事業再構築補助金の採択を勝ち取るためには、事業計画書の作成が非常に重要になります。
とはいえ、実際に作成しようとすると以下のように頭を悩ませることも多いでしょう。
「通りやすい事業計画書を作成する方法は?」
「採択時の審査項目が知りたい」
この記事では、事業再構築補助金の事業計画書に記述すべき内容と、具体的な審査項目について紹介します。
事業再構築補助金の審査は、作成された事業計画書を基に行われます。
合理的で説得力のある事業計画であることはもちろん、採択されるためには後述する様々な工夫が必要です。
事業計画の審査項目は公募要領に公開されているため、必ず目を通しておきましょう。
採点方法は減点方式です。
審査を通りやすくするには、審査項目を抑えてなるべく減点されないようにしておく必要があります。
未記入では減点されて採択率が落ちてしまうので、必ず記入するようにしましょう。
事業再構築補助金の採択率は申請枠によって異なるものの、概ね4~5割程度です。
第9回公募まで最も応募件数が多かった通常枠の採択率は4割程ですので、10社あれば5~6社が不採択となります。
※第10回公募からは通常枠という申請枠は廃止されました
実は審査の項目は細分化されており、各項目にはそれぞれ採点表があります。
採点表は非公開ですが、採点内容は3つの項目ごとに配点が決まっており、以下のような配点になると言われています。
公募要領の審査項目を100点満点とした場合
事業化点:40点
再構築点:40点
政策点:20点
ただし基準の目安は公募ごとに変わり、概ね70点ぐらいが採択基準ということです。
事業再構築補助金に採択されるには、前述した通りおよそ7割の得点が必要と言われています。
公募ごとに変わるので、具体的な審査基準は明かされていないものの、以下を満たしておくことが大切です。
事業再構築補助金の要件を満たしているか
事業化点・再構築点・政策点の項目を満たしているか
これらを証明するために事業計画書が必要となります。
さらに以下を事業計画書に含めることで、具体性を増すことができるので念頭に置いておきましょう。
企業の現状(現在の事業、強みと弱み、事業環境、事業再構築の必要性)
申請事業の具体的内容(提供製品・サービス、導入設備)
参入市場の状況(自社の優位性、費用対効果、課題・リスク・解決方法など)
実施スケジュール
資金調達計画
具体的な採択事例に関してはこちらの記事で紹介しています。
事業再構築補助金の採択事例は?業種別の具体例・採択ポイントを紹介!
業種別に具体的な採択事例を紹介していますので、ご自身の事業が該当しそうかを確認してみてはいかがでしょうか。
事業化点・再構築点・政策点に関しては後述しています。
1社の事業計画に対して審査員は3~4人と言われています。
毎回2万件程の応募があるため、1人の審査員が1社に費やす審査時間は、およそ1時間以内40~50分程度と、十分に時間を確保することはできません。
つまり、かなりのスピードで点数を付けていくことになるので、見やすさも重要になってくるのです。
内容はもちろんのこと、視認性の高い事業計画書を仕上げておくようにしましょう。
事業再構築補助金の審査項目は、公募要領に記載されている「事業化点」「再構築点」「政策点」の3項目となります。
事業再構築補助金10回公募の公募要領を、公式サイトから抜粋してそれぞれ紹介していきます。
事業化点は、事業計画書に記載された事業そのものの魅力度を審査されます。
事業化点の審査項目は、以下の1~4の項目を総合的に判断します。
補助事業の成果の事業化が寄与するユーザー、マーケット及び市場規模が明確か。市場ニーズの有無を検証できているか。
ターゲットとするマーケットにおける競合他社の状況を把握し、競合他社の製品・サービスを分析し、自社の優位性が確保できる計画となっているか。
事業化に向けて、中長期での補助事業の課題を検証できているか。また、事業化に至るまでの遂行方法、スケジュールや課題の解決方法が明確かつ妥当か。
本事業の目的に沿った事業実施のための体制(人材、事務処理能力等)や最近の財務状況等から、補助事業を適切に遂行できると期待できるか。また、金融機関等からの十分な資金の調達が見込めるか。
実現可能な事業計画の策定が必要ですので、よりリアルな内容で仕上げていきましょう。
再構築点は、事業再構築指針に沿った取り組みになっているかという点がポイントです。
再構築点の審査項目は、以下の通りです。
自社の強み、弱み、機会、脅威を分析(SWOT 分析)した上で、事業再構築の必要性が認識されているか。また、事業再構築の取組内容が、当該分析から導出されるものであるか、複数の選択肢の中から検討して最適なものが選択されているか。
事業再構築指針に沿った取組みであるか。特に、業種を転換するなど、リスクの高い、大胆な事業の再構築を行うものであるか。
補助事業として費用対効果(補助金の投入額に対して増額が想定される付加価値額の規模、生産性の向上、その実現性等)が高いか。その際、現在の自社の人材、技術・ノウハウ等の強みを活用することや既存事業とのシナジー効果が期待されること等により、効果的な取組となっているか。
先端的なデジタル技術の活用、新しいビジネスモデルの構築等を通じて、地域やサプライチェーンのイノベーションに貢献し得る事業か。
本補助金を活用して新たに取り組む事業の内容が、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応した、感染症等の危機に強い事業になっているか
異なる業種への転換を踏まえた事業の再構築を行う必要があります。
さらに「新型コロナウイルスや物価高騰の影響を事業者がどの程度受けているのか」も判断基準の1つになるでしょう。
事業再構築指針のキーワードは「新規性」です。要するに自社にとっていかに新しい取り組みであるのかが問われることを意識してください。
政策点は、コロナ後の社会環境の変化対応、先端技術の活用、地域貢献、経済への波及効果等、政策に合致している内容かどうかで評価されます。
政策点の審査項目は、以下の通りです。
ウィズコロナ・ポストコロナ時代の経済社会の変化に伴い、今後より生産性の向上が見込まれる分野に大胆に事業再構築を図ることを通じて、日本経済の構造転換を促すことに資するか。
先端的なデジタル技術の活用、低炭素技術の活用、経済社会にとって特に重要な技術の活用等を通じて、我が国の経済成長を牽引し得るか。
新型コロナウイルスが事業環境に与える影響を乗り越えて V 字回復を達成するために有効な投資内容となっているか。
ニッチ分野において、適切なマーケティング、独自性の高い製品・サービス開発、厳格な品質管理などにより差別化を行い、グローバル市場でもトップの地位を築く潜在性を有しているか。
地域の特性を活かして高い付加価値を創出し、地域の事業者等に対する経済的波及効果を及ぼすことにより、雇用の創出や地域の経済成長(大規模災害からの復興等を含む)を牽引する事業となることが期待できるか。
異なるサービスを提供する事業者が共通のプラットフォームを構築してサービスを提供するような場合など、単独では解決が難しい課題について複数の事業者が連携して取組むことにより、高い生産性向上が期待できるか。また、異なる強みを持つ複数の企業等(大学等を含む)が共同体を構成して製品開発を行うなど、経済的波及効果が期待できるか。
政策点は100点満点中概ね20点と、占める割合は他の2項目と比べて小さいです。
しかし他者との差別化を図るチャンスでもあるため、適合箇所がある場合は積極的に記述していきましょう。
出典:事業再構築補助金事務局(koubo.pdf (jigyou-saikouchiku.go.jp)
事業計画書の完成度は審査に大きく影響します。
これまでの傾向から、事業計画書を書く際は審査項目を目次タイトルに取り込むことをおすすめします。
審査項目を基にすることで、審査基準からズレが生じにくくなるので覚えておきましょう。
事業再構築補助金の事業計画書に指定のフォーマットはありません。
ただ公式サイトにも記載がある通り、記述すべき内容はある程度決まっています。
大まかな部分は決まっているものの事業計画書を目次構成から作成することで、ストーリー性のある読みやすい順序で作り上げていくことが可能になります。
目次タイトルは審査項目に合わせて作成をしていきましょう。
例えば、審査項目の1つである「事業化点」を目次タイトルにしてみましょう。
公式サイトの事業化点④を抜粋すると以下になります。
④本事業の目的に沿った事業実施のための体制(人材、事務処理能力等)や最近の財務状況等から、補助事業を適切に遂行できると期待できるか。また、金融機関等からの十分な資金の調達が見込めるか。
これをもとに目次を作成すると、以下のようになります。
----
【目次タイトル】
(1)本事業の目的
本事業の目的は、~~(「新規性」のあることを記載)である。
(2)本事業実施のための体制(社内人材、社外連携体制)
~~~であり、補助事業を適切に遂行できる。
(3)直近の財務状況と資金調達予定
~~~金融機関等からの十分な資金の調達が見込める。
----
文章から言葉を抜き出すことで簡単に3つのタイトルを作ることができました。
目次タイトルに従い記載していく際、タイトルがあることでスムーズに内容を記述していけるので是非試してみてください。
事業計画書は全体で15ページ以内での作成を求められています。
そのため既存事業は1ページ以内でシンプルに記述し、再構築事業についての比重を傾けてみましょう。
審査員が確認するのは「再構築事業が審査基準を満たしているか否か」です。
既存事業は端的に要点をまとめ、再構築する事業の新規性についてボリュームをもたせた方が審査員の心証も良くなります。
結論を文字として書くことで点数を取りやすくなります。
事業計画書をじっくり読めば汲み取れる内容であっても、審査員は1社に対して限られた短い時間内で審査をしていくため、一瞬で結論が読み取れる工夫が大切です。
そのためにも内容の理解しやすさを意識し、しっかり結論ファーストで記載しましょう。
事業計画書は全体で15ページですが、全て文字で埋め尽くす必要はありません。
全ページ文字のみの計画書より、図表がある方が視認性を高めることができます。
審査員は限られた時間の中で沢山の事業計画書を見て採点を行うため、図表が多いとそれだけで他者と差別化を図ることができます。
適度に図表が散りばめられた計画書は自然と目に飛び込み、理解度にも差が出るのは想像に難くないでしょう。
視認性の高い事業計画書は採択されやすい傾向があるので、ぜひ図表の多い事業計画書の作成を目指してください。
残念ながら不採択になってしまった場合でも、修正して次の公募で再申請することも可能です。
理由の開示を行い、再申請時には改善を行っておきましょう。
事業再構築補助金の事務局コールセンターに連絡すれば、理由を開示してもらえます。
口頭で伝えられるので、メモの準備をして電話をしましょう。
電話では審査項目に沿って事業化点・再構築点に分けて、それぞれA~Cの評価と、良かった項目と記載が不足してた項目を教えてもらえます。
また不採択の中でも位置づけがあり、A~Cの3段階の評価がついています。
A:不採択だけど惜しかったです
B:採択まではちょっと距離があります
C:もっともっと頑張りましょう
上記の位置付けのどこに当たるのかを理由開示の内容と照らし合わせつつ、次回の公募に向けて作成をしておきましょう。
よくある不採択の理由と改善方法については、以下の記事をご覧ください。
事業再構築補助金の不採択理由は?不採択後に必ずやるべきことと改善方法
事業再構築補助金で採択されるためには、事業計画書が重要なポイントとなります。
採択されやすい・審査に通りやすい事業計画書の作成には、公募要領に記載されている審査項目にしっかりと目を通し、審査項目から目次のタイトルを作ることが大切です。
審査は減点方式で行われます。項目によっては書くことがない場合もありますが、何も書かなければ0点になってしまうので、とにかく記載するようにしましょう。
結果として事業再構築補助金が不採択だったとしても、修正を重ねれば確実に採択に近づいていきますので、諦めずに再度申請にチャレンジしていただければと思います。