ITツールを導入する際に使えるのが「IT導入補助金」です。ITベンダーにとってみると、顧客にITツールを販売する際にIT導入補助金を活用できれば、顧客の負担を減らしつつ販売活動が可能となります。
しかしながら、「どうすれば顧客のIT導入補助金申請を支援しながら、自社のITツールも効果的に販売できるのか」──こうした疑問を抱えるITベンダーは非常に多いことでしょう。
本記事では、IT支援事業者としての登録・営業・申請支援のノウハウや落とし穴、ベンダーとして守るべき法・ルール、実践的な営業戦略まで、ITベンダーがIT導入補助金を味方につける方法を徹底解説します。自社サービスの販路拡大・契約率UPをめざす担当者様はぜひ最後までお読みください。
IT導入補助金とは、中小企業や小規模事業者による生産性向上・DX(デジタルトランスフォーメーション)推進のため、システムやクラウドサービス、業務ソフトなどのITツール導入費用を国が支援する制度です。
2025年時点で補助額は最大450万円、補助率は1/2〜4/5であり、ITツールを導入する企業のコスト負担を大幅に削減できる制度となっています。
参考:IT導入補助金とは?補助額や申請方法、スケジュール、注意点などを解説
IT導入補助金には「通常枠」「インボイス枠」「セキュリティ対策推進枠」など複数の区分があり、年々その内容や要件がアップデートされています。例えば2025年現在は、インボイス制度への適応、サイバーセキュリティ導入支援など、経営現場の実需に合わせたラインナップが拡充されています。
IT導入補助金の申請企業には補助金申請自体が初めての事業者も多く、相談・サポートへの期待は非常に大きいです。そんな事業者の申請をサポートするのがIT導入支援事業者になります。
IT導入補助金の申請には必ず「IT導入支援事業者」の協力が必要です。ITベンダーがIT導入支援事業者となり補助金申請をスムーズに進めることで、顧客(中小企業)との信頼・関係性づくり、競合サービスと比べた営業力の強化、さらには自社ツールの導入率UPを実現することができます。
IT導入補助金の申請をサポートし、自社のITツールを売るには「IT導入支援事業者」の登録が必須となります。
IT導入支援事業者の登録は、専用フォームから行います。公式サイトに手引がありますので、それに従い手続きを進めます。支援事業者登録の後、販売するITツールの登録を行います。
項目 | 内容 |
---|---|
登録区分 | 単独(法人)またはコンソーシアム |
登録要件 | ・サポート体制(アフターケア含む)確保 ・中小企業者等との取引実績 ・ITツールの仕様明示 ・反社勢力の排除、等 |
登録フロー | 登録申請 →審査委員会による内容チェック →審査合格 →ITツール登録(仕様詳細・資料添付) |
登録済みの事業者はポータルサイトで検索可能となり、問い合わせの集客も見込めます。
支援事業者は登録して終わりではなく、ITツール販売からIT導入補助金の申請や運営にかかる手続きやトラブルへの対処を行う必要があります。
補助金申請の支援・進行管理
導入ツールの契約~納品までのフォロー
実績報告および効果測定サポート(補助金給付の前提となる)
各種トラブル(納期遅延・目的外利用・早期解約時など)への適正対応
これらを実施できる体制を整えることが、売れるITベンダーの基盤となります。
「自社ITサービスを補助金を活用して売る」と言っても、むやみに営業をかければ良いわけではありません。制度上・商習慣上のポイントや顧客満足度を高める支援ノウハウが必要となります。
まずはIT導入補助金の制度内容、カバー範囲を十分に理解し、それに沿った商品パッケージングを行う必要があります。販売するシステムだけでなくコンサルティングや保守対応等の役務もITツールとして登録することができるため、様々な販売戦略の立案が可能となります。
たとえば、以下のような点を検討すると良いでしょう。
補助金活用を前提としたソリューション提案
ターゲットの明確化と訴求(業種・従業員規模・課題を抱えるユーザー層、等)
自社サイトにおける導入シミュレーションの案内
無料相談会やセミナー開催(申請の実態・ユーザー事例紹介)
サポート体制(相談~書類作成までワンストップ化)
丁寧なヒアリングと「補助金での負担イメージ」「導入後ROI」を合わせて説明することで、商談を優位に進めることができます。
実際にIT導入補助金の申請を支援する場合には、多くの実務をこなす必要があります。特に以下の点に注意が必要です。
顧客側の事前準備案内(gBizIDプライムアカウント・SECURITY ACTION・IT戦略ナビwith等)
交付決定前の発注・契約・支払をしないこと(補助金の対象外となります)
採択後の実績報告・導入成果確認で不備(説明不足・データ収集ミス等)を出さない
以下はよくある失敗例です。
法人代表印や証明書類の遅延で申請期限に間に合わない
導入後、期待した生産性指標の数値データ提出が難航し、効果報告でトラブル
進行管理をしっかり行い、顧客・自社どちらにも不利益とならないようサポートしましょう。
IT導入補助金は、国民の税金を財源とする公的支援です。不適切な使い方やルール違反は重い罰則に直結するため注意が必要です。
補助金を活用して取得・導入した IT ツール(ハードウェア・ソフトウェア・クラウドサービス等)は、公的資金で取得した「補助対象財産」とみなされます。そのため、法定耐用年数(例:ソフトウェアは5年)または公募要領で指定された保管期間が経過するまでは、受給者の判断だけで売却・貸与・譲渡・廃棄などを行うことは認められません。もし期間内に処分する必要が生じた場合は、事前に「財産処分承認申請書」を所定の様式で提出し、事務局(または所轄省庁)の承認を得ることが必須です。
承認を得ないまま勝手に処分した場合、補助金の全額返還命令に加えて加算金(違約金相当)が課される可能性があり、悪質なケースでは補助金等適正化法違反として刑事告発・指名停止など重い行政・刑事罰につながることもあります。なお、オンプレミスのソフトウェアだけでなく、クラウドソフトやリース契約で導入したサービスも同じ管理義務が課されます(利用権の譲渡・中途解約・名義変更等を含め、目的外使用は禁止)。導入後も「保管・使用状況の記録」「目的外利用の抑止」「利用停止時の手続き確認」など、ベンダーと補助事業者が連携しながら適正管理を徹底することが重要です。
IT導入補助金を活用してツールを導入する際、ITベンダーは“契約前から運用終了まで”のルールを顧客に平易な言葉で伝える責任があります。まず、購入時点での所有権・管理義務・譲渡制限をまとめ、誰が読んでも誤解しないよう説明しましょう。次に、導入後の解約条件や目的外利用の禁止事項(たとえば補助対象外の部門でソフトを使うことはNGなど)を契約書・利用マニュアルの両方に明記し、従業員向け説明会やオンボーディング資料で周知徹底します。
もし顧客が途中で売却・譲渡・解約を検討し始めたら、「補助金事務局へ相談しましょう」と即座に促すフローを作っておくと安全です。あわせて、補助金等適正化法など関連法令に違反した場合のペナルティ(補助金返還、加算金、指名停止など)や、会計検査院による事後チェックのリスクについても具体的に示しておくと、顧客の理解は一段と深まります。
顧客が「知らなかった」「ルールを誤解していた」ことによるトラブルを未然に防ぐためには、丁寧な説明と対応が必要になります。
IT導入補助金は、中小企業のDXと業務改革、そしてITベンダーのサービス拡大・販路強化の強力な追い風となる補助金です。制度理解と適切な申請支援、高品質なITツール提案&アフターフォローを両立させることで、信頼を獲得し持続的なビジネス成長につなげることが可能です。自社ITサービスをもっと多くの中小企業へ届けたい方は、今すぐIT導入支援事業者登録と最新要領のチェック、ワンストップ申請支援体制の構築をご検討ください。
もし本文中でご紹介したIT導入補助金を活用したツール販売に興味のある方は、お気軽に当社までご相談ください!貴社のITソリューション普及をトータルでバックアップいたします。