システム開発にAIを活用する動きが、中小企業の現場レベルで一気に広がっています。今やAIは大手企業だけの武器ではありません。
本記事では、システム開発におけるAI活用の今とこれからの予測、またシステム開発における資金調達のコツまで徹底解説します。
「システム開発の内製化をどう始めれば?」「生成AIはどの工程で役立つ?」「補助金でAI導入できる?」
そんなリアルな疑問にお応えしますので、是非最後までお読みください。
2022年末のChatGPT登場以降、生成AIやAIコーディング支援ツールは日進月歩で進化し、国内の大手だけでなく中小事業者や自治体でも活用が加速しています。
Amazon Web Serviceによると、売上高500億円・従業員1,000名超の大企業においては、生成AIツールの導入率は70~90%に達していると公表されています。
さらにNTTデータによると、ソースコード自動生成だけでなく、要件定義や設計、テスト・運用など「システム開発の全プロセス」にAI活用が広がりつつあるのが今の潮流です。
従来のプログラマによる開発やSIer依存から、自社で手軽に素早くシステム開発・改修ができる新時代に突入しました。
生成AIとは、事前に大量データを学習してコードや文章、図表などを自動生成できるAIを指します。
従来のAIが「分類・予測などの自動化」を得意としていた一方、生成AIは名前のとおりコンテンツを生成することができ、要件定義から設計、開発、テストという開発プロセス全体において活用が可能となります。
例えばクラウド型の統合開発環境にAIエージェントを組み込むことで、要件整理や設計書作成の自動化、GitHub Copilotなどによるコーディング補佐、AIによる自動テスト・レビュー、ローコード・ノーコード開発との連携など、多様なスタイルを実現させることができます。
参考:ChatGPTアプリ15選!各社の生成AIの違いと選び方、おすすめの使い方を解説
現場から特に注目されているのが「要件定義・設計工程」のAI活用です。
例えばAIがユーザーインタビューや業務ドキュメントを解析し、システム要件を抽出・整理したり、自然言語からUMLやER図など設計書を自動生成する事例も登場しています。

三菱総研の分析では、現在活用している生成AIサービスが上図のように多岐にわたることが分かります。一方で、特定業務知識の補充やプロンプト設計による精度向上が今後の鍵と指摘されています。
製造段階では、GitHub CopilotやAmazon CodeWhispererなどのコーディングAIが自然言語指示から複雑なコード生成が可能となっています。
中でもAnthropicのClaude Codeはプロジェクト全体のソースコードを読み込み、膨大なインプット情報をもとに推論が可能となっており、コードの出力精度も高いとされています。AIを活用し自然言語で開発指示を行うバイブコーディングは、今後もますます発展していくでしょう。
さらに、E2Eテスト自動生成や、自律型AIエージェントの登場でシステム開発から保守運用の一連流れを効率化できます。ただし、現状は人間の目によるレビューが必要不可欠であり、AIと人の協働設計が重要となります。
コーディング支援AIは、開発現場の新しい常識となりつつあります。GitHub Copilotをはじめ、Claude Code、Gemini、AWS CodeWhispererなどのAIが主流であり、以下のような活用が挙げられます。
自然言語コメントからソースコード自動生成
既存コードのリファクタリング/エラー修正の提案
セキュリティ脆弱性の指摘、テストコード生成 など
2024〜2025年の調査(NTTデータ)では、AI支援によりプログラミング作業時間が30~50%短縮でき、生産性が3~5倍向上したという効果も実証されています。
人がプログラムをゼロから作成するという時代は完全に終わったと言って良いでしょう。
ローコード(Low-Code)とノーコード(No-Code)ツールとAIの組み合わせも現場力を底上げしています。
ローコードとノーコードは、プログラミングの知識がほとんどなくても、アプリやシステムを開発できる手法やツールの総称です(例:OutSystems、Power Apps、Wix、LaKeel DXなど)。
ローコード・ノーコードは「誰でも作れる」を実現し、AIは作ったものを更に進化させることができます。この組み合わせは、単なるツール導入ではなく現場主体のデジタル変革(DX)の推進力になっており、「開発速度」「業務自動化」「人材活用」「質の向上」 によって、組織で大きな効果を発揮します。
さらに注目は「Devin」「CodeAGI」といった自律型AIエージェントです。
設計書やテーブル定義書など複数ファイルからシステム全体やテストデータまで一括生成したり、プロンプトとRAG(検索拡張生成)技術により、中小事業者でも無理なくAI導入が可能です。
ただし現段階では完全自動開発ではなく、タスク分解・コード生成を高度に支援する開発補助AIの位置づけです。企業導入はまだ限定的です。
エクセル主流や独自ルールが多い中小企業の開発環境でも、AIを活用することによる開発効率化の事例が急増しています。
ただし、システム開発となるとやはりIT系の企業の開発業務効率化といった導入が中心と考えられます。
ユーザー企業(社内に開発部門を持たない非IT会社)における導入はまだ限定的です。
▼ AIの導入事例
情報通信業:生成AIで要件定義〜テスト工程の自動化により、生産性を大幅にアップ
SIer:AI自動レビューやテストコード生成により品質・効率の向上
建設業:ローコードとAIで自社業務アプリを1日でプロトタイプ化
一方で、AI活用には必ずリスクが伴います。主な課題と対策は以下の通りです。
ハルシネーション(AIが事実と異なる誤情報や誤コード生成) ⇒ 人間のテスト・レビューは必須。テスト自動化やツールも並行運用
セキュリティ脆弱性や個人情報漏洩 ⇒ AI出力の社外秘情報除外、アクセス制限、専門家レビューなど多層チェックが有効
知財・著作権関連 ⇒ 既存コード流用の有無確認、主要ツール側の保障体制を参照
これらは、IPAや総務省発行ガイドライン等も活用し「意識的・定期的なAIリテラシー研修」を実施しておくのが安全です。
DXやAI活用の成否は「専門人材の確保」だけでなく、「現場全員がAIを道具として使いこなすリテラシー」にかかっています。
AI活用OJT、DevOpsチーム設計、現場主導のトライアル推進が重要視されており、既に大手・中堅SIerで新卒向けAIエンジニア研修が標準化され始めています。
AIを活用したシステム開発を行うケースは、基本的には社内のエンジニアがシステムを作ることになると思われます。補助金はかかった経費に対して支払われるもので、経費の種類によって対象かどうかが決まりますが、「社員の人件費」は対象にならないことが多いです。ここでは、かかる経費の内容別に使える制度を紹介します。
AI人材育成を目的とする研修費は、厚生労働省の「人材開発支援助成金」で支援対象となる代表的な領域のひとつです。
特に 「人材育成支援コース」「事業展開等リスキリング支援コース」 では、社員がAI・データ分析・DXスキルを習得するための研修に対し、費用が助成される場合があります。
詳しくは以下の記事で紹介していますので、合わせてご覧ください。
参考:人材開発支援助成金とは?人材開発支援助成金のコース内容や申請から受給の流れなどを解説
具体的にシステム開発を進めるなら、ものづくり補助金などシステム構築費用が対象となっている補助金がおすすめです。ただし、システム開発を外注する場合が対象で、社員が開発する場合の人件費が対象外となりますので注意しましょう。
参考:ものづくり補助金とは?対象者や申請要件、補助額、申請方法をわかりやすく解説
その他にも、システム開発に使える補助金は沢山あります。システム開発は機械設備の導入と合わせて、補助金の主要対象経費の一つに位置づけられます。以下に最新の制度を紹介していますので、是非ご覧ください。
参考:【2025年最新】システム開発に使える補助金は?申請時の注意点や採択事例を解説
AIなどツールの導入にかかる費用が対象になるのはIT導入補助金です。経産省が認めたツールの導入に対して支払われる制度ですので、まずは導入予定のツールが補助対象になっているかを確認する必要があります。
参考:IT導入補助金とは?補助額や申請方法、スケジュール、注意点などを解説
その他、地方自治体のDX推進補助金などもおすすめです。都道府県や市区町村によって具体的な制度は異なりますので、法人が登記されている自治体に問い合わせてみても良いでしょう。
生成AIの登場により、システム開発は大企業だけの専門領域から、誰でも取り組める領域へとシフトしつつあります。具体的には要件定義から設計、コーディング、テスト、運用まで幅広くAIが支援し、中小企業でも短期間・低コストで高品質な開発が可能になっています。
一方で、ハルシネーションやセキュリティなどAI特有のリスクもあるため、AIだけに頼るのではなく、人のレビューを組み合わせた運用設計が欠かせません。社員のAIリテラシー向上も重要で、研修には助成金が活用できる場合があります。
また、システム開発費やAI導入費を支援する補助金も多数あり、うまく活用すれば負担を抑えてDXを進められます。
自社に使える補助金を知りたい方や、AI活用・システム開発について相談したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせください。
