くるみん認定は、社員に対して子育てサポートを十分に行っている企業が得られる厚労省の認定の1つです。社会からのイメージがアップしたり、優秀な人材を確保しやすくなったりするメリットがあります。
求職者の中には、将来的な出産などに備えてあらかじめ子育てを支援してくれる、くるみん認定を受けている企業を探す方も多いです。くるみん認定は、少子化時代において企業に求められる重要な認定制度となります。
この記事では、くるみん認定の種類とメリット、取得方法を紹介します。
くるみん認定とは、子育て支援を積極的に取り組んでいる企業に対し、厚生労働大臣から受けられる認定制度のことです。
くるみんという愛称は、一般公募から決まりました。くるみんは包む(くるむ)を表し、会社ぐるみで子供を優しく包むという意味があります。
くるみんマークは、次世代育成支援対策推進法に基づき、一般事業主行動計画を策定し、目標を達成した基準を満たした企業に対して付与されます。
付与されるためには、男性の育児休業等取得者が過去三年間で最低一人いることや、女性の育児休業等取得率が70%以上などの厚生労働省令で定める基準に適合する必要があります。
令和5年9月末時点で、くるみん認定を受けた企業は4,313社にもなります。
くるみんマークは、平成27年4月1日より「プラチナくるみん」、令和4年4月1日からは「トライくるみん」が創設されており、3種類に分かれます。
くるみん認定には以下の3タイプあります。
くるみん
プラチナくるみん
トライくるみん
それぞれの特徴について紹介します。
くるみん認定の最も基本となる基準をクリアしたことを表すマークです。
認定を受けるためには、以下の10項目を含む一般事業主行動計画を定め、基準を満たす必要があります。
①行動計画策定指針に照らし、雇用環境整備について適切な行動計画を策定したこと |
②行動計画期間が、2年以上5年以下であること |
③策定した行動計画を実施し、計画に定めた目標を達成したこと |
④行動計画の公表および労働者への周知を適切に行なっていること |
⑤計画期間において、次のいずれかを満たしていること (1)男性労働者の育児休業等取得率が10%以上で、厚生労働省のウェブサイト「両立支援のひろば」で公表していること (2)男性労働者の育休等取得率および企業独自の育児を目的とした休暇制度利用率が計20%以上あり、当該割合を「両立支援のひろば」で公表し、育休等取得者が1人以上いること |
⑥計画期間における、女性労働者の育児休業等取得率が、75%以上であり、当該割合を厚生労働省のウェブサイト「両立支援のひろば」で公表していること |
⑦3歳から小学校就学前の子どもを育てる労働者について、「育児休業に関する制度、所定外労働の制限に関する制度、所定労働時間の短縮措置または始業時刻変更等の措置に準ずる制度」を講じていること |
⑧計画期間の終了日の属する事業年度において次のいずれも満たしていること (1)フルタイム労働者の法定時間外・法定休日労働時間が各月平均45時間未満であること (1)月平均の法定時間外労働60時間以上の労働者がいないこと |
⑨次の3項目のいずれかの措置について、成果に関する具体的な目標を定めて実施していること (1)所定外労働の削減のための措置 (2)年次有給休暇の取得の促進のための措置 (3)短時間正社員制度、在宅勤務、テレワークその他働き方の見直しに資する多様な労働条件の整備のための措置 |
⑩法および法に基づく命令その他関係法令に違反する重大な事実がないこと |
プラチナくるみんは、くるみんとトライくるみんの認定を受けた企業の中で、より高い取り組みを行った企業が認定されるマークです。
くるみん認定との基準の違いは以下の表の通りで、追加項目も増えます。
⑤計画期間において、次のいずれかを満たしていること (1)男性労働者の育児休業等取得率が30%以上であること (2)男性労働者の育休等取得率および企業独自の育児を目的とした休暇制度利用率が計50%以上あり、育休等取得者が1人以上いること |
⑨次の3項目のすべての措置について実施しており(1)または(2)のうち、少なくともいずれか一方について、定量的な目標を定めて実施し、その目標を達成したこと (1)所定外労働の削減のための措置 (2)年次有給休暇の取得の促進のための措置 (3)短時間正社員制度、在宅勤務、テレワークその他働き方の見直しに資する多様な労働条件の整備のための措置 |
<追加項目>
⑩次のいずれかの要件を満たしていること (1)子を出産した女性労働者のうち、子の1歳誕生日まで継続して在職(育児休業等を利用している者を含む)している者の割合が90%以上であること (2)子を出産した女性労働者および子を出産する予定であったが退職した女性労働者の合計数のうち、子の1歳誕生日まで継続して在職している者(子の1歳誕生日に育児休業等を利用している者を含む)の割合が70%以上であること |
⑪育児をする女性労働者が、育休等の取得や就業継続して活躍できるような能力向上またはキャリア形成支援のための取り組み計画を策定し、実施していること |
さらにプラチナくるみんは、最低でも年に1回、前年度の「次世代育成支援対策の実施状況」について実施状況を公表する必要があります。
トライくるみんは、くるみんより基準が緩和されています。
くるみんとは異なる基準は以下の通りです。
⑤計画期間において、次のいずれかを満たしていること (1)男性労働者の育児休業等取得率が7%であること (2)男性労働者の育休等取得率および企業独自の育児を目的とした休暇制度利用率が計15%以上あり、育休等取得者が1人以上いること |
⑥計画期間における、女性労働者の育児休業等取得率が、75%以上であること |
令和4年度4月より、プラス認定制度が取り入れられています。
プラス認定とは、不妊治療と仕事を両立しやすい職場環境の整備に取り組む企業を認定する制度です。
認定を受けると、マークも以下のように変わります。
プラス認定を受けるためには、3つのくるみんのいずれかの認定基準を満たすこと、および次の項の要件を全て満たす必要があります。
①不妊治療のための休暇制度または、不妊治療のために利用することができる、半日単位・時間単位の年次有給休暇、所定外労働の制限、時差出勤、フレックスタイム制、短時間勤務、テレワークなどの制度を設けていること |
②不妊治療と仕事との両立に関する方針を示し、講じている措置の内容とともに社内に周知していること |
③不妊治療と仕事との両立に関する研修その他の不妊治療と仕事との両立に関する労働者の理解を促進するための取組を実施していること |
④不妊治療を受ける労働者からの不妊治療と仕事との両立に関する相談に応じる担当者(両立支援担当者)を選任し、社内に周知していること |
プラス認定を受けると、不妊治療と仕事との両立をサポートする企業であることもPRすることができ、より人材確保に繋がるメリットがあります。
くるみん認定の取得によって得られるメリットは以下の4点です。
くるみん認定を受けた企業は、くるみんマークを自社の商品や名刺、パンフレット、広告などに使用できるようになり、企業イメージの向上につながります。
仕事優先だけでなく、労働者の子育てにも取り組んでいる企業であることを社内外にアピールできます。
求職者にもアピールできるため、女性や主婦、などの人材確保にも繋がるメリットがあります。
日本政策金融公庫の「働き方改革推進支援資金」を利用する際、一定の条件を満たしていれば、通常よりも低金利で融資を受けることが可能となるメリットがあります。
働き方改革推進支援資金は、中小企業が働き方改革を実現するための設備導入や人材活用を支援する際に利用できる貸付です。
直接貸付で最大融資額が7億2,000万円にもなる大きな融資で、設備資金や長期運転資金などの用途に用いることが可能です。
基準利率は、貸付期間によって異なりますが、1.50%~2.3%です。(令和6年7月1日現在)
くるみん認定を受けた企業の利率が優遇されるため、低金利融資を受けることができます。
くるみん認定を受けた企業が各府省などから公共調達する場合、加点評価が得られるメリットがあります。
加点措置が受けられる補助金には、以下のような中小企業にも馴染みのある補助金が該当します。
・事業承継・引継ぎ補助金 など
補助金による資金調達を検討している方は、くるみん認定を取得することで有利に働くことでしょう。
ただし、加点措置が受けられるからといって、必ず採択されるわけではありません。
採択率を高めたい方は、補助金コンサルタントなどの専門家に相談しましょう。
「くるみん認定」「くるみんプラス認定」「プラチナくるみん認定」「プラチナくるみんプラス認定」を受けた企業は、上限50万円の助成金を受けられます。
「トライくるみん」は対象外ですが、労働者が300人以下の企業で、子ども・子育て支援法に定める一般事業主であれば適用されます。
さらに1回の認定につき1度の助成を受けることができますが、「プラチナくるみん」と「プラチナくるみんプラス」に関しては、1年ごとに1回受けることができます。
申請は「くるみん助成金ポータルサイトの申請フォーム」より可能です。
令和7年2月7日まで実施していますが、予算の上限に達した場合は期間内でも終了することがあるため、早めに申請してみましょう。
くるみん認定は以下の手順で取得します。
自社の現状や従業員のニーズの把握
行動計画を策定と周知
行動計画を策定した旨を都道府県労働局雇用環境・均等部(室)へ届出
行動計画の実施し、くるみん認定の申請
ひとつずつ紹介します。
行動計画を策定するため、まずは自社の現在の状況や従業員のニーズの把握から始めます。
仕事と子育ての両立で障害になっている事項や、従業員が求めている内容をヒアリングします。
自社分析が従業員のニーズのヒアリングが完了した後は、行動計画の策定を行います。
子育て支援のための行動計画として盛り込むのにふさわしい目標や計画期間などを定めます。
<行動計画の例> ・妊娠中および出産後の労働者の健康管理システムの構築や相談窓口の設置 ・子育てにかかる費用の助成や貸付 ・出産、子育てに関わる休暇制度の創立 など |
行動計画を策定したら、策定の日からおおむね3か月以内に、その計画を一般に公表するのと同時に、従業員へ周知を行います。
策定日からおおむね3か月以内に、各都道府県の担当部署(労働局雇用環境均等部・室)へ、「一般事業主行動計画策定・変更届」を提出します。
策定内容に沿って行動計画を実施します。
行動期間が終了したら、都道府県の担当部署へくるみん申請を行い、認定されればマークが付与されます。
くるみん認定は、行動計画の策定だけでなく、基準をしっかりクリアしなければいけません。
初めてくるみん認定を受けようとする方には難易度が高く、スムーズに申請できないケースも多いです。
そのため、各種申請などのサポートを行ってくれる専門家へのコンサルティングは必須です。
くるみん認定とは、子育て支援を積極的に取り組んでいる企業に対し、厚生労働大臣から受けられる認定のことです。
労働者の中には、子育てと仕事の両立で悩んでいる方も多いでしょう。
認定を受ければ、そのような人材をサポートする企業として、採用力の向上につながり、企業PRにも役立ちます。
ただし、簡単に受けられる認定ではないため、取得を目指す企業は専門家に相談しながら検討するようにしましょう。