「1人を雇うハードルが高い」
「雇用者の適性を見極めたい」
と悩んでしまう経営者や採用担当者の方は少なくありません。
そこでトライアル雇用助成金という制度を用いて採用活動を進めることで、採用のミスマッチを減らせる上に採用コストの削減が可能となります。
本記事ではトライアル雇用助成金についてわかりやすく解説していきます。
中小企業の経営者や採用担当者の方はぜひ参考にしてみてください。
トライアル雇用とは、すぐに正規雇用をせず一定期間の猶予を設けて試験的に雇用することができる仕組みです。
事業主と求職者の相性を見極めることができ、事業主は適性があるか見極められ、求職者は自分が職場と相性が合うか確認できるなどのメリットがあります。
トライアル雇用制度の目的は、求職者に雇用機会をより多く提供することを目的としています。
トライアル雇用であれば、求職者側も正規雇用ではないので挑戦しやすく就職活動に難航している人も気軽に挑戦ができます。
一方、企業は採用窓口を広げやすく、トライアル期間を設けることでその求職者自身の適性を見極められる目的があるのです。
使用期間との違いは本採用を前提としているか否かです。
試用期間において、試用期間終了後はよっぽどのことがない限り本採用を視野に入れながら進めることになります。
しかしトライアル雇用は期間が終われば、採用されないことも辞退することも可能となっています。
さらに採用しなくても、事業主には罰則がありません。
引用:0000161178.pdf (mhlw.go.jp)
トライアル雇用の流れは原則3ヶ月と決まっています。
トライアル雇用を3ヶ月行った後は、常用雇用に切り替えるか、両者とも希望が合わなければその時点で契約を終了して求職者雇用者は退職するという流れになります。
期限付きの雇用契約であるという点を念頭に置いておきましょう。
トライアル雇用を行うにあたって事業者は、本採用の義務がないため採用窓口を広げて、冷静に求職者と企業との相性や適性を確認することができます。
さらに後述する助成金を使うことにより採用コストの削減も可能です。
ただしトライアル雇用は、通常の雇用より手間が発生してしまうというデメリットがあります。
さらに未経験者、就業経験の乏しい人材を対象として行うため、即戦力となる人材を見つける難易度が高くなってしまいます。
求職者は、経験や技術が乏しくともトライアル雇用であれば未経験職種にも挑戦ができるメリットがあります。
また実際に就業できるので、職場環境や人間関係などが自分に合うかどうか判断できます。
就労経験が短かったり、ブランクがあったりすると仕事に馴染めるのか不安に感じる方も多いのではないでしょうか?
そんな方でも期間が決められているので、気軽に挑戦できて幅広いスキル獲得のチャンスに恵まれます。
その一方で、期限後の本採用義務がないので、採用されない可能性もあります。
さらに次の転職時にはトライアル雇用の経歴も職務経歴に含めることになり、転職回数が1回増えることになるので要注意です。
転職回数を重視する企業へ転職する際には不利に働く可能性もあるのです。
つまりトライアル雇用は求職者にとって、本採用は確約されずとも挑戦してみたい気持ちを優先できる仕組みといえるでしょう。
トライアル雇用助成金は、前述したトライアル雇用を促進する目的で設けられた制度です。
大きく以下の3つに分けて、事業主は助成金を受け取ることができます。
一般トライアルコース
障害者トライアルコース
障害者短時間トライアルコース
以下が対象となる事業主の要件となります。
引用:0000161178.pdf (mhlw.go.jp)
求職者は4~6つの要件であるのに対し、事業主は26以上もの要件が設定されています。
主な要件は以下の通りです。
過去3年間にトライアル雇用をしたことがない
トライアル雇用労働者に関わる雇用保険被保険者資格取得の届け出を行っている
雇用保険適用事務所の事業主である
ハローワーク、地区地方運輸局、地方紹介事業者からの紹介でトライアル雇用を行う事業主
労働局やハローワークで詳しく確認しておくことをおすすめします。
適用しやすい求職者例をいくつか挙げていきます。
ニートやフリーターなど45歳未満の人
出産や育児等で退職して1年以上安定した職業に就いていない人
紹介日の前日で、1年以上の離職期間がある人
紹介日前日で、過去2年以内に2回以上の離職や転職を繰り返している人
生活保護受給者
母子家庭の母、父子家庭の父
日雇い労働者
ホームレス
これ以外にも幅広い求職者が対象となります。
一般トライアルコースは、未経験業界や就労経験の乏しい求職者が、早期就職の糸口とするために活用できるコースです。
求職者の適性を見極めてから本採用したいという事業主はこちらのコースを適用することになります。
なお求職者の紹介はハローワーク等からの紹介のみと限定されています。
以下が該当者求職者の主な要件となっています。
紹介日時点で、就労経験のない職業に就くことを希望している
紹介日時点で、学校卒業後3年以内で、卒業後、安定した職業に就いていない
紹介日の前日から過去2年以内に、2回以上離職や転職を繰り返している
紹介日の前日時点で、離職している期間が1年を超えている
妊娠、出産・育児を理由に離職し、紹介日の前日時点で、安定した職業に就いていない期間が1年を超えている
就職の援助を行うに当たって、特別な配慮を要する
これらを満たした上で、求職者本人がトライアル雇用を希望していなければなりません。
支給額は1人当たり月額最大4万円までです。
最長3ヶ月なので、合計12万円支給されることになります。
ただし求職者が「母子家庭の母」「父子家庭の父」「35歳未満」などであった場合は、月額最大5万円まで上限がアップします。
障害者トライアルコースは、障害を持つ人の雇用を行う事業者を支援するコースです。
障害者雇用を行ったことがない事業者でも、トライアル期間を挟むことで不安などを払拭することができます。
以下が該当者の要件となっています。
紹介日時点で、就労経験のない職業に就くことを希望している
紹介日の前日から過去2年以内に、2回以上離職や転職を繰り返している
紹介日の前日時点で、離職している期間が6か月を超えている
重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者
未経験の職種している障害者が対象となります。
ただ障害の種類は問いません。
支給額は1人当たり月額最大4万円で、初めて精神障害者を雇用する場合は月額最大8万円の助成金を受け取ることができます。
期間は最長で3カ月間となっています。
なお助成金は支給されませんが、精神障害者であればトライアル雇用自体は最大12ヶ月間まで設けることが可能です。
適性や能力をじっくりと見極めていきたい方は視野に入れてみてはいかがでしょうか。
前述した障害者トライアルコースの要件を満たし、週20時間以上の労働が厳しい人に適用できるコースです。
最初は週10~20時間でスタートし、最長12カ月までの間に20時間以上働けるようになるのを目標としています。
用件としては以下の通りです。
障害者短期間トライアル雇用を希望している
精神障害者または発達障害者
ちなみに障害者トライアルコース、障害者短期間トライアルコースは両方とも書類ではなく面接で選考を行うよう推奨されています。
支給額は1人につき最大月額2万円で最長12カ月間支給が可能です。
トライアル雇用助成金では、トライアル雇用開始後の2週間以内と期間終了後にそれぞれ書類を提出することになっています。
主な流れは以下の通りです。
求人をハローワークへ提出
ハローワークからの紹介を受け選考面談
採用が決まれば、実施計画書を求職者とともに作成する ※書類名は「トライアル雇用実施計画書様式」
ハローワークへ雇用開始2週間以内に提出
3ヶ月の期間終了後、2ヶ月以内に支給申請書を提出※書類名は「結果報告書兼支給申請様式」
トライアル雇用助成金の注意点を確認しておきましょう。
もし仮にトライアル雇用を対象者が3ヶ月以内に退職してしまった場合、受け取れる助成金額の減額が発生します。
対象者の自己都合退職
やむを得ない理由で働けなくなった
常用雇用へ移行した
上記のケースは就労日数に応じて計算されるようになっています。
もしも自己都合退職等が起こった場合は速やかに紹介されたハローワークへ連絡しなければなりません。
原則3ヶ月のトライアル雇用期間が終われば、雇用継続するか否かは事業主の判断に一任されます。
そのため、本人の職務に対する適性をしっかりと見極めなければなりません。
またチームの支援体制を整えるなど、本人本来の能力を発揮しやすくなる環境を整えておく配慮も必要になることも忘れないようにしましょう。
トライアル雇用補助金は、求職者と事業主のお互いのギャップを埋められるトライアル雇用を活用しやすくする制度です。
通常の雇用よりも申請手続きなどの手間が増えますが、事業者にとっては補助を受けつつ採用活動を進められるメリットがあります。
トライアル雇用を検討している方は、まずハローワークへ求人を出すことから始めてみてはいかがでしょうか。
トライアル雇用以外にも助成金は沢山あります。以下の記事に取り組みやすい助成金をまとめていますので、是非参考にしてみてください。