動画を活用したマーケティングやプロモーションは、企業の販路拡大やブランディングに大きな効果をもたらします。しかし、動画制作には高いコストがかかるため、特に中小企業や個人事業主にとっては負担となることも少なくありません。そこで役立つのが、国や自治体が提供する補助金や助成金です。
本記事では、動画制作に活用できる主な補助金の種類や、申請の流れ、注意点について解説していきます。補助金を賢く活用し、コストを抑えながら効果的な動画制作を実現してみましょう。
最初にご紹介するのは、小規模事業者持続化補助金です。この制度は、中小企業や個人事業主が販路拡大や生産性向上を図るための取り組みを支援するための補助金です。動画制作も対象の一つで、商品やサービスのプロモーション用に制作するための費用の一部が補助されます。商工会議所や商工会の支援を受けながら事業計画を作成する必要があるため、十分な準備期間が必要です。
対象経費には、動画制作費のほか、広報費、ウェブサイト関連費、展示会出展費、旅費、委託・外注費などが含まれます。具体的には、商品やサービスのPRを目的とした動画制作、展示会で放映する動画の制作などが該当します。
小規模事業者持続化補助金についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
小規模事業者持続化補助金とは?対象者や補助額、申請方法、スケジュールを解説
事業再構築補助金は、コロナ禍での事業環境の変化に対応するため、新たな事業に挑戦する企業を支援する補助金です。特に、新規事業展開や事業再編、業種・業態の転換を含む事業計画を立てる場合に活用でき、動画制作を含む広告宣伝費や販売促進費も補助対象となります。
事業再構築補助金の補助額は最大で1.5億円と、大規模な投資にも活用できるのがポイントです。一方で、認定経営革新等支援機関のサポートを受け、3年から5年の事業計画書を策定し、付加価値額または従業員一人当たり付加価値額を年率平均3.0%以上増加させる目標を設定することなど、事業へのコミットメントが求められます。
対象経費には、設備費、建物費、システム構築費、広告宣伝費、動画制作費、クラウドサービス利用費などが含まれます。特に動画制作を用いたプロモーション活動は、事業の再構築や業態転換を図る際に効果的な手法とされ、採択事例でも多く取り入れられています。
事業再構築補助金について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
事業再構築補助金とは?申請枠から補助額、対象者、対象経費まで詳しく解説
IT導入補助金は、主に中小企業や小規模事業者を対象とし、業務の効率化や売上向上を目的としたITツールの導入を支援するための補助金です。特に、業務プロセスのデジタル化や業務効率の向上を図ることを目的として、ソフトウェアの購入やITツールの導入費用をサポートするものです。動画制作においては、動画編集ソフトの導入やクラウド型ITツールの利用に補助金を活用することができます。
IT導入補助金は通常枠、インボイス枠など複数の申請枠が設けられており、補助額は最大450万円となっています。対象となるITツールや経費は、以下のような業務改善や効率化に役立つものです。
ソフトウェアやクラウドサービスの導入費用:会計ソフト、販売管理システム、在庫管理システム、動画編集ソフトなど
ハードウェア購入費:業務用のパソコンやタブレット、セキュリティ対策用の機器など
導入支援に関する外注費用:ITツールの設定や操作方法の教育にかかる外注費
動画制作に関連するITツールでは、Adobe Premiere ProやAdobe Creative Cloudなどの動画編集ソフトの導入費用がIT導入補助金の対象として認められています。
なお、IT導入補助金について知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
IT導入補助金とは?補助額や申請方法、スケジュール、注意点などを解説
ものづくり補助金は、主に中小企業や小規模事業者を対象に、革新的な製品・サービス開発や生産プロセスの改善を支援する補助金制度です。製造業だけでなく、サービス業や情報通信業など幅広い業種で活用でき、業務効率の向上や付加価値の高い製品の開発を目指す企業にとって重要な資金サポートとなります。
動画制作においても、IT技術を活用した新たなサービス開発や動画を通じた製品プロモーションの取り組みが該当することがあり、クリエイティブ分野でも活用できる柔軟な補助金です。補助額は最大8,000万円と、大規模な投資にも活用できます。
ものづくり補助金について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
ものづくり補助金とは?対象者や申請要件、補助額、申請方法をわかりやすく解説
各自治体においても、動画制作で使える補助金が公募されています。以下では、動画制作で使える自治体の補助金の一部を紹介します。
東京都中小企業振興公社が運営する「新たな事業環境に即納した経営展開サポート」とは、コロナ禍やデジタル化の進展など、急速に変化する事業環境に対応するために、東京都内の中小企業を対象にした支援制度です。企業が新たな経営環境に適応し、成長戦略を実現するための取り組みを支援し、特にデジタル技術の導入や新規事業展開に向けた経費の一部を補助します。
この補助金は、販路拡大や事業のデジタルシフトを目的とした動画制作にも活用できます。例えば、商品のPR動画や企業紹介動画の制作、オンライン上でのプロモーション活動のための動画コンテンツ制作などが対象経費に含まれ、制作費の一部を補助してもらえる可能性があります。動画を活用して新しい事業環境に適応したい企業にとって、有効な支援策といえるでしょう。
新たな事業環境に即納した経営展開サポートについて詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてください。
新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業とは?対象者と要件、申請方法を解説
鳥取県が運営する「デジタル販売促進ツール作成支援補助金」は、県内事業者の販路拡大をサポートすることを目的とした補助金制度です。具体的には、自社製品やサービスのPRを目的としたウェブサイトや動画などの販売促進ツール作成にかかる経費の一部を補助し、商談成約や新たな顧客獲得を促進することを目指しています。
本補助金の対象となるのは、鳥取県内に本社や事業所を有する事業者(個人事業主を含む)です。主に販路拡大を目的として、国内向けのウェブサイトや動画コンテンツを作成する場合に申請できます。ただし、リクルート目的や販路拡大と無関係な動画制作は補助の対象外となります。
「デジタル販売促進ツール作成支援補助金」の対象となる事業は、デジタル技術や映像技術を活用して、販路開拓を目的とする自社製品・サービスのPRウェブサイトや動画の作成です。動画制作の場合、商品の特徴を伝えるプロモーション動画やオンライン展示会向けの紹介動画などが対象となります。
参考:令和6年度 デジタル販売促進ツール作成支援補助金【公募要領】
福岡県は、成長産業や基幹産業における人材確保を目的として、県内の技術系企業を対象に「技術系企業PR動画作成支援補助金」を実施しています。この補助金を活用し、自社の優れた技術や企業の魅力、将来性をアピールするPR動画を作成することができます。
参考:令和6年度 技術系企業PR動画作成支援補助金(2次募集)のご案内-福岡県庁ホームページ
高知県は、県内の中小企業者等が事業戦略の実現を図るため、「事業戦略等推進事業費補助金(海外事業申請枠)」を提供しています。この補助金では、海外市場での販路拡大や営業力強化、人材養成・確保、さらには海外拠点の確立などを目的とした事業に対して、幅広い支援を行っています。補助上限額は200万円と、まとまった出費にも利用できます。
動画制作にかかる費用を抑えながら、効果的なプロモーションやマーケティング活動を行うためには、補助金を活用することが有効です。しかし、補助金を活用するには、事前にしっかりとした準備が必要です。
以下では、動画制作に補助金を活用する際の基本的な流れについて解説します。初めて補助金を利用する方や、申請手続きに不安がある方は、ぜひ参考にしてみてください。
まずは、自社が取り組む動画制作プロジェクトに適した補助金を探しましょう。補助金には、国や地方自治体が提供するもの、特定の業種や事業規模に限定されたものなど、さまざまな種類があります。そのため、自社のプロジェクトや動画制作の目的に合致した補助金を選定することが重要です。
例えば、小規模事業者が販路拡大や生産性向上を目指して動画を活用する場合は、「小規模事業者持続化補助金」が適しています。これは、動画制作費用を含むウェブサイト作成や広告費用が補助対象となっており、最大200万円(補助率1/2)の支援を受けることができます。また、新たなITツールを導入することで業務効率化を図ることを目的とする場合には「IT導入補助金」の活用も検討できます。このように、各補助金の目的や支援内容を理解し、自社のプロジェクトに最適な補助金を選びましょう。
適切な補助金を探す際には、各省庁や地方自治体の公式サイトを確認したり、補助金ポータルサイトで検索するのがおすすめです。補助金コネクトでも、動画制作に利用できる補助金をまとめています。さらに、専門家やコンサルタントの意見を聞くことで、より自社に合った補助金を見つけやすくなります。
補助金を申請する際には、事業計画書と申請書類の作成が必要です。事業計画書には、動画制作を行う背景や目的、対象とする市場や顧客層、具体的な制作内容やスケジュール、期待される成果を盛り込みます。補助金によっては、売上や利益の見通し、費用対効果を数値化することが求められることもあります。そのため、事業計画書を作成する際には、過去の事例や市場データをもとに、論理的かつ具体的な根拠を示すことがポイントです。
申請書類の不備や記載内容の不足は、審査における評価を下げるだけでなく、申請そのものが無効となる可能性もあります。そのため、事前に提出先の要件をしっかりと確認し、必要な書類を漏れなく揃えるようにしましょう。初めて申請する方は、専門家のサポートを受けながら書類を作成することをおすすめします。
必要な書類を揃えたら、提出先の機関へ申請を行います。申請手続きは、補助金の種類や提供機関によって異なりますが、一般的には電子申請システムまたは郵送による申請となります。例えば、小規模事業者持続化補助金の申請は「電子申請システム」を通じて行います。事前に「gBizIDプライム」アカウント取得が必要となるため、早めに準備を進めておきましょう。
また、申請締切の日時を厳守することも重要です。締切間際はシステムが混雑しやすく、提出が遅れてしまうと申請が無効となることもあるため、余裕をもって手続きを行いましょう。提出後は、受理確認の通知が届くことを確認し、保管しておくことも忘れずに。
申請が無事に受理され、補助金交付決定の通知を受け取ったら、事業を開始します。動画制作の場合、動画制作会社への発注や撮影の準備を進めることになります。注意点として、交付決定前に支払った費用や、既に制作を開始しているものについては補助金の対象外となることが多いため、必ず交付決定後に事業を開始するようにしましょう。
また、事業の進捗状況や実施内容は、後の報告において重要なデータとなるため、事業開始時からしっかりと記録を残すことが大切です。撮影や編集の工程、発注先とのやり取り、発生した費用などをまとめておくことで、後の事務処理や報告書作成がスムーズに進みます。
事業が完了したら、実績報告書を提出します。実績報告書には、事業の成果や達成度、支払った経費の内訳、事業実施前と後の比較などを詳細に記載し、補助金交付の目的に沿った成果が得られたことを証明する必要があります。
動画制作の場合、制作した動画のサンプルやその使用実績(公開方法や閲覧数など)を報告書に添付することも求められることがあります。また、経費については領収書や請求書などの証憑書類を提出し、実施内容と支出が一致していることを証明することが大切です。
報告内容に不備があった場合や、補助金の目的に反する事業であったと判断された場合、最悪のケースでは補助金の返還を求められることもあります。実績報告書の作成時には、事業開始時から残していた記録をもとに、正確かつ漏れのない報告を心がけましょう。
補助金を活用して動画制作を行うことで、費用の一部を軽減し、プロモーションや業務効率化を図ることができます。しかし、補助金にはさまざまな条件や制約があり、事前に注意しておくべきポイントがあります。
以下では、動画制作に補助金を活用する際の注意点について詳しく解説します。これらの注意点を理解し、計画的に補助金を活用することで、事業の発展に役立てましょう。
補助金を活用する際には、申請する補助金ごとに適用される条件や制約を理解しておくことが重要です。特に、動画制作に特化した補助金は少なく、他の目的の補助金を活用して動画制作を行う場合、補助金の目的や使用用途に注意する必要があります。
補助金を活用することにより事業に影響のある主な制約は以下のようなものです。
発注先を決めていても相見積もりが必要となる
発注先に制限がかかることがある
交付決定が降りるまで発注できない
補助事業期間の終了までに事業を終えなければいけない
入金のための諸々の手続きが発生する
補助金は返済不要の資金になりますが、原資が税金であるがゆえに相応の説明が求められます。少額すぎる申請はかえって手間を増やしてしまうことにもなりかねないため、事前によく吟味するようにしましょう。
補助金は原則後払いのため、立て替え払いが必要です。事業規模が大きくなればなるほど、立て替え払いの金額も大きくなるため、補助金に採択された事業者は融資を受けるのが一般的です。
仮に自己資金で賄える金額であったとしても、補助金採択されていると金融機関からの融資が受けやすくなるため、借りられるうちに借りておくといった作戦も有効です。補助金を活用すると、これまで以上にキャッシュフローの考慮が必要になってくるため、事前にしっかりとシミュレーションしておくようにしましょう。
動画制作に使える補助金を活用することで、コストを抑えつつ効果的なプロモーションが可能となります。自社の事業内容や目的に合った補助金を選び、申請書類を正確に作成することが成功のポイントです。
補助金申請には資金提供が受けられるという大きなメリットの反面、手続きの手間がかかるという注意点もあります。事前にしっかりと調査し、専門家のアドバイスを受けながら、補助金を賢く活用してみてください。
補助金コネクトでは補助金申請のご相談をお受けしておりますので、本記事をご覧になってチャレンジしてみたいと思われた方は、ぜひご連絡をお待ちしております。