲介、契約書作成・レビュー、M&Aマッチングプラットフォーム利用料などが対象となる可能性があります。
第三者承継枠では、異なる2つの支援区分を併用して申請することが可能です。その場合、補助上限額は1区分につき100万円で、合計200万円までとなります。
本補助金の補助対象経費は、支援区分によって異なります。
支援区分 | 主な補助対象経費 |
|---|---|
株価算定支援 | 謝金、委託費 |
買い手支援A | 人件費(基本給に限る) |
買い手支援B | 謝金、旅費、外注費、委託費、システム利用料、保険料 |
売り手支援 | 謝金、旅費、外注費、委託費、システム利用料、保険料 |
専門家等として想定される者には、認定経営革新等支援機関、弁護士、公認会計士、税理士、中小企業診断士、M&A支援機関登録制度に登録しているFA・仲介業者、環境調査・信用調査等を行う者などがあります。
買い手支援B・売り手支援では、FA・仲介費用、価値算定費用、デューデリジェンス費用、環境調査・信用調査費用、契約書等の作成・レビュー費用、M&Aマッチングプラットフォーム利用料などが対象となる可能性があります。
一方で、以下のような経費は補助対象外です。
対象外経費 | 内容 |
|---|---|
目的に合致しない経費 | 補助事業の目的に合致しないもの |
証拠書類がない経費 | 補助対象経費であることや支出内容を確認できる書類を用意できないもの |
交付決定前の経費 | 交付決定日より前に発注・契約・登録・申込、成果物受領、支払い等を実施したもの |
期間外経費 | 令和9年3月16日以降に実施または支払いをしたもの |
交付決定前に実施した事業承継 | 支援区分により、交付決定日前に実施した事業承継は対象外 |
専門家連携に直接関係しない経費 | 事業承継に係る専門家との連携に直接関連しない経費 |
現金支払い | 親族承継枠、買い手支援B、売り手支援では現金支払いは対象外 |
公租公課 | 消費税、地方消費税、印紙税等 |
振込手数料 | 金融機関等への振込手数料 |
還元・キャッシュバック | 支払額の一部または全部が申請者へ戻るもの |
通常業務と混合した支払い | 他取引と混合しており、補助対象経費の区分が難しいもの |
社会通念上不適切な経費 | 公的資金の用途として不適切と認められる経費 |
親族承継枠、買い手支援B、売り手支援では、対象経費の支払方法は金融機関への振込みが原則です。現金払い、小切手・手形による支払い、相殺による決済、仮想通貨・クーポン・ポイント・金券・商品券の利用分は対象外です。
なお、クレジットカード払いについても、カード利用明細や決済口座の通帳等、所定の証拠書類を提出でき、かつ補助対象期間内に引落しまで完了している場合は、対象となる可能性があります。ただし、リボルビング払いは対象外です。
買い手支援Aは人件費を対象とする区分のため、買い手支援B・売り手支援とは支払証拠書類の取扱いが異なります。賃金台帳、雇用契約書、給与支払の証拠書類など、雇用継続と人件費支払いを確認できる資料を整えておく必要があります。
令和8年度の申請受付期間は以下のとおりです。
項目 | 内容 |
|---|---|
募集期間 | 令和8年4月1日から令和9年1月29日まで |
受付方法 | 先着順 |
予算到達時の扱い | 予算がなくなり次第終了 |
補助事業実施期間 | 交付決定日から令和9年3月15日まで |
実績報告期限 | 補助事業完了日から30日を経過した日、または令和9年3月23日のいずれか早い日まで |
事前相談 | 交付申請前に必須 |
相談・提出先 | かながわ中小企業成長支援ステーション |
申請前には、必ず神奈川県へ事前相談を行う必要があります。相談・提出先は、神奈川県産業労働局中小企業部中小企業支援課内の「かながわ中小企業成長支援ステーション」です。なお、問い合わせ・事前相談は電話のみの対応と案内されています。
最初の相談から交付決定まで、書類不備のやり取りなどを含めて通常2〜3週間かかるとされています。事業承継や専門家への依頼を急いでいる場合でも、交付決定前に着手すると対象外になる可能性があるため、早めに相談しましょう。
最新の公募情報は以下リンクの公式ページよりご確認ください。
参考:神奈川県事業承継補助金
主な申請書類は以下のとおりです。
書類 | 内容 |
|---|---|
補助金交付申請書 | 様式1または共同申請の場合は様式2 |
役員等氏名一覧表 | 法人・個人事業主共通で必要 |
補助事業計画書 | 支援区分ごとの様式を使用 |
経費予算書 | 支援区分ごとの様式を使用 |
見積書等 | 申請する経費の内容、内訳等が分かるもの |
確定申告書等 | 直近1期分 |
履歴事項全部証明書 | 法人の場合。申請書提出日から3か月以内のもの |
株主・出資者名簿 | 申請日または事業承継の前日のもの |
補助対象従業員届出書 | 買い手支援Aの場合に必要 |
常時使用する従業員を証明する書類 | 買い手支援Aの場合に必要 |
その他必要書類 | 事業内容に応じて追加提出を求められる場合あり |
支援区分や法人・個人事業主の別、小規模事業者に該当するかどうかによって使用する様式が異なります。申請書類を提出する前に、公式ページの様式一覧と公募要領を確認しましょう。
本補助金の一般的な流れは以下のとおりです。
行程 | 内容 |
|---|---|
1. 事前相談 | かながわ中小企業成長支援ステーションへ電話で事前相談 |
2. 申請準備 | 支援区分、対象経費、見積書、必要書類を整理 |
3. 交付申請 | 申請書類一式を提出 |
4. 審査 | 県が申請内容を審査 |
5. 交付決定 | 交付決定通知書を受領 |
6. 補助事業着手 | 交付決定後に発注・契約・登録・申込等を実施 |
7. 補助事業完了 | 成果物の受領、サービス提供、支払いまで完了 |
8. 実績報告 | 完了後30日または令和9年3月23日のいずれか早い日までに提出 |
9. 実績審査 | 県が実績報告書類を確認 |
10. 補助金交付 | 適正に実施されたことが確認された場合に補助金を支払い |
11. 年次報告 | 令和9年9月および令和10年9月に交付後の状況を報告 |
補助金は後払いです。交付決定後に補助事業を実施し、経費の支払いを完了したうえで実績報告を行い、県の審査で適正に実施されたことが確認された場合に補助金が支払われます。
また、補助金の交付を受けた後も、令和9年9月および令和10年9月に、所定の様式で補助金交付後の状況を県へ報告する必要があります。
買い手支援Aでは、補助対象となった常時使用する従業員の雇用を維持しなかった場合、やむを得ない場合を除き、補助金の返還が求められることがあります。
交付決定日より前に、発注、契約、登録、申込、成果物の受領、支払いなどを行った経費は原則として補助対象外です。
特に、株価算定、企業価値算定、FA・仲介、デューデリジェンス、契約書レビューなどを専門家に依頼する場合、交付決定前に契約・発注・申込をしてしまうと対象外となる可能性があります。
事業承継の実施時期は支援区分によって取扱いが異なります。
第三者承継枠のうち、買い手支援B・売り手支援では、交付決定日より前に事業承継を実施したものは対象外です。一方で、買い手支援Aでは、令和7年4月1日より前に事業承継を実施したものが対象外とされています。
申請前に、どの支援区分を利用するのか、どの時点を事業承継の実施日と見るのか、専門家との契約日や支払日が補助対象期間内に収まるかを整理しておきましょう。
FA・仲介費用については、交付決定前にFA・仲介業務の委託契約を締結している場合でも、交付決定後に特定の相手方との交渉を開始し、交付決定後に基本合意・最終契約を締結して支払った成功報酬等は、条件を満たせば補助対象となる場合があります。
M&A仲介やFAを活用する場合は、契約締結日、交渉開始日、基本合意日、最終契約日、支払日、成果物の内容を整理し、事前相談時に補助対象となる範囲を確認しましょう。
本補助金は、親族承継枠と第三者承継枠に分かれており、支援区分ごとに対象経費や上限額が異なります。
親族に承継する場合は株価算定支援、第三者から事業を引き継ぐ場合は買い手支援、第三者へ譲渡する場合は売り手支援を検討しましょう。
また、補助対象となるには、経営権や事業の移転を伴う事業承継である必要があります。株式譲渡、持分譲渡、吸収合併、会社分割、事業譲渡など、どの方法で承継するのか、承継対象となる経営資源は何か、県内でどのように活用するのかを整理しましょう。
小規模事業者に該当する場合、補助率が3分の2以内となります。
業種ごとの従業員数基準や、常時使用する従業員に含める者・含めない者を確認し、自社が小規模事業者に該当するかを整理しておきましょう。
実績報告では、発注内容、契約内容、成果物、支払い、補助事業の完了を確認できる書類が必要です。
見積書、契約書、発注書、納品書、完了報告書、請求書、振込明細書、カード利用明細、通帳の写し、成果物、賃金台帳などを、支援区分に応じて整理しておきましょう。
また、補助事業に関係する書類は、補助事業年度終了後10年間保存し、県から求めがあった場合には閲覧できるようにしておく必要があります。
神奈川県事業承継補助金は、県内中小企業の事業承継を支援し、経営資源や雇用の喪失を防ぐための補助制度です。
親族承継枠では、親族への承継に向けた株価算定支援が対象となり、補助上限額は20万円です。第三者承継枠では、買い手支援A、買い手支援B、売り手支援があり、補助上限額はいずれも100万円です。補助率は原則2分の1以内、小規模事業者は3分の2以内です。
対象となる経費には、株価算定に係る専門家費用、第三者承継に伴う人件費、企業価値算定費用、デューデリジェンス費用、FA・仲介費用、契約書作成・レビュー費用、M&Aマッチングプラットフォーム利用料などがあります。
一方で、交付決定前の発注・契約・申込・支払い、交付決定前に実施した事業承継、同一内容での他補助金との重複、証拠書類が確認できない経費などは対象外となる場合があります。
申請を検討する場合は、まず神奈川県へ事前相談を行い、支援区分、事業承継の内容、補助対象経費、専門家との契約時期、実績報告期限を整理したうえで準備を進めましょう。
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