近年、企業の成長戦略として「人への投資」が重要視されるなか、リスキリング(学び直し)に使える補助金・助成金が注目を集めています。特に、人件費や研修費の補助を受けながら人材育成を進める方法は、中小企業にとって大きなメリットとなるでしょう。
本記事では、人件費・研修費・リスキリングに関する補助金・助成金について、各制度の概要や活用のポイント、注意点などを網羅的に解説します。ぜひ、自社の事業戦略と照らし合わせながら、有効にお役立てください。
リスキリングに対する注目度が高まるなか、中小企業を中心に「人材教育を行いたいが研修費が高額で導入をためらっている」という声が多く聞かれます。
企業における人件費や研修費のコストを抑えるためには、国や自治体が展開する各種補助金・助成金を検討することが重要です。特に、人材育成を行う事業者への支援策は拡充されており、研修経費だけでなく、業務を離れて学ぶ期間の賃金を補助する制度も整備されています。
ここではリスキリング補助金の背景と主な補助金・助成金について紹介します。
リスキリング(学び直し)が注目されている背景には、デジタル化や技術革新の加速が挙げられます。AIやロボティクスなど、新しい産業分野に対応できる人材の確保は各企業にとって喫緊の課題です。一方で、「既存社員の再教育をどのように進め、費用をどう工面するか?」といった問題が生じやすくなっています。
ここで活用しやすいのが、厚生労働省や経済産業省、地方自治体が展開する各種補助金・助成金制度です。具体的には、後述する「業務改善助成金」「キャリアアップ助成金」「人材開発支援助成金」などが挙げられます。また、設備投資に関する補助金との組み合わせで、デジタルツール導入から従業員のリスキリングまで幅広く支援を受けることも可能です。
さらに、国策としてのリスキリング推進が強化されており、事業者が人材育成を実施する際の負担軽減を目指す施策が拡充傾向にあります。特に、DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展や働き方改革の観点から、企業の生産性を高める研修を行う場合には、多様な制度が利用可能となっています。
これらの背景を踏まえ、企業は人件費や研修費を補助金・助成金で賄う方法を検討し、戦略的に人材育成を推進しやすい環境になってきているのです。
参考:リスキリングとは?定義、注目される背景から導入のポイント、事例を解説
下記のとおり、企業がリスキリングや人材育成を行う際に活用しやすい補助金・助成金は数多く存在します。それぞれ制度の趣旨や助成条件が異なるため、自社の状況に適合したものを見極めることが大切です。
<人件費・研修費・リスキリングで活用しやすい制度一覧>
この一覧表から分かるように、厚生労働省が所管する助成金は「雇用確保」や「労働環境改善」を軸としており、経済産業省が所管する補助金は「設備投資」や「事業拡大」を主眼に置いた制度という特徴があります。
自社がどのような目的でリスキリングを行うのかを明確にし、上記のような制度を組み合わせることで、人件費や研修にかかる経費を大幅に削減しながら効率的に人材育成を進めることが期待できます。
次の章から、人件費・研修費・リスキリングに使える各制度について解説していきます。
生産性向上のために、設備投資やリスキリング研修を行う際に活用できる制度として注目度が高いのが「業務改善助成金」です。特に人件費・研修費を含めて資金不足に悩む中小企業にとって、事業活動の効率化や向上施策をサポートする心強い施策の一つです。
業務改善助成金は厚生労働省が管轄し、「生産性向上による賃上げ」を主な目的として設計されています。すなわち、この助成金を活用する企業は、業務改善によって得られるコスト削減や生産性向上の成果を従業員への賃上げにつなげることが求められます。
一方、導入費用や研修等に要する費用の一部を助成してもらえるため、初期コストに悩む企業にメリットが大きい制度です。
<業務改善助成金の要件>
上の表からも分かるように、業務改善助成金は単純な研修費だけでなく、業務プロセスの改善に資する設備投資やソフトウェア導入費用なども対象となる点が特徴です。
したがって、業界によっては生産ラインの省人化や自動化システムとの組み合わせで、研修(リスキリング)と同時に設備更新を行うことにより、包括的な効率化を狙うことができます。
業務改善助成金については以下の記事で詳しく紹介しています。
有期雇用から正規雇用への転換やスキルアップを図る取り組みに対する支援として、厚生労働省が提供するのが「キャリアアップ助成金」です。特に非正規社員のキャリア形成や待遇改善を目的として設定されており、企業が研修を通じて従業員の職務スキルを高める際にも活用が期待できます。
キャリアアップ助成金は、主に有期契約労働者やパートタイム労働者など非正規雇用で働く方々に対し、キャリアアップに資する正社員化や人材育成を図る企業に助成を行う仕組みです。賃金の引上げはもちろん、資格取得や研修への参加を促す企業の取り組みに助成されるコースもあり、リスキリングの支援制度としても活用できます。
例えば、「正社員化コース」や「賃金規定改定コース」など複数のコースが存在し、それぞれ対象となる活動や助成率が異なります。

引用:キャリアアップ助成金とは
キャリアアップ助成金は非正規雇用社員を活用する中小企業にとって非常に有用であり、特に企業のリスキリング施策を広げる上で大きな後押しとなります。
キャリアアップ助成金については以下の記事で詳しく紹介しています。
従業員のスキルアップやリスキリング、専門性の高い人材育成に取り組む企業を支援する制度として、厚生労働省が提供しているのが「人材開発支援助成金」です。
新入社員や若手社員の育成はもちろん、デジタル人材の育成や新規事業に対応したスキル習得など、企業の成長戦略に直結する人材投資を後押しする制度として活用されています。
「人材育成支援コース」や「事業展開等リスキリング支援コース」、「人への投資促進コース」など複数のコースが用意されており、研修内容や目的に応じて使い分けることができます。
人材開発支援助成金に関しては以下の記事で詳しく紹介しています。
参考:人材開発支援助成金とは?人材開発支援助成金のコース内容や申請から受給の流れなどを解説
中小製造業やサブスク型サービスを含む広範な事業に対応し、新製品や新サービスの開発、効率化をサポートする代表的な補助金が「ものづくり補助金」です。生産設備やITツールなどの導入費用から専門家によるコンサルティングまで対象となる場合があり、事業開発に伴うリスキリング施策とも関連づけやすい点が特徴です。
ものづくり補助金は、主に下記を目的としています。
中小企業・小規模事業者が行う革新的サービス開発や生産工程改善
生産性向上のためのIT実装
デジタル化投資による業務効率アップ
この補助金の助成対象には、「機械設備」「システム導入」などハード面の投資が含まれますが、ハード導入後の操作方法や技術習得の一部も、経費として計上できるケースがあります。例えば、新しい機械操作スキルを社内で身につけるために行う外部専門家による技術指導や助言等が該当します。
ただし、ものづくり補助金の主眼は事業開発であるため、申請書の完成度が重要となります。設備投資を事業の中心に置き、どのように事業の生産性を高めるのか、社会的な意義や経済的な波及効果を論理的に示すことが求められます。
ものづくり補助金に関しては以下の記事で詳しく紹介しています。
参考:ものづくり補助金とは?対象者や申請要件、補助額、申請方法をわかりやすく解説
省力化投資補助金は、自治体が主体となって「省力化・自動化」など生産効率向上につながる投資を助成する制度です。
省力化投資補助金(一般型)は、たとえば次のような設備導入を想定しています。
<省力化投資補助金で認められる設備例>
このような設備を導入する際、導入後の運用に必要なオペレーション研修や資格取得支援などが補助対象に含まれることがあります。従業員が機械を正しく操作・保守できるよう、一定レベルのリスキリングが必須となるケースも多いです。
省力化投資補助金に関しては以下の記事で詳しく紹介していますので、是非参考にしてください。
参考:中小企業省力化投資補助金(一般型)とは?カタログ注文型との違いや活用例・申請手順も解説
中小企業成長加速化補助金とは、DXや新規顧客開拓など成長戦略を強化するために、中小企業が行う投資を支援する制度です。
成長加速化を目指す企業にとって、社員の研修やリスキリングは不可欠な要素です。技術革新や市場変化への対応が求められるなか、経営層から若手従業員に至るまで「新しい知識やスキルを身につけること」が、競合他社との差別化につながります。
たとえば、既存のITインフラを刷新しながら社内のスタッフにデジタルマーケティングやデータ分析の力を習得させれば、効率的な販路拡大や顧客管理を実現しやすいでしょう。
中小企業成長加速化補助金では、成長戦略に必要な外部専門家による技術指導や助言等の費用が対象となっています。実際に申請する際は、公募要領を熟読し、自社の成長ビジョンに合致した計画を提示することが成功のカギとなります。
中小企業成長加速化補助金について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
研修費や人件費を補助金・助成金でまかなうには、制度上の要件を理解したうえで、必要な手続きを適切かつ確実に進める必要があります。また、誤った活用をすると「不正受給」と見なされるリスクもあるため、注意が必要です。
補助金や助成金を申請する際に、もし虚偽の書類を提出したり、実施していない研修を実施したと偽ったりすると、不正受給と判断されます。また、一部のコンサル業者が「実質0円で研修が受けられる」と宣伝し、キックバックや不透明な取引を行う事件も報道されています。
不正受給が発覚すると、以下のようなペナルティが科されます。
補助金・助成金の返還
延滞金や加算金の支払い
事業者名の公表
数年間にわたる他制度も含めた助成金・補助金の利用制限
これらのリスクを避けるためには、計画書や実績報告書の正確な作成が欠かせません。研修実施の記録や経費の支出根拠をきちんと整備し、領収書や契約書の保管も徹底しましょう。あわせて、専門家に相談しながら申請手続きを進めることをおすすめします。
補助金・助成金の申請は年度ごと、あるいは募集期間が限られている例が多いため、早期に情報をキャッチし、書類を準備することが重要です。以下のようなフローを押さえるとスムーズに手続きが進めやすくなります。
<申請手続きフロー例>
この表から分かるように、計画立案から実行・報告まで一貫した管理体制が求められます。もちろん補助金によって申請フローは異なるため注意しましょう。
また、公募期間内に申請書類が揃わないケースが発生しやすいため、特に最初の段階で早めに行動を開始することが成功の秘訣です。正しく申請を行えば、助成金・補助金の活用により自社のリスキリング施策を大幅に推進できます。
人材育成を進めるうえで、人件費や研修費を国や自治体の補助金・助成金で補える点は、中小企業にとって大きなメリットです。業務改善助成金やキャリアアップ助成金といった厚生労働省系の制度に加え、ものづくり補助金や省力化投資補助金などを含めて検討することで、自社の課題に合った資金活用が可能になります。
特にDXやデジタル化が進む現在、リスキリングによる人材力強化は、企業の競争力を維持するうえで欠かせない要素といえるでしょう。
一方で、補助金申請には多くの書類作成や厳密なルール遵守が求められます。申請ミスや要件未達は不採択や返還リスクにつながるため、早い段階で専門家に相談することが重要です。
補助金コネクトでは、中小企業向けに人材育成や研修導入を前提とした補助金活用をトータルでサポートしています。自社に合った補助金の選定から申請時の注意点まで一貫して相談できるため、初めての方でも安心です。
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