日本の飲食店や宿泊業は、コロナ禍や物価高、人材不足といった厳しい環境が続く一方、インバウンド需要の回復により大きな転換期を迎えています。
こうした中で経営を安定させ、成長を図るには、設備投資や省力化、DXへの取り組みが欠かせません。しかし大規模投資には多額の資金が必要となり、自己資金だけでは難しいケースも少なくないのも実情でしょう。
そこで注目されるのが、国や自治体が実施する補助金制度です。本記事では、飲食店や宿泊業の事業者様が活用できる最新の補助金を網羅的に解説します。
制度概要や補助率、対象経費に加え、申請時の注意点や採択率を高めるポイントも紹介します。自社に合った補助金を見極め、経営課題の解決や事業成長にぜひお役立てください。
飲食店や宿泊業を取り巻く経営環境は、物価高や人手不足といった課題が続く一方、インバウンド需要の回復により新たな成長機会も生まれています。
こうした変化に対応するためには、省人化やDX、設備投資などへの戦略的な取り組みが不可欠です。その際に大きな助けとなるのが、国や自治体が実施する各種補助金制度です。この記事では、飲食店・宿泊業で活用できる主な補助金の種類と概要について紹介します。
以下に、飲食店や宿泊業の事業者様に積極的に検討いただきたい主な補助金をまとめました。詳細は後述しますが、まずはおおまかな全体感を把握してください。
<飲食店・宿泊業が活用可能な主な補助金一覧>
このように、飲食店や宿泊業界に特化したり、もしくは幅広い中小企業を対象とした総合的な補助金が多数あります。自分の事業にマッチする制度を見極めるためには「対象者の要件」と「対象経費」「補助率・上限額」の3点を軸に確認を進めていただくのがおすすめです。
なお、多くの補助金は申請や導入までに数か月単位の期間を要しますので、早めにスケジュールを立てるようにしましょう。
それでは、順に解説していきます。
省力化投資補助金は、人手不足解消を目的とした生産性向上策に取り組む中小企業を支援する制度として注目度が高まっています。
コロナ禍以来、飲食店、および宿泊施設もまた、一層の省人化を求められています。例えば、セルフレジでオーダーから決済までお客様がスムーズに行えるようにしたり、ホテルのチェックイン・チェックアウトを無人で行える自動精算機やキオスク端末を導入したりすることが考えられます。
対象となる経費としては、人手を大幅に削減する機器やシステムの購入設置費、既存設備との連携・改修費、導入教育費などが挙げられることが多いです。ただし、詳細な対象経費は公募要領で毎回確認が必要です。
<省力化投資補助金(一般型)の概要>
区分 | 内容 |
|---|---|
目的 | 中小企業の省力化投資による人手不足解消、生産性向上、賃上げ促進 |
補助金額 | 従業員規模などに応じ最大1億円(通常は750万円〜8,000万円が中心) |
補助率 | 中小企業1/2、小規模事業者・再生事業者は2/3など |
対象となる費用例 | 設備導入費、システム構築費、ソフトウェア導入費、外注費など |
公募回数・応募スケジュール | 年3〜4回 |
必要書類(例示) | 事業計画書、交付申請書、GビズID、見積書、納品書等 |
省力化投資補助金の申請を検討する際に最も重要なのは「省力化の効果を定量的に示す」ことです。たとえば、導入予定の機器と現状の工数を比較し、「1日あたり従業員の作業時間の時間短縮の可否」や「現在2名で行っている作業を1名に減らせる」など、具体的な数字とともにアピールする必要があります。
また、補助対象期間前に着手(購入や契約)してしまうと補助金が受けられなくなるリスクがあるため、必ず交付決定通知後に契約を締結することが重要です。
省力化投資補助金は採択数が多い一方で、申請不備や企画の曖昧さにより採択を逃す事業者も珍しくありません。特に、中小企業においては専門家のサポートを受けながら申請資料を準備し、審査の視点を踏まえた事業計画を練り上げることが採択率を高めます。
なお、省力化投資補助金(一般型)に関しては以下の記事でも詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
参考:中小企業省力化投資補助金(一般型)とは?カタログ注文型との違いや活用例・申請手順も解説
デジタル化・AI導入補助金は、飲食店・宿泊業での業務効率化や新たなデジタル・ITツールの導入を推進するためのおなじみの制度として広く活用されています。具体的には、POSレジの導入やネット予約システム、宿泊管理システム(PMS)、AIを活用した需要予測や顧客分析エンジンといった取り組みが対象になることが多いです。
以前は「IT導入補助金」として幅広く認知されておりましたが、より踏み込んだデジタル化の推進及びAIの活用が重要であることを広く周知する観点から、補助金の名称が「デジタル化・AI導入補助金」へと変更されました。
AIを活用して需要予測を行い、材料ロスや人件費ロスを削減できれば、コストダウンと売上アップを同時に実現できます。また、外国語対応のシステムを導入すればインバウンド顧客にも対応しやすくなり、多様な客層を取り込む効果が見込めます。
デジタル化・AI導入補助金に関しては、以下の記事でより詳しく紹介しています。
参考:デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)とは?補助額や申請方法、スケジュール、注意点などを解説
ものづくり補助金は、製造業のイメージが強いかもしれませんが、実は幅広い業種で活用できる大規模な補助金で、飲食店や宿泊業などサービス事業者でも「サービスの生産性向上」を目的にすれば活用可能です。
たとえば、新メニューの開発に伴う厨房設備の高度化や、旅館・ホテルでの新サービス構築のための設備投資などが挙げられます。
補助率は原則1/2(小規模は2/3)ですが、上限を大きく超える部分の補助率が下がるなど段階的なルールが設けられているケースがあります。
<ものづくり補助金の概要>
項目 | 内容 |
|---|---|
補助上限 | 750万円〜3,000万円(大幅な賃上げに取り組む事業者は補助額上乗せあり) |
補助率 | 中小企業は1/2、小規模事業者は2/3 |
賃上げ要件 | 給与支給総額アップ、最低賃金+30円等を満たす必要 |
対象となる経費 | 設備費、技術導入費、システム導入費など幅広い |
採択の着眼点 | 革新的な試みか、地域経済への波及効果があるか等 |
飲食店や宿泊業の場合は、どのように売上や顧客満足度を向上させるか、また地元の観光資源活用などに繋げるかを強調することが採択率向上に効果的です。
ものづくり補助金については以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
参考:ものづくり補助金とは?対象者や申請要件、補助額、申請方法をわかりやすく解説
小規模事業者持続化補助金は、サービス業を含む小規模企業の販路開拓や業務効率化を支援する代表的な制度です。常時使用する従業員数が5人以下、あるいは20人以下といった要件が業種ごとに定められていますが、飲食店や旅館・民宿なども広く対象になります。
上限額は通常枠で50万円、特例的な枠(賃金引上げ枠等)で最大200万円と、比較的少額ですが利用しやすい制度の代表格です。
この補助金では、広告宣伝費や販促ツール作成費、店舗改装費の一部などが対象になります。例えば新メニューをアピールするためのチラシやWEB広告作成、外国語メニューの制作、店内レイアウト変更による客席数拡大、テイクアウト対応設備の導入など、多種多様な使い道が想定可能です。
現在はインボイス制度への対応経費も含めて申請可能な特例措置が厚めに設定される年度も出てきています。小規模事業者にとっては、補助対象経費が幅広く、申請手続きも比較的わかりやすい分、人気のある補助金です。
小規模事業者持続化補助金に関しては以下の記事で詳しく紹介しています。
参考:小規模事業者持続化補助金とは?対象者や補助額、申請方法、スケジュールを解説
中小企業新事業進出補助金は、飲食店や宿泊業が既存のビジネスを拡充して新しいマーケットにチャレンジしたい場合に重宝します。具体的には、宿泊業が新たに飲食店事業を展開したり、飲食事業者が物販や加工食品製造へ参入したり、あるいは複合施設として地域観光コンテンツを取り入れるなどの「業態転換」「新分野進出」を強く後押しする制度です。
これらの取り組みには、厨房増設や調理器具の高機能化、仕入れラインの拡大などが伴うため、多額の資金を要します。新事業進出補助金では、必要とされる設備投資や初期マーケティング費用、一部の人材育成費などが補助対象となるケースがあります。
新事業への参入には、既存顧客とは異なる顧客層との接点を新たに築かなければならないので、事業計画書において「どのように販路を切り拓くのか」「収支はどう変わるのか」をかなり具体的に記す必要があります。ここを曖昧にしてしまうと、審査段階で「実現可能性が低い」と判断される場合もあるため、入念なマーケティングリサーチと計画立案がカギです。
中小企業新事業進出補助金に関しては以下の記事で詳しく紹介しています。
参考:中小企業新事業進出補助金とは?対象者や補助額、対象経費、申請スケジュールを解説
東京都が独自に実施している躍進的な事業推進のための設備投資支援事業は、都内に拠点を置く中小企業が設備投資を通じて事業規模拡大や高付加価値化を実現することを支援する制度です。飲食店・宿泊業も、デジタル導入や改装、機能拡張など幅広く活用が可能とされています。
この制度の特筆すべき点は、東京都ならではの高い上限補助額が用意されることが多い点です。

引用:第11回(令和7年度 第3回)躍進的な事業推進のための設備投資支援事業
例えば、数千万円規模の補助額設定があり、大規模な機器導入や施設リノベーションが現実的に狙えます。
また、申請要件として売上や付加価値向上に関する見込みを示す必要があるため、事業計画を明確化し東京都の審査を受ける流れです。
対象者の要件や対象経費、補助額や補助率など、詳しくは以下の記事をご覧ください。
参考:躍進的な事業推進のための設備投資支援事業とは?対象者や要件、採択のポイントを解説
インバウンド需要が回復傾向にある現在、訪日外国人観光客を呼び込むための環境整備、プロモーションを実施する飲食店・宿泊施設は増加中です。インバウンド対応力強化支援事業補助金は、こうした海外顧客の「快適性」「利便性」を高める取り組みを広く支援する制度です。
具体的には、多言語メニューや外国語サイトの整備、Wi-Fi環境や決済の多言語表示などが対象経費として認められるほか、客室改修やトイレの洋式化・バリアフリー化、タブレット端末を使った多言語接客システムなどの導入も補助対象となる場合があります。また、海外向けプロモーション活動や広告費もサポートされることがあり、客足を大きく伸ばす契機となるでしょう。
インバウンド対応力強化支援事業補助金は東京観光財団の補助金になります。東京観光財団の補助金は観光業をはじめ、飲食店や宿泊施設など関連する業種で幅広く活用できる補助金を多数公募しています。東京観光財団のその他の補助金については、以下の記事でまとめています。
参考:東京観光財団の補助金まとめ|観光業の経営強化、環境整備に使える制度一覧
エネルギー価格の上昇が続くなか、電気代やガス代などの固定費を大幅に削減するために省エネ改修を検討する宿泊施設が増えています。宿泊施設サステナビリティ強化支援事業は、こうした省エネ投資を積極的に後押しする観光庁の支援制度です。
対象となる設備の例としては、高断熱・高気密の窓や壁材、LED照明、空調設備、給湯器、ボイラー、エコキュート、さらには太陽光発電システムの導入などが考えられます。補助上限額は1,000万円、補助率は1/2となっています。
省エネ効果を裏付ける根拠資料(消費電力の比較シミュレーションなど)を申請時に提出するケースが一般的です。省エネ改修を実施すれば長期的なコスト削減に加え、環境への配慮を打ち出すことができ、企業イメージ向上にも繋がります。
ここでは、補助金活用のポイントと注意点を紹介します。
補助金を活用するには、公募の時期から締切までのスケジュール管理が重要です。特に人気の高い補助金は短期間で締め切られることがあるので、早めに情報収集を始める必要があります。
申請書類の作成には事業計画の策定や見積もり取得、GビズIDなどのアカウント発行作業が伴うため、締切ギリギリになってから動いても間に合わないことが多いです。
また、補助金は「後払い(精算払い)」が一般的で、先に自社で全額の支払を行い、後から補助金分を受領する仕組みです。そのため、いわゆる「つなぎ融資」を金融機関から受けたり、自己資金を用意しておかないと、キャッシュフローが一時的に苦しくなる恐れがあります。
特に投資金額が大きい場合、この点は軽視できませんので、各種ローン等の選択肢も含めて計画的に備えましょう。
補助金申請は公的機関が関与する手続きのため、書類要件や提出期限に厳格なルールがあります。よくある不備としては、
見積書の提出漏れ、取得日・明細の表記にミス
事業計画書が抽象的で、省力化/売上増の根拠が不足
交付決定前に工事を着工してしまった(対象外となる)
GビズIDの登録が期限までに間に合わず電子申請できなかった
などが挙げられます。申請要領を熟読し、不明点は必ず事務局や専門家に確認するのが安全です。特に初めて補助金を申請する場合は、事前に専門家への相談をおすすめします。
飲食店や宿泊業で経営改善や設備投資、業態転換を図るにあたっては、各種補助金の存在は極めて大きな助けとなります。
ただし、補助金を受け取るには公募要件を満たす適切な事業計画が必要で、書類の提出スケジュールも厳格です。計画の甘さや不備があると不採択になるリスクも高いため、事前準備と専門家の活用が成否を分けるといっても過言ではありません。十分なリサーチと段取りを行い、採択後の報告までを見据えたスケジュール管理を心がけてください。
どの補助金を選ぶべきか分からない、書類の準備や要件確認が大変と感じる場合は、補助金コネクトへご相談ください。申請から書類の準備まで一貫してサポート致します。
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