共働き世帯が高水準となった一方、仕事と家庭の両立を支援するためには、公的な支援の活用が欠かせません。
厚生労働省が制定した制度のひとつ「両立支援等助成金」は、仕事と家庭の両立を可能とする職場環境づくりを支援する助成金です。
両立支援等助成金とは一体どのような助成金なのか、本記事で解説します。
両立支援等助成金とは、従業員が離職することなく、育児や介護などと両立して仕事ができる制度を導入した事業主に対して支払われる助成金です。2026年現在、少子高齢化対策として国は育児休業給付の手取り10割化や時短勤務への給付を強力に推進しており、企業側への資金面でのバックアップとして本制度の重要性が高まっています。
両立支援等助成金には「出生時両立支援コース」「介護離職防止支援コース」「育児休業等支援コース」「育休中等業務代替支援コース」「柔軟な働き方選択制度等支援コース」「不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース」の6つのコースがあります。
本記事では、令和8年度(2026年4月〜)の最新内容に基づき、各コースの要件と助成額をわかりやすく解説します
令和8年度の主な変更点は4点です。
出生時両立支援コースの対象が「中小企業」から「常時雇用労働者300人以下の企業全体」に拡大。
育休中等業務代替支援コースの新規雇用における最大支給額引き上げ(1年以上の代替期間で最大81万円、プラチナくるみん認定は99万円)。
介護離職防止支援コースに有給介護休暇制度導入への助成が新設(30万円〜50万円)。
柔軟な働き方選択制度等支援コースに障害のある子や医療的ケアが必要な子を持つ労働者向けの加算(20万円)が追加。
男性の育休取得率は年々上昇しており、政府は2025年までに30%を目標として掲げてきましたが、国際的に見てもまだ低い水準にあります。
「子育てパパ支援助成金」とも呼ばれるこのコースでは、男性従業員の育休取得率を上げることを目的としています。育休を取得しやすい職場環境の整備や業務体制を整えた事業主に対して、以下の助成金が支払われます。
なお、令和8年度より対象が「中小企業」から「常時雇用労働者300人以下の企業全体」に拡大されました(支給額は変更なし)。
労働者が介護を行うために、介護休業の取得・復帰のハードルを下げる・柔軟な働き方制度を導入するといった取り組みを行う事業主に対して、以下の助成金が支払われます。令和8年度より有給の介護休暇制度を導入した場合の助成が新設されました。
労働者の育児休業取得および職場復帰を円滑にするため、取り組みを行っている事業者に対して、以下の助成金が支払われます。
育児休業または育児短時間勤務の期間中、業務を代替する周囲の従業員への手当支給や代替要員の新規雇用(派遣受入を含む)を実施した事業主に支給されます。令和8年度より新規雇用の最大支給額が引き上げられました。
種別 | 助成金額 |
|---|---|
手当支給等 | 最大10万円/人 |
新規雇用(6か月以上) | 最大67.5万円 |
新規雇用(1年以上) | 最大81万円(プラチナくるみん認定は最大99万円) |
育児中の労働者に対し、時短勤務・フレックスタイム・テレワークなど柔軟な働き方を選択できる制度を導入した事業主に支給されます。令和8年度より、障害のある子や医療的ケアが必要な子を持つ労働者を対象に制度利用期間を18歳の年度末まで延長した場合に20万円が加算されるようになりました。詳細な支給額はコース内の選択制度の組み合わせによって異なるため、厚生労働省の最新の支給要領をご確認ください。
労働者が不妊治療を受けるため、休暇取得・労働制限・勤務時間の調整などを行なった事業主に対して、以下の助成金が支給されます。
種別 | 助成金額 |
|---|---|
休暇取得などの制度利用 | 28.5万円<36万円> |
長期休暇の加算 (休暇制度を連続20日以上取得させ、復帰後3か月以上継続勤務させた) | 28.5万円<36万円> |
両立支援等助成金は、全ての事業主が受け取れるものではなく、中小企業の事業主のみが受け取れます。中小企業の範囲と、条件にあがることが多い生産性要件について、以下でしっかりと確認しておきましょう。
中小企業事業主の範囲は、厚生労働省により以下のとおり規定されています。
業種 | 条件 |
|---|---|
小売業(飲食業を含む) | 常時雇用する労働者が50人以下 もしくは資本額または出資額が5千万円以下 |
サービス業 | 常時雇用する労働者が100人以下 もしくは資本額または出資額が5千万円以下 |
卸売業 | 常時雇用する労働者が100人以下 もしくは資本額または出資額が1億円以下 |
その他 | 常時雇用する労働者が300人以下 もしくは資本額または出資額が3億円以下 |
生産性要件とは、助成金支給の際に生産性の伸び率が一定の条件を満たしていると、助成金が割増される制度です。
少子化に伴い、労働人口の減少が懸念される中、労働生産性を高める取り組みが不可欠となっています。生産性向上に向けた取り組みの支援を目的として、生産性要件が設定されているのです。
生産性要件を満たすには、生産性が一定数値以上の伸び率を記録し、金融機関から事業性評価を得ていることが条件です。具体的に算定するには、厚生労働省のホームページから「生産性要件算定シート」をダウンロードし、事業者の損益計算書や総勘定元帳などから項目を転記しましょう。
両立支援等助成金の支給要綱は、厚生労働省のホームページに掲載されています。 申請に必要な書類はコースごとで異なるため、ここでは出生時両立支援コース(第1種)について解説します。必要書類は以下のとおりです。
【両立支援等助成金(出生時両立支援コース/第1種)支給申請時提出書類一覧】
両立支援等助成金(出生時両立支援コース/第1種)支給申請書
労働協約又は就業規則の写し
育児・介護休業規程の写し
育児・介護に係る労使協定の写し
常時10人未満の労働者を雇用する事業主(就業規則の作成及び労働基準監督署への届出義務のない)が、就業規則の作成・届出をしていない場合、労働者に周知されていることを確認できる書類(メール・回覧など)の写し
労働者に対する育児休業にかかる研修開催の案内、研修の実施要領、育児休業に関する相談窓口設置の案内などが分かる書類の写し
育児休業取得者の業務の整理、引継ぎに関する事項が含まれた書類の写し
対象労働者の育児休業申出書の写し(申出日が明記されているもの)
対象労働者の就労実績が確認できる書類の写し(育児休業前1か月分及び育児休業期間分)
労働条件通知書、雇用契約書・就業規則などの写し
母子健康手帳の子の出生を証明する該当部分などの写し
別途、審査に必要な書類の提出を求められた場合は、指示に従いましょう。すべての書類が揃っていないと、受理されませんので注意しましょう。
上記の書類以外に、代替要因加算を申請する場合は、以下の書類も必要です。
代替要員の部署・職務・所定労働時間等が確認できる書類の写し
代替要員の就業実績が確認できる書類の写し
代替要員の雇用開始時期もしくは派遣開始時期が確認できる書類の写し
申請期限は、産後8週間以内に開始する連続5日以上の育児休業を取得し、育児休業終了日の翌日から起算して2か月以内です(申出に係る4日以上が、所定労働日に対する休業であることが条件)。
申請は、各都道府県の労働局雇用環境・均等部(室)へ、来客または郵送で提出しましょう。郵送の場合は、申請期限内に労働局へ到着しなくてはいけません。消印の日付が申請期間内であっても、到着日が申請期限を過ぎてしまうと、申請されたと認められなくなってしまいます。
両立支援等助成金は、子育てや介護と仕事を両立できる職場環境づくりに必要な制度です。
男性の育休がまだまだ取りづらいことや、仕事を続けたくとも子育てや介護と両立できずに退職する人も増える中、企業のサポートは欠かせません。企業側から見ても、生産性向上やイメージアップにつながるため、助成金を積極的に活用することが大切です。
本記事で紹介した内容を参考に、スムーズな申請を行えるよう準備を進めていきましょう。