事業再構築補助金の申請を検討している事業者の方でも、業績を回復させるために、できるだけ早く新しい事業を始めたいと考えておられる方は多いのではないでしょうか。
一方で、補助金を活用しようとする場合、
既存事業については申請できない
補助金に採択された後でないと事業が開始できない
といったジレンマを抱えるケースも少なくありません。
そんな方に朗報です。事業再構築補助金には、指定された方法で申請をすると、過去に支払っている費用も補助対象となる「事前着手申請制度」があります。
本記事では、事業再構築補助金における事前着手申請制度について、対象者や申請方法、申請時の注意点などを詳しく解説します。
すでに事業を開始されている方、既存事業に関して事業再構築補助金の申請を検討されている方は是非参考にしてみてください。
はじめに、事業再構築補助金における事前着手申請制度とはどのような制度なのか、概要および申請・補助対象期間を解説します。
事業再構築補助金の事前着手承認制度とは、補助金の交付が決定される前に必要となった経費を補助対象とできる制度です。
通常であれば、補助対象となるのは補助金の交付が決定した後の経費のみです。中小企業庁が行なっている他の補助金(ものづくり補助金・IT導入補助金など)は、事前着手申請制度はありません。
一方で、事業再構築補助金の事前着手承認制度を使って申請が承認されると、交付が決定する前の経費に対しても補助が受けられます。これは、事業再構築補助金が、緊急性が求められる補助金であることが理由です。コロナ禍の打撃を受け、できるだけ早く新しい事業を始めたい事業者にとっては、新しい事業が数か月早く始められるため、とてもありがたい制度なのです。
事業再構築補助金の申請を考えている事業者は、事前着手承認制度を利用すると多くのメリットを得られるため、前向きな検討をおすすめします。
事業再構築補助金の第8回公募要項において、事前着手申請の受付期間は以下のように指定されています。
令和4年10月3日(月)~交付決定日まで
交付が決定されると、事前着手申請ができなくなるため、早い段階で申請を済ませておくと安心です。事業再構築補助金の本申請が採択されないと、当然ながら事前着手申請は無効になってしまいますが、事前着手申請を行うデメリットはほとんどありません。そのうえ、本申請の採択の可否と事前着手申請の採択の可否に関連性はないため、申請しておいた方が良いでしょう。
受付期間内に、事前着手申請を行なって承認されると、令和3年12月20日以降に発注などを行った事業にかかった経費も、補助対象にできます。令和3年12月19日以前の発注などに対しては、補助対象外となりますので注意が必要です。
また、事業類型ごとに定められた補助事業実施期間は、以下のとおりです。
申請枠 | 補助事業実施期間 |
---|---|
通常枠 大規模賃金引上枠 回復・再生応援枠 最低賃金枠 原油価格・物価高高騰等緊急対策枠 | 交付決定日~12か月以内 ※ただし、採択発表日から14か月後の日まで |
グリーン成長枠 | 交付決定日~14か月以内 ※ただし、採択発表日から16か月後の日まで |
交付決定日とは、事業が採択された後に行なう交付申請が、正式に承認される日を指します。採択前に事前着手申請を行なうと、申請内容に変更があると再度提出しなくてはいけません。このため、採択されてから交付決定日までに事前着手申請を行なった方が、効率良く申請ができます。
ここからは、事業再構築補助金の事前着手申請を行なうのに、どのような流れで進めていけばよいのかを解説します。スムーズに申請するために、しっかりと流れをつかんでおきましょう。
事前着手申請では、jGrantsにある質問項目を入力していく形で申請を行いますので、体裁を整えておかなければいけない書類というものはありません。ただし、相見積もり書など、いずれ交付申請等のフェーズで必要になってくる書類もありますので、入力項目の内容については事前着手申請の段階で資料として準備をしておくと便利です。
令和3年10月28日より、Eメールを使った申請からjGrantsを使った申請に変更されていますので、以前申請したことがある事業者は注意しましょう。jGrantsに入力する主な項目は、以下のとおりです。
新型コロナウイルス感染症の影響を受けている事業の概要
事業計画の概要
新型コロナウイルス感染症の影響の長期化による事業活動への影響
事業開始が遅れた場合に生じる影響
上記の項目は、事前着手申請の審査において特に重要視されます。事業計画とコロナによる影響との関係性が明確に説明できないと、申請が承認されませんので、要点を押さえて記載しましょう。
事業再構築補助金の申請には、jGrants2.0の登録が必要です。ただし、事前着手申請では、令和4年6月30日までに発行された暫定GビズIDでも申請できます。暫定GビズIDがない場合には、早急にGビズプライムアカウントの申請を行いましょう。
jGrantsでの申請方法は、以下の流れで進めます。
申請画面のトップから、事業再構築補助金の事前着手申請を検索し、「申請する」をクリックします。
申請に関する必要事項を入力または選択します。 事業者基本情報は、GビズIDの事業者情報が反映されますので、変更がある場合はマイページでの変更が必要です。
すべて入力が終わり、問題がなければ「申請する」をクリックします。
完了メッセージが表示されたのち、「OK」をクリックすると、申請完了です。
申請内容に不備がある場合は、差し戻しがある旨の通知メールが事務局から届きます。内容を確認して、修正しましょう。
事務局から結果通知があると、メールアドレスに通知が届きます。メールアドレスに書かれた「事業の状況を確認する場合」のURLをクリックするか、またはjGrantsのマイページから内容を確認しましょう。
申請した後、承認書の結果通知が届くまで、10日から2週間程度かかります。申請の状況や内容によっては、さらに時間がかかる場合もあるため、余裕を持った申請が必要です。
事業再構築補助金の事前着手申請を行う際には、注意しなくてはならない点があります。特に注意したい内容について詳しく解説しますので、申請前に理解を深めておきましょう。
事前着手申請が承認されても、事業再構築補助金が確実に採択されるとは限りません。採択されない場合は、事前着手申請の効力もなくなり、補助金の交付が受けられません。
事前着手申請は、以下の2点を特に重点的に記入すると、承認を受けられる可能性が高いとされています。
新型コロナウイルス感染症の影響で、既存事業の売上が大きな打撃を受けていること
新たな事業の開始が遅れると、売上にさらなる悪影響がおよぶこと
詳しい状況を伝えるためには、売上などの数値を交えながら具体的に説明すると効果的です。
事前着手申請が承認された後、事業再構築補助金の申請をする際には、事業計画書の作成が重要なポイントとなります。事業計画書の作成に迷った場合は、専門家などのアドバイスを受けることが大切です。
事前着手申請が承認された場合であっても、補助金の適用範囲は、通常の事業再構築補助金における対象経費の区分と同じです。 対象経費となるのは、以下の区分です。
建物費
機械装置・システム構築費
技術導入費
専門家経費
運搬費
クラウドサービス利用費
外注費
知的財産権等関連経費
広告宣伝・販売促進費
研修費
各区分において、さらに細かく規定があるため、公募要項でしっかり確認することが必要です。さらに、支払い方法は銀行振込での実績で確認されるため、対象外となる手形払いなどでの支払いを行わないよう注意しましょう。
事前着手申請は、手続きそのものはそれほど複雑ではありません。大切なのは、申請が承認されるまでの資金繰りを確認しておくことと、事業再構築補助金の採択に向けて事業計画書をしっかりと作成することです。
事前着手申請を行なうときには、公募要項を事前に確認した上で申請し、同時に事業計画書の作成も進めていきましょう。
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