近年の人手不足や物価上昇も相まって、多くの会社様では資金繰りの難しさを痛感していらっしゃることと思います。新しい設備やシステムを導入するには、ある程度のコストを要するものの、投資に踏み切れずに悩んでいる方も少なくありません。特に少額の投資金額、たとえば300万円以下であっても事業全体に大きく寄与するケースは多々あります。そこで活用を検討したいのが補助金です。
本記事では、投資額300万円以下のケースで利用しやすい補助金についてまとめました。細かい出費が多い創業期の会社様向けの情報もまとめていますので、事業投資や資金調達のヒントとしてお役立ていただければ幸いです。
設備投資やシステム導入を検討しているものの、数千万円規模の投資は難しいと感じている中小企業や個人事業主の方は少なくありません。
しかし実際には、投資額が300万円以下の比較的小規模な取り組みであっても、国や地方自治体が用意する補助金制度を活用できるケースは多く存在します。近年は小規模事業者の生産性向上やデジタル化を後押しする方針が強まり、少額投資にも対応した補助制度が充実してきています。
ここでは、300万円以下の投資でも利用しやすい補助金の考え方や背景、活用メリット、申請の基本的な流れについて紹介します。
補助金と言えば、従来は大規模な機械設備やシステムが必要であった企業に向けた制度が中心でした。補助金は政府や自治体の政策を進めるものであり、税金が原資になるという理由から、経営が安定している企業や特殊な技術を持った企業に対して補助されるというイメージがあるかもしれません。
しかし近年は、新事業の創出やデジタル化、販路拡大など、比較的規模の小さな取り組みも積極的に支援する制度が充実してきています。事業規模や財務力にかかわらず、将来的な成長や地域経済への波及効果が見込める取り組みであれば、少額投資でも補助対象とする制度設計が進められています。
さらに、300万円という投資額は、機械装置やシステム導入において決して小さな金額ではありません。省力化を目的とした機器やデジタルツール、省エネ型の空調設備や焼却炉などは高額な印象を持たれがちですが、仕様や導入範囲を工夫すれば300万円以下で導入できるケースも少なくありません。実際に、小型配膳ロボットや簡易型のAI画像解析システムなどは、従来想定より低コストで導入できる例もあります。
このように、少額投資向けの補助金は企業規模や事業内容に応じて幅広く整備されています。大規模な設備投資が難しい場合でも、段階的に投資を重ねながら事業を成長させたい経営者にとって、補助金制度は有効な選択肢となるでしょう。
少額投資に補助金を活用するメリットは大きく分けて次の3点です。
資金繰り負担を軽減できる
事業計画や経営方針を整理できる
他の融資や補助事業にも有利に働く
第一に、資金繰り負担を軽減できることです。例えば300万円の投資をする際に、補助率が1/2の補助金を活用すれば、実質150万円の負担で済みます。
第二に、補助金制度の審査を通じて、事業計画や経営方針を整理できる点です。申請書類において、明確な根拠や成果目標を示す必要があるため、自社の強み・弱みを把握し、将来像を言語化する良い機会となります。
第三に、公的機関からの採択実績が得られれば、他の融資や補助事業にも有利に働く可能性があります。
このように、少額投資に補助金を活用することでさまざまなメリットにつながります。しかし、補助金は必ず採択されるわけではありませんし、細かすぎる経費に対しては申請手間の方が大きくなるケースもあります。そのため、投資内容によって専門家に相談しながら申請するのがポイントです。
それでは、300万円以下の投資に使える代表的な補助金をご紹介していきます。
小規模事業者持続化補助金は、「小規模な企業が販路開拓や生産性向上につながる取り組みを実施する場合に、経費の一部を補助する制度」です。
小規模事業者とは、常時使用する従業員が商業・サービス業だと5人以下、製造業・建設業などだと20人以下などの定義があります。2026年時点では、一般型の通常枠だと最大補助額が50万円、補助率が2/3であるため、75万円の取り組みをするときに50万円が補助されるイメージです。
<小規模事業者持続化補助金(通常枠)の概要>
上記の表からわかるように、商材をアピールするための新しい広告制作や、販売管理システム導入による業務効率化にも適用できます。
また、賃金引上げ特例やインボイス特例を活用すると、補助上限が大きくなるケースもあります(100万円~250万円など)。特に投資金額が300万円以下、かつ販路開拓も視野に入れたい事業者に最適な補助金といえるでしょう。
小規模事業者持続化補助金に関しては以下の記事で詳しく紹介しています。
参考:小規模事業者持続化補助金とは?対象者や補助額、申請方法、スケジュールを解説
300万円以下の投資であれば、各自治体が行っている創業助成事業を利用するのも一案です。例えば東京都の創業助成事業は、東京都内で創業してからおおむね5年未満の中小企業・個人事業主を対象にした人気の補助金制度です。具体的には「運転資金」「広告費」「備品購入費」「専門家指導料」「人件費」「店舗または事務所の賃料」など、創業期に必要となる幅広い経費を支援するものです。
2026年度での公募は今だ未発表ですが、直近の例では、上限額は400万円、補助率は3分の2、助成対象期間は最長2年というケースが多いです。
<創業助成事業(東京都)の概要>
この創業助成事業をうまく活用すれば、投資金額が300万円以下であっても大部分を補助してもらえる可能性があります。特に店舗開業直後で初期費用の捻出が厳しい場合や、新事業をスタートアップとして軌道に乗せたい場合に大変役立つでしょう。
創業助成事業に関しては以下の記事で詳しく紹介しています。
参考:創業助成金とは?対象者、要件から手続き、メリット、デメリットまで解説
省力化投資補助金(一般型)は、業務や生産プロセスを省力化できるオーダーメイド・セミオーダーメイド設備システムの導入にかかる費用の一部を補助する制度です。
たとえば製造業で使う自動検査装置や、自社仕様のロボットアーム導入など、人手を削減しつつ生産性を向上させる取り組みが想定されています。省力化投資補助金には、カタログ注文型と一般型がありますが、ここでは自由度の高い「一般型」について解説します。

参照:省力化投資補助金PDF
具体的には、従業員数5名以下の場合であっても750万円まで(賃上げ特例時1,000万円)の上限を申請可能です。比較的大規模な投資を対象としていると思われがちですが、採択結果を見ると投資額1,000万円以下の申請も多数を占めます。補助率は中小企業で1/2(小規模事業者は2/3)です。
<省力化投資補助金(一般型)の概要>
また、大幅な賃上げ要件を満たすと1億円まで補助上限額が上がるケースもあるなど、意欲的な企業を強力にサポートする制度設計になっています。
オーダーメイド設備を想定しているため、投資金額が300万円程度に収まるかは企業の計画次第です。しかし、サプライチェーン全体を大規模に自動化するわけでなくとも、自社固有の小規模工程を省力化する取り組みであれば十分に応募可能です。
一方で、避けられない要件として「労働生産性 年平均成長率4%向上を目指す計画を策定する」「大幅な賃上げ特例を満たせば補助率や補助上限がアップする」などがあります。そもそも省力化投資補助金は省人化による生産性向上と従業員の給与引き上げを軸にしているため、その目標を達成できるかを計画段階で示す必要があるのです。
中小企業省力化投資補助金に関しては以下の記事でも詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
参考:中小企業省力化投資補助金(一般型)とは?カタログ注文型との違いや活用例・申請手順も解説
「デジタル化・AI導入補助金」(旧IT導入補助金)は、中小企業がクラウド型のシステムやAIツールを導入して業務効率化・生産性向上を図る取り組みを支援する補助金です。
以前は「IT導入補助金」として幅広く認知されておりましたが、より踏み込んだデジタル化の推進及びAIの活用が重要であることを広く周知する観点から、2026年に補助金の名称が「デジタル化・AI導入補助金」へと変更されました。
物価上昇や人材不足が喫緊の課題となる中、デジタル化によって経営基盤を強化しようとする企業を積極的に後押しします。たとえば以下のようなITツール・AI導入が対象となります。
<AI・ITツール導入の代表例>
AIツールの活用により、単純作業の省力化はもちろん、データ分析や予測精度の向上による売上拡大が期待できます。投資金額300万円以下の少額投資でも、会計ソフトの導入やAI需要予測システムの基礎プランだけなら十分に収まる可能性があります。特にクラウド型や月額課金型のサービスを選べば初期投資の負担を低減しつつ補助金を活用できるでしょう。
デジタル化・AI導入補助金に関しては、以下の記事でより詳しく紹介しております。
参照:デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)とは?補助額や申請方法、スケジュール、注意点などを解説
国が実施する補助金制度に比べ、地方自治体の補助金は地域の実情に即した内容になっている点が大きな特徴です。小規模事業者や個人事業主でも利用しやすい制度が多く、投資金額300万円以下の設備投資や改修であれば、国の補助金よりもハードルが低いケースも少なくありません。また、募集枠が限定されている分、条件が合えば採択されやすいというメリットもあります。
例えば、店舗や事業所におけるLED照明化や空調設備の高効率化に対する補助、また創業期の事業者を対象にした利子補給や専門家支援を組み合わせた制度など、小規模事業者でも活用しやすい内容が特徴です。
<地方自治体の補助金例(2026年時点)>
補助金の内容は自治体ごとに異なり、投資額の上限、補助率、申請受付期間もさまざまです。興味がある事業者は、まず市区町村や都道府県の公式サイトをチェックするとよいでしょう。補助金コネクトの制度検索ページからも検索が可能です。
補助金は単に申請すれば受け取れるものではなく、近年は賃上げや生産性向上への取り組み姿勢、そして実現性の高い事業計画が厳しく評価される傾向にあります。要件を正しく理解せずに進めてしまうと、採択されないだけでなく、交付後に返還リスクが生じる可能性もあるため注意が必要です。
ここでは、補助金を活用するうえで押さえておきたいポイントと、申請時に特に注意すべき点について紹介します。
補助金申請にはいくつか重要なプロセスがありますので、最低限のフローは理解しておくのがおすすめです。
<補助金活用の一般的な申請フロー>
上記表の通り、中小企業庁や自治体の補助金は公募・審査スケジュールが定められているため、こまめに情報収集が必要です。特に年に数回ある公募締切までに事業計画を仕上げるには、1~2か月程度の猶予を見積もるとよいでしょう。
もし事業計画や書類作成のハードルが高いと感じる場合は、商工会議所または中小企業診断士・税理士などに早めに相談しておくことが大切です。
近年の補助金は、「賃上げ」「労働生産性向上」を重要な評価ポイントとして掲げているものが増えています。特に省力化投資補助金やデジタル化・AI導入補助金などは、賃上げを計画・達成した場合に補助率や上限額が優遇されるケースがあるのです。逆に「賃上げをしない」「生産性を上げる見込みが乏しい」と見なされると、審査で不利になる可能性が高まります。
また、申請時には事業計画書(経営計画書)が求められます。ここでは投資の目的、具体的な導入内容、期待される効果、実現性・収益性などを明確に示すことが重要です。
<事業計画書で押さえるべきポイント例>
計画書を単に形式的に作成するだけでなく、根拠となるデータや市場分析、既存顧客とのヒアリング結果なども盛り込むことで、審査員の評価が高まる傾向があります。また、効果測定方法を具体的に書くことも大切です。
補助金を手にして実際に事業を進めた後、何かしらの理由で計画通りに進まなかった場合や賃上げ要件が未達となった場合、交付額の一部返還を求められるリスクがあります。返還額は補助金の全額または一部など制度によって異なりますが、結果的に資金繰りが悪化する恐れがある点を理解しておきましょう。計画は実行可能性をしっかり鑑みて作ることが鍵です。
さらに、補助金申請には多くの書類対応やシビアな審査への対策が必要です。通常のビジネスとは異なり、手続きが厳格であるためにつまずかれる会社様は多いです。会社内だけで完結できない場合は、中小企業診断士などの専門家に依頼するのが賢明です。
特に賃上げ要件に関しては、人件費シミュレーションや財務諸表の分析が必須となるので、適切な顧問がいない場合は商工会議所などで専門家を紹介してもらう手段もあります。煩雑な手続きをアウトソースすることで、企業は本業に集中しやすくなるため、結果的に投資効果も高まりやすくなります。
投資金額300万円以下の設備投資であっても、国や自治体の補助金制度を上手に活用することで、財務的な負担を軽減しつつ大きな成長のチャンスをつかむことができます。
小規模事業者持続化補助金や創業助成事業(東京都)、省力化投資補助金(一般型)、デジタル化・AI導入補助金、さらには地方自治体の独自補助金など、選択肢は多彩です。どの補助金も、賃上げや生産性向上を要件とすることが多く、計画性や実効性が採択のポイントとなります。
もし、「補助金が沢山ありすぎて何を選べばいいのか分からない」「賃上げ要件や事業計画書の作成が難しい」と感じる場合は、早めに専門家の力を借りるとよいでしょう。税理士や中小企業診断士、商工会議所などが相談役として役立ちます。
補助金コネクトでは、補助金申請を検討されている事業者様のサポートを行っております。ぜひ、下記よりお気軽にご相談くださいませ。