東京都内の中小企業等を対象に、経営基盤の強化に向けた取り組みを支援する制度として、「経営力強化に向けた創意工夫チャレンジ促進事業」が実施されています。
本事業は、事業環境の変化を課題と捉え、事業者が創意工夫のもとで行う経営改善や、新市場・新分野への進出を支援する制度です。
既存事業の深化・発展に取り組む場合だけでなく、賃金引上げを伴う経営改善や、新製品・新サービスを通じた新市場への進出にも活用できる可能性があります。
本事業には、以下の3つのコースがあります。
業務改善コース
賃上げ重点コース
新市場・新分野進出コース
各コースによって、対象となる取り組みや助成限度額、助成率、必要な要件などが異なります。
本記事では、「経営力強化に向けた創意工夫チャレンジ促進事業」の概要から3つのコースの違い、対象経費、申請時の注意点までわかりやすく解説します。
経営力強化に向けた創意工夫チャレンジ促進事業は、東京都内の中小企業等が、経営基盤の強化に向けて実施する取り組みに対して、必要な経費の一部を助成する制度です。
事業環境の変化を課題と捉えた中小企業等が、創意工夫のもとで既存事業の深化・発展や、新市場・新分野への進出に取り組むことを支援します。
令和8年度は、取り組みの内容に応じて3つのコースが設けられています。
コース | 主な対象 |
|---|---|
業務改善コース | 既存事業の深化・発展に取り組む経営改善 |
賃上げ重点コース | 既存事業の深化・発展に加え、賃金引上げに取り組む経営改善 |
新市場・新分野進出コース | 新製品・新サービスの開発・導入と、新市場・新分野への進出 |
制度の概要は以下のとおりです。
項目 | 内容 |
|---|---|
対象者 | 一定の業績要件等を満たす東京都内の中小企業等 |
コース | 業務改善コース、賃上げ重点コース、新市場・新分野進出コース |
助成限度額 | 業務改善・賃上げ重点:600万円、新市場・新分野進出:1,000万円 |
助成率 | 2/3〜4/5 ※コース・事業者区分・賃金引上げ計画の有無等により異なる |
助成対象期間 | 原則として交付決定日から1年間 |
申請方法 | Jグランツによる電子申請 |
必要なID | gBizIDプライム |
また、助成金に採択された中小企業等を対象として、専門家派遣も実施されます。
業務改善コース・賃上げ重点コースでは1社あたり最大2回、新市場・新分野進出コースでは最大10回の専門家派遣を受けられます。
本事業の対象となるのは、募集要項で定められた要件を満たす東京都内の中小企業等です。
主な業績要件として、以下のいずれかに該当することが求められます。
要件 | 内容 |
|---|---|
営業利益の減少 | 直近決算期の営業利益が前期決算期と比較して減少している |
損失計上 | 直近決算期において損失を計上している |
ただし、これらは申請要件の一部です。
実際に申請する際には、東京都内で事業を行う中小企業者等であることをはじめ、各コースの募集要項に定められた要件を満たす必要があります。
また、賃上げ重点コースでは、これらの要件に加えて賃金引上げ計画を策定する必要があります。
そのため、申請前には直近決算期の営業利益や損失の状況だけでなく、自社が中小企業者等の要件やその他の申請要件を満たしているか確認しておくことが重要です。
本事業は3つのコースに分かれており、助成限度額や助成率、対象となる取り組みが異なります。
簡単に整理すると、既存事業の生産性向上や競争力強化を目的とする場合は「業務改善コース」が候補となります。
既存事業の改善に加えて、従業員の賃金引上げにも取り組む場合は「賃上げ重点コース」が候補です。
一方、新製品・新サービスを開発・導入し、これまでとは異なる市場や分野に進出する場合は「新市場・新分野進出コース」が候補となります。
なお、賃上げ重点コースや、新市場・新分野進出コースで賃金引上げによる助成率の優遇を受ける場合は、所定の賃金引上げ要件を満たす必要があります。
業務改善コースは、事業環境の変化を課題と捉え、既存事業の「深化」または「発展」に取り組む事業者を支援するコースです。
既に営んでいる事業の質を高めたり、既存事業を基礎として新たな商品・サービスや提供方法を導入したりする取り組みが対象となります。
業務改善コースでは、既存事業の「深化」と「発展」が対象となります。
たとえば、製造業で高性能な設備を導入し、加工精度や生産能力を高める取り組みなどが考えられます。
また、小売業・サービス業で既存サービスの品質を高めたり、これまでとは異なる提供方法を導入したりする取り組みも対象となる可能性があります。
項目 | 内容 |
|---|---|
助成限度額 | 600万円 |
助成率 | 助成対象経費の2/3以内 |
助成対象期間 | 原則として交付決定日から1年間 |
業務改善コースは、既存事業をベースに設備投資やシステム導入などを行い、競争力や生産性を高めたい事業者に適したコースです。
主な対象経費として、以下のような経費があります。
経費区分 | 主な内容 |
|---|---|
原材料・副資材費 | 助成事業の実施に必要な原材料・副資材 |
機械装置・工具器具費 | 取り組みに必要な機械装置、工具、器具等 |
委託・外注費 | 開発、設計、加工、調査等の外部委託 |
産業財産権出願・導入費 | 特許・実用新案・意匠・商標等に係る費用 |
規格等認証・登録費 | 規格認証・登録等に必要な費用 |
設備等導入費 | 経営改善に必要な設備等 |
システム等導入費 | 業務改善や生産性向上等に必要なシステム |
専門家指導費 | 専門家からの助言・指導等 |
不動産賃借料 | 助成事業の実施に必要な不動産の賃借 |
販売促進費 | 助成事業に係る販売促進 |
その他経費 | 募集要項で対象として認められる経費 |
ただし、経費区分ごとに詳細な対象要件や上限等が定められている場合があります。
また、市場調査費や専門家指導費、販売促進費、その他経費など、一部の経費については単独での申請が認められないため注意が必要です。
以下のような取り組みは対象外となります。
申請者がこれまで営んできた事業との関連性が薄い、または全くない取り組み
法令改正への対応など、義務的な取り組み
単なる老朽設備の維持・更新など、競争力や生産性の向上に寄与しない取り組み
そのため、「古くなった設備を新しくしたい」という理由だけではなく、設備導入によってどのように生産性や競争力、サービス品質が向上するのかを事業計画で説明することが重要です。
賃上げ重点コースは、既存事業の深化・発展に取り組むとともに、従業員の賃金引上げにも取り組む事業者を支援するコースです。
対象となる取り組みの方向性は業務改善コースと近いですが、所定の賃金引上げ計画を策定・実施することで、業務改善コースより高い助成率が設定されています。
賃上げ重点コースでも、既存事業の「深化」と「発展」が対象となります。
業務改善コースとの大きな違いは、賃金引上げに取り組むことを前提として、より高い助成率が設定されている点です。
項目 | 内容 |
|---|---|
助成限度額 | 600万円 |
助成率 | 3/4以内 |
小規模事業者の助成率 | 4/5以内 |
助成対象期間 | 原則として交付決定日から1年間 |
設備投資やシステム導入による経営改善とあわせて、従業員の待遇改善にも取り組みたい事業者に適したコースといえます。
主な対象経費は以下のとおりです。
経費区分 | 主な内容 |
|---|---|
原材料・副資材費 | 助成事業に必要な原材料・副資材 |
機械装置・工具器具費 | 生産性向上や品質向上等に必要な機械装置、工具、器具等 |
委託・外注費 | 開発、設計、加工、調査等の外部委託 |
産業財産権出願・導入費 | 特許・実用新案・意匠・商標等に係る費用 |
規格等認証・登録費 | 規格認証・登録等に必要な費用 |
設備等導入費 | 経営改善に必要な設備等 |
システム等導入費 | 業務改善・生産性向上等に必要なシステム |
専門家指導費 | 専門家からの助言・指導等 |
不動産賃借料 | 助成事業の実施に必要な不動産の賃借 |
販売促進費 | 助成事業に係る販売促進 |
その他経費 | 募集要項で対象として認められる経費 |
業務改善コースと同様、経費によって単独申請できないものや対象範囲に制限があるため、募集要項を確認する必要があります。
賃上げ重点コースでは、設備投資や業務改善だけでなく、募集要項で定められた賃金引上げの要件を満たすことが重要です。
助成率の高さだけでコースを選択するのではなく、事業計画や将来の人件費、資金繰りなどを踏まえ、継続可能な賃金引上げ計画を策定する必要があります。
また、業務改善コースや新市場・新分野進出コースとの重複申請はできません。
新市場・新分野進出コースは、新製品・新サービスを開発・導入し、新たな市場や分野へ進出する事業者を支援するコースです。
3つのコースの中で最も助成限度額が高く、最大1,000万円の助成を受けられる可能性があります。
重要なのは、単に既存事業を改善するだけではなく、「新製品・新サービス」と「新市場・新分野への進出」の両方が求められる点です。
たとえば、以下のような取り組みが考えられます。
自社が培った技術やノウハウを別の市場・分野へ転用し、新製品・新サービスを開発する
既存のBtoB事業で得た技術等を活用し、新たに一般消費者向けのBtoC市場に進出する
既存事業の資産やノウハウを活用し、新たな顧客層に向けた商品・サービスを展開する
これまで提供していなかった機能・サービスを新たに提供し、新たな顧客層を開拓する
産業財産権等を活用して新製品・新サービスを開発し、新たな市場を開拓する
このコースでは、新市場へ進出するだけでなく、その市場に向けた新製品・新サービスの開発・導入が必要です。
そのため、既存商品をほぼそのまま別の地域や顧客層に販売するだけの場合は、対象とならない可能性があります。
項目 | 内容 |
|---|---|
助成限度額 | 1,000万円 |
通常助成率 | 2/3以内 |
賃金引上げ計画を策定する場合 | 3/4以内 |
小規模事業者が所定の賃金引上げに取り組む場合 | 4/5以内 |
助成対象期間 | 原則として交付決定日から1年間 |
新たな事業展開に必要な設備やシステムなどへの比較的大きな投資を検討している事業者にとって、活用を検討しやすいコースです。
主な対象経費は以下のとおりです。
経費区分 | 主な内容 |
|---|---|
原材料・副資材費 | 新製品・新サービス等に必要な原材料・副資材 |
機械装置・工具器具費 | 新製品・新サービス開発や新市場進出等に必要な機械装置、工具、器具 |
委託・外注費 | 開発、設計、加工、調査等の外部委託 |
産業財産権出願・導入費 | 特許・実用新案・意匠・商標等に係る費用 |
規格等認証・登録費 | 新市場展開等に必要な規格認証・登録 |
設備等導入費 | 新たな事業展開に必要な設備等 |
システム等導入費 | 新製品・新サービス提供や新市場展開等に必要なシステム |
専門家指導費 | 専門家からの助言・指導等 |
不動産賃借料 | 助成事業の実施に必要な不動産の賃借 |
販売促進費 | 新たな取り組みに係る販売促進 |
その他経費 | 募集要項で対象として認められる経費 |
一部の経費は単独申請できず、単独申請不可の経費だけを組み合わせて申請することもできない場合があります。
また、販売促進費についても、既存事業の通常の販売促進ではなく、助成対象となる新たな取り組みに必要なものとして認められる必要があります。
新市場・新分野進出コースでは、以下のような取り組みは対象外となる可能性があります。
すでに売上実績があり、提供体制が確立されている取り組み
既存製品・サービスをそのまま別の市場へ展開する取り組み
高性能な機器・設備の導入を中心とした既存事業の競争力強化
高効率機器・省エネ機器等の導入による既存事業の生産性向上
法令改正への対応など、義務的な取り組み
単なる老朽設備の維持・更新
既存事業の深化・発展が中心の場合は、業務改善コースまたは賃上げ重点コースが適している可能性があります。
新市場・新分野進出コースを利用する場合は、「何が新しい商品・サービスなのか」「どの市場・分野が新しいのか」を明確に整理する必要があります。
一般的な申請から助成金受給までの流れは以下のとおりです。
申請には、Jグランツで利用する「gBizIDプライム」が必要です。
gBizIDプライムの取得には一定の期間を要します。公式案内では審査に時間がかかる場合があるため、申請期限の直前ではなく、余裕を持って取得しておくことが重要です。
本事業では、3つのコースを重複して申請することはできません。
たとえば、業務改善コースと賃上げ重点コースを同時に申請したり、業務改善コースと新市場・新分野進出コースの両方へ申請したりすることはできません。
自社の取り組み内容を整理したうえで、最も適したコースを1つ選択する必要があります。
また、「令和8年度中小企業収益力強化サポート事業」のハンズオン支援の決定通知を受けた事業者についても、本事業への申請に制限があります。
さらに、国・東京都・区市町村などの他の補助金・助成金を利用する場合も、同一の事業内容や経費について重複して助成を受けることは原則としてできません。
申請前には、少なくとも以下を確認しておきましょう。
3つのコースのうち、どのコースが自社に適しているか
他コースへ重複申請していないか
中小企業収益力強化サポート事業との関係に問題がないか
申請する取り組みが選択したコースの趣旨に合っているか
事業内容や経費について他の補助金・助成金との重複がないか
本事業では、単に「設備を購入したい」「新しいシステムを導入したい」という理由だけではなく、その投資によってどのように経営基盤を強化するのかを明確にすることが重要です。
まず重要なのは、自社が実施する取り組みがどのコースに該当するのかを整理することです。
既存事業の競争力強化や生産性向上が目的であれば「業務改善コース」が候補となります。
同様の取り組みに加えて、所定の賃金引上げに取り組む場合は「賃上げ重点コース」が候補です。
一方、新製品・新サービスを開発・導入し、これまでとは異なる市場や顧客層に進出するのであれば「新市場・新分野進出コース」が候補となります。
取り組み内容とコースの目的が合っていない場合、審査で適切に評価されない可能性があるため注意しましょう。
業務改善コース・賃上げ重点コースでは、既存事業の「深化」または「発展」が対象です。
たとえば、既存工場に高性能な設備を導入して生産能力を高める取り組みは「深化」に近いと考えられます。
既存事業で培ったノウハウをもとに、新商品や新しいサービス提供方法を導入する場合は「発展」に該当する可能性があります。
一方、新市場・新分野進出コースでは、新製品・新サービスの開発・導入と、新たな市場・分野への進出を組み合わせることが重要です。
自社の取り組みがどの分類に当てはまるのかを事前に整理しておきましょう。
設備やシステムを導入する場合は、その投資が経営改善や新市場進出にどのように必要なのかを説明する必要があります。
たとえば、
作業時間を何時間削減できるのか
生産能力をどの程度向上できるのか
新たにどのような製品・サービスを提供できるのか
どのような新規顧客を獲得できるのか
売上や付加価値の向上にどのようにつながるのか
などを具体的に示すことが重要です。
単なる老朽化による買い替えや、法令対応のみを目的とした投資は対象外となる可能性があります。
本事業では販売促進に関する経費も対象となる場合がありますが、申請する取り組みとの関連性が求められます。
チラシやWeb広告、ホームページ制作などを計上する場合は、通常の営業活動に係る経費なのか、助成事業として実施する新たな取り組みに直接必要な経費なのかを明確にする必要があります。
また、経費区分によっては単独で申請できないものもあるため、募集要項を確認しましょう。
賃上げ重点コースや、新市場・新分野進出コースで賃金引上げによる高い助成率を活用する場合は、所定の賃金引上げ要件への対応が必要です。
助成率だけを理由に無理な賃上げ計画を立てるのではなく、将来の売上や利益、人件費、資金繰りなども考慮して、継続可能な計画を立てることが重要です。
なお、賃金引上げ計画を達成すると、助成金は2回に分かれて交付されます。
本事業はJグランツによる電子申請となるため、「gBizIDプライム」の取得が必要です。
アカウント取得には一定の期間を要する場合があります。
申請期限直前に手続きを始めると申請に間に合わない可能性があるため、本事業の活用を検討する段階で早めに取得しておくことをおすすめします。
「経営力強化に向けた創意工夫チャレンジ促進事業」は、東京都内の中小企業等による経営基盤の強化を支援する助成制度です。
令和8年度は、取り組み内容に応じて3つのコースが用意されています。
業務改善コースでは、既存事業の深化・発展に取り組む場合に、最大600万円、助成率2/3以内の支援を受けられる可能性があります。
賃上げ重点コースでは、既存事業の深化・発展と賃金引上げに取り組むことで、最大600万円、助成率3/4以内、小規模事業者は4/5以内の支援を受けられる可能性があります。
新市場・新分野進出コースでは、新製品・新サービスの開発・導入と新市場・新分野への進出に取り組む場合、最大1,000万円の助成を受けられる可能性があります。
一方で、単なる老朽設備の更新や法令対応などは対象とならない場合があります。
また、3つのコースを重複して申請することはできないため、自社の取り組みが、
既存事業の「深化・発展」なのか
賃金引上げを伴う経営改善なのか
新製品・新サービスによる「新市場・新分野進出」なのか
を整理したうえで、適切なコースを選択することが重要です。
設備投資やシステム導入、新商品・新サービスの開発を検討している東京都内の中小企業は、自社の計画が対象となるか早めに確認しておきましょう。
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