小規模事業者持続化補助金は、その名称から中小企業を限定対象にしていると思われがちです。しかし、実は個人事業主であっても、持続化補助金に申請可能です。
個人事業主やフリーランスがこの制度を利用するときは、申請時に注意すべき点があります。そこで本記事では、補助金申請を検討している個人事業主に向けて、小規模事業者持続化補助金について詳しく解説します。
まず、小規模事業者持続化補助金とはどのような制度なのか、概要や対象者、補助率と補助上限を見てみましょう。
小規模事業者持続化補助金とは、小規模事業者の販路開拓や業務効率化にかかる費用の一部を補助することで、売上生産性向上や持続的な発展を目的として設けられた制度です。
小規模事業者が、毎年行われる最低賃金改定への対応や、働き方改革、インボイス制度の導入などの制度変更に対応しながら売上を確保し、地域の雇用と産業を支え続けられるよう、補助金制度が設けられました。
小規模事業者持続化補助金の対象者は、小規模事業者であることが大前提であり、法人・個人は問われません。事業者に該当するかは、業種ごとに定められた従業員数で判断します。
業種 | 常時使用する従業員数 |
---|---|
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) | 5人以下 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
製造業その他 | 20人以下 |
申請が可能である企業形態の要件は、以下のとおりです。なお、法人では、株式の保有条件や課税所得額も要件に含まれます。
個人事業主・フリーランス(開業届を出していること)
会社および会社に準ずる営利法人 (株式会社、合名会社、合資会社、合同会社、特例有限会社、企業組合・協業組合、士業法人)
特定非営利活動法人(一定の要件を満たしていること)
以下に該当する事業者は、補助金の対象外となっていますので、注意が必要です。
申請時点で開業届を出していない個人事業主・フリーランス(税務署に開業届を提出していても、開業届上の開業日が申請日よりも後の場合は対象外)
医師、歯科医師、助産師
農協への出荷による収入のみである個人農業者(個人の林業・水産業者についても同様)
協同組合等の組合(企業組合・協業組合を除く)
一般・公益社団法人
一般・公益財団法人
医療・宗教・学校・農事組合・社会福祉の各法人
任意団体 等
小規模事業者持続化補助金の補助率と補助上限は、5つに分けられた申請枠によって異なります。下記に加え、インボイス特例として、免税事業者から適格請求書発行事業者の登録を受けた事業者は、50万円上乗せのチャンスがあります。
申請枠 | 概要 | 補助率 | 補助上限 |
---|---|---|---|
通常枠 | 過去の「一般型」と同様 | 3分の2 | 50万円 |
賃金引上げ枠 | 最低賃金の引き上げ額以上に賃金を引き上げた事業者への補助 | 3分の2 (赤字事業者は4分の3) | 200万円 |
卒業枠 | 事業規模拡大を支援する | 3分の2 | 200万円 |
後継者育成枠 | 「アトツギ甲子園」のファイナリストになった事業者を支援する | 3分の2 | 200万円 |
創業枠 | 創業した事業者を重点的に政策支援する | 3分の2 | 200万円 |
個人事業主が、小規模事業者持続化補助金に申請するときには、以下に挙げる書類が必要です。すべて書類を揃えてからの申請となるため、漏れのないよう準備しなくてはなりません。書類の内容を解説しますので、準備の際にチェックしてください。
電子申請の場合は、紙による提出は不要です。すべての申請書の表紙にあたる役割を持っています。添付すべき書類が記載されていますので、提出時のチェックにも役立てられます。
申請書の右上に、申請者の住所や名称などを記載する箇所があるため、書き漏れのないようにしましょう。
応募者の概要、確認事項、経営計画、補助事業計画などを記入します。1枚目の応募者の概要に、法人番号を記入する欄がありますが、個人事業主の場合は「なし」と明記します。間違えてマイナンバーを記載しないよう注意しましょう。
また、直近1期(1年間)の売上高および売上総利益は、転記すべき記載金額が決まっていますので、数字を間違えないようにしましょう。
経費の明細および資金調達方法を記載する用紙です。6つの枠のいずれを希望するかも、この計画書にチェックして提出します。
資金調達方法については、自己資金・持続化補助金・金融機関からの借入金・その他に分けた記載が必要です。補助金は、申請後すぐに交付されるのではなく、審査などを経るため数か月かかることから、交付までの資金調達方法を記載する欄も設けられています。
個人事業主本人が書く書類ではなく、商工会・商工会議所での記入・発行が必要です。
事業支援計画書を受け取るには、まず申請に必要となる「応募時提出資料・様式集」を作成します。その後、「経営計画書」「補助事業計画書」の写し、希望枠に関する書類など併せて、商工会・商工会議所の窓口に提出しましょう。このステップを経ると、商工会・商工会議所から「事業支援計画書」が発行されます。
事業支援計画書の発行受付締切は、公募期間ごとで設定されているため、事前に確認しておきましょう。
補助事業の開始日・完了予定日を明確にする書類です。そのほか、収入金や事業者の適用区分についても記入が求められます。記入箇所は3か所ですので、漏れのないように記入しましょう。
小規模事業者持続化補助金の交付要件を満たしている・虚偽の申告を行なっていないなど、規定に基づいて申告する旨を宣誓・同意する書類です。すべての項目に目を通し、「代表者又は個人事業主の氏名(自署)」の欄に署名しましょう。
上記で紹介した書類に加え、対象者、申請枠によって定められたファイルを電子媒体として提出する必要があります。様式ごとにファイルを分け、ファイル名を付けて保存しましょう。なお、電子データは押印前のもので問題ありません。
電子媒体の送付がないと採択ができませんので、提出漏れがないよう注意しましょう。
決算期を1度も迎えていない場合のみ、開業届の写しが許可されます。1度でも決算期を迎えているのであれば、所得額に関わらず確定申告書の写しが必要です。
確定申告書を書面提出すると、表紙に受付印がありません。この場合は、追加で納税証明書(原本)の提出が必要です。電子申告をした場合は、受付結果(受信通知)を印刷したものを提出しましょう。
小規模事業者持続化補助金の申請には、多くの書類が必要であり、時間もかかります。スムーズに申請し交付を受けるには、以下のポイントを押さえて手続きを進めましょう。
申請時に多く見られるのは、書類の不備です。書類の準備で二度手間になるのを防ぐために、しっかりと確認しながら書類を揃えていきましょう。
法人と個人事業主との違いは、直近の確定申告書または所得税青色申告決算書または開業届(いずれも税務署受付印のあるもの)が必要となる点です。準備すべき書類を間違えないように気を付けましょう。
小規模事業者持続化補助金は、補助対象経費が決まっており、制度の目的に沿った事業での申請が前提条件となります。個人事業主の場合、例を挙げると以下の事業で申請が通る可能性が高まります。
新商品の試作に必要な経費(デザイン・設計・製造・改良など)
販路拡大を目的とした作業スペース確保のために、自身が保有していた機器などを廃棄・処分する費用
パンフレット・チラシ・ポスターなど、広告媒体の制作費
上記は一例であり、個人事業主の業種次第では活用の幅をさらに広げられます。「小規模事業者等の生産性向上と持続的発展を図る」との目的に沿って、申請しましょう。
計画書を初めて見た審査員が、申請内容をすぐに理解できるよう作成することが必要です。特定の業種のみで通用する専門用語を使わない・要点をまとめて箇条書きにする・写真や図表を取り入れるなどして、誰が見ても分かりやすい計画書に仕上げましょう。
不安があれば専門家のアドバイスを受け、第三者から見た視点で確認しましょう。
個人事業主やフリーランスは、1人で仕事をすることが多く、書類作成に時間を取られると通常業務に支障をきたすおそれがあります。特に、初めての申請ではさらに時間がかかるでしょう。
効率良く書類を作成し、計画の完成度を上げるためには、行政書士などの専門家やコンサルタントなどの支援を受けるのが確実です。事業のアピールポイントも熟知しているため、採択率を上げることができます。
小規模事業者持続化補助金は、開業届を出している個人事業主やフリーランスであれば、申請が可能です。自らの販路を拡大するためには、補助金の活用が欠かせません。
本記事で紹介した内容を参考にしていただき、採択されやすい書類作成を心がけましょう。