事業承継・引継ぎ補助金は、親子間の事業承継でも申請可能です。ただし、親子間で申請する場合は細かな要件が定められています。
要件を理解せずに事業承継して補助金が使えないことが後でわかった場合、資金面で苦労することにもなりかねません。
この記事では親子間で事業承継・引継ぎ補助金を申請するための要件や注意点を紹介します。しっかり理解してから事業承継を行いましょう。
親子間の事業承継・引継ぎ補助金を申請する際、親が「法人」と「個人」で要件が異なります。
親が法人の代表者である場合、以下の2つの要件を満たす必要があります。
法人の代表を親から子どもへ切り替えなければいけません。
登記事項全部証明書において代表役員が変更されていることをもって代表者の交代がされたと判断されます。
事業承継・引継ぎ補助金の申請以降に事業承継を行う場合(未来の承継)、子どもは十分な実務経験を満たしている必要があります。
<具体的な要件>
補助対象者となる承継者の代表者は、次のいずれかを満たす必要があります。
(1) 経営経験を有している(事業)者
対象会社の役員として3年以上の経験を有する者
他の会社の役員として3年以上の経験を有する者
個人事業主として3年以上の経験を有する者
(2) 同業種での実務経験等を有している(事業)者
対象会社・個人事業に継続して3年以上雇用され業務に従事した経験を有する者
対象会社・個人事業と同じ業種において通算して6年以上業務に従事した経験を有する者
(3) 創業・承継に関する下記の研修等を受講した(事業)者
産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援等事業を受けた者
地域創業促進支援事業(平成29年度以降は潜在的創業者掘り起こし事業)を受けた者
中小企業大学校の実施する経営者・後継者向けの研修(具体的には経営後継者研修、経営管理者研修、経営管理者養成コースのいずれかの研修)を履修した者
親が個人事業主の場合、以下の要件を満たす必要があります。
親と子が青色申告者
相続や贈与の場合、廃業届と開業届を提出する
今後承継する場合、指定された要件を満たす
親が個人事業主の場合、子も個人事業主として事業承継しますが、どちらも青色申告者である必要があります。
相続や贈与によって親から事業を承継する場合、親は廃業届、子は開業届を申請時に提出しなければいけません。
また、親が法人である場合の要件と同じで、今後承継する場合は指定された要件を満たす必要があります。
親子の事業承継は相続などをきっかけにされる方も多いですが、3年以上の実務経験があり、青色申告者でないと事業承継・引継ぎ補助金は申請できないため注意しましょう。
承継する後継者が事業承継対象期間において複数代表者となっている場合でも申請は可能です。
ただし、事業承継対象期間に新代表者の就任及び前代表の退任が行われることが申請の条件です。
経営者交代類型での未来の承継の場合は、補助事業期間後に実施する事業承継の完了時点で前代表が退任する計画を作成することが申請要件となります。
以下の図は、補助金の対象となるケースとならないケースの一例です。
引用:中小企業生産性革命推進事業 事業承継・引継ぎ補助金 経営革新枠【公募要領】
ここからは事業承継・引継ぎ補助金のその他一般的な要件をご紹介します。
事業承継・引継ぎ補助金は、中小企業者や小規模事業者(個人事業主も含む)が対象です。事業承継をきっかけに、新しい取り組みを始める企業や、事業の再編や統合により、経営資源を引き継ぐ企業が対象です。
ここでの中小企業者は、中小企業基本法第 2 条に準じて、業種別に資本金と従業員の数が定められています。
業種 | 要件 |
---|---|
製造業その他 | 資本金のが3億円以下、または従業員数が 300人以下 (ゴム製品製造業(一部を除く)は資本金3億円以下又は従業員900人以下) |
卸売業 | 資本金のが1億円以下、または従業員数が 100人以下 |
小売業 | 資本金のが5千万円以下、または従業員数が 50人以下 |
サービス業 | 資本金のが5千万円以下、または従業員数が 100人以下 |
ただし、以下の項目に該当する中小企業は対象外となります。
資本金又は出資金が5億円以上の法人に直接又は間接に100%の株式を保有される中小企業者
直近過去3年分の各年又は各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超える中小企業者等
社会福祉法人、医療法人、一般社団・財団法人、公益社団・財団法人、学校法人、農事組合法人、組合(農業協同組合、生活協同組合、中小企業等協同組合法に基づく組合等)
一方、小規模事業者や個人事業主は、以下の表の通り従業員の制限が設けられています。
業種 | 要件 |
---|---|
製造業その他 | 従業員の数が20人以下の会社及び個人事業主 |
卸売業・小売業・サービス業 | 従業員の数が5人以下の会社及び個人事業主 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 従業員の数が20人以下の会社及び個人事業主 |
上記の他にも、申請枠ごとに要件が定められています。詳しく知りたい方は以下の記事を参照してください。
事業承継・引継ぎ補助金とは?制度概要や対象者、補助額、申請方法などを解説
対象となる経費は、「経営革新枠」「専門家活用枠」「廃業・再チャレンジ枠」の申請枠によって異なります。
例えば経営革新枠であれば、店舗の新築工事や改修工事の費用や機械装置の購入費など、金額が大きくなる経費も対象となります。
経営革新枠は3つの申請枠の中で最も経費対象が多いです。
詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
事業承継・引継ぎ補助金の対象経費とは?申請枠ごとの補助対象経費、対象外経費を徹底解説
事業承継・引継ぎ補助金は3つの申請枠に分かれ、それぞれの補助額と補助率は以下の表の通りとなります。
申請類型 | 補助上限額 | 補助率 |
---|---|---|
経営革新枠 | 600万円 (一定の賃上げを行う場合は800万円) | 1/2~2/3 |
専門家活用枠 | 600万円 (M&A未成約の場合は300万円) | 1/2~2/3 |
廃業・再チャレンジ枠 | 150万円 | 1/2~2/3 |
補助額と補助率について詳しく知りたい方は以下の記事を参照してください。
事業承継・引継ぎ補助金とは?制度概要や対象者、補助額、申請方法などを解説
ここでは親子間で事業承継・引継ぎ補助金に申請する場合の注意点を3つ紹介します。
補助金の不正利用や目的外使用を防ぐために、以下の項目に該当する経費は本補助金の対象外となるため注意しましょう。
店舗・事務所の賃貸借契約に係る敷金・礼金・保証金等
事業承継に伴う特許権等の名義変更費用
本補助金の申請支援の費用
経営革新枠では、店舗等借入費が経費として対象となり、国内の店舗・事務所・駐車場の賃借料・共益費・仲介手数料が含まれます。しかし敷金・礼金・保証金などは対象外です。
親から子へ事業承継したことをきっかけに、本社を移転される方もいらっしゃることでしょう。
上記の経費が含まれると勘違いされている方も多いため、事前に確認しておくことが大切です。
承継者と被承継者による実質的な事業承継が行われていないと事務局が判断した場合は、本補助金の対象となるため注意しましょう。
<要件を満たしていないと判断されるケース>
グループ内の事業再編
物品・不動産等のみを保有する事業の承継
のれん分けとみなされた場合
親から子へ事業承継すれば補助金が利用できると思っている方も多いですが、本補助金では細かな要件が定められています。
これから事業承継・引継ぎ補助金の申請を検討している方は、はじめに要件を見てしているのかを補助金申請代行業者に確認してもらいましょう。
親子間だけでなく、親族間の事業承継であっても本補助金を利用することができます。また従業員への事業承継も対象です。
子どもがいない場合などでも事業承継できる人がいれば申請はできますが、親子間の要件を満たしている必要があるためしっかり確認しておきましょう。
親子でも事業承継・引継ぎ補助金は申請できます。ただし、親が法人か個人かによって要件が異なってきます。どちらにせよ、子は引継ぐ事業に3年以上携わっている必要があります。
その他にも従業員の数や資本金など細かな要件が定められているうえ、対象外と判断される事業継承も多いです。事前に補助金申請代行業者へ相談し、要件をクリアしているかをチェックしてもらいましょう。
補助金コネクトでは、事業承継・引継ぎ補助金や各種補助金の申請サポートを承っております。補助金申請を検討されている方は、ぜひ一度お問い合わせくださいませ。