SDGsの実現に向けて、国や地方自治体は様々な補助金・助成金制度を整備しています。制度を効果的に活用することで、企業の持続可能な発展と社会課題の解決を同時に実現できます。
本記事では、SDGsに関連する主要な補助金・助成金制度と、申請時の重要なポイントを解説します。 SDGsに取り組まれている企業は対象になるものがないかチェックしてみてください。
SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、2030年までに世界が達成すべき17の目標を定めたものです。2015年の国連サミットで採択され、「誰一人取り残さない」という理念のもと、環境・社会・経済の調和のとれた発展を目指しています。
この17の目標には、「気候変動への具体的な対策」や「働きがいも経済成長も」など、企業活動に密接に関連する項目が多く含まれています。国際社会が直面する課題を解決するため、企業にも積極的な取り組みが求められています。
17の目標は以下の通りです。
貧困をなくそう
飢餓をゼロに
すべての人に健康と福祉を
質の高い教育をみんなに
ジェンダー平等を実現しよう
安全な水とトイレを世界中に
エネルギーをみんなにそしてクリーンに
働きがいも経済成長も
産業と技術革新の基盤をつくろう
人や国の不平等をなくそう
住み続けられるまちづくりを
つくる責任つかう責任
気候変動に具体的な対策を
海の豊かさを守ろう
陸の豊かさも守ろう
平和と公正をすべての人に
パートナーシップで目標を達成しよう
SDGsへの取り組みは、企業の持続的な成長に大きな効果をもたらします。環境や社会に配慮した経営は、投資家や消費者からの評価を高め、企業価値の向上につながります。また、社会課題の解決に向けた新製品・サービスの開発は、新たな市場開拓の機会となります。
さらに、SDGsの視点を経営に取り入れることで、環境規制の強化や社会構造の変化といった将来的なリスクにも対応できます。特に若い世代の従業員にとって、SDGsへの取り組みは仕事のやりがいにつながり、優秀な人材の確保・定着にも効果を発揮します。
経済産業省では、SDGsの目標達成に向けて、企業の事業転換や生産性向上、デジタル化を支援する補助金制度を設けています。2024年度は特に、脱炭素化や人手不足対策など、社会課題の解決に取り組む企業を重点的に支援します。
事業再構築補助金は、ポストコロナ時代における企業の思い切った事業転換を支援する制度です。新分野展開や業態転換、事業・業種転換など、持続可能な経営に向けた取り組みを後押しします。特に、グリーン分野やデジタル分野への展開を通じて、日本経済の構造転換を促進することを目指しています。
最大補助額は1.5億円と、大規模投資にも適用可能です。企業が既存のビジネスモデルを見直し、成長分野や新分野に挑戦する際の設備投資やシステム構築を支援することで、企業の持続可能な成長を実現します。
参考:事業再構築補助金とは?申請枠から補助額、対象者、対象経費まで詳しく解説
中小企業・小規模事業者の革新的な製品・サービス開発や生産プロセスの改善を支援する制度です。2024年度は特に、人手不足解消のための省力化投資や、DX(デジタルトランスフォーメーション)・GX(グリーントランスフォーメーション)分野の取り組みを重点的に支援しています。
最大補助額は8,000万円と、大規模な投資にも活用できます。一方で、要件として賃上げが必須の制度となっており、経営判断が必要となるでしょう。企業の生産性向上と持続的な賃上げを実現しながら、環境に配慮した生産体制の構築を促進するための制度です。
参考:ものづくり補助金とは?対象者や申請要件、補助額、申請方法をわかりやすく解説
中小企業・小規模事業者のデジタル化を促進し、生産性の向上を図る制度です。2024年度は、インボイス制度への対応やサイバーセキュリティ対策など、デジタル社会に対応した経営基盤の構築を支援しています。
企業のDX推進を通じて業務効率化を実現し、人手不足対策や働き方改革にも貢献します。また、デジタル化による生産性向上は、企業の持続的な成長と競争力強化につながります。
これらの補助金制度は、企業の持続可能な発展を支援しながら、SDGsが掲げる「働きがいも経済成長も」「産業と技術革新の基盤をつくろう」といった目標達成に貢献します。
参考:IT導入補助金とは?補助額や申請方法、スケジュール、注意点などを解説
厚生労働省では、SDGsの目標である「働きがいも経済成長も」「ジェンダー平等の実現」「人や国の不平等をなくそう」の達成に向けて、企業の取り組みを支援する助成金制度を設けています。特に、障害者雇用の促進、仕事と家庭の両立支援、人材育成の分野で充実した支援を展開しています。
障害のある方の職場定着と活躍を支援する制度です。
職場介助者の配置や手話通訳者の委嘱、相談窓口の設置など、障害特性に応じた職場環境の整備を支援します。
この制度により、障害者の雇用促進と働きやすい職場づくりを実現し、誰もが活躍できる社会の構築を目指しています。
仕事と育児・介護等の両立支援に取り組む企業向けの制度です。
男性の育児休業取得促進や育休からの円滑な職場復帰支援、介護との両立支援、不妊治療と仕事の両立支援など、従業員のライフステージに応じた支援体制の整備を後押しします。
この制度を通じて、誰もが働きやすい職場環境の実現を図ります。
参考:両立支援等助成金とは?各コースの申請要件、受給額と対象者
企業の人材育成を支援する制度です。
DXやグリーン分野等の成長分野での人材育成、職務に関連した知識・技能の習得、リスキリングの推進など、企業の持続的な成長に必要な人材開発を支援します。
この制度により、企業の競争力強化と従業員のキャリア形成を同時に実現します。
これらの助成金制度は、多様な人材が活躍できる職場づくりを通じて、持続可能な社会の実現に貢献します。
参考:人材開発支援助成金とは?人材開発支援助成金のコース内容や申請から受給の流れなどを解説
環境省では、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、地域の脱炭素化とレジリエンス強化を支援する複数の事業を展開しています。特に、再生可能エネルギーの導入促進と災害対策の両立を重視し、自治体や民間企業の取り組みを後押ししています。
地域の脱炭素化を加速させるため、意欲的な脱炭素事業に取り組む地方自治体を継続的に支援する制度です。
2030年度46%削減目標の達成に向けて、少なくとも100か所の「脱炭素先行地域」での取り組みと、脱炭素の基盤となる重点対策を全国で実施することを目指しています。
参考:環境省
民間企業の自家消費型・地産地消型の再生可能エネルギー導入を促進する事業です。
オンサイトPPAによる太陽光発電設備の導入や、新たな手法による再エネ導入など、企業の創意工夫を活かした取り組みを支援します。
オフサイトも含めた再エネ導入により、企業の脱炭素化とレジリエンス強化の両立を目指します。
参考:民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業
災害時でも機能を維持すべき公共施設への再生可能エネルギー設備等の導入を支援する事業です。
避難施設等として位置付けられた施設における太陽光発電や蓄電池の導入を通じて、地域の防災力強化と脱炭素化を同時に実現します。
平時の温室効果ガス削減と、非常時のエネルギー確保を両立することで、持続可能な地域づくりを推進します。
参考:環境省
全国の自治体では、地域の特性を活かしたSDGsの取り組みを支援するため、独自の補助金・助成金制度を設けています。企業の脱炭素化や地方創生、地域経済の活性化など、各地域の課題解決に向けた支援を展開しています。
2024年4月から始まった新制度で、区内企業の脱炭素化と生産性向上を支援します。製造業や研究開発企業等を対象に、建物付帯設備の改修や新増設を支援することで、地域産業の持続的発展を促進します。
助成率は対象経費の1/3で、製造業は最大1,000万円、研究開発企業等は最大500万円を支援します。従来の工場立地助成と研究開発拠点整備助成を統合し、より包括的な支援を実現しています。
参考:大田区
県外から長野県への本社機能の移転や拡充を支援する制度です。企業の地方分散を促進し、地域経済の活性化と雇用創出を目指します。
サテライトオフィスや育児支援施設など、多様な施設が支援対象となり、建物・設備の取得費用や賃貸料、雇用に係る経費を助成します。地域の持続可能な発展に向けて、企業誘致と働きやすい環境づくりを同時に推進しています。
参考:長野県企業立地ガイド
市内の中小企業がSDGsの理念に基づいて取り組む新製品開発を支援する制度です。再生可能エネルギーの利用促進や産業イノベーションなど、SDGsの目標達成に貢献する事業が対象となります。
補助上限額は100万円で、事業費の1/2を補助します。年間3件程度を採択し、地域企業の持続可能な取り組みを通じて、地域社会と経済の調和ある発展を目指します。
参考:福山市
SDGsに関連する補助金・助成金の採択を目指すには、制度の趣旨を十分に理解し、的確な申請書類を作成することが重要です。ここでは、申請を成功に導くための主要なポイントを解説します。
補助金・助成金の採択には、各制度の目的や対象事業との整合性が不可欠です。募集要項で示された要件を満たすことはもちろん、SDGsの17の目標や169のターゲットとの関連性を明確に示すことが求められます。
制度の趣旨を理解し、自社の取り組みがどのように社会課題の解決に貢献するのか、具体的に説明できることが重要です。
申請では、事業の目的、実施計画、期待される効果を具体的に示す必要があります。数値目標を設定し、達成までのプロセスを明確にすることで、事業の実現可能性と効果を説明します。
また、資金計画や実施体制についても、具体的で実現可能な内容を示すことが求められます。補助金の使途についても、対象経費の範囲内で効果的な活用方法を提案します。
申請書類の作成と提出は、定められたルールに従って厳格に行う必要があります。GビズIDの取得や事前相談など、準備に時間を要する手続きもあるため、余裕を持った計画が重要です。
特に提出期限は厳守です。申請書類の不備や記載内容の誤りがないよう、十分な確認時間を確保することが大切です。
SDGsへの取り組みを支援する補助金・助成金制度は、企業の持続可能な発展に向けた重要な支援策となっています。
これらの制度は、経済産業省による事業再構築や生産性向上の支援、厚生労働省による働き方改革や人材育成の支援、環境省による脱炭素化の支援など、多岐にわたります。
さらに、各地方自治体も独自の支援制度を設け、地域の特性に応じたSDGsの取り組みを後押ししています。これらの制度を効果的に活用することで、企業は社会課題の解決と事業の発展を同時に実現できます。
申請にあたっては、制度の趣旨を十分に理解し、募集要項に沿った計画を立案することが重要です。また、具体的な目標設定と実現可能な実施計画の提示、期限を守った適切な申請手続きが求められます。
SDGsの達成には、企業の積極的な参画が不可欠です。これらの支援制度を活用し、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを加速させることが期待されます。
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