近年、地方創生に着目する起業家も多く、補助金を活用して創業される方も増えています。
都心部での起業は競争相手も多く、すでにレッドオーシャンになっている領域が大半でしょう。一方、地方は人口こそ少ないものの、地域課題を解決できる商品やサービスのアイデアがあれば、補助金をうまく活用して事業を立ち上げるのも一つの選択肢になります。
この記事では、地方創生で使える補助金と活用事例について紹介します。
地方創生とは、東京一極集中を是正し、地方の人口減少を抑えることを目的とした政策の一つです。
地域の「まち・ひと・しごと」を活性化させていくことで、各地方が将来にわたり活力がある状態を持続させていくことを目標としています。具体的には、地方自治体が主体となり、地域の産業振興、観光資源の開発、移住・定住促進策などが実施されています。
そんな地方創生には、地方で起業等する方を対象にした補助金が多く設けられています。次の章より具体的な制度をご紹介します。
起業支援金は、地域の課題解決につながる社会的事業を新たに始める方などを対象とした支援制度です。都道府県などが実施主体となり、地域の実情に応じて起業や事業承継、第二創業などを支援します。
支援の対象となる事業には、子育て支援や高齢者の生活支援、地域産品を活用した飲食店の運営、地域資源を生かした観光事業、まちづくりなどがあります。
対象となる事業には、地域の課題解決に貢献する「社会性」、事業として継続できる「事業性」、地域の課題やニーズに対応する「必要性」などが求められます。
支援金額は、対象経費の2分の1以内で、最大200万円が一般的な目安です。ただし、実施主体となる自治体や年度によって、対象者や対象経費、補助率、募集期間などが異なります。
起業支援金の対象要件は、実施する自治体や事業によって異なります。一般的には、次のような条件が設けられています。
新たに起業する方:対象地域で、地域課題の解決につながる社会的事業を新たに開始すること
事業承継や第二創業を行う方:既存事業の承継や新たな事業展開を通じて、地域課題の解決に取り組むこと
事業を実施する地域:対象となる都道府県や市町村で事業を実施すること
事業計画:制度で定められた要件を満たす事業計画を作成し、審査を受けること
起業支援金は、申請すれば必ず受給できるものではありません。自治体などが設ける審査を通過し、所定の要件を満たす必要があります。
また、東京圏以外の地域や東京圏内の条件不利地域など、対象となる地域が限定される場合があります。起業を予定している地域で制度が実施されているか、事前に確認しておきましょう。
参考:起業支援金
移住支援金は、東京23区に在住していた方や、東京圏から東京23区に通勤していた方などが、地方へ移住して就業・起業などを行う場合に、自治体から支給される支援金です。
地方への移住や定住を促進するとともに、地域の中小企業などの人材確保や地域経済の活性化を目的としています。
支給額は自治体によって異なりますが、一般的な目安は単身者が最大60万円、世帯が最大100万円です。起業支援金と移住支援金の両方の要件を満たす場合は、合計で最大300万円、単身者の場合は最大260万円の支援を受けられるケースもあります。
ただし、すべての自治体で制度が実施されているわけではなく、支給額や対象者、申請期間なども異なります。移住先の自治体が対象となっているか、最新の実施状況を確認することが重要です。
移住支援金では、移住前の居住・通勤状況や移住先での活動などについて、要件が定められています。
主な要件は次のとおりです。
移住前の居住・通勤状況:移住直前の10年間のうち、通算5年以上、東京23区に在住していた、または東京圏から東京23区に通勤していたこと
直近の居住・通勤状況:移住直前に、連続して1年以上、東京23区に在住していた、または東京圏から東京23区に通勤していたこと
移住先:東京圏以外の地域、または東京圏内の条件不利地域など、制度の対象となる市町村へ移住すること
移住後の活動:対象となる中小企業などへの就業、テレワークによる移住前の業務の継続、地域での起業など、制度で定められた条件を満たすこと
なお、移住前の居住・通勤期間の算定方法や、対象となる就業先・起業の条件などには細かな規定があります。上記は一般的な要件であり、すべてのケースに一律に適用されるわけではありません。
移住支援金では、移住した後の申請時期や居住継続についても条件が設けられています。
一般的には、次のような要件があります。
移住支援金の申請は、転入後3か月以上1年以内に行うこと
申請後も、原則として5年以上、継続して移住先の市町村に居住する意思があること
ただし、具体的な申請期間や居住要件、支給後に転出した場合の返還条件などは、自治体の制度によって異なる場合があります。
移住支援金を利用する際は、移住先の自治体が公表している最新の要件を確認し、移住前から申請に必要な準備を進めておきましょう。
地方で新たな事業を始めたり、既存事業とは異なる市場へ進出したりする場合は、「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」の活用を検討できる場合があります。
この制度は、中小企業などによる革新的な新製品・新サービスの開発、新市場・高付加価値事業への進出、海外市場開拓に向けた国内の輸出体制強化などに必要な設備投資を支援するものです。
例えば、地域の農産物を活用した新商品の開発や、地域資源を生かした観光サービスの展開、独自の技術を用いた新製品の製造などが、事業計画や申請枠の要件に合致すれば対象となる可能性があります。
一方、単に既存設備を更新するだけの投資や、従来の業務プロセスを改善するだけの取り組みは、対象とならない場合があります。新たな価値の創出や新市場への進出など、制度の目的に合致した事業計画を策定することが重要です。
2026年度には、従来のものづくり補助金や新事業進出補助金とは異なる制度として、「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」の公募が実施されています。補助上限額や補助率は申請枠や従業員数、適用する特例などによって異なるため、過去の制度の金額をそのまま適用しないよう注意しましょう。
地方で新事業の立ち上げや事業拡大を検討している方は、対象となる事業や経費、申請要件を確認したうえで活用を検討してください。
制度の詳細については、以下の記事で詳しく解説しています。
参考:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは?対象者・補助額・対象経費をわかりやすく解説
地域のデジタル化や産業振興、観光振興などを進める際に、国の交付金を活用できる場合があります。
「デジタル田園都市国家構想交付金」は、地方公共団体がデジタル技術を活用した地域課題の解決や、地方創生に資する取り組みを進めるために設けられた制度です。
ただし、制度の名称や内容は年度によって変更されています。2025年度には「新しい地方経済・生活環境創生交付金」へ移行し、2026年度からは「地域未来交付金」として実施されています。
そのため、現在の制度を利用する場合は、旧制度の内容ではなく、地域未来交付金の最新の制度概要や公募情報を確認することが重要です。
なお、これらの交付金は、原則として地方公共団体が申請する制度です。民間事業者が直接申請する一般的な補助金とは異なり、自治体が実施する事業への参画や、自治体からの委託・補助などを通じて活用できる場合があります。
デジタル実装型は、デジタル技術を活用して地域の課題を解決し、住民の利便性や地域の魅力を高める取り組みを支援するものです。
旧制度の「デジタル田園都市国家構想交付金」では、他地域で確立された優良なサービスの導入や、データ連携基盤を活用した複数サービスの実装などが支援対象となっていました。
具体例としては、行政手続きのオンライン化、地域交通の利便性向上、観光情報のデジタル化、地域のデータを活用したサービスの導入などが挙げられます。
2026年度には、後継制度である地域未来交付金にもデジタル実装型が設けられています。ただし、対象事業や交付要件は年度によって異なるため、現在の制度概要を確認しましょう。
地域未来推進型は、地方公共団体が地域の特性を生かし、産業振興や地域経済の活性化などを進める取り組みを支援するものです。
例えば、地域資源を活用した観光振興や、地場産業の付加価値向上、地域の雇用創出につながる事業などが考えられます。
地方公共団体が地域の課題や強みを踏まえて事業を計画し、国の交付金を活用することで、地域独自の取り組みを進めやすくなります。
民間事業者が観光施設の整備や新たなサービスの展開などを検討する場合も、自治体が進める関連事業に参画できる可能性があります。ただし、民間事業者への支援方法や対象経費は、事業ごとに異なります。
地域未来交付金には、地域の防災力を高めるための取り組みを支援する地域防災緊急整備型も設けられています。
地域の防災・減災対策や災害時の対応力強化など、住民の安全・安心につながる取り組みが対象となります。
観光地では、災害発生時の避難体制や観光客への情報提供など、安全な地域づくりに関係する施策が重要です。ただし、観光事業者が単独で設備を購入する場合に利用できるとは限らず、自治体が実施する事業の内容や交付要件に沿って検討する必要があります。
地域未来交付金には、地域の産業構造の転換や産業基盤の整備を支援する地域産業構造転換インフラ整備推進型も設けられています。
地域の産業競争力を高めるためのインフラ整備などを通じて、地域経済の活性化を後押しすることを目的としています。
具体的な対象事業や要件は制度の内容によって異なるため、自治体が計画する事業や最新の制度概要を確認しましょう。
地域未来交付金は、地方公共団体が主体となって地域の課題解決や産業振興などを進めるための制度です。民間事業者が直接申請する一般的な補助金とは仕組みが異なるため、利用を検討する際は、自治体の事業計画や公募情報を確認することが重要です。
また、旧制度の「デジタル田園都市国家構想交付金」には、デジタル実装タイプ、地方創生推進タイプ、地方創生拠点整備タイプなどがあり、それぞれ対象事業や要件が定められていました。これらの区分や補助率を、現行の地域未来交付金にそのまま当てはめることはできません。
地方での起業や観光事業、地域産業の活性化などを検討している場合は、自治体の担当窓口に相談し、関連する事業への参画や、民間事業者向けの補助制度がないか確認するとよいでしょう。
新規就業等支援事業は、就業を希望する女性や高齢者などの就労を支援するとともに、人材不足に悩む地域企業の人材確保を後押しする取り組みです。
事業では、自治体や民間企業などが連携するプラットフォームを形成し、働き手と企業の双方にアプローチします。具体的には、就業希望者の発掘や就労研修、職場環境の改善、企業とのマッチングなどを一体的に実施します。
こうした取り組みにより、地域の潜在的な労働力を掘り起こし、企業の人材不足の解消と地域経済の活性化を目指します。
なお、過去の制度資料では、都道府県に対する交付額として最大8,000万円、採択額の2分の1に当たる4,000万円を交付する仕組みが示されていました。ただし、これは過去の制度情報であり、現在も同じ条件で実施されているとは限りません。
また、本事業は主に自治体などが実施主体となる仕組みです。地域企業が直接補助金を申請できる制度とは限らないため、事業への参加方法や支援内容については、自治体の最新情報を確認しましょう。
プロフェッショナル人材事業は、各都道府県に設置されたプロフェッショナル人材戦略拠点などを通じて、専門的な知識や経験を持つ人材と地域企業とのマッチングを支援する取り組みです。
地域企業が経営課題の解決や新規事業の立ち上げ、生産性の向上などを目指す際に、必要なスキルを持つ人材を確保できるようサポートします。正社員としての採用だけでなく、副業・兼業人材の活用も選択肢となります。
過去には、地域外から副業・兼業人材を受け入れる企業を対象に、人材の移動費などを支援する制度が設けられていました。過去の資料では、補助上限額50万円、補助率2分の1とされていましたが、現在の募集状況や補助条件は、実施する事業や年度によって異なります。
人材の確保を検討している企業は、都道府県のプロフェッショナル人材戦略拠点などに相談し、利用できる支援策や最新の募集要件を確認するとよいでしょう。
ここでは地方創生に関する補助金・交付金の活用事例を紹介します。

株式会社能作は、富山県にある銅器製造メーカーです。大正5年に創業し、これまで職人が生産しておりましたが、ものづくり補助金を活用して高度な鋳造技術を利用した錫100%の食器等を開発、販売してヒットしました。
今では売上高も2,000万円未満だったところ、現在では10億円近くまで上昇しています。
現在では富山県高岡市のブランドとしても海外に発信しており、都心部では「能作展」を開催して地元PRにも尽力しています。
衰退しつつあった伝統産業を、新たな利用方法を通じて再興した活用事例です。
出典:株式会社能作様

北海道小樽市では、JTB北海道と北海道広域道産酒協議会が協力し、道産の酒を知ってもらう「パ酒ポート」を展開し、観光ツアーなどを開催します。
タクシーツアーや酒蔵ツーリズムなど、観光ツアーのパッケージ商品化や、工芸品、食、道産酒をセットとした販路拡大事業など、異業種間の相乗効果による売上拡大を図っている
活用した政府の支援は経済産業省の「JAPANブランド育成事業」や農林水産省の「都市農村共生対流事業」などです。
本来製造メーカーや観光会社などは競合企業ですが、本取組みでは各社連携を行い、北海道をPRすることに成功した事例です。
出典:パ酒ポート様
地方創生に取り組む事業者は、補助金や助成金だけでなく、融資制度や人材育成、税制優遇なども活用できます。
ここでは、地方での創業や人材育成、事業拠点の整備に役立つ代表的な支援制度を3つ紹介します。
日本政策金融公庫の「新規開業資金」は、新たに事業を始める方や、事業開始後おおむね7年以内の方を対象とした融資制度です。事業の開始や運営に必要な設備資金・運転資金について融資を受けられます。
地方での創業を検討している方にとって、開業時の資金調達手段のひとつとなります。事業所の開設費用や設備の購入費、開業後の運転資金など、事業計画に応じた資金需要に対応できる可能性があります。
なお、融資限度額や利率、利用条件は、申込者の状況や適用される制度によって異なります。また、過去には、地方での創業や特定の地域振興施策に関連する場合に、金利面で優遇を受けられる仕組みが設けられていました。現在の適用条件については、最新の制度内容を確認する必要があります。
融資を検討する際は、自己資金や事業計画、返済計画を整理したうえで、日本政策金融公庫に相談するとよいでしょう。
日本政策金融公庫の創業融資制度について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
参考記事:日本政策金融公庫の創業融資制度とは?新規開業・スタートアップ支援資金など3つの制度を解説
地方創生カレッジ事業は、地方創生を担う人材の育成・確保を目的とした取り組みです。地域の課題解決や地域活性化に必要な知識・スキルを身につけられるよう、実践的な学習機会を提供しています。
主な学習方法のひとつが、インターネットを通じて受講できるeラーニング講座です。地方創生に関する政策や事業の企画・運営、地域資源の活用など、幅広いテーマを学ぶことができます。講座の内容によっては、実地研修などを通じて実践的な知識を深める機会もあります。
地方自治体の職員や地域企業の担当者、地域活性化に取り組む団体などが知識やスキルを習得する際に役立つ取り組みです。
地域の課題解決に向けて新たな事業を企画したい場合や、地方創生を担う人材を育成したい場合は、利用できる講座や研修の内容を確認してみましょう。
地方拠点強化税制は、企業が本社機能を地方へ移転したり、地方にある本社機能を拡充したりする場合に、一定の要件を満たすことで税制上の優遇措置を受けられる制度です。
対象となる施設には、事務所や研究所、研修所などのうち、企業の本社機能を担う特定業務施設が含まれます。地方への本社機能の移転や拡充を通じて、雇用の創出や地域経済の活性化を促進することを目的としています。
主な支援内容は、施設の整備に関する税制優遇と、雇用の増加に関する税制優遇です。一定の要件を満たした場合、建物などの取得に伴う特別償却や税額控除、特定業務施設での雇用増加に応じた税額控除などを受けられる可能性があります。
ただし、優遇措置の内容や適用条件は、移転・拡充の区分や取得する資産、雇用の状況などによって異なります。過去の制度資料に記載された特別償却率や税額控除額が、現在の案件にもそのまま適用されるとは限りません。
利用を検討する場合は、対象となる本社機能や施設、雇用要件、計画の認定手続きなどを確認することが重要です。地方への拠点移転や事業所の新設を検討している企業は、税制優遇の適用可能性について、専門家や関係機関に相談するとよいでしょう。
地方創生は、東京一極集中を是正し、地方の人口減少を抑えることを目的とした政策の一つです。地方で新たな起業を検討している方には、さまざまな支援金や補助金が設けられています。
しかし、申請したからといって必ず交付されるわけではありません。交付を受けるためには、所定の審査を通過する必要があります。
補助金コネクトは、これから創業を検討している方や既存の企業の資金繰りのお手伝いをしております。支援金や補助金、融資などさまざまな申請をワンストップでサポートしていますので、ぜひご活用くださいませ。

