展示会は、自社の製品やサービスを取引先や消費者に直接伝える方法であり、効果的な販促活動やスムーズな商談が実施できます。展示会への出展を検討する際には、展示会の意義や成功のコツなどを理解したうえで、出展する展示会を見極めることが必要です。
この記事では、展示会の種類やメリット、出展する流れやコツなど、展示会について詳しくご紹介します。
最初に、展示会とはどのような催し物なのか、理解を深めていきましょう。
経済産業省では、展示会の定義を以下のように発表しています。
「商品・サービス・情報などを展示、宣伝するためのイベント」
(ただし、フリーマーケットや路上販売は含まない)
展示会とは、企業出展者(事業者)が提供している商品やサービスなどを、自ら紹介するためのイベントです。展示会への出展は、新規顧客の獲得を始め、自社および自社商品のブランディングや情報発信などのプロモーション活動を目的としています。
展示会ではテーマが決められ、テーマに沿った出展企業が会場で自社のブースを設けたり自社製品を陳列したりして来場者にアピールします。来場者は、テーマに関係したニーズや興味を持っていることが多く、質の高い商談が期待できます。
日本国内では、毎年800件前後の展示会が開催されています。割合は、企業向けのBtoBの展示会が多いとされていますが、近年では一般消費者向けのBtoCの展示会も増加傾向にあります。展示会を開催する企業は、製造・機械・建設・住宅・IT・通信・食品・医療・福祉・美容・健康など多岐にわたっています。
海外の展示会の開催件数は3万件を超えており、国内外で多くの企業・業種がビジネスチャンスに展示会を活用していることが分かります。
日本国内で展示会が多く実施されている主な会場は、以下の通りです。
東京ビッグサイト(東京国際展示場)
幕張メッセ(千葉県日本コンベンションセンター国際展示場)
東京国際フォーラム
パシフィコ横浜(横浜国際平和会議場)
インテックス大阪(大阪国際見本市会場)
ポートメッセなごや(名古屋国際展示場)
AichiSkyExpo(愛知県国際展示場)
マリンメッセ福岡
神戸国際展示場
上記会場のうち、特に開催の割合が高いのは、東京ビッグサイト・幕張メッセ・パシフィコ横浜・インテックス大阪の4会場です。その他に、地域に根ざしたイベント会場で展示会を実施するケースも多いです。
展示会は、目的や対象来場者によって、以下の4種類に分類されます。
合同展示会
動員催事・セール展示即売会
プライベートショー
パブリックショー
それぞれの展示会について、目的や来場者の違いなどを見ていきましょう。
展示会の基本的な開催スタイルであり、テーマを軸として関連企業が出展するイベントです。BtoB向けとなっている展示会が多いことで、情報収集だけでなく商談や買い付けを目的としたビジネスマンも多く訪れます。
ビジネスチャンスを得るために、同業者同士で協業に向けた相談も盛んに行われ、市場の動向を左右する大きなイベントとなっています。
合同展示会とは対照的に、BtoCのビジネスで活用される傾向が強い展示会です。主な例として、ファッションブランドのファミリーセールや全国伝統家具市、モーターショー、コミックマーケットなどが該当します。実際に会場で商品を売買するほか、新商品のプロモーションやマーケティングを目的とする場合もあります。
展示会の中には、BtoCだけでなくBtoBの内容のものもあり、この場合は日程を分けて展示会を開催します。
自社の技術やメッセージなどを世間に広めるために、ひとつの企業が単独で開催するか、もしくはグループ企業が同時に開催する展示会です。ほとんどのプライベートショーは一般公開されておらず、既存顧客またはステークホルダー(利害関係者)などをメインに招待しています。
展示会当日に、企業から来場者へ提供する情報量が多く、展示会の企画から準備・運営までに必要な準備も多岐にわたるため、社内での連携が必要不可欠です。来場者の滞在時間も長くなるため、丁寧な対応が求められます。
テーマに沿って、商品や新製品の紹介を行う展示会であり、前述した動員催事・セール展示即売会に含まれる場合もあります。BtoB・BtoC両方の性質を持っており、来場者の入場料が主催者の収入となる点が大きな特徴です。
ひとつのパブリックショーで、BtoBとBtoCの会期を分ける場合は、出展者の運営方法を変えるケースも少なくありません。
国内外で、展示会が数多く行われているのは、多くのメリットがあるためです。主なメリットとして、以下の4つが挙げられます。
見込み顧客との対面
既存顧客との関係構築
認知宣伝効果
体験や感動の提供
展示会では、一般的に開催テーマが決まっています。来場者はテーマに興味を持っているため、多くの見込み顧客と対面して直接アピールできることは、企業にとって大きなメリットです。相手の反応を見ながら製品をアピールでき、市場のニーズも把握できます。
他のブースへ立ち寄った来場者も、自社のブースを見て興味を持つ可能性もあり、声をかけたりパンフレットを渡したりすることでアピールできます。場合によっては、展示会以外では知り合う機会が少ない大企業の担当者などに接触できるかも知れません。
見込み顧客だけでなく、既存顧客と直接会って深い関係性を構築できることも、展示会のメリットです。既存顧客に対して、新しいサービスを紹介したり情報提供を行ったりする企業も少なくありません。
既存顧客との良好な関係性により、ライフタイムバリューの向上につながり、企業の安定した利益にもつながります。
展示会は多くの来場者に対して一度に自社の宣伝ができ、認知度が低い企業にとって認知宣伝効果が期待できます。商談には至らなくとも、会社名や商品名などを知ってもらうだけでも、展示会に出展した意義があるといえます。
パンフレットの配布や声かけに加え、認知宣伝効果をより高めるには、出展を申し込む段階でブースの位置に注目することが重要です。入口や出口から2〜3画目・メイン通路に面している・角地・開放面が多いなどが、おすすめのブースの位置です。
自社のホームページやパンフレットなどで、商品の良さやセールスポイントを紹介しても、顧客に伝わらないと感じた経験もあるのではないでしょうか。展示会では、この悩みを解決し、商品を直接顧客に手に取ってもらうことで、体験や感動を提供できます。
オンラインでの相談やマーケティング活動が増えた近年では、競合他社との差別化を図る手段として、直接体験できる展示会を活用するケースもあります。
展示会の出展にはメリットが多いものの、注意点もあります。特に、以下の注意点を覚えておきましょう。
ノウハウが必要になる
出展準備に時間とコストが必要になる
その場で商談できるわけではない
運営のために人員を確保する必要がある
展示会の出展による成果を出すには、出展に関するノウハウが必要不可欠です。出展さえすれば、認知度が高まったり売り上げが増えたりするものではなく、自社ブースの存在にすら気づいてもらえない可能性もあります。
ノウハウは、事前準備・当日の運営・展示会後のフォローに分かれており、各フェーズにおける適切な手法が必要です。初めて展示会へ出展する際には、サポートを受けられる機関へ相談すると良いでしょう。
展示会への出展には、コンセプトの決定から配布物・装飾の作成、展示会の告知、当日の運営、事後フォローなど、準備や運営などに多くの時間を費やします。同時に、出展料、事前の告知のための宣伝広告費、印刷代、スタッフの人件費、機材や備品の利用料など、多額のコストも必要です。
新規顧客の開拓や既存顧客との関係性構築など、展示会は大きな成果が期待できますが、その分労力やコストがかかることも覚えておかなくてはいけません。
来場者と商談の話が持ち上がったものの、実際にその場で商談が決まるケースは稀です。商談を実施するには、一般的に会社の決裁が必要ですが、来場者は決裁権を持たない人が多いためです。
来場者との会話の中で、後日の商談が少しでも見込めそうであれば、展示会後のフォローをしっかりと行い、商談につなげていきましょう。
展示会の出展や当日の運営には、前述した準備が必要であり、人員を確保しなくてはいけません。通常の業務に加えて展示会の業務に携わることで、負担が増える社員もいるでしょう。さらに、社員によって負担の差が大きいと、不満が出てしまう可能性もあります。
展示会の出展効果を少しでも高めるためには、適切な流れに沿って準備することが必要です。出展までの流れを、順を追ってご紹介しますので、参考にしてみてください。
出展企画を考案する
出展の準備をする
展示ブースを設営する
当日の対応をする
最初に、展示会への出展企画を考案します。出展目的を定めたうえで、出展する展示会やターゲットを決定しましょう。
ブースの大きさやコンセプトなども検討しますが、ブースの場所の希望が申請できるかどうか、展示会の申込手続きをとる前に主催者へ確認すると良いでしょう。申込手続きの流れは、展示会のホームページや出展要項で確認できます。
展示会の企画が決まり、申込も完了したら、出展準備を始めます。既存顧客への事前告知や、配布資料・ノベルティの作成、プレゼンテーションの準備、展示ブースのデザインや装飾の決定など、準備内容は多岐に渡ります。
準備と並行して、当日の運営体制やスケジュールなどについても話し合いを進め、スムーズに進行できるようにしましょう。
展示会が近づいてきたら、主催者からの指示に従い、機材の搬入や設営などを行います。設営に関する打ち合わせや必要な申請、工事業者の手配など、漏れがないよう注意しながら計画を立てて設営を進めましょう。
展示会当日は、来場者への対応だけでなく、受付・セミナー・ディスカッション・ステージイベント・商談など、多くの業務をこなします。来場者とより良い関係を築き、自社の商品をPRするには、当日の対応や運営が最も重要と言えるでしょう。
展示会出展を成功させ、売り上げの向上や顧客の獲得につなげるには、以下のコツを意識することが重要です。
KPIの明確化
展示会出展後のフォロー
専門会社にサポートを依頼
運営マニュアルの作成
それぞれのコツについて理解を深めるために、詳しくご紹介します。
展示会への出展による効果やメリットを最大限に引き出すには、KPIを明確にすることが重要です。KPIとは、重要業績評価指標を意味しており、出展による成果や費用対効果などを数値で把握できるものです。展示会では、主に以下のKPIを設定すると効果が見込めます。
名刺を交換した数
アポイントを取った件数
商談を獲得した数
受注を取った数
メディアへの登場回数
来場者のコンバージョン率
自社メディアの閲覧数
新規の見込み顧客数
ブースへの訪問者数
上記のKPIと、展示会への出展全般にかかった費用を比べ、費用対効果を明らかにします。また、次回の出展時に指標とできるよう、良かった点や改善ポイントなどを明確にしておきましょう。
展示会への出展後には、会場でコミュニケーションを取った来場者に対して、できるだけ早くフォローを行いましょう。フォローが遅れてしまうと、自社や商品に対する関心が低くなってしまい、その後の取引や受注につながりにくくなります。
フォローするには、まず名刺やリストなどを整理して見込み顧客を絞り込みます。見込み顧客に対してお礼の電話やメールでコンタクトを取る際に、追加情報を盛り込みましょう。
来場者のフォローを始めてから正式な顧客になるまでには時間がかかります。フォローを確実に行い、顧客獲得へつなげましょう。
展示会で得られる成果は、運営方法によって大きく変わってきます。専門の知識やノウハウがないと、適切な運営方法が分からず、KPIの設定や費用対効果の測定も正しく行えないでしょう。
展示会の成果を高めたい場合は、専門会社にサポートを依頼するのがおすすめです。ブースのデザインや運搬といった一部の工程だけでも、サポートを受けられると社内の負担を大幅に軽減できます。企画段階から依頼できれば、専門会社ならではのノウハウや提案力などを活かした展示方法を提案してもらえるでしょう。
事前に運営マニュアルを作成し社内で共有すると、誰でも運営がスムーズに進められます。展示会で自分がすべきことが分からないといった状況も起こらず、忙しい準備期間でも作業忘れを最小限に抑えられます。
また、展示会への出展ごとにマニュアルをバージョンアップすることでノウハウが蓄積され、社内の財産として引き継がれます。トラブルが起きても、マニュアルがあることで対処方法をすぐに確認でき、落ち着いた対応が可能です。
展示会への出展費用やそれに伴う旅費等は、補助金が活用できる可能性があります。たとえば事業再構築補助金や小規模事業者持続化補助金は、出展費用について広告宣伝費として補助対象となっています。
その他主な補助金制度の対象経費については、以下の記事もご覧ください。
展示会は、顧客と直接顔を合わせながら商品やサービスの認知度を高められる絶好のチャンスです。
展示会の効果を最大限に活かすために、今回紹介した内容を参考にしながら、入念に準備を進めていきましょう。
実際に出展される場合は、活用できる補助金がないか是非調べてみてください。