急速なDX化やAI普及によって、従来のスキルだけでは立ち行かない時代が訪れています。こうした変化のなか、企業・個人が新たなスキルを身につける「リスキリング」は必須の取り組みとなりました。政府も「5年間で1兆円規模のリスキリング支援」を打ち出し、企業向け・個人向けの補助金や助成金を拡充しています。
本記事では、最新の助成制度に基づき、企業・個人が活用できるリスキリング補助金の仕組み・メリット・申請方法を解説します。DX研修・AI研修・ビジネススキル向上に取り組む際の参考としてご活用ください。
リスキリングと補助金を理解するうえで、まずは「リスキリング」とは何か、また補助金が注目される背景を整理しましょう。
急速な技術革新と社会構造の変化によって、多くの企業・個人が新たなスキル習得を求められています。その学び直しの機会を支えるため、国や自治体が用意しているのがリスキリングに関する補助金・助成金制度です。
リスキリングとは、従来の業務で培ったスキルを活かしつつ、新しい知識や技術を学び直すことを指します。たとえば、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に向けて、プログラミングやAI活用、データ分析などの知識を身につけることもリスキリングの一例です。これまでのキャリアを活かしながら、追加のスキルを獲得することで、より高度な業務や新分野への挑戦が可能となります。
特に近年では、以下のような学習分野がリスキリングの対象として注目度を高めています。
この表から、リスキリングはデジタル領域から環境分野まで、幅広いテーマを含むことがわかります。今後さらにデジタル化や社会的課題対応の重要性が増すなかで、リスキリングは多様な企業・個人にとって新たな飛躍の手段となるのです。
参考:リスキリングとは?定義、注目される背景から導入のポイント、事例を解説
日本政府は2022年からの経済政策の一環として、「今後5年間で1兆円規模のリスキリング支援」を打ち出しました。背景には以下のような問題があります。
ここから読み取れることは、リスキリングが企業や働く人の課題解決だけでなく、日本経済を支えるうえでも重要だという点です。補助金・助成金を活用してスキルアップに取り組むことは、個人にとってはキャリアの可能性を広げ、企業にとっては経営力強化につながる魅力的な選択肢だといえます。加えて、中小企業の場合は大企業と比較して教育に投資する余力が小さいため、補助金の活用が事業拡大に直結しやすいでしょう。
ここでは、リスキリング関連の補助金を実際に利用することで得られるメリットを、企業と個人の双方の視点から紹介します。特に、限られたリソースの中小企業やキャリアアップを目指す方にとって、補助金を活用する意味は非常に大きいです。
まず企業にとってのメリットは、以下の通りです。
こうした効果により、企業は市場変化への適応を早め、競争力を維持・強化できます。特にDXリスキリングなど、新技術の活用が急がれる領域では、人材確保や育成を補助金と組み合わせることで一気に社内体制が整備される可能性があります。
次に個人の視点で、補助金を活用したリスキリングのメリットを見てみましょう。
従業員個人が主体的に学びを深めることで、結果として社内での貢献度も上がり、評価や昇進につながるケースもあります。また、転職や副業など新たな働き方を模索するうえでも、リスキリングは大いに武器となるでしょう。
ここでは、国と地方自治体・公的団体が展開している代表的なリスキリング補助金・助成金を整理します。企業・個人問わず活用できるものが増えているため、ご自身の状況にあった制度を見つけてみてください。
下記の表は、厚生労働省や経済産業省が管轄している代表的なリスキリング補助金・助成金の概要です。
<国による主なリスキリング補助金・助成金一覧>
表からわかるように、人材開発支援助成金は企業の事業主が活用し、社員を対象とした職業訓練経費や訓練中の賃金の一部を補助する制度です。一方、「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」や「教育訓練給付制度」は個人が申請者となるのが大きな違いです。
参考:人材開発支援助成金とは?人材開発支援助成金のコース内容や申請から受給の流れなどを解説
国だけでなく、東京都や各地方自治体でもリスキリングを後押しする助成金制度を設けています。たとえば下記のような事例があります。
このように、自治体によって内容や対象が異なるため、自社所在地や居住地の自治体が提供する補助金の情報をこまめに確認することが重要です。なお、多くの自治体では国の助成金との併用が不可の場合もあるため、制度の要件をしっかり確認しましょう。
リスキリングに使える補助金は以下の記事でも紹介していますので、合わせてご覧ください。
参考:リスキリング支援の補助金・助成金の一覧を紹介!給付条件や申請方法を解説
リスキリング補助金や助成金を受けるには、一定の事前準備と期限内の手続きが必要となります。ここでは、国(厚生労働省)の「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)」の例を中心に、よくある申請手順や書類を整理します。
企業が「事業展開等リスキリング支援コース」を申請する場合に必要となる主な書類は以下の通りです。
支給申請書
訓練実施計画届
事業内職業能力開発計画
事業主等の事業活動状況に関する書類
会社概要、就業規則、雇用保険適用事業所番号が分かる書類 など
訓練カリキュラム
訓練実施機関に関する書類
講座案内、研修会社の概要資料等
労働者名簿
対象労働者の雇用契約書
労働者の賃金台帳・出勤簿
労働協約または就業規則等(教育訓練に関する規定がある場合)
これらの書類は期限厳守が基本です。特に計画届は、「訓練開始日の1か月前」を過ぎて提出すると不受理となるケースが多いです。また、支給申請も「訓練終了後2か月以内」に行わなければなりません。
書類作成に際しては、記入漏れ・誤字脱字などの不備を避けるために、厚生労働省や都道府県労働局が公開している最新の様式を用いましょう。加えて、書類は電子申請できるものも増えていますが、一部書類は郵送での提出が必要な場合もあります。詳細は必ず管轄の労働局に確認してください。
さらに訓練開始後から終了時に必要な書類、申請時(訓練終了後)に提出する書類も多くあります。
出席簿(訓練日ごとの出席状況)
訓練実施報告書
実施された訓練のスケジュールと実績
研修受講証明書(研修機関が発行)
賃金台帳(訓練期間含む)
出勤簿
給与明細
就業時間内での訓練であることの証明(会社側の計画書など)
支給申請書
訓練実施結果一覧表
実施証明書(研修機関による証明)
経費の支払いが確認できる書類
領収書
請求書
振込の控え
賃金助成を希望する場合は、訓練期間中の
賃金台帳
出勤簿
給与支払証明
研修内容・成果を確認できる資料
対象労働者の在籍が確認できる書類
※詳しくは人材開発支援助成金 (事業展開等リスキリング支援コース) のご案内(詳細版)ご確認ください。
リスキリング補助金や助成金は、計画書の作成から受給決定までに数か月かかるのが一般的です。以下はシンプルな流れを示した例です。
<人材開発支援助成金の申請スケジュール例(事業展開等リスキリング支援コース)>
このように、一連の流れに時間を要するため、早めのスケジュール設計が必須です。特に年度末は申請の混雑が予想されるため、書類不備などがあると審査に時間がかかるケースもみられます。早期計画・早期行動が成功のカギといえるでしょう。
リスキリング支援の補助金・助成金を上手に活用するためには、いくつかの注意点を押さえておく必要があります。申請期限や書類の不備などで不支給とならないためにも、次のポイントは必ず確認しましょう。
助成金で最も多い不支給理由が、計画届の提出期限である「訓練開始日の1か月前」を過ぎてしまうケースです。1日遅れただけでも申請は受理されず、後からの救済もありません。研修日程が固まり次第すぐに準備を始め、社内承認フローの遅延が起きないよう事前の調整が重要です。スケジュール管理を徹底することで、期限超過のリスクは大幅に減らせます。
補助金の対象になるのは、職業能力向上を目的とした体系的な訓練に限られます。日常業務とほぼ同じ内容のOJTや自社固有の作業指導などは対象外となるため注意が必要です。特にオンライン研修でも、カリキュラムや到達目標が明確でなければ認められません。受講前に、訓練内容が制度要件を満たしているか必ず確認しましょう。
助成金申請に不慣れな企業は、社労士などの専門家を活用することで不備の減少や申請プロセスの効率化が期待できます。ただし、成功報酬型の費用体系など契約条件をよく理解しないと予想外のコストが発生する場合もあるため注意が必要です。また、多くの研修会社が無料で書類準備や必要証跡の案内を行っており、こうした支援を併用することで負担を軽減できます。外部サポートを活用しつつも、最終判断は企業側が行う姿勢が求められます。
リスキリングは、DX社会や激変するビジネス環境に適応するために欠かせない手段であり、国や自治体もさまざまな補助金・助成金制度で背中を押してくれます。企業側は人材育成や組織体制の強化に、個人側は自らのキャリアアップや市場価値向上に、この貴重な支援を活用してはいかがでしょうか。
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