労働人口が減少する近年は、求職者が企業を選択する時代です。
人材獲得がますます厳しくなる中、対外的なアピールとして「ホワイトマーク」(安全衛生優良企業公表制度・厚生労働省)の認定を目指す会社も増えています。
この記事ではホワイトマークの概要とメリット、取得方法について紹介します。
ホワイトマークとは、厚生労働省から安全衛生優良企業として認定された企業を公表する制度のことです。
従業員の安全や健康に対して積極的に取り組み、高い水準を維持している企業に対して認定されます。
ホワイトマークの認定を受けている企業は「ホワイト企業」とも言われ、ブラック企業とは真逆の印象を持たれます。
ホワイトマークに認定されると、
厚生労働省や経済産業省の公式サイトに認定企業として社名が掲載される
ホワイトマークを製品、名刺、広報資料に使用してPRができる
ことになります。
ホワイトマーク認定のメリットは以下の3つです。
ホワイトマークの認定を得られる企業は、イメージが向上し、社外から良い印象を持たれるというメリットがあります。
ホワイトマーク企業は、厚生労働省のウェブサイトに掲載されるだけでなく、名刺にもホワイトマークを掲載できるため、初対面の相手にも好印象を持たれたり、話題にもなるでしょう。
名刺以外にも商品や広告などにも使用することができ、使い方次第ではホワイト企業であることを大々的にアピールすることができます。
ホワイトマークの認定は、採用力の向上につながります。
近年は労働人口の減少から売り手市場が続いており、特に新卒社員の人材採用に向けては、各企業のイメージがとても大きな影響を及ぼします。
新卒社員は選ばれる立場から選ぶ立場になり、企業は求職者へのアピールが必要不可欠となっています。
ホワイトマークの認定を受けていれば、求職者にも働きやすい職場であると認識してもらえ、結果として多くの社員の採用につながるでしょう。
ホワイトマークの認定は、従業員のエンゲージメント向上にもつながり、離職率の低下や生産性の向上が見込めます。
ホワイトマークの認定を受けるためには、従業員の健康管理や過重労働の防止などを徹底せねばならず、職場環境の改善が必須です。
働きやすい職場であることは、退職者を減らしたり、生産性が向上するきっかけとなります。
ホワイトマークの認定を受けるためには、過去3年間の労働安全衛生関連の重大な法違反がないことに加え、労働者の健康保持増進対策、メンタルヘルス対策、過重労働防止対策、安全管理などの分野で積極的な取り組みを行っている必要があります。
安全衛生優良企業になるには、すべての事業場を含む企業全体で、以下の基準を満たさなければなりません。
安全衛生優良企業認定基準別添にある第1、第2の必要項目は、全ての項目を満たす必要があります。
たとえば、労働安全衛生法等の法令の遵守状況や、労働災害の発生状況などが確認項目となります。
加点項目として、安全衛生優良企業認定基準別添の第3の評価項目が設定されています。評価項目は、項目別の基準と、総合点の基準を満たす必要があります。
(1) 項目別基準
各分野別の評価項目の合計については、下表のとおりそれぞれの総計の6割以上を満たすこと。
(2) 総合点基準
全評価項目の総合点については、下表のとおり総計の8割以上を満たすこと。
※全評価項目は以下のとおりです。
評価項目 | 取組評価点 | 実績評価点 | 合計 |
---|---|---|---|
1.安全衛生活動を推進するための取組状況 | 5点 | - | 5点(項目別基準:なし) |
2-1.健康管理の取組状況 | 10点 | 2点 | 12点(項目別基準:8点) |
2-2.メンタルヘルス対策への取組状況 | 10点 | - | 10点(項目別基準:6点) |
2-3.過重労働防止対策の取組状況 | 10点 | 3点 | 13点(項目別基準:8点) |
2-4.受動喫煙防止対策の実施状況 | - | 2点 | 2点(項目別基準:なし) |
3.安全でリスクの少ない職場環境の整 備の取組状況 | 10点 | 3点 | 13点(項目別基準:8点) |
製造業等合計 | 45点 | 10点 | 55点(総合点基準:44点) |
製造業等以外合計 | 35点 | 7点 | 42点(総合点基準:34点) |
出典:厚生労働省「安全衛生優良企業認定基準」
評価項目についてひとつずつ確認していきましょう。
安全衛生活動を推進するための取組状況を評価するものは、以下の4項目です。(5点)
項目 | 評価点 |
---|---|
①主要な事業場ごとに安全衛生に関して従業員が主体となって行う取組を支援しているか。 | 1.5点 |
②従業員の健康や安全に関する計画策定や見直しにあたり、企業本社及び全ての関連事業場において、広く従業員の意見を求め、その意見を反映できる仕組みを設けているか。 | 1.5点 |
③各事業場の安全衛生組織・担当者の活動が効果的に機能できるよう、継続的に本社からの支援が実施されているか。 | 1点 |
④国、地方自治体又は労働災害防止団体による安全衛生に関する優良とされる表彰(過去3年以内のものに限る)や認証を取得しているか。 | 各0.5点 上限1点 |
健康管理の取組状況を評価するものは、以下の7項目です。(10点)
項目 | 評価点 |
---|---|
①企業全体としての従業員の健康の保持・増進に関する計画(年間スケジュール表を含む)を策定し、着実に実施しているか。 | 2点 |
②①の健康の保持・増進に関する計画を従業員と共有しているか。 | 2点 |
③計画の進捗や企業全体の健康の保持・増進に係る状況の分析を継続 的に実施できる体制が整っており、当該分析結果の関係者への共有、分析結果に基づく次期計画への反映が実施されているか。 | 1点 |
④健康測定の結果を踏まえた健康教育や健康相談などの健康保持増進措置を全社的に行っているか。 | 1点 |
⑤従業員の健康保持増進の取り組みに関して、医療保険者(健保組合など)の保健事業との連携が図られているか。 | 1点 |
⑥従業員の保健指導の実施等の医療保険者が行う保健事業について、従業員が参加しやすいよう協力を行っているか。 | 1点 |
⑦疾病を有する従業員が、治療しながら仕事を続けられるように社内の仕組みを構築し、対象従業員への支援を行っているか。 | 2点 |
健康管理の状況 ※実績を評価するもの(2点)
項目 | 評価点 |
---|---|
①過去3年間の各年で定期健康診断の有所見率が前年より改善しているか。 | 2点 |
メンタルヘルス対策への取組状況は以下の8項目です。(10点)
項目 | 評価点 |
---|---|
①企業全体としてのメンタルヘルス対策を推進するための計画を策定し、実施しているか。 | 2点 |
②メンタルヘルス対策を推進するための計画を従業員と共有しているか。 | 2点 |
③計画の進捗や企業全体のメンタルヘルス対策に係る状況の分析を継続的に実施できる体制が整っており、当該分析結果の関係者への共有、分析結果に基づく次期計画への反映が実施されているか。 | 1点 |
④従業員に対しストレスチェックを実施し、その結果に基づき自社の傾向の把握や職場改善を行っているか。 | 1点 |
⑤従業員が利用可能なメンタルヘルスの相談窓口を設け、従業員に周知するなどの活用の促進を図っているか(又は利用可能な外部の相談窓口を従業員に案内しているか)。 | 1点 |
⑥管理者も含む従業員に対し、メンタルヘルスに関する情報提供、教育研修を行っているか。 | 1点 |
⑦メンタルヘルス不調者に関する対応について、社内での対応方針を定めて運用しているか。 | 1点 |
⑧メンタルヘルス不調により休職した従業員に対する職場復帰を支援するためのルールを策定しているか。 | 1点 |
過重労働防止対策の取組状況は以下の6項目です。(10点)
項目 | 評価点 |
---|---|
①過重労働防止対策として、企業全体の労働の負荷を軽減するための計画(具体的な取組の方針など明文化されたものを含む)を策定し、実施しているか | 2点 |
②過重労働防止対策の計画を従業員と共有しているか | 2点 |
③計画の進捗や企業全体の過重労働防止対策に係る状況の分析を継続的に実施できる体制が整っており、当該分析結果の関係者への共有、分析結果に基づく次期計画への反映が実施されているか | 1点 |
④従業員の労働時間をタイムカード等により適正に把握した上で、所定労働時間を超えて労働させた時間について、該当する従業員の管理者にその情報を提供し、社内基準に抵触する場合には、改善の取組を促しているか | 1点 |
⑤1ヶ月あたりの時間外・休日労働が80時間を超える従業員に対し、医師による面接指導を従業員が受けやすいよう取組・工夫を実施しているか | 2点 |
⑥全社的な年次有給休暇の取得促進のための具体的なルールを設け、実施しているか | 2点 |
過重労働防止対策の状況 ※実績を評価するもの(3点)
項目 | 評価点 |
---|---|
①過去3年間の全ての年において年次有給休暇の取得率が70%以上であるか。 | 1.5点 |
②過去3年間の全ての年において1週間当たり40時間を超えて労働させた時間(いわゆる残業時間)が2ヶ月以上連続して月80時間を超えた従業員がいない状況であるか。 | 1.5点 |
受動喫煙防止対策の実施状況は以下の項目です。(2点)
項目 | 評価点 |
---|---|
①企業の全ての屋内の環境において、受動喫煙防止対策(全面禁煙または空間分煙)を実施しているか。 | 2点 |
安全でリスクの少ない職場環境の整備の取組状況は以下の10項目です。(10点)
項目 | 評価点 |
---|---|
①安全活動のための計画(全社的又は事業場ごと)を策定し、着実に実施しているか。 | 1.5点 |
②安全活動のための計画を従業員と共有しているか。 | 1.5点 |
③全社的に4S(整理、整頓、清掃、清潔)活動を継続的に実施するための具体的な方法を定め、実施体制を整えており、着実に実施されているか。 | 0.5点 |
④ヒヤリ・ハット活動を継続的に実施するための具体的な方法を定め、実施体制を整えており、着実に実施されているか。 | 0.5点 |
⑤危険予知(KY)活動を継続的に実施できる体制が整っており、実施しているか。 | 0.5点 |
⑥全社的に過去の労働災害の事例の分析を継続的に実施できる体制が整っており、当該分析結果の関係者への共有、分析結果に基づく再発防止対策が実施されているか。 | 1点 |
⑦リスクアセスメントの実施のための社内ルール(実施時期、実施体制、実施責任者、実施手順、実施後の対応方法等)を定めているか。 | 0.5点 |
⑧社内ルールに基づいてリスクアセスメントが実施され、その結果が適切に記録されているか。 | 0.5点 |
⑨リスクアセスメントの実施結果に基づき、必要な改善措置を実施する手順が定められているか。 | 0.5点 |
⑩リスクアセスメントの実施結果、講じた改善措置については、関係する従業員に情報提供しているか。 | 0.5点 |
⑪安全活動(③から⑩までの活動を含む)の実施において、現場の従業員や労働組合など広く従業員の意見を求め、その意見を反映できる仕組みを設けているか。 | 1点 |
⑫構内下請事業場がある事業場(建設業であれば現場の関係下請事業者)においては、上記③から⑩の事項について、関係請負人と一体的に取り組み、指導支援を行っているか。 | 1点 |
⑬事業場で想定される労働災害、事故時の緊急時対応が手順化され、関係者への教育訓練がなされているか。 | 0.5点 |
安全でリスクの少ない職場環境の整備の状況 ※実績を評価するもの(3点)
項目 | 評価点 |
---|---|
①過去3年間の全ての年において企業の製造業等の業種の事業場の休業1日以上の労働災害の発生率が、同業種の平均発生率(度数率)に比べ1/2未満であるか。 | 2点 |
②過去3年以内に、死亡災害又は障害等級7級以上に相当する労働災害、安衛則第96条に規定する事故(爆発事故、移動式クレーンの転倒事故など)、電離則第42条(放射性物質が多量に漏れる等の事故)に規定する事故を発生させていないか。 | 1点 |
ホワイトマークの認定取得においては以下の助成金を受給することができ、ホワイトマーク企業が活用する場合は一定額が加算されます。
有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者などといった非正規労働者の企業内でのキャリアアップを促進するなどの取組を実施した事業主に対して助成する制度です。
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正規雇用の従業員が、仕事に関する知識や技能を身に付けるなど、職業・教育訓練等を適用する事業者に対して助成する制度です。
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ホワイトマークの取得方法は以下の図の手順で進めます。
以下、ステップごとに見ていきましょう。
1.厚生労働省のHPで自己診断をする 自社の安全衛生の取り組みレベルを把握し、安全衛生優良企業の基準を満たしているかを確認します。 2.自己診断で一定の基準を満たしたら、本社管轄労働局への申請書類を作成して申請する 基準を満たしていることを確認できた後は、各項目を満たしていることを証明する書類を作成し、申請します。 3.労働局が書類審査、ヒアリング調査を実施する 申請した後は、労働局による書類審査とヒアリング調査が実施されます。 4.認定を受ける 審査が通れば認定を受けられます。 5.厚生労働省のHPに認定企業として掲載される 認定された後は、厚生労働省のHPに認定企業として掲載されます。 |
手続き自体は簡単に思えるかもしれませんが、基準を満たしているから必ず審査が通るというわけではありません。
労働局は厳密な審査を行うため、証明書や申請の書き方はもちろん、ヒアリング時の質問に対する答えを準備しておく必要があります。
しかし、初めて申請する方は、どのような対策が必要がわからないと思います。
そのため、ホワイトマークを取得するために、専門事業者によるコンサルティングを受けることができます。
たとえば、非営利一般社団法人安全衛生優良企業マーク推進機構は、取得企業に対してコンサルティングサービスを提供しています(詳細はこちら)。
ホワイトマークとは、厚生労働省から安全衛生優良企業として認定された企業を公表する制度のことです。
ホワイトマークを取得することは、企業イメージの向上や人材確保などにつながるメリットがあります。
ホワイトマークの認定を受けるためには、過去3年間の労働安全衛生関連の重大な法違反がないことに加え、さまざまな項目の基準を満たす必要があります。
これからホワイトマークの申請を検討している方は、本記事の内容を踏まえ是非検討してみてください。
また、ホワイトマークを取得していることは補助金申請にも有利に働きます。加点措置があったり、加点措置になっていなくても計画書に記載することができプラスに働きます。
ホワイトマークと合わせて、ぜひ補助金申請も検討してみてください。