事業者は昨今SDGsや環境問題を視野に入れつつ、事業を行っていく必要に駆られています。そんな中、政府が打ち出している「グリーン成長戦略」についてご存知でしょうか。
2050年までに日本でのカーボンニュートラルの達成を目指す戦略であり、事業者はグリーン成長戦略を視野に入れて事業を行わなければなりません。ただどんな内容なのか、「聞いたことがあってもよくわからない」と悩んでしまう人も少なくは無いのではないでしょうか。
そこで本記事ではグリーン成長戦略についての内容と重要なポイントをわかりやすく紹介していきます。
さらに活用できる補助金についても紹介しているので「グリーン成長戦略を理解して、補助金を活用したい」とお考えの方はぜひ最後までご覧ください。
まずはグリーン成長戦略について確認していきましょう。
グリーン成長戦略とは国の政策であり、温暖化へ対応することで経済も成長しようとする戦略のことを指します。単に環境問題に配慮するだけではなく、それらの活動を通して産業構造や社会経済を発展させていくことが求められます。
事業者はこの戦略を理解して、環境問題に対し前向きに対応していかなければなりません。
グリーン成長戦略の背景として、地球温暖化問題が挙げられます。今や、環境問題が注視されていることはご存知の方も多いのではないでしょうか。
そこで2020年の菅政権は「2050年カーボンニュートラル」という目標を設定し、この目標を達成するための戦略(グリーン成長戦略)を立てることになったのです。
カーボンニュートラルとは、以下の式が成り立つ状態を指します。
温室効果ガスの排出量 = 温室効果ガスの吸収量
つまり「温室効果ガスを全く排出していない、という実質ゼロの状態」を2050年までに目指すということです。
グリーン成長戦略では14つの重要分野が設定されています。
これらの中の分野は成長が期待される産業としてピックアップされ、対象事業者はそれぞれの目標を達成する動きを求められます。以下はそれぞれの具体的な目標です。
分野 | 目標 |
---|---|
洋上風力・太陽光・地熱産業 | 2040年、3,000~ 4,500万kWの案件形成【洋上風力】 2030年、次世代型で14円/kWhを視野【太陽光】 |
水素・燃料アンモニア | 2050年、2,000万トン程度の導入【水素】 東南アジアの5,000億円市場【燃料アンモニア】 |
次世代熱エネルギー | 2050年、既存インフラに合成メタンを90%注入 |
原子力 | 2030年、高温ガス炉のカーボンフリー水素製造技術を確立 |
自動車・ 蓄電池 | 2035年、乗用車の新車販売で電動車100% |
半導体・ 情報通信 | 2040年、半導体・情報通信産業のカーボンニュートラル化 |
船舶 | 2028年よりも前倒しでゼロエミッション船の商業運航実現 |
物流・人流・土木インフラ | 2050年、カーボンニュートラルポートによる港湾や、建設施工等における脱炭素化を実現 |
食料・農林水産業 | 2050年、農林水産業における化石燃料起源のCO2ゼロエミッション化を実現 |
航空機 | 2030年以降、電池などのコア技術を、段階的に技術搭載 |
カーボンリサイクル・マテリアル | 2050年、人工光合成プラを既製品並み【CR】 ゼロカーボンスチールを実現【マテリアル】 |
住宅・建築物・次世代電力マネジメント | 2030年、新築住宅・建築物の平均でZEH・ ZEB【住宅・建築物】 |
資源循環関連 | 2030年、バイオマスプラスチックを約200万トン導入 |
ライフスタイル関連 | 2050年、カーボンニュートラル、かつレジリエントで快適なくらし |
これらを達成することにより、利便性向上や価格削減など国民生活にメリットが生まれるようになっています。
グリーン成長戦略について知っておきたいポイントは、主に以下の3つです。
広範囲の産業が対象
具体的かつ厳しい目標
2025年日本国際博覧会が実証の場
それぞれ紹介していきます。
グリーン成長戦略では広範囲の産業が対象となっています。
太陽光などのエネルギー系の産業以外に情報通信、インフラ、物流、自動車、住宅など幅広く身近な産業が含まれています。
そのため決して他人事と考えずに、自社の該当する業種の目標を確認しておくようにしましょう。
グリーン成長戦略の目標は、具体的かつ厳しい目標が掲げられています。
単に温暖化対策を行えば良いと言うわけではなく、それと同時に経済発展をしていこうとする試みですから並大抵の努力ではできません。そのため政府自体もグリーンイノベーション基金という予算を確保し、2兆円の予算を割り振っています。
さらにカーボンニュートラルに向けた税制面や資金面での支援を発表し、国全体で目標達成に向けて推し進める動きを見せています。
2050年にカーボンニュートラルを目指す日本ですが、2025年には日本国際博覧会にて実証の場を設けています。大阪・関西万博の会場を「未来社会の実験場」とし、以下のような想定される実証を行っていくと発表しています。
アンモニア発電や水素発電の実証
ネガティブエミッション技術(Direct Air Carbon Capture and Storage, DACCS)につながる実証
生ごみから発生するCO₂を利用したメタネーションやCO₂吸収型コンクリート等の実証
ペロブスカイト等の次世代型太陽電池の試作品のデモンストレーション
飲食物の提供等に活用できるバイオマス由来の生分解性容器の循環処理・資源化に関する実証
このように「課題解決先進国」となって率先して世界に発信していこうとする姿勢を見せているのです。つまり、今後より一層グリーン成長戦略は重視されると考えられるのです。
グリーン成長戦略を踏まえつつ、事業を発展させていくには資金が必要です。そんな時に活用しやすい補助金をいくつか紹介していきます。
事業再構築補助金とは新分野展開、業態や事業、業種の転換や再編成を行う中小企業を支援する補助金です。
この補助金では、グリーン成長戦略を踏まえて事業を成長させる事業者を支援してくれます。
控除額は最大1億5,000万円とかなり高額である上に業種の壁を越えて申請ができるため、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。
なお対象者は以下を満たす必要があります。
グリーン成長戦略の14分野の課題解決に関する取り組みを行う
従業員の5%以上に年間20時間以上の人材育成を行う(1年以上)
事業終了後3〜5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させる
つまり事業再構築補助金の対象者は、グリーン成長戦略に取り組み、会社でも教育を徹底して、結果として従業員に支払う給与額も増やせるように事業を行っている事業者となります。
ものづくり補助金にはグリーン枠という申請額が設けられており、脱炭素に向けて取り組む事業者を支援してもらえます。環境対策を講じている事業者は最大4,000万円の補助が受けられ、補助率は2/3などかなり高めに設定されています。
ものづくり補助金も事業再構築補助金同様に、幅広い業種が対象となります。必ずしも、ものづくりメインの製造業だけではなく業種を問わずとも試作品開発や生産プロセスの改善も対象となるので活用の幅も広がるのではないでしょうか。
対象者は賃金を引き上げる計画を従業員に表明しなければなりません。業種に制限は無く、条件を満たしていれば全業種が対象となる窓口の広さがメリットといえるでしょう。
事業再構築補助金やものづくり補助金の他にも、政府は再生可能エネルギー関連の補助金を用意しています。
例えば活用できる補助金として「需要家主導による太陽光発電導入促進補助金」などが挙げられます。これは太陽光発電設備の導入を検討している事業者に対して、1/2~2/3までの補助が行われるというものです。
設計費や設備導入費、工事費が補助されるので、再生可能エネルギーを活用したい方は視野に入れてみてはいかがでしょうか。
グリーン成長戦略は2050年のカーボンニュートラルを目指す上で、政府が注力して実行していく政策です。
幅広い業種が対象となっており、自身の該当する業種の目標を確認しておかなければなりません。
変革の時代だからこそ、これらをビジネスチャンスと捉えて上手く補助金を活用しながら事業を成長させてみてはいかがでしょうか。