夢を形にする、事業を始める、会社を大きくする、そんな時に頼りになるのが資金調達です。資金調達の方法には、民間金融機関からの融資や補助金・助成金、出資などがありますが、創業時の資金調達先として多くの方が検討するのが日本政策金融公庫です。
しかし、「日本政策金融公庫の融資は厳しい」「審査に通るのが難しい」という話を聞いて、不安を感じている方もいるでしょう。
日本政策金融公庫は、創業者や小規模事業者などを対象とした融資制度を用意しており、創業前から相談できる窓口も設けています。一方で、融資である以上、事業の実現可能性や資金の使いみち、返済可能性などについて確認を受けることになります。
そのため、「申し込めば誰でも融資を受けられる」というわけではありません。
この記事では、日本政策金融公庫の融資が「厳しい」と言われる理由をはじめ、融資を受けるための流れ、審査で確認されるポイント、厳しいと言われた場合の対処法について詳しく解説します。

日本政策金融公庫の融資は、創業資金や設備資金、運転資金など、さまざまな事業資金に利用できます。
特に創業予定者や創業して間もない方に対しては、創業計画の作成から資金調達まで支援しており、申込み前に創業相談を利用することも可能です。
まずは、日本政策金融公庫の融資を検討する前に知っておきたいポイントを確認しておきましょう。
まず確認したいのが、自分が申し込もうとしている融資制度の対象者に該当するかどうかです。
日本政策金融公庫には複数の融資制度があり、対象者や資金使途、融資限度額、返済期間などが異なります。
例えば、創業者向けの「新規開業・スタートアップ支援資金」は、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方を対象としています。融資限度額は7,200万円で、そのうち運転資金は4,800万円以内です。
そのため、「日本政策金融公庫ならどの制度でも申し込める」と考えるのではなく、自分の事業内容や創業時期、資金使途に合った制度を選ぶことが大切です。
また、融資の審査では、事業の内容や計画だけでなく、これまでの事業経験、資金の状況、既存の借入などについても確認されます。
融資の申し込みには、事業計画書や決算書など書類が必要です。
これらの書類は、審査の際に重要な判断材料となるため、正確かつ丁寧に作成することが大切で、主な必要書類は以下になります。
・事業計画書 ・決算書(直近3期分) ・確定申告書(直近3年分) ・会社謄本、印鑑証明書 ・代表者の身分証明書 ・資金繰り表 ・担保に関する書類(必要に応じて) |
これらの書類は、事業内容や経営状況を判断するための重要な資料となります。漏れや不備がないよう、正確に作成しましょう。

日本政策金融公庫で融資を受ける場合、一般的には「相談・申込み→書類提出→面談等による審査→融資決定→契約・融資」という流れで進みます。
日本政策金融公庫では、国民生活事業の事業資金についてインターネット申込みにも対応しており、創業予定者は申込み前に支店などで創業相談を受けることもできます。
融資の申し込みは、日本政策金融公庫の窓口、郵送、またはオンラインで行うことができます。
窓口で申し込む場合は、事前に予約を取っておくようにしましょう。一方で郵送の場合は、必要書類を揃えて送付します。オンラインの場合は、日本政策金融公庫のホームページから申し込みが可能です。
申し込み後、担当者との面接が行われます。面接では、事業計画の内容や資金使途、返済能力などについて詳しく説明する必要があります。
日本政策金融公庫では、資金の使いみちや事業の状況・計画などについて話を聞き、必要に応じて店舗や事務所を訪問することも案内しています。
面談では、事業計画書に書いた内容をそのまま読み上げるだけではなく、「なぜこの売上を見込めるのか」「なぜこの金額の設備資金が必要なのか」といった質問にも具体的に答えられるよう準備しておくことが重要です。
面談や提出書類などをもとに審査が行われ、融資の可否が決まります。
審査の結果、融資が決定した場合は、契約に必要な書類を提出し、契約手続きが完了すると融資金が指定口座へ送金されます。なお、日本政策金融公庫も、審査の結果によっては希望に沿えない場合があると案内しています。
審査にかかる期間は、申込み内容や書類の状況などによって異なるため、「必ず○日で結果が出る」と考えず、余裕を持って資金調達の計画を立てておきましょう。
参考記事:日本政策金融公庫から融資を受ける流れとは?創業融資の申し込み手続きと必要書類を解説

日本政策金融公庫の融資を受けるためには、単に「借りたい金額」を伝えるだけではなく、なぜその金額が必要なのか、どのように事業を行い、どのように返済するのかを具体的に説明することが重要です。
特に、以下の点を意識して準備しましょう。
ポイント | 確認される内容 |
|---|---|
事業計画 | 事業内容やターゲット、販売方法などが具体的になっているか |
売上計画 | 売上の根拠があり、実現可能性を説明できるか |
資金使途 | 借入金を何に使うのか明確になっているか |
自己資金 | 自己資金をどのように準備したのか説明できるか |
事業経験 | これまでの経験やスキルが事業に生かされるか |
返済計画 | 売上・利益から無理なく返済できる計画になっているか |
既存借入 | 現在の借入状況や返済状況に問題がないか |
創業融資の場合、事業計画書は審査の重要な資料になります。
「飲食店を開業する」「Webサービスを始める」といった事業内容だけではなく、誰に、何を、どのように販売するのかまで具体化することが大切です。
例えば飲食店なら、客単価や座席数、営業時間、想定する来店客数などをもとに売上を算出します。
「月商300万円を目指す」と記載するだけではなく、「客単価3,000円×1日40人×25日=月商300万円」のように計算根拠まで説明できれば、計画の具体性が増します。
さらに、売上だけではなく、家賃、人件費、仕入れ、広告費、通信費などの経費を考慮し、最終的にどの程度の利益が残るのかまで整理しておきましょう。
創業時には、自己資金についても整理しておく必要があります。重要なのは、単純に「自己資金が○万円ある」と示すだけではなく、その資金をどのように準備してきたのかを説明できることです。
例えば、給与などから計画的に貯めた資金であれば、預金通帳などを通じて準備状況を説明できます。
一方、直前にまとまった金額が口座へ入金されている場合などは、その資金の出所について説明を求められる可能性があります。
創業資金を親族から借りた場合も、自己資金と借入金を区別して整理しておくことが重要です。
「できるだけ多く借りたい」という考えだけで融資希望額を設定するのは避けましょう。
融資を申し込む際は、設備費や仕入れ、広告費、人件費など、事業を始めるために必要な資金を具体的に計算します。
そのうえで、自己資金で賄える部分と借入で調達する部分を整理し、必要な金額を申し込むことが大切です。借入希望額に明確な根拠がなければ、資金使途や返済計画との整合性を説明しにくくなります。
面談では、事業計画書に書いた内容について質問される可能性があります。例えば、以下のような質問を想定しておくとよいでしょう。
想定される質問 | 準備しておきたい内容 |
|---|---|
なぜこの事業を始めるのか | 創業の動機やこれまでの経験 |
どのように顧客を獲得するのか | 広告、紹介、営業、SNSなど |
売上の根拠は何か | 客単価、顧客数、販売数など |
なぜこの金額の融資が必要なのか | 設備費、運転資金などの内訳 |
競合との差別化は何か | 商品・サービス、価格、立地など |
返済できる根拠は何か | 利益計画と毎月の返済額 |
重要なのは、面談のために話を作ることではありません。
事業計画書と実際の考えに食い違いがないようにして、自分の事業について具体的に説明できる状態にしておくことが大切です。
参考記事:日本政策金融公庫の審査に落ちないためのポイントとは?融資審査に向けた対策方法を解説

融資を断られてしまった場合でも、諦める必要はありません。まずは落ち着いて、状況を把握し、今後の対策を検討しましょう。ここからは厳しいと言われた時の対処方法について紹介します。
なぜ融資を断られてしまったのか、その理由を明確にすることが重要です。担当者に直接問い合わせたり、事業計画書を見直したりして、改善点を探しましょう。
まずは、「厳しい」と言われた理由を確認し、具体的にどの点が不足していたのか、改善すべき点は何かなどを具体的に確認することが大切です。
事業計画の内容、自己資金の額、経営者の経験やスキルなど、改善可能な点があれば積極的に改善し、対応可能な点は何かを検討しましょう。
改善可能な点があれば、再審査を申し込むことも可能です。ただし、再審査は必ずしも認められるわけではなく、前回指摘された点をクリアしている必要があります。
まずは、担当者に再審査の可能性を相談しましょう。前回の審査結果を踏まえ、改善策を具体的に提示し、再審査の可能性について相談し、再審査が可能な場合は、指摘された点を改善した上で、再度申し込みを行いましょう。
日本政策金融公庫からの融資が難しい場合でも、資金調達の方法が一つしかないわけではありません。
事業の状況に応じて、以下のような方法も検討できます。
資金調達方法 | 特徴 |
|---|---|
民間金融機関からの融資 | 銀行や信用金庫などから借入する方法 |
信用保証協会付き融資 | 信用保証協会の保証を付けて金融機関から借り入れる方法 |
補助金・助成金 | 対象経費の一部などを支援する制度 |
クラウドファンディング | 不特定多数の人から資金を募る方法 |
エンジェル投資家 | 個人投資家から出資を受ける方法 |
ベンチャーキャピタル | 成長が期待される企業などが出資を受ける方法 |
ただし、補助金・助成金は融資とは異なり、原則として対象経費を支出した後に支給される制度も多いため、運転資金をすぐに確保できるとは限りません。
また、出資を受ける場合は融資と違って返済義務がない一方、株式の持分や経営への関与などについて検討する必要があります。
それぞれ仕組みが異なるため、「日本政策金融公庫が難しいから別の方法」と単純に考えるのではなく、資金の必要時期や必要額、返済の有無などを比較して選択しましょう。
都市銀行、地方銀行、信用金庫など、様々な金融機関が融資を行っており、それぞれの金融機関によって、融資条件や審査基準が異なります。
都市銀行は大規模な融資や、海外との取引が多い企業向けの融資に強みがあります。一方で地方銀行は地域密着型の金融機関で、地域の中小企業への融資に力を入れているのも特徴です。
信用金庫は地域の事業者や住民を会員として、地域社会への貢献を目的とした金融機関になります。
国や自治体では、特定の分野の事業者に対して、助成金や補助金を提供しています。
助成金は返済不要の資金で、事業の促進や発展を目的として支給され、補助金は一部の費用を国や自治体が負担してくれる制度です。
クラウドファンディングはインターネットを通じて、不特定多数の人から資金を集める方法です。
・購入型: 商品やサービスの購入を通じて資金提供を受ける方法 ・寄付型: 事業への共感や応援を目的とした資金提供を受ける方法 ・融資型: 個人や企業から少額の融資を受ける方法 |
エンジェル投資家は、創業期の企業に対して、資金提供や経営サポートを行う個人投資家です。
事業の立ち上げに必要な資金を提供したり、豊富な経験や知識を活かし、経営のアドバイスや人材の紹介などを行います。
高い成長が見込まれる未上場企業に対して、資金提供を行う投資会社です。
事業の拡大に必要な資金を提供し、経営戦略の策定や事業提携の支援などを行います。
それぞれの資金調達方法にはメリット・デメリットがあるので、事業の状況や資金ニーズに合わせて、最適な方法を選択することが重要です。
資金調達のプロである金融アドバイザーに相談するのも一つの手です。
税理士や中小企業診断士などの専門家に相談することで、改善点を明確化して審査通過の可能性を上げましょう。
中小企業診断士は、経営全般に関する豊富な知識を持ち、企業の成長戦略や問題解決のサポートを行います。
経営戦略、マーケティング、財務分析、人事管理など、経営全般に関する幅広い知識と経験があり、資金調達だけでなく事業全体の改善点を洗い出し、成長戦略を構築できるでしょう。
公的な機関が提供する補助金や助成金の活用についても相談できるのも特徴です。
税理士は税務に関する専門家で、企業の会計処理や税務申告を代行するだけでなく、資金繰りや節税対策などの財務コンサルティングも行います。
資金調達においては、最適な資金調達方法の選択や、税務上のリスクを考慮したアドバイスを提供してくれるでしょう。
税務申告書類の作成などを依頼することで、事務負担を軽減することも可能です。
ファイナンシャルプランナーは、資金計画に関する専門家で、事業の現在の状況と将来の目的を踏まえた資金戦略を提案してもらうことができます。
公的融資制度や助成金などの活用についても、情報提供や申請サポートを受けられ、資金調達後の返済計画についても、無理のない範囲で設定できるようアドバイスを受けられるでしょう。
資金調達は、企業の成長にとって非常に重要なプロセスです。専門家のサポートを適切に活用することで、資金調達の成功率を高め、事業の成長を加速させることができます。

日本政策金融公庫は、政府系金融機関として、民間金融機関では対応が難しい資金需要にも対応し、国民生活や経済活動の安定・発展をサポートしています。
特徴としては、以下のような点が挙げられます。
・創業融資に強い: 創業間もない企業や小規模事業者への融資に積極的です。 ・無担保・無保証人制度: 担保や保証人がない場合でも、事業計画の内容次第で融資を受けられる可能性があります。 ・低金利: 一般的に、民間金融機関よりも低い金利で融資を受けられます。 ・長期返済: 返済期間が長めに設定されているため、無理なく返済計画を立てやすくなっています。 |
ここでは日本政策金融公庫の融資制度を3点紹介します。
創業者が利用を検討する代表的な制度の一つが「新規開業・スタートアップ支援資金」です。
2025年3月に制度名称が「新規開業資金」から変更され、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方を対象としています。融資限度額は7,200万円で、そのうち運転資金は4,800万円以内です。
設備資金は20年以内、運転資金は10年以内の返済期間が設定され、それぞれ据置期間も設けられています。
創業時は売上実績がないため、事業計画や創業者の経験、自己資金、資金使途などを整理したうえで申し込むことが重要です。
なお、日本政策金融公庫では創業予定者向けに創業相談も実施しています。申込み前に計画を整理したい場合は、こうした相談窓口を活用する方法もあります。
参考記事:日本政策金融公庫の創業融資制度とは?新規開業・スタートアップ支援資金など3つの制度を解説
女性や若者、シニアなど、特定の属性の方を対象とした融資制度も用意されています。
女性、若者、シニア起業家支援資金は、女性・35歳未満の若者、もしくは60歳以上のシニアの方の創業を支援する制度です。
一方で小規模事業者経営改善資金は、小規模事業者が事業の改善・発展に取り組む際に必要な資金を融資する制度になり、日本政策金融公庫では、それぞれのニーズに合わせた資金調達をサポートしています。
新事業活動促進資金は、経営革新や第二創業、新たな事業分野への進出などに取り組む中小企業者を支援する融資制度です。
既存事業とは異なる新しい商品・サービスの開発や、新たな市場への進出などに必要となる設備資金・運転資金に利用できます。事業の成長に向けて新たな取り組みを行う場合に、日本政策金融公庫から資金調達を行う選択肢の一つです。
また、経営革新計画の承認を受けた事業者や、経営力向上計画の認定を受けた事業者など、一定の要件を満たす場合には、融資条件が優遇されることがあります。
創業時だけでなく、創業後に事業を拡大したい場合や、新たな事業への転換を検討している場合にも活用を検討できる制度です。

ここでは、日本政策金融公庫の融資に関するよくある質問をQ&A形式でまとめています。
A.最寄りの日本政策金融公庫の支店に相談するのが一般的です。電話やウェブサイトから問い合わせることもできます。
また、地域の商工会議所や中小企業診断士に相談するのも一つの方法です。専門家の意見を取り入れることで、審査通過の可能性を高めることができます。
A.多くの融資制度では担保や保証人を求められることがありますが、創業融資など一部の制度では不要となることもあります。
それでも、事業内容や借入額によっては必要となるケースもあるため、事前に確認しておきましょう。
A.金利や返済期間は、融資制度や借入金額によって異なります。詳しくは、日本政策金融公庫のウェブサイトで確認するか、窓口に問い合わせてください。
金利や返済期間は、融資制度や借入条件によって異なります。

日本政策金融公庫の融資を受けるためには、事前の準備と対策が重要になります。
そのため、申込み前には、事業計画書や必要書類を丁寧に作成し、面接で熱意を示すことが必要です。審査が通らない場合でも、理由を確認し改善点を明確にして再審査に挑戦することが可能になるでしょう。
また、民間の金融機関からの融資、助成金、クラウドファンディングなど、他の資金調達方法も検討する価値があります。さらに、金融アドバイザーや専門家に相談することで、最適な資金調達の方法や審査通過のためのアドバイスを得ることができるでしょう。
融資が「厳しい」と言われた時は、落ち込むのではなく、冷静に状況を分析し、改善策を検討することが重要です。
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