所得税などの納税は、サラリーマンの方などは源泉徴収や年末調整という形で会社で行われることが多いと思います。一方で、一定以上の年収がある方や、副業の収入が一定以上の金額に達している方は、自分で確定申告をする必要があります。また、マイホームを購入したり、一定以上の医療費がかかったりした方は、確定申告をすると税金が戻ってくる場合があります。
確定申告は、申告書に記入したりパソコンで申告書を作成したりして提出するほか、スマホを使ってe-Taxで申告することも可能です。今回は、スマホでのe-Taxを使った確定申告に初めて挑戦する人に向け、確定申告とは何か・スマホを使ったe-Taxで確定申告をどのように進めるのかなど、スマホを使った確定申告について詳しく解説します。ご自身で確定申告の手続きが必要な方は、ぜひご一読ください。
確定申告とは、所得税額を確定させるための手続きです。所得税は、毎年1月から12月までの1年間における全ての所得に対してかかる税金を指します。
1年間の所得に対してかかる税金が、予定納税額もしくは源泉徴収税額よりも多ければ、確定申告により税金が戻ってきます。反対に、納税額よりも少ないと、不足分の納税が必要です。
サラリーマンなど、勤務先の会社で年末調整を行う人は、基本的に確定申告をする必要はありません。一方で、以下の条件に当てはまると、サラリーマンでも確定申告が必須です。
給与が2,000万円を超えている人
2か所以上から給与を受け取っており、主な給料で年末調整をしていて、その他の収入合計が20万円を超えている人
副業や不動産収入などで得た収入が20万円を超えている人
主な給与の年末調整ができなかった人
また、確定申告の義務はないものの、確定申告をするとお金が戻ってくるケースがあり、これを「還付金を受ける」といいます。還付金を受けるための申告を「還付申告」と呼び、以下の条件に当てはまると還付申告が可能です。
医療費控除や寄付金控除(ふるさと納税等)を希望する人
住宅を購入し、住宅ローン控除を受けたい人(初年度のみ)
年度の途中で退職し、年末調整の手続きを取っていない人
確定申告とは異なり、還付申告は義務ではありませんがお金が戻ってくるため、条件が合う人は手続きした方が良いでしょう。
スマホを使った確定申告は、パソコンを使った確定申告と異なり、以下のように対象となる所得や控除が限定されています。
申告対象 | 内容 |
---|---|
対象所得 | ・給与所得 ・雑所得 ・一時所得 ・特定口座年間取引報告書(令和3年度分より) ・上場株式等の譲渡損失額(前年繰り越し分。令和3年分より) |
対象控除 | ・すべての所得控除 ・政党等寄附金特別控除 ・災害減免額 ・外国税額控除 ・予定納税額 ・本年分で差し引く繰越損失額 |
事業所得や不動産所得など、上記以外の収入があるサラリーマンは、スマホを使ったe-Taxによる確定申告はできません。パソコンからe-Taxで手続きするか、もしくは申告書類を郵送もしくは税務署へ持参しましょう。
市販の会計ソフト(アプリ)を使うと、スマホからでも事業所得や不動産所得など確定申告が可能となります。ただし、サラリーマンが会計ソフト(アプリ)を使う場面は、確定申告以外ほとんどないかも知れません。
e-Taxとは、「国税電子申告・納税システム」を指します。インターネット等を利用し、申請や申告などの国税に関する各種手続きが電子的に行える、国税庁管轄のシステムです。
e-Taxの導入前までは、申告書等に必要事項を記入し、持参又は送付による提出が必要でしたが、e-Taxでは電子データの形式で申告書を提出できます。e-Taxで手続きが可能な国税は、以下のとおりです。
所得税、贈与税、法人税、地方法人税、消費税(地方消費税を含む)、復興特別法人税、酒税、印紙税に係る申告
全税目における納税(電子納税証明書の手数料納付を含む)
申請・届出等(電子納税証明書の請求および発行を含む)
e-Taxを使うと、確定申告だけでなく、各種申請や国税の電子納税ができるようになります。国税庁が作成したシステムであるため税の最新制度にも対応しており、計算ミスもなくスムーズに申告書の作成・申請ができ、とても便利です。
e-Taxを利用して確定申告をすると、様々なメリットがあります。
大きなメリットは、税務署に出向くことなく自宅で好きな時間に申請ができるという点です。確定申告の時期では、全日24時間申告データを受け付けています。
確定申告書に添付して提出する、生命保険料控除の証明書などは、e-Taxの場合は記載内容の入力により提出が不要となります。
e-Taxで提出した還付申請は、書面での提出に比べてスピーディに手続きされ、3週間程度で還付が受けられるのも、e-Taxならではのメリットです。
スマホを使ってe-Taxで確定申告を行うときは、以下のものを用意しましょう。
iPhone・Androidスマホ・iPadなどを用意しましょう。確定申告のやり方には、「マイナンバーカード方式」と「ID・パスワード方式」の2つがありますが、マイナンバーカード方式を選択する時は、ICカードを読み取りできるスマホが必要です。
サラリーマンの人は、会社から源泉徴収票が発行されますので、用意しておきましょう。スマホ撮影により、給与支払額や源泉徴収額を取り込むときや、金額の確認に必要となります。
領収書や控除証明書は、控除を受けるために必要ですので、必ず保管しておきましょう。病院で診察を受けた際などに受け取る医療費領収書は、医療費控除の明細書作成に必要です。
確定申告により、生命保険料控除等を受ける時、マイナポータルと連携すると、控除証明書の記載データが確定申告書に自動反映されることがあります。
マイナンバーカード方式を利用し確定申告をするには、マイナンバーカードを手元に用意しましょう。ID・パスワード方式での申請にも、マイナンバーを申請書に記入するため、マイナンバーカードもしくは通知カードなどを用意しましょう。
還付申告をする場合は、還付金の振込を受ける預金口座の口座番号記入が必要です。スムーズに記入できるよう、用意しておくと安心です。
スマホを使って、e-Taxで確定申告を行なうには、以下の手順で進めます。各段階で、どのような作業が必要なのか、注意すべき点は何なのかなど、申告前に理解を深めておきましょう。
最初に、e-Taxを行なうのに、マイナンバーカード方式もしくはID・パスワード方式のいずれを選択するかを決めましょう。マイナンバーカード方式を選択したいがカードを持っていない場合は、発行申請が必要です。申請から発行までに1か月ほどかかるため、余裕をもって早めに申請しましょう。申請方法は、郵送・オンライン・証明写真機から選択できます。
マイナンバーカードに入っているデータを確定申告へ反映させるには、マイナポータルのインストールと連携が必要です。こちらも事前に行なっておくことをお勧めします。
初めてe-Taxソフトを使う前には、利用者情報の登録も行なっておきましょう。これにより、申告や申請ができるようになります。
利用者情報には、以下のものが必要です。
システムへのログイン用暗証番号
確認番号および納税用の氏名・名称(カタカナ)
電子証明書
そのほかに、メールアドレスや秘密の質問・答えの入力が推奨されています。
準備ができたら、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」のページから、申告データを作成します。「作成開始」をタップし、表示された画面の内容に沿って入力していきます。マイナンバーカード方式を選択した場合は、e-taxのログイン画面でマイナンバーカードを読み取りましょう。
すべて入力が完了したら、最後にデータを送信し、スマホにデータを保存します。メッセージが表示されると、送信が成功したことを表します。
e-Taxを使って、スマホで確定申告を行うのは、それほど難しい作業ではありません。ただし、対象所得や控除が限定されているため、所得や控除の分類によってスマホでの確定申告ができない点は、必ず覚えておきましょう。
スマホでの確定申告は、場所を選ばずスピーディに手続きできるため、忙しいサラリーマンにとって便利な申告方法と言えるでしょう。