世間のニュースでは大企業ばかりが注目されがちですが、社会基盤を作っているのは中小企業ともいわれています。しかし中小企業ならではの問題も抱えている企業も多いです。
その際に相談したいのは、中小企業基盤整備機構です。事業や経営、資金調達など、さまざまな悩みの相談窓口となり、解決までサポートを行ってくれます。いわゆる中小企業のみならず、スタートアップ企業でも利用される方が多いです。
この記事では中小企業基盤整備機構の概要と、支援サービス内容、メリットについて紹介します。
中小企業基盤整備機構とは、中小企業を支援するためにつくられた経産省傘下の独立行政法人のことで、「中小機構」と省略して呼ばれたりします。
日本の中小企業の経営をサポートするために2004年に設立され、日本各地に9つの地域本部が設置されています。
中小企業基盤整備機構には、約3,000名以上の専門家が登録しており、自分のニーズに合った専門家へ相談することができる機関です。
中小企業基盤整備機構の支援サービスは「経営」「起業」「支援機関」の3つに分かれており、以下の画像の悩みに関する支援を受けることができます。
これから起業する方だけでなく、すでに起業している方でも経営の相談や人材育成、資金調達などのサポートを受けることが可能です。
次の項では、起業創業期と成長期、成熟期に分けたサポート例を紹介します。
起業創業時では「インキュベーション事業」と「TIP*S」「BusiNest」などのサービスを提供しています。
インキュベーションとは、起業や新事業の創出を支援し、その成長を促進させることです。中小企業基盤整備機構では、全国32か所にインキュベーション施設を展開し、担当者による経営相談やの提供としてビジネス化のための賃貸施設の提供、ネットワーク構築のサポートを受けることができます。
TIP*Sとは、新事業展開や起業、地域活性化に関心のある方が集い、新たな一歩を踏み出すためのヒント(TIPS)となるワークショップやイベントを通じて共有するビジネス創発拠点のことです。
BusiNestとは、これから起業する方に向けてオフィス機能を提供するだけでなく、専門家からのアドバイスやセミナーを受けられる施設のことです。BusiNestは「ビジネスのタマゴを羽ばたかせる場所」をコンセプトに、起業・創業される方のサポートを行ってくれます。
成長期のステージでは、「販路開拓」と「オンライン・マッチング」「海外展開」などのサービスを提供しています。
販路開拓では展示会や商談会などのサポートの他に、インターネットを活用した支援など、中小企業の販路開拓の後押しを行ってくれます。販路開拓コーディネーターが市場マーケティングを行い、企画の段階から支援してもらうことができます。
日本の中小企業と国内外企業をつなぐ「J-GoodTech(ジェグテック)」はビジネスマッチサイトの一つです。海外事業への展開や新商品のPRなど、販路開拓のサポートを受けることができます。
海外展開を目指す中小企業に対して、現地調査やビジネスマッチング、専門家によりアドバイスなど、初期段階から進出できるまでサポートを受けることができます。
成熟期のステージでは、「事業承継・引継ぎ」と「事業再生」「中心市街地活性化」、「設備投資支援」などのサービスを提供しています。
中小機構では、「中小企業事業承継・引継ぎ支援全国本部」として47都道府県に設置されている「事業承継・引継ぎ支援センター」をサポートしています。後継者が未定や不在の起業家に向けて、マッチング支援や情報提供などを行い、事業継承問題を解決します。さらに経営者支援機関向けのセミナーを行い、後継者が不在にならないための育成研修も実施しています。
「中小企業活性化全国本部」として、再生ファンドや再生支援機関と連携して、中小企業の事業再生に対するサポートを行っています。
中心市街地活性化は、市街地活性化に取り組む組織や団体の「まちづくり」をサポートします。商工会議所や街づくり会社等に対して、専門家のアドバイスやセミナー、研修会などを開催し、地域の活性化強化の支援を行ってくれます。
経営基盤強化に向けた施設整備などに対して融資やサポート、企業連携支援アドバイザーの派遣も行ってくれます。
中小企業基盤整備機構を利用するメリットは以下の5点あげられます。
補助金や助成金を受けられる
経営相談が無料でできる
新事業をサポートしてくれる
インキュベーション施設を活用できる
共済制度を利用できる
ひとつずつ確認していきましょう。
中小企業基盤整備機構を利用することで、補助金や助成金を受けることが可能です。中小機構には、都道府県と一体となり造成したファンドがあり、「地域中小企業応援ファンド」と「農商工連携型地域中小企業応援ファンド」があります。
ファンド | 内容 |
---|---|
地域中小企業応援ファンド | 地域の名産品や伝統品の販路開拓や商品開発に関わる費用が助成されます。 |
農商工連携型地域中小企業応援ファンド | 中小企業者と農林漁業者が有機的に連携する販路開拓や商品開発に係る費用が助成の対象となります。 |
上記の2種類の他にも、国や都道府県単位で助成金や補助金が設けられています。「ものづくり補助金」や「小規模事業者持続化補助金」「IT導入補助金」など、さまざまな補助金を利用すれば、事業の発展にも役立たせることができることでしょう。
中小企業基盤整備機構に経営相談が無料でできるのは大きなメリットです。さまざまな相談系支援サービスを提供しているため、自分に合った相談が可能です。
ここではサービスの一例を紹介します。
「E-SODAN」は中長機構が運営する無料AIチャットサービスのことです。資金調達方法や財務、知的財産権など、経営課題に関する相談をすることができます。
さらに、24時間対応なので、直接窓口に足を運ぶ必要もなければ、好きな時間で相談することができます。
また、より具体的に相談したい方に向けて、平日9〜17時までであれば、ベテラン専門家と直接チャット相談も無料でできるという特徴があります。
中小機構はさまざまなハンズオン支援を行っております。ハンズオン支援とは、スタートアップやベンチャー企業との新興事業などに、投資会社やコンサル会社などが支援することを指します。
中小企業が抱える悩みを解決し、ビジネスの飛躍を目指すことを目的としています。中小機構では、以下のハンズオン支援を行っています。
支援 | 内容 |
---|---|
ハンズオン支援(専門家派遣) | さまざまな経営課題に合わせて専門家を派遣し、アドバイスを提供する |
事業再構築ハンズオン支援事業 | 事業の再構築に取り組む企業を対象に、相談や専門家派遣を実施する |
海外展開ハンズオン支援 | 海外展開を考えている、または海外展開中の企業を対象に、相談や専門家派遣を実施する |
ハンズオン支援に関しては有料となりますが、支援を受けて企業の問題解決に取り組みたいという方にはおすすめです。
中小機構ではオンラインで専門家と人材問題に関して無料で相談することができます。人材育成や人材不足の相談窓口を設けており、自社に合った育成方法や公的補助の相談が可能です。
中小機構は、専門家による新事業のサポートも行っているため、創業支援を受けることができます。
事業計画のブラッシュアップはもちろん、販路開拓のサポート、商品開発に関するアドバイスなどを受けることができます。
先程紹介した「TIP*S」や「BusiNest」など、創業時に利用できるサービスは多数あります。うまく利用することでより、創業後の事業が軌道に乗りやすくなるメリットがあります。
インキュベーション施設を活用できれば、コストを抑えてオフィスを利用することができます。通常事務所を借りるとなると、数万円〜数十万円近い費用がかかります。
しかしインキュベーション施設は公的機関であれば1㎡あたり2,500〜3,000円ほど、民間業者の場合は1㎡あたり約10,000〜15,000円ほどで利用することが可能です。もちろん個室やスペースの特徴によっても費用が変わりますが、自身で事務所を借りる費用と比べると、大きく費用を抑えることができるでしょう。
また、起業支援の専門家が常駐しているため、なにか悩み事があった時は即座に相談できるのも大きな魅力です。
インキュベーション施設は中小機構の「全国のインキュベーション施設 」から申し込みができます。近くにある方はぜひ利用を検討してみてはいかがでしょうか。
中小機構では、取引先事業者が倒産した際に、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐために経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)を設けています。
無担保無保証人で掛金の10倍まで(最高8,000万円)まで借入でき、掛金は経費計上することができます。
事業が軌道に乗り始めたのにも関わらず、取引先が倒産などしてしまうと、経営は大きく方むことが予想されます。そのリスクを抑えるためにも共済制度が利用できる点は大きなメリットの一つです。
中小企業基盤整備機構とは、中小企業を支援するためにつくられた独立行政法人のことで、経営や起業、支援機関のサポートを受けることができます。
経営がうまくいかない方や、これから起業する方にとっては、専門家からアドバイスをもらうことができ、インキュベーションや販路開拓、事業再生などに役立たせることができるため、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。