ものづくり補助金は、採択されただけでは補助金を受け取ることができません。受け取るためには採択後に交付申請を行い、承認を受ける手続きが必要です。
本記事では、ものづくり補助金における交付申請について、手続きの流れや必要書類、注意点などを詳しく解説します。これから交付申請をする方や、ものづくり補助金の流れを知っておきたい方は、ぜひ参考にしてください。
ものづくり補助金の交付申請とは、補助金対象となる事業でどのぐらい経費がかかるかを精査し、対象経費として確定するための手続きです。採択とは、補助金を受けるための事業計画が審査を通過したことを意味しており、採択された段階では事業計画と補助事業に支給される補助金額が内諾された状態であり、個別の補助経費が承認されてはいません。
事務局側の審査により、交付申請の承認を受けた後に、申請者は正式に補助金を受け取る権利が得られます。補助金対象経費であっても、交付申請時の審査内容によっては補助対象外となる場合もあるため、注意が必要です。
交付決定を受けた後は、事業にかかる必要経費の額や導入設備などの変更は受理されない可能性が高いです。計画通りに事業を進め、適切な補助金を受け取るためにも、交付申請は慎重かつ正確に進めなくてはいけません。
ものづくり補助金の交付申請は、どのような流れで進めていけば良いのでしょうか。必要な手続きとその流れを解説します。
最初に、ものづくり補助金の公式サイトから「補助事業の手引き」→「ものづくり補助金交付規程に定める様式」の順に進み、「様式第1 補助金交付申請書」をダウンロードします。
事業計画名および経費・補助金交付申請額などは、基本的に応募時点で提出した補助事業計画書に沿って記入します。補助対象経費の箇所は、仕入控除税額(消費税・地方消費税など)を忘れずに減額する作業が必要です。これは、課税事業者に対して消費税および地方消費税の還付や仕入れ税額控除が発生することから、補助金との重複を防ぐためです。
同じタイミングで、交付申請書のファイルをjGrants(電子申請システム)からダウンロードしておきましょう。
見積書を提出するのは、購入する製品やサービスの価格が妥当であることを証明するためです。正しく添付されていないために差し戻しとなるケースが増えています。
交付申請では、補助対象経費の全てに見積書が必要であり、単価が税抜き50万円以上の費用が発生する場合は原則として2社以上・中古設備の場合は3社以上からの相見積書が必要です。また、見積書に内訳がある場合は、見積書・相見積書で同じ内訳の記載が求められますので、見積書を依頼する先に必ず伝えましょう。
相見積書の提出が難しい場合は、業者選定理由書を提出し、合理的な理由があることを証明する必要があります。合理的な理由とは、販売元が限られる根拠(独占販売権・知的財産権など)が客観的に分かる場合です。事業完了後の実績報告で必要となる見積依頼書は、この時点で一緒に準備しておくと、手続きがスムーズに進められます。
ものづくり補助金の交付申請に必要な書類は、交付申請書と見積書以外にも複数存在します。詳しい必要書類については後述しますが、法人と個人事業主で必要となる書類が異なるため、公募要項や手引きなどを確認しながら準備が必要です。
書類が全て揃ったら、交付申請書のファイル以外の必要書類をzipファイルにまとめます。交付申請書のファイルは、単独でExcelファイルで登録します。
応募申請時点から、補助事業の内容に変更がある場合は、交付申請書のファイルの記載内容の変更・修正が必要です。補助率・交付申請額・担当者のメールアドレスなどは、変更となる場合があるため、特にしっかり確認しましょう。なお、応募申請時点よりも成果が縮小する変更は認められません。
ファイルの準備が整ったら、jGrantsから交付申請手続きを行います。採択回ごとで申請方法が異なるため、公式サイトの「jGrants入力ガイド」を確認しながら正しく入力しましょう。
交付申請書類が全て揃っているか・内容に足りない点や不明点はないかなど、事務局側で書類の審査が行なわれます。申請内容に不備があると差し戻しになるため、メールが届いたらjGrantsにログインし内容を確認する必要があります。
審査に通過すると、通知メールに加え「補助金交付決定通知書」が届きます。同時に、jGrantsでも結果が確認可能です。
交付申請により交付が決定した事業は、通知書の右上に記載されている「交付決定日」を過ぎてから開始しなくてはなりません。交付決定日よりも前に契約・発注した経費は、補助対象とはならないためです。
事業開始後も、状況報告や実績報告などが必要となるため、書類の管理や事務所からの指示への対応などを心がけておきましょう。
ものづくり補助金の交付申請を行う際に必要な提出書類は、以下の通りです。
ケース | 必要書類 |
---|---|
全ての事業者 | ・見積書(相見積書を含む。発注時点で有効な見積書であること) ・履歴事項証明書(法人の場合) ・直近の確定申告書(第1表)(個人事業主の場合) ・補助経費に関する誓約書 ・賃金利上げ計画の契約書 |
該当事業者のみ | ・技術導入費、専門家経費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費の詳細 ・該当する経費の補助事業計画書別紙 |
いずれの書類も、記載内容に誤りがあったり書類に不備があったりすると差し戻されます。一度で受理されるよう、提出前にしっかりと確認しましょう。
ものづくり補助金の交付申請において、いくつか注意すべき点を解説します。スムーズに交付申請を行い、補助事業がスタートできるよう、内容を理解しておきましょう。
ものづくり補助金には、事前着手制度がありません。経費として認められるのは、交付申請によって許可がおり、かつ交付決定通知日から事業完了期限までの間に購入したものに限られます。
この期間以外に支出した経費は、補助対象であっても経費を受け取ることができませんので、十分注意が必要です。
見積書と合わせて提出する相見積書は、様式は特に限定されていません。ただし、双方の条件や品目名が全て一致していないと、比較対象と認められないため差し戻しを受けてしまいます。このため、条件と品目名は必ず一致させるように依頼しましょう。
また、見積書の有効期限が交付決定よりも前であっても、差し戻し対象となります。交付申請は、長いと3ヶ月程度かかるケースもあるため、有効期限に余裕を持って作成してもらうよう依頼することが重要です。
交付申請では、補助対象経費の全てについて、見積書を添付することがルールとなっています。設備経費・クラウドサービス利用費・専門家経費など、複数の項目で申請するのであれば、項目の数だけ見積書も準備しなくてはなりません。
さらに、専門家経費が公募要項に記載された謝金単価に準じていない場合は、価格が妥当であると証明する見積書が複数必要です。遠方の専門家に依頼し旅費を計上する場合には、スケジュールや交通費・宿泊先など行程表の詳細も合わせて提出します。
交付申請の期限は特に定められていませんが、採択を受けたら速やかに書類を準備して提出しましょう。交付申請を終え、事務局から連絡が入るまで、標準的期間はおよそ1か月ですが、差し戻しを受けずに申請が通ることは少なく、何度か差し戻しを受けるケースがほとんどです。
補助事業の終了期限は申請枠ごとに定められており、交付申請が遅くなると補助事業の実施期間が短くなってしまいます。余裕を持って補助事業スケジュールを進めるには、速やかな交付申請がおすすめです。
ものづくり補助金の交付申請に必要な書類は、応募申請より少なくなります。しかし、補助事業にかかる経費を具体的に精査するため、万全な体制で書類を作成することが重要です。
スムーズに補助事業を開始するために、交付申請の必要書類に不備や漏れがないよう、公募要項などを確認しながら準備を進めていきましょう。