事業承継・引継ぎ補助金を個人事業主でも活用したいと考えている方もいらっしゃることでしょう。
結論、個人事業主でも申請は可能ですが、申告方法や従業員の要件など法人と異なる点に注意しなければいけません。
この記事では、個人事業主の事業承継・引継ぎ補助金の申請要件や採択事例、注意点を解説します。
事業承継・引継ぎ補助金は個人事業主も対象となります。
ただし、申請するうえで注意しなければいけない点も多数あります。
ここでは個人事業主として申請する場合に特に注意すべき点について解説します。
個人事業主の場合、確定申告の区分要件が定められており、青色申告者でなければ申請できません。
白色申告している個人事業主は、事業承継・引継ぎ補助金の対象外となります。
必ず青色申告者である必要があり、なおかつ税務署の受領印が押印された確定申告書Bと所得税青色申告決算書の写しを提出しなければいけません。
電子申告を行っている方は、受付が確認できるメール詳細(受付結果)を追加で提出する形となります。
専門家活用枠で申請をする場合、青色申告を開始してから5年未満の方は対象外となります。
開業届出書と青色申告承認申請書を税務署に提出した日から5年以上経過していることが要件です。
なお、経営革新枠と廃業・再チャレンジ枠に関しては、年数の制限はありません。
専門家活用枠では、引き継ぐ従業員がいない場合は対象外となる可能性があります。
最低でも1名以上の従業員の引継ぎが求められます。
アルバイトやパート、派遣社員などが従業員として含まれるかは個別判断となり、会社役員や個人事業主は従業員に含まれないため注意が必要です。
承継者と被承継者による実質的な事業承継が行われていないと事務局が判断した場合などは対象外となります。
<事業承継やM&Aが行われたとみなされない例>
・グループ内の事業再編 ・ 物品・不動産等のみを保有する事業の承継 ・ M&A(Ⅲ型)での申請にも関わらず、親族内承継である場合 ・ フランチャイズ契約、又は実質的にはフランチャイズ契約であるとみなされる場合 ・ 従業員等へののれん分け、又は実質的にのれん分けとみなされる場合 ・ 事業譲渡における譲渡価格が0円(無償)である取引や、株式譲渡における、株価1円での買収である取引 ・ 設立間もない法人における代表者交代又は開業直後の事業主からの事業譲渡等において、その正当性が確認できない場合 など |
ここでは、事業承継・引継ぎ補助金の概要について紹介します。
事業承継・引継ぎ補助金の対象となる事業者は、以下の項目に該当する中小企業や小規模事業者(個人事業主も含む)です。
事業承継をきっかけに、新しい取り組みを始める
事業の再編や統合により、経営資源を引き継ぐ
さらに個人事業主の場合、それぞれの業種によって、小規模企業者の定義として従業員の規模が定められています。
業種 | 要件 |
---|---|
製造業その他 | 従業員の数が20人以下の会社及び個人事業主 |
卸売業・小売業・サービス業 | 従業員の数が5人以下の会社及び個人事業主 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 従業員の数が20人以下の会社及び個人事業主 |
対象経費は、3つの申請枠によって異なります。
経営革新枠 | 専門家活用枠 | 廃業・再チャレンジ枠 |
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・店舗等借入費 ・設備費 ・原材料費 ・産業財産権等関連経費 ・謝金 ・旅費 ・マーケティング調査費 ・広報費 ・会場借料費 ・外注費 ・委託費 ・廃業支援費 ・在庫廃棄費 ・解体費 ・原状回復費 ・リースの解約費 ・移転・移設費用 | ・謝⾦ ・旅費 ・外注費 ・委託費 ・システム利用証 ・保険料 ・廃業支援費 ・在庫廃棄費 ・解体費 ・原状回復費 | ・廃業支援費 ・在庫廃棄費 ・解体費 ・原状回復費 ・リースの解約費 ・移設費用 |
対象経費については、以下の記事でより詳細に解説しているので、ぜひ参考にしてください。
事業承継・引継ぎ補助金の対象経費とは?申請枠ごとの補助対象経費、対象外経費を徹底解説
事業承継・引継ぎ補助金は3つの申請枠に分かれ、それぞれの補助額と補助率は以下の表の通りとなります。
申請類型 | 補助上限額 | 補助率 |
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経営革新枠 | 600万円 (一定の賃上げを行う場合は800万円) | 1/2~2/3 |
専門家活用枠 | 600万円 (M&A未成約の場合は300万円) | 1/2~2/3 |
廃業・再チャレンジ枠 | 150万円 | 1/2~2/3 |
その他、事業承継・引継ぎ補助金の制度の詳細については、以下の記事もご参照ください。
事業承継・引継ぎ補助金とは?制度概要や対象者、補助額、申請方法などを解説
ここでは事業承継・引継ぎ補助金の採択結果から、個人事業主の事例(申請者が個人名となっているもの)を3つ紹介します。
経営革新事業の創業支援型の採択事例 |
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旅館施設の改築によるペットツーリズム事業を新設する。 承継者が動物看護師、承継者の夫が獣医師であり、動物の専門家が運営する旅館としての強みを活かして、当館を利用される宿泊客に動物のセラピー効果や癒しの空間を提供し、ペットも飼い主も安心して過ごせる宿泊施設を提供する。 |
経営革新事業の経営者交代型の採択事例 |
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飲食・エステ業界の横のつながりを生かし、Uber業界への進出。 飲食を伴わない他のクラブやエステへの食事の宅配ビジネスを展開することで、自店の売上だけでなく、浜松の街中全体の活性化を図る取り組み。 |
経営革新事業のM&A型の採択事例 |
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カフェの承継をきっかけとして「珈琲の飲める出版社」を開始し、地域資源の魅力紹介や高齢者や障害者の活躍できる場の提供を通して、当社の課題解決と高齢者や障害者が主体的に社会参加を行う取組を支援する。 |
引用:事業承継引継ぎ補助金(8次公募) 経営革新(M&A類型) 交付決定一覧
上記以外にもさまざまな採択事例がありますので、公式ページをご覧ください。
その他、以下の記事では事例について解説していますので、よろしければご参照ください。
事業承継・引継ぎ補助金の活用事例を紹介!補助金を活用した事業承継・M&Aの具体例
ここでは、個人事業主の方が事業承継・引継ぎ補助金を利用する際に注意しなければいけない点を紹介します。
親子間で事業承継する場合は、経営革新事業枠の「創業支援型」と「経営者交代型」のみ補助金の対象となります。
なおかつ対象となる経費は、事業承継後に行う設備投資のみ(未来の承継を除く)となっていますので注意しましょう。
また、親が法人の場合と個人事業主の場合で要件が異なります。
親子同士の事業承継については、別記事で詳しく解説します。
個人から不動産のみを売買する場合は、補助金の対象外となるため注意しましょう。不動産事業を承継したりする場合は利用できますが、不動産単体の売買では利用できません。
また不動産のみならず、特定の有形資産や無形資産のみ事業譲渡する場合も対象外です。
<有形資産や無形資産のみの事業譲渡と判断される例>
・飲食事業における店舗や調理設備などのみの引継ぎ ・運送事業における車両のみの引継ぎ ・顧客リストのみの引継ぎ ・従業員のみの引継ぎ ・店舗の賃貸借契約のみの引継ぎ など |
個人であっても、事業として承継する必要があります。単なるモノの売買は対象にならないということに注意しておきましょう。
事業承継・引継ぎ補助金は個人の方の場合は、所得税の課税対象となります。
補助金額は最低でも50万円、上限額としては600万円が交付されるため、大きな納税額にもなりかねません。
交付された事業年度における収益になるので、注意しておきましょう。
事業承継・引継ぎ補助金は個人事業主も申請可能ですが、青色申告者であったり、従業員の要件などが細かく定められています。
また、事業承継を行っても事務局から認められない場合もあるため、個人事業主の方は、事前に申請要件を細かくチェックしておきましょう。
なお、「自分は要件を満たしているのか知りたい」という方は、ぜひ補助金コネクトへご相談下さいませ。
補助金申請支援事業者として、要件を満たしているかの確認はもちろん、適切な申請枠の選定や申請手続きのサポートを行っております。
一度話をしてみたいという方は、ぜひ一度お問い合わせください。