海外市場へ進出するとき、自社の商品名や技術、デザインを外国でも守るために重要となるのが、特許・商標などの知的財産権です。
しかし、外国出願には現地代理人への手数料、翻訳費、各国の特許庁へ納める出願手数料などがかかり、中小企業にとって大きな負担となる場合があります。
そこで活用を検討したいのが、「中小企業等海外展開支援事業費補助金(海外出願支援事業)」です。
千葉県では、公益財団法人千葉県産業振興センターが窓口となり、県内中小企業者等による外国への特許・実用新案・意匠・商標の出願費用を支援しています。
令和8年度は、補助対象経費の2分の1以内、1企業当たり最大300万円の補助を受けられる制度として実施されました。
なお、令和8年度の募集期間は2026年5月7日から6月5日までで、すでに受付を終了しています。
本記事では、令和8年度の千葉県の公募内容をもとに、補助対象者や補助額、対象となる外国出願、申請方法、注意点などを詳しく解説します。
中小企業等海外展開支援事業費補助金(海外出願支援事業)は、海外での事業展開を目指す中小企業者等が、外国で特許・商標などの知的財産権を取得するための出願費用を支援する制度です。
日本国内で特許権や商標権を取得していても、その権利が外国でそのまま保護されるわけではありません。
例えば、日本で登録している商品名を米国や中国でも保護するためには、原則として各国・地域で権利を取得する必要があります。
本補助金は、このような外国出願に伴う経費負担を軽減し、中小企業の戦略的な海外展開を支援することを目的としています。
項目 | 内容 |
|---|---|
制度名 | 中小企業等海外展開支援事業費補助金(海外出願支援事業) |
実施機関 | 公益財団法人千葉県産業振興センター |
補助対象者 | 千葉県内に本社または事業所を有する中小企業者等 |
対象となる出願 | 特許・実用新案・意匠・商標 |
補助率 | 補助対象経費の2分の1以内 |
補助上限額 | 1企業当たり300万円 |
主な対象経費 | 外国特許庁への出願料、国内代理人費用、現地代理人費用、翻訳費用 |
募集期間 | 2026年5月7日~6月5日17時必着 |
外国出願期限 | 交付決定日~2026年12月末日 |
申請方法 | 持参または郵送。一部情報はJグランツでも入力可能 |
公募状況 | 令和8年度の受付終了 |
海外展開を支援する補助金には、展示会への出展費用、広告宣伝費、越境ECサイトの構築費などを支援する制度もあります。
一方、海外出願支援事業は、外国で知的財産権を取得するための出願費用を主な支援対象としています。
比較項目 | 海外出願支援事業 | 海外販路開拓型の補助金 |
|---|---|---|
主な目的 | 外国での知的財産権の取得 | 海外での販路開拓・売上拡大 |
対象経費 | 外国出願料、代理人費用、翻訳費等 | 展示会出展費、広告費、EC構築費等 |
主な取組 | 特許・商標等の外国出願 | 海外での商品PR、商談、販売促進 |
活用目的 | 技術やブランドの保護 | 顧客獲得や海外売上の拡大 |
海外進出には、知的財産の保護と販路開拓の両方が重要です。自社の事業計画に応じて、それぞれに適した支援制度を検討するとよいでしょう。
令和8年度の千葉県の公募では、県内に本社または事業所を有する中小企業者等が対象でした。
法人だけでなく、個人事業主も申請対象に含まれています。
項目 | 要件 |
|---|---|
所在地 | 千葉県内に本社または事業所があること |
企業規模 | 中小企業支援法に規定された中小企業者であること |
個人事業主 | 対象 |
グループ申請 | 構成員の3分の2以上が中小企業者であることなど |
代理人との協力 | 国内弁理士等の協力を得られること、または直接外国代理人へ依頼する場合に同等の書類を提出できること |
フォローアップ | 事業終了後の調査に協力すること |
過去の交付実績 | 必要なフォローアップ調査を提出していること |
なお、地域団体商標の外国出願については、事業協同組合などの組合、商工会、商工会議所、NPO法人なども対象に含まれます。
令和8年度の公募では、申請時点で日本国特許庁に特許、実用新案、意匠、商標のいずれかを出願していることが要件でした。
また、外国出願は国内出願と同じ内容に基づくものである必要があります。
国内出願をしていない場合は、内容が類似していても補助対象にはなりません。
さらに、国内出願と外国出願の名義は、原則として申請者である中小企業者等の名義である必要があります。
例えば、国内出願が社長個人の名義になっている場合は、原則として申請時までに企業名義へ変更しておく必要があります。
本補助金では、特許、実用新案、意匠、商標の外国出願が対象となります。
権利の種類 | 主な保護対象 | 活用例 |
|---|---|---|
特許 | 技術的な発明 | 製造技術、新素材、制御技術 |
実用新案 | 物品の形状・構造等に関する考案 | 工具、部品、日用品の構造 |
意匠 | 製品等のデザイン | 容器、家具、工業製品、画面デザイン |
商標 | 商品名、ブランド名、ロゴなど | 商品ブランド、サービス名称 |
抜け駆け対策商標 | 第三者による商標の先取りへの対策 | 海外でのブランド保護 |
特許は、技術的な発明を保護する制度です。
例えば、独自の製造方法や製品構造、制御技術などについて、外国でも権利取得を目指す場合に活用できます。
実用新案は、物品の形状や構造などに関する考案を保護する制度です。ただし、国によって制度の有無や保護対象が異なるため、出願先の制度を確認する必要があります。
意匠は、製品や部品などのデザインを保護する制度です。
家具、容器、機械装置の外観などを外国で保護したい場合に活用できます。
外国でデザインの模倣を防止したい企業にとって、重要な知的財産権の一つです。
商標は、商品名やブランド名、ロゴなどを保護する制度です。
海外で自社ブランドを展開する場合、第三者に類似する商標を出願・登録されるリスクがあります。
本補助金では、こうした第三者による先取りを防止するための「抜け駆け対策商標」の外国出願も支援対象となっています。
令和8年度の補助率は、補助対象経費の2分の1以内です。
1企業当たりの補助上限額は合計300万円ですが、出願する権利の種類によって1案件当たりの上限額が異なります。
区分 | 補助上限額 |
|---|---|
1企業当たり | 300万円 |
特許出願 | 150万円 |
実用新案 | 60万円 |
意匠 | 60万円 |
商標 | 60万円 |
抜け駆け対策商標 | 30万円 |
補助率:2分の1以内
※補助金額は千円未満切り捨てです。
複数の出願案件を申請する場合でも、1企業当たりの補助額は合計300万円が上限となります。
また、同一案件について千葉県産業振興センターと他の実施機関へ重複して申請することはできません。
例えば、特許の外国出願に200万円の補助対象経費がかかる場合、補助率2分の1で計算すると100万円の補助を受けられる可能性があります。
補助対象経費 | 補助金額の目安 | 自己負担の目安 |
|---|---|---|
特許出願100万円 | 50万円 | 50万円 |
特許出願200万円 | 100万円 | 100万円 |
特許出願400万円 | 150万円 | 250万円 |
商標出願80万円 | 40万円 | 40万円 |
商標出願150万円 | 60万円 | 90万円 |
※補助率2分の1を適用し、権利種別ごとの上限額を考慮した単純計算です。実際の交付額は、対象経費の認定や審査結果などによって異なります。
令和8年度の募集では、外国出願に直接必要となる以下の経費が補助対象とされていました。
対象経費 | 内容 |
|---|---|
外国特許庁への出願料 | 外国特許庁等に納付する出願手数料 |
国内代理人費用 | 国内弁理士等が外国出願を行うための費用 |
現地代理人費用 | 外国の弁理士・代理人等への費用 |
翻訳費用 | 外国出願に必要な明細書等の翻訳費用 |
外国出願では、国内の弁理士等が出願手続きを支援し、現地代理人と連携して申請するケースがあります。
こうした外国出願に直接必要な代理人費用は補助対象となります。
ただし、外国出願とは関係のない相談費用や調査費用などは、対象経費として認められない場合があります。
見積書では、各業務の内容と金額を明確にしておくことが重要です。
外国出願には、出願先の国や地域で指定された言語への翻訳が必要になる場合があります。
特に特許出願では、明細書や請求項などの翻訳費用が高額になることがあります。
令和8年度は、外国出願に必要な翻訳費用も補助対象でした。
ただし、交付決定前に翻訳を正式発注していた場合は、補助対象外となるため注意が必要です。
令和8年度の募集では、交付決定後に発注・契約、実施、支払いを行うことが必要でした。
交付決定前に着手した案件は補助対象外となります。
例えば、申請前に外国出願のための翻訳を正式に依頼していた場合、その案件は補助対象外となるため、手続きの順番を確認する必要があります。
令和8年度の千葉県の募集期間は、2026年5月7日から6月5日午後5時まででした。
また、交付決定後の外国出願についても期限が設けられていました。
項目 | 令和8年度の日程 |
|---|---|
募集開始 | 2026年5月7日 |
申請締切 | 2026年6月5日17時必着 |
外国出願開始 | 交付決定日以降 |
外国出願の期限 | 2026年12月末日 |
公募状況 | 受付終了 |
令和8年度の補助対象となるには、交付決定日以降、2026年12月末日までに外国特許庁への出願または指定国への国内移行を完了する必要がありました。
次年度以降の申請を検討する場合は、募集期間だけでなく、外国出願の完了期限も確認することが重要です。
令和8年度は、公益財団法人千葉県産業振興センターへ申請書類を持参または郵送する方式でした。
Jグランツによる申請にも一部対応していましたが、企業情報などの基礎情報のみ入力可能で、出願に関する資料や申請書類の提出は持参または郵送が必要でした。
令和8年度の制度内容をもとに、申請から補助金交付までの主な流れを整理すると、以下のようになります。
国内出願や申請資格を確認する
外国出願の対象国・権利の種類を決める
弁理士等へ相談し、見積書を取得する
申請書類と海外事業計画を準備する
千葉県産業振興センターへ申請する
書面審査を受ける
採択・交付決定後に外国出願を行う
実績報告・補助金額の確定を経て補助金を受け取る
令和8年度の選考は書面審査によって実施されました。
書類 | 主な内容 |
|---|---|
間接補助金交付申請書 | 申請内容、補助対象事業、申請金額 |
協力承諾書 | 選任代理人の協力に関する書類 |
登記簿謄本の写し | 法人情報の確認 |
会社の事業概要 | 事業内容や取扱製品の説明 |
役員等名簿 | 役員情報 |
直近2期分の決算書 | 財務状況の確認 |
国内出願書類 | 外国出願の基礎となる国内出願の確認 |
見積書 | 外国出願に必要な経費の確認 |
資金計画 | 補助金を含む資金調達・支出計画 |
先行技術調査等の結果 | 出願内容や権利化の可能性の確認 |
海外事業展開計画 | 出願予定国での事業展開の計画 |
個人事業主の場合は、登記簿謄本に代えてマイナンバーの記載がない住民票の写し、決算書に代えて確定申告書の写しなどが求められていました。
また、共同出願の場合には、持分割合や費用負担割合が記載された契約書等の提出が必要でした。
令和8年度は、賃上げ実施やワーク・ライフ・バランスの推進に関する加点措置も設けられていました。
賃上げに関する加点を希望する場合は、賃金引上げ計画の誓約書や従業員への表明書などが必要でした。
また、えるぼし認定、くるみん認定、ユースエール認定など、所定の要件を満たす企業についても加点措置が設けられていました。
外国出願支援事業では、申請書類をそろえるだけでなく、海外事業計画と外国出願の必要性を具体的に説明することが重要です。
外国出願では、どの国に出願するかによって費用や手続きが異なります。
そのため、単に市場規模が大きい国を選ぶのではなく、自社の販売計画や競合企業の動向、模倣品のリスクなどを踏まえて出願先を検討することが重要です。
例えば、米国への製品輸出を予定している場合は、米国市場の顧客層や販売経路、現地企業との商談状況などを整理すると、外国出願の必要性を説明しやすくなります。
外国出願では、外国特許庁への出願料、代理人費用、翻訳費用など、複数の経費が発生します。
見積書を取得する際は、費目ごとの内訳を確認し、申請書の金額と整合させることが重要です。
また、外国通貨で支払う場合は、為替変動によって実際の費用が変わる可能性があります。
申請時の見積額だけでなく、自己負担額や追加費用も考慮して資金計画を作成しましょう。
外国で特許や商標などの権利を取得した場合、その後も登録料や更新料、年金などが発生することがあります。
補助金は外国出願時の費用負担を軽減する制度であり、海外で権利を維持するためのすべての費用を支援するものではありません。
外国出願の段階から、権利取得後の維持費用も含めた中長期的な計画を立てることが重要です。
外国出願では、日本国内の出願日を基準とした優先権主張の期限など、知的財産制度上の期限があります。
例えば、パリ条約に基づく優先権主張の期間は、原則として特許・実用新案では最初の出願から12か月、意匠・商標では6か月です。
補助金の募集時期を待つことで、こうした期限を過ぎてしまう可能性もあります。
出願期限が迫っている場合は、補助金の利用可否だけで判断せず、弁理士等へ相談し、権利保護に必要な手続きを優先しましょう。
補助率が2分の1以内であっても、外国出願費用の全額が補助されるわけではありません。
また、補助金は外国出願の実施や実績報告などを経て支払われるため、事業者側で先に必要な経費を支払う資金計画が重要です。
例えば、補助対象経費が200万円で補助予定額が100万円の場合でも、出願時に必要な費用を支払える資金を確保しておく必要があります。
交付決定後に外国出願の対象国や出願内容、経費などを変更する場合は、実施機関への確認が必要となる場合があります。
自己判断で変更を進めると、補助対象経費として認められない可能性があります。
変更が必要になった場合は、事前に千葉県産業振興センターへ相談することが重要です。
はい。令和8年度の千葉県の公募では、個人事業主も対象でした。
ただし、千葉県内に本社または事業所を有することなど、所定の申請要件を満たす必要がありました。
令和8年度の千葉県の公募では、申請段階で日本国特許庁への出願が必要でした。
国内出願をしていない場合、外国出願の内容が類似していても補助対象にはなりません。
令和8年度の公募では、交付決定前に外国出願した案件は補助対象外とされていました。
交付決定後に外国出願を行い、指定された期限までに手続きを完了する必要がありました。
複数の案件を申請することは可能ですが、1出願につき1申請が必要でした。
また、1企業当たりの補助上限額は合計300万円となっていました。
いいえ。令和8年度の補助率は2分の1以内のため、補助対象経費の一部は自己負担となります。
さらに、権利種別ごとの補助上限額を超えた費用や、補助対象外経費についても事業者が負担する必要があります。
中小企業等海外展開支援事業費補助金(海外出願支援事業)は、外国で特許・実用新案・意匠・商標などの権利取得を目指す中小企業者等を支援する制度です。
令和8年度の千葉県の公募では、公益財団法人千葉県産業振興センターが窓口となり、外国出願に必要な経費について、補助率2分の1以内、1企業当たり最大300万円の支援が実施されました。
対象となるのは、外国特許庁への出願料、国内代理人費用、現地代理人費用、翻訳費用などです。
一方で、国内出願が済んでいることや、交付決定後に外国出願を行うことなど、申請にあたっては複数の要件があります。
令和8年度の募集はすでに終了していますが、次年度以降の活用を検討する場合は、国内出願の状況や外国出願の期限、対象国、必要経費などを早めに整理しておくことが重要です。
最新の公募情報は、以下リンクの公式ページよりご確認ください。
公式:中小企業等海外展開支援事業費補助金(海外出願支援事業)
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