設備投資に利用できるものづくり補助金ですが、補助対象となる設備が定められており、どれでも経費として認められるわけではありません。申請においては、対象外となるものを理解しておく必要があります。
この記事ではものづくり補助金の対象設備にフォーカスを充て、その条件や注意点、活用事例などを紹介します。
ものづくり補助金とは、生産性向上に向けた取り組みを行う中小企業等が、新製品・新サービスの開発、生産プロセスの向上などに必要な設備投資等を支援する補助金のことです。
AIやロボットを導入して作業効率を高めたり、手作業で管理している工程や労務などを一元管理できるシステムを導入する際などに活用できます。
ものづくり補助金の対象者は、中小企業や個人事業者だけでなく、協業組合や社会福祉法人など、幅広い事業者が対象となります。
ものづくり補助金では3つの申請枠に分かれており、それぞれ補助額や要件などが異なります。
ものづくり補助金について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
参考記事:ものづくり補助金とは?対象者や申請要件、補助額、申請方法をわかりやすく解説
ものづくり補助金の対象経費は以下の通りです。
対象経費 | 主な経費項目 |
---|---|
機械装置・システム構築費 | 機器・装置、工具・器具の購入費用、制作借用に係る経費 専門ソフトウェア・情報システムの購入・構築、借用に要する経費 改良・修繕又は据付けに要する経費 |
運搬費 | 運搬料、宅配、郵送料 |
技術導入費 | 知的財産権等の導入費用 |
知的財産権等関連経費 | 特許権などの知的財産権の取得に関わる弁護士費用 |
外注費 | 新製品、新サービスの開発に係る外注費 |
専門家経費 | 事業遂行のために依頼した専門家への報酬 |
クラウドサービス利用料 | クラウドサービスの利用に関する費用 |
原材料費 | 試作品の開発に係る資材の購入費用 |
海外旅費※ | 海外渡航費、宿泊費、交通費 |
通訳・翻訳費※ | 通訳、翻訳を依頼した費用 |
広告宣伝・販売促進費※ | が意外展開に必要な広告の作成および、媒体掲載などに係る費用 |
※グローバル枠の海外市場開拓に関する事業のみ対象
設備投資は補助対象になりますが、条件が4点定められていますので、一つずつ確認していきましょう。
ものづくり補助金の対象経費の主軸である対象設備とは、補助事業向けの設備機器を指します。事業計画書で説明している補助事業以外の従来事業などで汎用的に使用する設備は対象外となりますので注意してください。
設備投資に該当する機器はさまざまありますが、過去の採択事例を確認すると、以下のような設備機器の導入が認められています。
業種 | 導入機器 |
---|---|
金属製品製造業 | 刃物の研削・研磨作業を担うロボット・システム |
出版・印刷・同関連産業 | 印刷物検査機 |
サービス業(測量・点検) | モバイル3Dスキャナ |
飲食店運営業 | 大型調理機器 |
上記のように、各業種の生産性を向上させる機器設備の導入は補助対象になります。
対象となる設備投資は、省力化を目的としていることが条件になります。
これは、17次公募から導入目的が「生産プロセスの改善」から「生産プロセスの省力化」に変更されたためです。
出典:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業公募要領(18次締切分)
上記の目的は、申請枠によらず共通の条件になります。
省力化の例としては、人手不足解消のためのAIや画像判別技術を用いた自動組立ロボットを開発したり、部品組立工程を完全自動化するためのシステム機器などが該当します。
自社で導入を検討している設備機器がある場合、省力化の目的を満たしているのかを確認しましょう。
ものづくり補助金の対象設備は、革新性のある機械設備である必要があります。
ここでの革新的とは、「これまで自社が取り組んだことがない」「競合他社との差別化ができる」などを指します。
すなわち、新商品や新サービスを開発・提供するための機器などが革新性に該当するということになります。
過去の採択事例では、電気機械器具製造業の事業者が平面研削盤を導入し、他社にはない技術を確立し、顧客の半導体製造装置の精度が向上した事例がありました。
また食品製造業では、健康飲料であるコーディアルを開発するための機器を導入し、自力で「フルーツコーディアル」の商標登録を行うことができた事例もあります。
このように、機器設備を導入することにより革新性のある商品やサービスを作り上げることが、対象要件として含まれています。
中古品を導入する場合、3社以上の相見積もりが必要です。なおかつ単価が50万円以上で、見積書には形式や年式が記載されていることが条件になります。またオークションやメルカリ、フリマサイトなどで購入したものは経費として認められませんので注意しましょう。
同一の型式の中古品を販売する事業者を3社探すことは非常に難しいため、多くの方は新品を導入することになりますが、対象の中古機器が流通しており、コストを抑えたい方は検討してみても良いと思います。
ものづくり補助金で中古品の導入を検討している方は、以下の記事も参考にしてください。
参考:ものづくり補助金は中古機械も対象?対象経費や申請の注意点を解説
ものづくり補助金の機器には対象外となる設備もあります。
対象外になると補助金は交付されないため、事前に条件を確認するようにしましょう。
設置場所の整備工事や基礎工事は対象外です。具体的には、機器を設置するためにコンクリートで基礎をつくったり、アスファルトや給排水管などの設備は自己負担となります。
対象外かどうかは申請内容から判断されます。設備機器の一部としてみなされる可能性もあるため、専門家にチェックしてもらってから申請することをおすすめします。
工場建屋、構築物、簡易建物(ビニールハウス、コンテナ、ドームハウス等)の取得費用、及びこれらを作り上げるための組み立て用部材の取得費用は対象外です。
農業や工場などを利用する事業者の方は注意しましょう。
汎用性のある機器設備は補助対象外です。例えば農業などで活用する最新トラクターなどは、他の農産物にも使用できることから、認められません。
その他にも事務用のプリンターやタブレット、スマートフォンなども汎用性があると捉えられることがあります。
不動産の購入費は対象外です。新商品や新サービスを提供するためであっても、店舗や倉庫の購入費用は認められません。
また、購入でなくても、事務所等にかかる家賃、保証金、敷金、仲介手数料、光熱水費なども対象外です。
自動車等車両の購入費・修理費・車検費用も補助対象外です。
ただし、「事業所や作業所内のみで走行し、公道を自走できないもの」や「税法上の車両および運搬具に該当しないもの」は対象となることがあります。
ここではものづくり補助金で設備投資を行う際に注意すべき点を3つ紹介します。
設備投資にかかる費用は、後払いで補助金が交付されます。
ものづくり補助金は、申請して設備を導入し、その後実績報告を行ってから補助金が交付される流れです。
そのため、導入する設備投資費用は自費で支払しておかなければいけません。
また申請前に購入した設備投資は補助対象外となるので、必ず申請してから設備投資しましょう。
購入する設備投資は会社規模に合う価格や商品を選択しましょう。
交付される補助金額は従業員の数によって変動します。例えば申請枠のひとつである省力化(オーダーメイド)枠であれば、以下の表の通り、従業員規模ごとに補助上限額が定められています。
従業員規模 | 補助上限額 |
---|---|
5人以下 | 750万円(1,000万円) |
6~20人 | 1,500万円(2,000万円) |
21~50人 | 3,000万円(4,000万円) |
51~99人 | 5,000万円(6,500万円) |
100人以上 | 8,000万円(1億円) |
※カッコ内は、大幅賃上げに係る補助上限額引き上げの特例を適用した場合の上限額
従業員数によって上限額が決まっていますので、事業規模にあった機器を購入するようにしましょう。
ものづくり補助金を活用する際は、納期が守れる設備を購入するようにしましょう。
申請して認可を得たものの、いつまでも設備が導入できないと実績報告が期限内に行えず、補助金が請求できないことになります。
先に支払いを済ませたとしても、機器を導入した証拠写真などが必要になることがありますので、十分注意してください。
ここではものづくり補助金で設備投資が行われた事例を紹介します。
茨城県にある株式会社ヤマナカは、金属加工や耐震用・内装用建材やトラック部品、建設機械部品の製造など、モノづくりを行う会社です。
従業員は13名ほどと少数ですが、新たにプレスブレーキ(ベンダー)とAI機能が内蔵されたCAMシステムを導入します。
労働者の負担を軽減させることができ、ある部品の生産時間を4割以上削減することに成功します。
さらにIoTを導入し、各設備の稼働状況を一元管理して分析し、稼働率の向上を図っています。
参考:耐震・建設需要の拡大に対して確実に受注を獲得していくべく、技能に頼らない生産体制の構築と、製造コストの低減とに取り組むことが課題経済産業省中小企業庁ミラサポPlus
株式会社サニックスは山形県で自動車総合サービス工場を営む会社です。
従業員はベテランな社員が多い一方で、高齢化が続いていたため、若手の獲得を目指していました。
しかし、地域の少子化や自動車整備工場に対するマイナスイメージから、常に採用に苦戦し人手不足の状態でした。
そこで、インターンシップを受け入れたり、作業能力の低い機械を入れ替えたり、作業工程を一元的に把握するための生産管理システムを導入する等、積極的な設備投資を行った結果、きれいな自動車整備工場という印象が根付きます。
その結果6年間で若手社員を34名採用することができ、なおかつ売上高や営業利益が拡大した成功例です。
参考:設備投資で新しくきれいな工場を整備。インターンシップを受入れ、職場へのマイナスイメージを払拭。- 事例を探す経済産業省中小企業庁ミラサポPlus
神奈川県で飲食品小売業を営む有限会社たのし屋本舗は、飲食店「横須賀ビール」を経営しており、国内品評会で金賞を受賞している会社です。
しかし、新型コロナウイルスの影響によって売上高が約8割減になります。
そこで、酒類小売業免許を取得し、クラフトビールの小売事業を強化、さらに常温流通が可能なクラフトビールを開発し、販路を拡大させた事例です。
また、生産性を高めるために、瓶詰めやラベル貼りのための設備を導入します。今後は大手百貨店やスーパーへの納入など、事業拡大も視野にいれている企業です。
参考:高品質なクラフトビールの国内流通の生産増強-事例を探す|経済産業省中小企業庁ミラサポPlus
ものづくり補助金の対象となる設備は、機械装置・システム構築費、技術導入費や外注費など多岐にわたります。
活用用途が広い一方で、省力化を目的としている設備や革新性がある設備など、さまざまな条件が定められています。さらに対象外となる経費も多いため、申請する前に専門家へ相談することをおすすめします。
導入予定の設備が補助対象となるかどうか調べたい方は、補助金コネクトまでお問い合わせください。補助対象となる設備のチェックから、事業計画書や必要書類の準備まで幅広くご支援しております。
申請に向けたポイントなどもご紹介していますので、ぜひ下記のお問い合わせフォームよりご相談下さいませ。