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リスキリングとは?定義、注目される背景から導入のポイント、事例を解説

経営財務
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更新:2024/02/04

デジタル化が進む現代で、就職・転職やスキルアップのためにIT技術など時代に沿ったスキル習得を目指す人が増えています。これを「リスキリング」と呼び、令和4年10月の臨時国会で岸田首相がリスキリングについて触れたことでも話題になりました。

リスキリングは、日本だけでなく海外でも広まっており、今後さらにリスキリングの重要性が高まると言われています。実際に企業が社員に対してリスキリングを行う際には、リスキリングのメリットや注意点、進め方などを理解しておく必要があります。

この記事では、リスキリングの定義や導入のポイント、実際にリスキリングを導入した企業の事例などを解説します。これからリスキリングを進めていこうと考えている企業担当者の方は、参考にしてみてください。

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リスキリングとは

経済産業省では、リスキリングについて以下のとおり定義しています。

新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること

つまり、今までとは異なる仕事を希望したり、今の仕事で新しいスキルの習得が必要になったりした場合に、新しく知識やスキルを習得し、新たな挑戦を後押しする取り組みのことを言います。リスキリングと似た意味を持つ言葉に、アウトスキリング、アップスキリングなどがあります。

リスキリングは、デジタル分野だけでなく、語学やコミュニケーションなど幅広い分野で使われる言葉です。近年では、急速に進むDX化に対応するため、デジタル分野におけるスキル習得をさすケースが増えています。単なる学び直しではなく、仕事における価値を創出し続けるために必要なスキルを学ぶ点が重要です。

リスキリングが注目される背景

リスキリングが注目されるようになったきっかけは、2020年のダボス会議でした。ダボス会議とは、世界経済フォーラムの年次総会であり、会議の中で「リスキリング革命」が議題に上がったのです。第4次産業革命に伴うDXの加速に向けて、人材育成を目的としてリスキリングが注目され始めました。

日本では、令和2年9月に経済産業省から公表された「人材版伊藤レポート」の中で、リスキリングを人材戦略に向けた要素のひとつと捉えています。また、同年11月には経団連の報告書の中でリスキリングについて触れられています。

DXを活用した新たなビジネスを推進するためには、リスキリングによってスキルを習得する必要性が高まっているのが現状です。

リカレント教育との違い

リカレント教育は、自らの意思で一旦会社を休職もしくは退職してから教育を受けることを指します。個人が主体となり、仕事やキャリアに活かすことを目的として学びを進めていきます。

一方リスキリングは、社員育成を目的として、働きながら社内で新しいスキルを学びます。学びの主体が企業となる点が、リカレント教育と大きく異なります。

アンラーニングとの違い

アンラーニングは、「学習棄却」「学びほぐし」とも呼ばれ、不要なスキルを取捨選択するものです。使わなくなったスキルを手放し、代わりに新しいスキルを取り入れる行為を重視しています。

アンラーニングによって取捨選択をすることで、リスキリングの土台が構築できます。

企業がリスキリングを推進するメリット

リスキリングを推進することで、企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、主なメリットを3つ解説します。

人材不足への対応

DX推進の必要性は、多くの企業が感じているものの、DXに対応できる人材不足は大きな課題となっています。企業が主体となってリスキリングに取り組むことで、DX人材を確保できるようになります。

DX人材を新規採用しようとしても、DX人材はどの企業も需要が高いため、すぐに採用するのは困難です。既存の社員がスキルを身につけると、社員のスキルアップに繋がるだけでなく、リスキリングに取り組んでいる企業だというアピールもできるようになります。

社員のエンゲージメント向上

エンゲージメントとは、会社に対して社員が抱く思い入れや愛着心などを意味しています。リスキリングを通じて社員が新しいデジタル技術を身につけると、ITツールなどの導入が可能となり、以下のような業務効率化が実現できます。

  • 業務の自動化及び効率化

  • 業務フローの改善

  • データの一元管理

  • データの正確な分析

これらの取り組みにより残業時間の削減が実現し、社員のライフワークバランスが取りやすくなることが期待されます。ひいては、社員の会社に対するエンゲージメント向上が見込めるのです。

さらに、会社から社員に対して学びの機会を提供することで、キャリア形成も可能となります。会社を挙げてキャリア形成を支援する取り組みも、エンゲージメント向上のきっかけとなるでしょう。

社内業務に精通した人のスキルアップ

リスキリングを受ける社員は、社内の業務や文化に精通しています。社員が学ぶことで、新しいスキルと既存業務をすぐにリンクさせることができ、スキルアップを業務に活かせるようになります。

中途採用などを行えば、同等のスキルを持った人材を外部から調達できます。しかし、社内での仕事の進め方や業務内容、企業文化などを理解するのに時間がかかります。既存の社員がリスキリングを受けることで、新規事業の立ち上げにも既存事業のノウハウを組み込めるようになります。

リスキリングの進め方

実際にリスキリングに取り組むには、どのように進めていけば良いのでしょうか。進め方のステップを、4つに分けて解説します。

必要な人材像、スキルの定義

リスキリングは、スキルを習得することが目的ではなく、あくまで手段です。まずは自社が目指す経営戦略を明確にし、戦略の実現に必要な人材像とスキルを明らかにします。スキルを習得している社員がいない箇所が、リスキリングの対象です。

社員の保有スキルを把握するには、スキルマップなどを作成し見える化しておくと、スムーズに進められます。

教育プログラムの決定

リスキリングにより習得すべきスキルが明確になったら、導入する教育プログラムを検討します。選択できる学習方法は、座学研修・eラーニング・オンライン講座・社会人大学など多岐にわたります。社内の状況によっては、外部の講師に依頼したり学習コンテンツを利用したりするのも効果的です。

プログラムを決めるには、学習する社員本人の意見を可能な限り取り入れることが大切です。これにより、社員の意識をリスキリングに向けられます。

社員の取り組み

プログラムが決まったら、実際に社員がリスキリングへの取り組みを行います。時間を決めて一斉に取り組む場合もあれば、社員が個々で業務の合間に取り組む場合もあります。社員本人の意思を尊重しながら進めましょう。

ただし、会社から社員に対し取り組みを促しているため、就業時間外に実施すると社員のやる気が低下する恐れがあります。リスキリングは、就業時間内で行うことが重要です。

得たスキルを業務で実践

リスキリングで得たスキルを業務で実践すると、社員のスキルアップと企業の成長が実現します。実践することで、リスキリング効果が検証できるほか、フィードバックを通じてさらなるスキルアップに繋がります。

リスキリングを、スキルアップの手段として最大限活用するには、業務で実践することが近道なのです。

リスキリングの注意点

効果の高いリスキリングを実践するには、社員と会社の双方が心がけるべき注意点があります。どのような注意点があるのか、順に解説します。

取り組みやすい環境整備

リスキリングを始める前には、社員に対してリスキリングの重要性をしっかり伝えることが重要です。社員が重要性を理解すると、会社全体でリスキリング受講者へのサポート体制が構築できます。

会社ができる環境整備として、業務時間内にリスキリングを受けるための体制を築いたり、学んだ内容を共有できる発表会を実施することも有効です。

社員の自律的なキャリア形成に留意

リスキリングは、会社が主体となって取り組むキャリアアップ方法であり、新たにリスキリングを行う社員には負担やストレスがかかる場合があります。スキルを習得したいという本人の意思がないと、リスキリングの結果が期待できなくなるため、できる限り社員の自発的な行動を促せるように注意しましょう。

社員のモチベーション維持

リスキリングの実施には、上記で解説した社員の自発的な行動に加え、モチベーションの維持も欠かせません。スキルの習得には時間が時間がかかりますが、リスキリング継続による効果を発揮するため、モチベーションを維持できる仕組みを作りましょう。想定される仕組みは以下の通りです。

  • 目標を決める

  • インセンティブを用意する

  • 仲間同士での取り組みを推奨する

  • 成長を実感できる発表会などを実施する

  • スキルにあったカリキュラムを作成する

リスキリングを導入するデメリット

リスキリングの導入には、ここまで解説したメリットだけでなく、デメリットも踏まえておきたいものです。ここでは主なデメリットを2つ紹介します。

費用や負担がかかる

リスキリングは、内製で行う場合、外部に依頼する場合のどちらを選択しても、費用がかかります。企業主体で行うリスキリングは、費用も企業負担となる場合が多いため、経費との兼ね合いを考えることが重要です。

費用以外にも、通常業務の調整や社内講師の選出など、リスキリングに向けた取り組みにはさまざまな負担がかかります。リスキリングに必要なシステムの導入や研修を実施するだけでなく、費用および業務面での負担がかかることはデメリットと言えます。

効果が得られない場合がある

リスキリングを通じてスキルを習得しても、必ずしも効果が得られるとは限りません。当初の目標としていたビジネス戦略と習得したスキルがマッチしないと、リスキリングの効果が最大限に発揮できなくなります。

リスキリングの効果を高めるには、習得するスキルの選定を厳密に行うことが重要です。

リスキリング導入の事例

実際にリスキリングを導入した企業では、どのような流れで実践したのでしょうか。実際の導入事例をご紹介します。

AT&T

At&tは、アメリカの通信業界大手であり、いち早くリスキリングの取り組みを導入した会社です。通信業界の革命に対応すべく、事業収益の主軸をハードウェアからソフトウェアに置き換えるために、スキルを持たない社員に対してリスキリングを促進しました。同時に、キャリア開発支援ツールやオンライン訓練コースの開発も進め、社員が自律的に学習できるよう体制を構築しました。

巨額の経費を投じてリスキリングが行われましたが、参加した社員の昇進率が上がり、かつ退職率を抑えられたことから、取り組みは成功したと言えるでしょう。

株式会社日立製作所

世界有数の総合電機メーカーである日立製作所では、デジタル人材の強化を目的として、グループ会社「日立アカデミー」を設立しました。国内グループ企業の全社員にDX研修を実施し、デジタルスキルの習得を支援しています。

管理職向けの研修にも力を入れており、ワークショップを通じて管理職のマインドシフトを促すことで、デジタルリテラシーの浸透や底上げを図っています。

まとめ

リスキリングは、既存の社員がデジタルスキルを習得し、会社がデジタルの変化に対応するために重要な取り組みです。リスキリングを成功させるためには、社員に意識を浸透させたうえで、正しい順序で導入することが大切です。

リスキリングの実施を通じて社員のDXスキルを高め、時代の変化に合った会社経営ができるよう努めていきましょう。

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