経産省の令和5年補正予算に含まれる「中小企業省力化投資補助金」は、人材不足が課題となっている企業がIoTやロボットの導入により省人化・省力化を行い、生産性向上を実現するための補助金制度です。
この記事では、現時点での公開情報をもとに中小企業省力化投資補助金の概要と対象者、補助額について紹介します。
人手不足に悩まれている方、設備の導入を検討されている方は、ぜひ活用してみてください。
中小企業省力化投資補助金とは、IoTやロボットなどの導入によって人手不足の解消と生産性の向上を目的とした補助金のことです。事業再構築補助金の後継として大きな予算が確保されていることから注目を集めています。
中小企業省力化投資補助金は、企業の人手不足を解消するための設備やIoT、ロボット導入費用が対象とされています。
というのも、日本商工会議所が2023年に発表した「中小企業の人手不足、賃金・最低賃金に関する調査」の集計結果によると、全体の65.6%の企業が不足していると回答しています。人手不足は、企業の存続につながる重要な問題です。
この補助金は、人手不足の解消や生産性の向上につながる「省人化を図れるロボットや設備への投資を後押しする」ことを目的として導入されました。
中小企業省力化投資補助金の補助額は従業員に応じて以下の通り定められています。
従業員数 | 補助上限額 (大幅な賃上げを行う場合) | 補助率 |
---|---|---|
5人以下 | 200万円(300万円) | 1/2 |
6~20人 | 500万円(750万円) | 1/2 |
21人以上 | 1000万円(1500万円) | 1/2 |
例えば、従業員20名の企業が生産性の向上のために、ロボットを500万円で導入した場合、最大250万円まで補助金を受けることができます。
さらに大幅な賃上げを行う従業員21名以上企業に対しては、最大1,500万円の補助金が交付されます。とはいえ大幅な賃上げはどの程度を指すのでしょうか。次の項で詳しく解説します。
大幅な賃上げの基準は以下の2つの条件が定められています。
事業所内最低賃金を年額45円以上の水準で引き上げること
給与支給総額を年率平均6%以上増加させること
上記の2つを申請時に宣言することで、「大幅な賃上げ」として上限額が引上げされます。ただし、申請する前に従業員にも賃上げする計画を発表しておかなければいけません。万が一従業員に表明していない場合は補助金の返還が求められるため注意してください。
中小企業省力化投資補助金の対象者は以下の2つの条件を満たした中小企業や小規模事業者とされています。
人手不足の状態にある中小企業や小規模事業者
事業終了後1~3年で付加価値額を増加させることができる事業者
人手不足に関しては客観的に示す証憑を提示するか、人手不足が経営課題となっている旨を申告することが必要とされています。
また、付加価値額に関しては、事業終了後で従業員1人あたり、年平均3%以上の増加が見込める事業計画を策定する必要があります。
なお、付加価値額とは「営業利益+人件費+減価償却費」によって算出されるものを指します。
中小企業省力化投資補助金は対象者に該当するだけでなく、以下の要件を満たした事業計画書等の作成が必要です。
労働生産性の向上目標を設定し、その実現に向けて取り組むこと
賃上げの目標を設定し、実現に向けて取り組むこと
導入を契機として、従業員の解雇を積極的に行わない
人手不足の状態にあることが確認できること
全ての従業員の賃金が最低賃金をこえていること
事業計画書においては、企業の生産性向上、賃上げ、人手不足の解消などについて、具体的な数字を用いて説明することが求められます。
中小企業省力化投資補助金の対象経費は、カタログに掲載されているIoTやロボット等の人手不足の解消につながる設備の導入費用が該当します。
業種別に整理すると、以下ような機器が補助対象になります。
機器カテゴリ | 対象業種 | 対象業務プロセス |
---|---|---|
清掃ロボット | 宿泊業 飲食サービス業 | 施設管理 |
配膳ロボット | 飲食サービス業 宿泊業 | 配膳・下膳 |
自動倉庫 | 製造業 倉庫業 卸売業 小売業 | 保管・在庫管理 入出庫 |
検品・仕分システム | 倉庫業 製造業 卸売業 小売業 | 資材調達 加工・生産 検査 保管・在庫管理 入出庫 |
無人搬送車(AGV・AMR) | 倉庫業 製造業 卸売業 小売業 | 資材調達 加工・生産 検査 保管・在庫管理 入出庫 |
スチームコンペションオープン | 飲食サービス業 宿泊業 小売業 | 調理 |
券売機 | 飲食サービス業 | 注文受付 |
自動チェックイン機 | 宿泊業 | 受付案内 予約管理 請求・支払 顧客対応 |
自動精算機 | 飲食サービス業 小売業 | 請求・支払 |
IoTやAIロボットなどの技術が発展し、どの業種にも自動化や無人化が進んでいます。それらの導入経費が対象となります。
対象機器の購入はカタログに記載されている代理店を通じて行い、補助金の交付申請も購入代理店やメーカーと共同して行います。
そのため、カタログに掲載されてない製品は補助対象外となりますので注意しましょう。
なおカタログの詳細は、以下の記事で詳しく紹介しています。
中小企業省力化投資補助金のカタログとは?製品カテゴリと申請可能なカタログ商品を解説
中小企業省力化投資補助金の申請の流れは以下の画像のとおりです。
はじめに、カタログから導入製品選びを行わなければいけません。カタログに掲載されてない製品は補助対象外となりますので注意しましょう。
カタログに関しては、「中小企業省力化投資補助金のカタログとは?製品カテゴリと申請可能なカタログ商品を解説」で紹介しておりますので参考にしてください。
また対象機器の購入は代理店を通じて行い、申請も代理店とメーカーと共同して行います。申請をした後は1か月ほど審査が行われ、交付の決定がされます。
では具体的にどのような手順で進めるのか、次の項で詳しく紹介します。
中小企業省力化投資補助金申請は、以下の手順で進めます。
gBizlDの取得
カタログから製品の選定決め
交付申請
交付決定
補助金交付手続き
ひとつずつ確認していきましょう。
法人・個人事業主向け共通認証システムである「GビズID | Home 」にて、gBizlDの取得を行います。
省力化製品販売事業者と一緒にカタログから製品の選定を行います。補助金の交付申請も購入代理店やメーカーと共同して行います。
販売事業者と共同して交付申請を行います。交付申請は申請受付が開始した段階で中小企業省力化投資補助金のホームページから行えます。
申請後は中小機構による審査を経て、交付が決定されます。決定後は申請受付システムで採択の通知を受け取ります。
交付決定の後は、12か月の補助事業期間を得て、実績報告を行い、補助金額が交付されます。
また補助事業終了後、毎年4月〜6月までに効果報告を5年間行います。期限までに効果報告が提出されなかった場合、交付決定を取り消すことがあるため注意が必要です。
執筆時点で、まだ申請受付は開始していません。しかし、4月9日より中小企業省力化投資補助金のチラシが公表されたため、まもなく受付が開始すると思われます。
全体では、令和8年度9月末までに15回の公募が実施される予定です。逆算すると、2か月に1回程度の頻度で募集されると想定できます。中小企業省力化投資補助金の事務局ホームページで確認しておきましょう
中小企業省力化投資補助金は、AIやロボット導入費用を半額に抑えられる補助金です。人材不足を懸念している企業だけでなく、AIによる生産性の向上などを目的にしている企業にもおすすめです。
中小企業省力化投資補助金は、AIなどの認知度が高まったことから、今後ますます需要が高まる補助金です。公募回を重ねる度に要件が厳しくなることも予想されるため、申請を予定している方は早いタイミングで申請されることをおすすめします。
補助金コネクトでは補助金のご相談を受け付けております。補助金の活用を検討される場合は是非お問い合わせください。