事業再構築補助金は、ウィズコロナ・ポストコロナを見据え、業務転換や新分野展開などに挑戦する中小企業等を支援する補助金制度です。補助金の交付を受けるには、必要書類を提出して採択を受け、所定の流れで手続きを行なう必要があります。
本記事では、事業再構築補助金の申請に必要な書類および書き方・申請方法・手続きの流れなどを、順に解説します。補助金の交付を検討している事業者は、一度目を通していただければ幸いです。
事業再構築補助金の交付を受けるには、以下の書類を揃える必要があります。枠ごとで必要書類が異なりますので、申請する枠に該当する書類を確認して揃えましょう。
添付書類 | 通常枠 | 大規模賃金引上枠 | 回復・再生応援枠 |
---|---|---|---|
事業計画書 | 〇 | 〇 | 〇 |
認定経営革新等支援機関による確認書 | 〇 ※1 | 〇 ※1 | 〇 ※1 |
金融機関による確認書 | △ ※2 | 〇 | ✕ |
コロナ以前よりも売上または付加価値額が減少しことを示す書類 | 〇 | 〇 | 〇 |
決算書(貸借対照表・損益通算 など) | 〇 | 〇 | 〇 |
事業財務情報 | 〇 | 〇 | 〇 |
労働者名簿の写し | 〇 | 〇 | 〇 |
賃上げ表明書・賃金台帳の写し | ✕ | 〇 | ✕ |
原油価格・物価高騰などの影響を受けている宣誓書 | ✕ | ✕ | ✕ |
添付書類 | 最低賃金枠 | グリーン成長枠 | 緊急対策枠 |
---|---|---|---|
事業計画書 | 〇 | 〇 | 〇 |
認定経営革新等支援機関による確認書 | 〇 ※1 | 〇 ※1 | 〇 ※1 |
金融機関による確認書 | ✕ | △ ※2 | △ ※2 |
コロナ以前よりも売上または付加価値額が減少しことを示す書類 | 〇 | △ ※3 | △ ※3 |
決算書(貸借対照表・損益通算 など) | 〇 | 〇 | 〇 |
事業財務情報 | 〇 | 〇 | 〇 |
労働者名簿の写し | 〇 | 〇 | 〇 |
賃上げ表明書・賃金台帳の写し | ✕ | ✕ | ✕ |
原油価格・物価高騰などの影響を受けている宣誓書 | ✕ | ✕ | 〇 |
※1:複数事業者が連携する場合は任意
※2:補助金額が3,000万円を超える場合
※3:通常枠で再審査を希望する場合
上記以外にも、書類を求められる場合がありますので、公募要項を熟読して書類を準備しましょう。一部を解説します。
リース会社と共同申請する場合は、リース料軽減計算書と宣誓書
回復・再生応援枠において、売上高の減少を証明するために必要な確認書
グリーン成長枠において、研究開発計画・技術開発計画書・人材育成計画書のいずれか
加点を希望する場合は、確認書や宣誓書など
特に重要な書類について、書き方を解説します。
事業再構築補助金の申請において、もっとも重要な書類です。補助金の交付を受けたい事業が、審査基準を満たしていることを証明するものです。様式は自由ですが、最大15ページ(補助金額が1,500万円以下であれば10ページ以内)での作成が求められています。注意事項として、以下の点を重点的に書くように、公募要項にも記載があります。
記載内容 | 説明 |
---|---|
補助を受けたい事業の具体的な取り組みの内容 | 現在行なっている事業の状況や、強み・弱み・事業環境などをふまえ、事業再構築が必要な理由・再構築の具体的な内容などを記載します。記載内容は、応募申請する枠の事業再構築指針に沿っていること・他者や既存事業との差別化が必要です。 |
事業化することで想定している、将来の展望(市場および効果) | 事業が成功することで、ユーザーやマーケットに対してどのような成果が期待できるのか、見込みについて目標時期・売上規模・量産化を達成した際の製品価格などを簡潔に記載します。必要に応じて図や写真などを使い、具体的な記載が必要です。 |
事業によって取得する主な財産 | 補助事業で取得する資産(単価50万円以上)の名称・分類・取得予定価格などを記載します。事業実施期間中には、取得財産管理台帳の記入も別途必要です。 |
事業の収益計画 | 補助事業の実施体制・スケジュール・資金調達計画などの具体的な記載が求められます。付加価値額の算出には根拠も必要であり、補助事業後も事業化状況等報告によって達成状況が確認されます。 |
認定経営革新等支援機関(認定支援機関)とは、中小企業を支援するための知識や経験を兼ね備えていると国から認定された支援機関です。税理士・弁護士・公認会計士・商工会議所・金融機関などから認定されています。
補助金額が3,000万円を超える場合には、事業者・認定支援機関・金融機関が共同で事業計画書を作成しなくてはなりません。
コロナ前と現在を比較し、売上高が10%以上減っていることを証明する書類が必要です。法人・個人事業主ともに5種類の書類を提出します。
コロナ以前と現在を比較するため、各時期における任意の3か月の売上・月別営業利益・人件費などが比較できる書類を提出します。法人で、法人事業概況説明書が必要なところは、個人事業主では所得税青色申告決算書と読み替えます。なお、白色申告の場合は月間売上がわかる売上台帳、帳面その他の確定申告の基礎となる書類が必要となります。
法人での申請では、事業者の経営状況を確認するために、直近2年間の以下の書類を決算書として提出します。
貸借対照表
損益計算書(特定非営利活動法人は活動計算書)
製造原価報告書
販売管理費明細
個別注記表
個人事業主は、上記の書類が用意できないため、全体の事業計画書及び収支予算書の添付が必要です。
事業再構築補助金の申請は、どのような方法で行えばよいのか、流れを見ていきましょう。
申請準備を始める前に、以下の3つの申請要件を満たしているか必ず確認しなくてはいけません。
コロナ禍で売上が減少した
3年から5年の期間で事業を再構築する
事業計画書の策定において、認定支援機関の支援を受ける
要件を満たしていたら、jGrantsでの申請に必要なGビズIDプライムアカウントを作成し、同時に認定支援機関の選定も進めます。アカウントの作成には時間がかかりますので、できるだけ早い段階で作成しておきましょう。
認定支援機関が決まったら、機関の支援のもと事業計画書を策定します。先述した通り、事業計画書は事業再構築補助金の採択に大きく関係するため、綿密な打ち合わせを行なった上での策定が必要です。
計画書の策定と並行して、必要書類の準備も進めましょう。必要書類は、申請枠ごとで異なるうえ、公募回によって変更される事もあります。必ず、申請する公募回の要領を確認しなくてはいけません。
書類がすべて揃ったら、所定期間内に事業再構築補助金の電子申請特設ページから申請します。
申請後、採択されたかどうかが事務局から申請者全員に通知されます。GビズIDにログインし、結果を確認しましょう。採択されると、以下の項目が公表されます。
受付番号
法人番号を含む、商号又は名称
事業計画名および概要
認定支援機関の名称・担当者名
認定支援機関以外の外部支援者名
採択されたら、補助金交付を受けるための審査申請を行ないます。申請枠によって、補助事業実施期間が12か月もしくは14か月に決められているため、できるだけ早く申請しましょう。申請が遅れると、事業実施期間が短くなることもあります。
補助対象とならない経費が含まれていると、補助金が減額される可能性もあるため、慎重に申請しましょう。
交付決定通知が届いたら、補助対象となる経費を使い、採択された事業を実施期間内に展開します。実施期間を過ぎてしまうと、補助対象外となるため注意が必要です。
実施期間が終了したら、実績報告書を作成します。事業計画書同様、補助金の交付を受けるために必ず提出する書類です。定められた期間内に提出しましょう。
提出後、必要に応じて事務局が現地検査を実施することがあります。計画通りに事業が進められたか・設備が購入されたかなどを確認します。現地検査の実施前には、原則として事務局から連絡が入るため、事業者は検査に応じる義務があります。
書類と現地検査の結果、問題がなければ補助金確定通知書が事業者に届きます。
補助金確定通知書を受け取ったら、 jGrantsで補助金精算払請求書を提出します。事務局側が受領・承認すると、補助金が振り込まれます。
補助期間が終わった後も、5年間は事業計画のフォローアップが必要です。 経営状況などの年次報告が必要であり、計画的に報告しなくてはいけません。
事業再構築補助金の必要書類の中で、事業計画書と実績報告書の作成に対して、ハードルが高いと考えている事業者は多いです。この2つの種類が、補助金交付を受けられるかどうかの大きな判断材料となるため、入念な準備のもと書類作成を進めていきましょう。
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