日本国内の深刻なIT人材不足やコスト削減の必要性から、システムやアプリの開発を海外へ委託する「オフショア開発」が中小企業でも急速に普及しています。しかし、「どの国・どの会社に頼めばよいの?」「ラボ型や請負型って何?」「失敗しないための比較ポイントは?」といった疑問や不安を抱えたまま、なかなか一歩を踏み出せない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、中小企業に最適なオフショア開発企業の選び方とおすすめ企業を徹底解説します。国選びや費用相場、契約形態から補助金活用まで、失敗しない実践的な知識をわかりやすく解説します。システム開発を予定されている方は是非最後までお読みください。
オフショア開発とは、主にコスト削減や人材確保を目的に、海外(アジア等)の企業へシステム・アプリ開発を委託する手法です。背景には、国内のIT人材の慢性的な不足や、成長分野(DX推進、Webサービス)の人件費高騰があります。経済産業省の調査では2030年には最大80万人のIT人材が不足する可能性も指摘されています(参考:経済産業省 IT人材需給に関する調査)。
90年代は中国が中心でしたが、現在はベトナム・フィリピン・インド・ミャンマーなどが中小企業にも人気の委託先となります。スタートアップから一般事業会社まで、新規開発や既存システム保守、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進案件にも活用が広がっています。
参考:オフショア開発とは?メリットやデメリット、オフショア開発会社に委託する際の注意点を解説
オフショア開発のメリットは何と言ってもコストが抑えられることです。為替や現地との給与差を活かし、安い人件費で多くの労働力を確保することが可能です。特にIT分野は働く場所を選ばないリモートワークが可能で、オフショアのメリットを存分に活かすことができます。
エンジニアの人件費削減
国内IT人材不足の即時補完
長期⼤規模案件やリプレイス案件への柔軟対応
各種補助金(新事業進出補助金、ものづくり補助金など)が使える
また通常のシステム開発と同様、補助金の対象にもなります。システム開発には多くの費用がかかることが珍しくありません。オフショア開発でコストを削減し、更に補助金を使って実質コストを下げることが可能です。
オフショア開発のデメリットは何と言ってもコミュニケーションの難しさでしょう。言語や文化の異なる人と同じ目的に向かって仕事をすることは、想像以上に難しい作業です。特に障害の許されないミッションクリティカルなシステムを構築する場合には、品質の確保が大きな課題となるでしょう。
言語・文化の違いによるコミュニケーションコスト
仕様や認識の齟齬(あいまいな指示が通じにくい)
品質保証(QCD管理)が甘くなるリスク
セキュリティ、情報管理(委託前の準備に注意が必要)
また、近年重要性がますます大きくなってきているセキュリティにも懸念が残ります。委託先であるオフショア企業のコンプライアンスに対する考え方や、職場環境や教育制度が整っているかといったポイントも事前に確認しておきたい内容です。
オフショア開発には、ベトナム、フィリピンといったアジア国が人気です。アジア国はIT人材教育に力を入れている国も多く、安価で優秀なエンジニアを多数確保することができます。また新興国は労働人口の平均年齢が若く、新しい変化や技術の習得に積極的です。
オフショア人気国の単価と特徴をまとめると以下の表になります。
国名 | 人月単価(万円) | 時差 | 言語 | 特徴 |
---|---|---|---|---|
ベトナム | 30~50 | 2時間 | ベトナム語・英語・日本語 | コスト安・日本語OK多い・勤勉 |
フィリピン | 25~45 | 1時間 | 英語・フィリピン語 | 英語力高い・ホスピタリティあり・若年層が多く成長に意欲 |
中国 | 40~50 | 1時間 | 中国語 | 技術力高い・単価上昇傾向 |
インド | 35~55 | 3.5時間 | 英語・ヒンディー語 | AI・DX系強い・高度⼈材多い |
ミャンマー | 25~35 | 2.5時間 | ミャンマー語 | 安価な日本語人材増加 |
オフショア人気国には単価の違いのほか、お国柄や日本との関係の違いなど、それぞれの特徴があります。どの国のエンジニアが適切かどうかは、プロジェクトの性質や予算等によって変わります。以下に主な特徴をまとめました。
国 | 特徴 |
---|---|
ベトナム | 人月単価が安く、勤勉な国民性です。日本語対応できるエンジニアが多数います。ベトナムは国策としてIT人材育成を進めており、エンジニアリングに特化した大学があるなど、人材層が厚い特徴があります。 |
フィリピン | 英語力、日本語力ともに高めです。幼少期より英語とフィリピン語の2か国語で学んでいるため、英語はネイティブになります。親日である点もメリットです。アプリやWebの受託、ラボ型のプロジェクト実績が増加しています。 |
中国 | オフショア開発の元祖と言えば中国です。ITだけでなく製造業全般において世界の工場として受託開発拠点としての地位を確立しています。最近では現地の給与が上昇したことにより単価が上昇傾向です。 |
インド | 中国に比べAIや高度案件向きの人材が多く、単価もやや高めの印象です。他のオフショア国に比べ地理的にも文化的にも日本からは少し離れていますが、寛容な国民性です。要件はしっかりと理由を添えて伝えることがポイントです。 |
ミャンマー | 近年注目されているオフショア開発国です。単価は安く柔軟なチーム編成が可能ですが、政治的に安定していないため情勢を定期的にチェックしておくことがおすすめです。 |
どの国のどの企業に委託するかはプロジェクトの成功要因を決定づける重要な要素です。ここでは、オフショア開発企業の選び方について、主なポイントを解説します。
オフショア開発企業は、それぞれが専門とする技術領域と案件規模によって個性があります。アプリ開発に強い企業は、iOS/Androidのネイティブ開発やFlutter・React Nativeなどのクロスプラットフォーム実装の経験が豊富で、短期リリースやUI/UX改善を得意としています。
一方、業務系Webシステムや基幹システムの構築を得意とする企業は、PHP・Java・.NETといったサーバーサイド技術やクラウドネイティブ設計に精通し、長期にわたる保守運用までカバーする体制を整えています。近年需要が伸びるDX/AI領域では、要件定義の上流工程からPoC、データ分析、機械学習モデルの実装までワンストップで支援する事例が増えており、自社のニーズに合った事例の有無が選定の重要ポイントとなります。
言語の異なるオフショア開発企業との円滑なコミュニケーションを支えるのは、日本語で要件を正確に把握し、現地チームへ的確に伝達できるブリッジSEの存在です。日本語能力試験N1・N2相当の語学力に加え、日本式プロジェクトマネジメントに通じた経験豊富な人材がプロジェクトに常駐すると、仕様の抜け漏れや認識の齟齬を大幅に減らせます。
また、日本人PM/SEを必ず介在させるハイブリッド体制や、入社時に日本語・日本文化研修を義務付ける企業は、納期遅延や品質トラブルの発生率が低い傾向にあります。定例ミーティングの頻度、チャット・チケット管理ツールの選定、レビュー・テスト体制といったガバナンスが整っているかも確認ポイントです。これらの要素が揃って初めて「低コストでも高品質」を実現できるため、契約前のヒアリングでは現場レベルの運営ルールまで細かく確認しましょう。
オフショア開発の契約形態は大きく請負型、ラボ型、SES型の三つに分類されます。請負型は納品物に対して責任を負うため、スコープが明確な小規模・短納期案件に適しています。ラボ型は一定期間チームを専有できるため、仕様変更が想定される中長期案件や複数プロジェクトを並行させる場合にコストメリットが大きく、要員確保の柔軟性も高いことが特徴です。SES型は日本側常駐の技術者を確保してDX推進を加速させたい企業に向き、社内ノウハウ蓄積にも寄与します。
費用は人月単価だけでなく、管理工数やコミュニケーションコストも含めて比較する必要があり、必ず複数社から見積もりを取得することがおすすめです。さらに、新事業進出補助金や省力化補助金、ものづくり補助金などの公的支援制度を組み合わせれば、導入コストを大幅に圧縮できる可能性があります。ただし、補助対象となる経費区分等の要件を満たす必要があるため、最新の公募要領を確認し、専門家や支援事務局へ早めに相談することが成功への近道です。
参考:オフショア開発で利用できる補助金とは?申請の流れや注意点も解説
それでは、おすすめのオフショア開発企業をご紹介します。
株式会社LIG(日本・ベトナム・フィリピン)
ノーコード/ラボ型・デザイン性が強み。大手含む多彩な開発実績。
Sun Asterisk(日本・ベトナム・他)
DX・事業企画/デザイン/上流~納品の一貫対応。
モンスターラボホールディングス(世界20カ国超、ベトナム含む)
世界2,200件以上の実績、アジャイル/DevOps体制。
バイタリフィ(日本・ベトナム)
アプリ・AI/Unity等領域別専門チーム、日本人PM体制。
インディビジュアルシステムズ株式会社(日本・ベトナム)
日本語堪能BSE/業務系システム得意、低コスト運営。
ハイブリッドテクノロジーズ(日本・ベトナム)
ラボ型/受託両対応・大規模/DX運用案件実績。
CMC Japan株式会社(ベトナム2位グループ日本法人)
クラウド/セキュリティ/大手案件多数。
SHIFT ASIA CO., LTD.(ベトナム)
ソフトウェア品質保証・セキュリティ、テスト体制強化。
アイディーエス(日本・ベトナム)
PHP/Java/Python等…Webシステム/AWSクラウド得意。
Newwave Solutions(日本・ベトナム)
業務/モバイル/ブロックチェーン・ISTQB認証エンジニア。
オルグローラボ(日本・ベトナム)
ラボ型に特化/WordPressやShopify等フロント強み。
AutoMagic(日本・インド)
物販/EC/IoT/AI/インド技術者活用/ブリッジSE手厚い。
キャピタルナレッジ(日本・ミャンマー)
ラボ型・ミャンマーエンジニア特化/日本語体制。
Wakka Inc.(日本・ベトナム)
フルスクラッチEC・Webシステム/現地法人設立支援。
ブライセン
日本-海外ハイブリッド型/日本語コミュニケーション徹底/高セキュリティ。
FPTジャパンホールディングス
ベトナム最大規模/独自認定エンジニア/短納期~大規模。
他にもグローバルイノベーションコンサルティング、リッケイ、NTQジャパン、カオピーズなども注目です。詳細・最新情報は各社公式HPや比較サイトオフショア開発.comなどもご参照ください。
オフショア開発の流れは通常の国内IT企業を使うのと大きく変わりません。しかしながら、オフショア企業とはじめて一緒に仕事をする際には想定外のトラブルがつきものです。頻繁に見直しを行ったり、モニタリングを強化しておくと安心です。
システム開発で最も重要な工程は要件定義でしょう。この工程で開発するシステムの大部分が決定し、残りの工程のコストが明らかになりますが、オフショア開発においても同じく最も重要です。
特にオフショア開発の場合は、システムの要件を決定するのと同時に、後の開発プロジェクトの進め方や人員体制についても詳細に確認しておくのがおすすめです。安く作りたいからといって安い企業を選ぶのではなく、ブリッジのサポートがついているかどうかを含め、複数社の提案を比較しておくと安心です。
<要件定義におけるポイント>
目的・KPIを明確化(コスト、納期、人材)
開発国・会社の決定:品質・費用・体制・得意領域のバランス比較
契約形態・体制確定・見積もり:必ず複数社取得し比較
仕様書/設計書の詳細化・翻訳:海外では日本的な「よしなに」は通じない
オフショア開発を成功させる第一歩は、プロジェクトの性質に合った契約形態を選択し、社内担当者と現地チームを結ぶ連携フローを明確に設計することです。
いずれの契約形態でも、社内のプロダクトオーナーや技術責任者を頂点とし、現地側のブリッジSEまたはPMがタスク分解・進捗管理を行う二重チェック体制をつくることで、要件の漏れや認識齟齬を回避できます。発注前に責任範囲・成果物定義・検収基準を文書化し、双方が同じ尺度で進捗を評価できる準備をしておくことが肝要です。
オフショア開発は、コスト削減・DX推進・人材不足解消の有効な選択肢です。特にベトナム・フィリピンを中心とした信頼できる企業選びが重要です。得意領域・実績・コミュニケーション体制・補助金活用も含め、必ず複数社比較を比較し、自社にとって最高のパートナーを選びましょう。
補助金コネクトでは補助金申請のサポートを行っています。本記事で取り上げたオフショア開発でも、補助金申請でコストを大幅に削減することが可能です。まずはどのような補助金が対象か知りたいという方は、以下のフォームよりご連絡をお願いいたします。
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BLUE ONION(ブルーオニオン) | 事業再構築補助金の成功事例
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